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博多久松・松田健吾氏インタビュー(全2記事)

2015.12.04

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学生を敏腕Webディレクターに育成 高校生プロデュースの「おせち」が楽天ランキングに登場した理由は?

提供:楽天株式会社

楽天市場にて9年連続でグルメ大賞を受賞、おせちのリーディングカンパニーとして業界トップに立つのが「博多久松」だ。2004年にネット通販に参入し、業界初のチャイナフリー製品の販売、キャンセルの受付、「ハーフメイドおせち」など変わり種おせちの開発等、新しいことにも積極的に取り組んできた同社。2015年は、楽天がCSRの一環として行う高校生向けの授業「楽天IT学校」に講師として参加。高校生がオリジナルおせちをプロデュース、実際に博多久松の楽天サイトにて販売を行った。博多久松の松田健吾店長に、今回の取り組みについて話を聞いた。

未来の敏腕店長を作る「楽天IT学校」

──今年の取り組みとして「楽天IT学校」への参加について教えてください。地元の高校生が5つのチームに分かれてオリジナルおせちをプロデュース、11月からは実際に楽天市場博多久松さんのサイトで販売もされていますね。

松田健吾氏(以下、松田):楽天IT学校の、ここ数年の取り組みをお聞きしていて、高校生に授業としてインターネット通販、Eコマースを教えていくこと自体に非常に興味があったんです。

ですので、今年、講師のお話をいただいたときには、当然二つ返事でお受けしたんですが、いざミーティングしていくと、当初は、高菜や鶏の照り焼き、お総菜など、うちで取り扱っている既存の商品について高校生が各チームごとでWebページを作って、プライシング(価格決定)して、商品を掲載しましょう、というお話だったんです。

それはそれで面白いと思うんですけれど、私たちはメーカー、作り手なので、自分たちが作った商品に対してじゃないと、ページに思いが乗らないなと思ったんです。

それに「博多久松のメイン商品って何?」と言うと、ご存じの方はほとんどが「おせち」と言うと思うんです。高校生向けに授業を持つというときに、久松がおせちを出し惜しみしたら、「ちょっと力を抜いてるんじゃないの?」となるとも思いまして。

そこで、高校生のみんなに「商品の試食から全部入ってもらって、おせちを各チームでプロデュースしてみよう」と話をしたら、明らかにそれまでと眼の色が変わったんです。「お、やる気になったな?」と。

そこで、試食会、商品を盛り込んでの撮影会、写真を取り込んで商品紹介のWebページ制作もしようとスケジュールを組んで。そのなかで、「久松のおせちのページを分析してみよう」というような流れで授業をすることができました。

通常よりも多い尺でやっているんですけれど、授業を行うたびにみんな真剣になってきて、飽きることなく真面目に取り組んでくれています。

販売開始1ヶ月ですでに売り切れも

11月1日から高校生おせちの販売を開始しまして、結果、今(11月下旬)はもう在庫が、残り3割~4割くらい。

当然、絶対量として商品数が少ないのもあるんですけれど、高校生のみんなが考えて作ったおせち、かつ彼らが作った商品ページを見たお客様から客観的な評価をいただいているってことですよね。これは私たちにとっても大きなチャレンジだったなと。

やっぱりおせちって高いんですよね。「久松のおせちは安い」と言っていただけるんですけれど、冷静に考えてみると、1万円とか1万5,000円の食材をネットで買う機会って、そうそうない。でも、おせちだったらそれをしていただける。

高校生のみんなには、今年トレンドの、小さめのおせちをプロデュースしてもらったんですけれど、6.5寸の2段重でもやっぱり8,000円くらいにはなるんです。

でも、それがもう2種類売り切れて、残り3種類も、完売傾向で動いていて、非常に面白い数字が取れたなと。

──1番最初に売り切れたチームとまだ売り切れてないチーム、高校生の子たちのなかでも、いろいろ思うことがありそうですね。

松田:売り切れたチームは、やっぱり帰りの挨拶のときにすごい元気でした(笑)。

当然、売り切れていない子たちは、悔しいみたいで。でも、悔しいだけじゃなくてちゃんと分析してたんですよね。高校生おせちの特集ページを作ってるんですけれど、そこからのクリック数は売り切れてないチームのほうが多かったんです。

でも、一番最初に売り切れたチームのほうが転換率(注:アクセスに対して商品が売れる確率)は高かった。

だから次の授業として、「なぜ自分たちはアクセスが取れたのに転換率で負けたのか? 競合となるもう一個のチームのよさを分析してみよう」という授業につなげられる。

そうなると冷静に見られますよね。自分たちで愛情を持って作って販売している商品に対しては、どうしてもフィルターがかかっちゃって、「自分たちの商品のほうがいいのに、なんで他所のほうが売れちゃうの?」みたいに思っちゃうんです。

それを感じたので、「冷静にこっちのほうが良かったところを分析しよう」と。競合他社さんのおせちを分析し、いいところは学びにして、自分たちが強いところはより強くするということは久松でもやっています。それは高校生にとっても一緒だなと思いました。

一番最初に売り切れたチームもよかったのが、「自分たちが一番売れてるのは事実だけどアクセスで負けたのはなぜだ?」と分析をしていて。そういうのを見ていると、非常に勉強になります。視点がそういうところに移行してきたな、と。

ちょっとづつですけれど、ちゃんとWebディレクターになってますよね。これをちゃんと教育していけば、将来的には楽天IT学校が目指す、未来の「ショップ・オブ・ザ・イヤー」を獲得する店長が本当に生まれるんじゃないかと期待ができました。

生徒、先生みんなで楽しみながら学ぶ

──ほか印象的だったことはありますか?

松田:オリジナルおせちは、久松がピックアップした70種類の食材から20数点選んでもらって作ったんですね。

そのなかには、飛び道具的な食材もあるんですよ。ケーキとか。

そんなものもあるなかで、高校生がどんなおせち作るのか非常に興味あったんです。言ってしまえば、ケーキだらけにして、おせちとして機能しない可能性もあるな、と心配もしていました。

でも、あえてルールでは、そこまで縛りをつけることなくやったんですけれど、思いのほかみんな全種類食べて、ちゃんとバランス考えて選んで、盛り込むんですよね。

だから、昆布巻きとか、地味な感じの食材もちゃんと入ってるんです。伊達巻とかたたき牛蒡(ゴボウ)とか入ってました。

「たたき牛蒡、誰が入れたん?」って聞いたら、男の子が「自分が入れました」って言うんで「なんで?」って聞いたら「ゴボウのシャキシャキ感がよくて」って(笑)。

高校生だから、適当にするとか遊んじゃうっていうのも正直懸念してたんですけれど、いざ取り組んでみるとやはり与えられたミッションに対しては真剣なんです。

ちょっとやんちゃっぽい子とかもいないとは言い切れないんですけれど、いざアンケートを回収するとしっかりとコメントが返ってくるんです。

「もっとチームワークを考えて取り組んでいたら、より良い結果が出たと思う」とか。

「あぁ、彼はここでチームワークを学ぼうとしてるんだな」と。通常の学校だと進学とか卒業を目的とする教育ですけど、このIT学校の授業って将来に対する投資なので、そういうところに参画できるのはすごく面白いと思いました。

それに先生たちもすごく楽しんでいるんです。

IT学校本部からはNGが出たんですけど、先生も勝手にオリジナルおせち作ってましたから。「これはダメです、売れません」って(笑)。

先生たちもこの取り組みに対してエンジョイしちゃうんですよね。そういう姿を生徒たちに見せることもすごく大事だと思いました。

生徒たちは生徒たちで、先生よりいいものを作ろうと取り組むようになって。結果的にはページもなかなかいいものができて、それなりの転換率が取れているということに私自身も驚いています。

ちゃんと楽天市場のデイリーランキングに載ってるんです。それってけっこうすごくないですか? 私が高校生の時は、売上なんて一円もあげたことがなかったです。

忘れてはいけない原点の風景

──高校生と一緒に学んで、松田さんが改めて気付かされたことはありますか?

松田:おせちの決裁権に対しては、確かに親世代だとは思うんですけれど。それに10代がまったく関われないかというと、そんなことはないな、と思ったんです。

お正月は家族の行事なんです。おせちは家族が食べるものと考えると、そこに家族の意見が入ってくることは間違いない。

私が10代の時に感じたお正月のイメージは、家族、親、親戚、従兄弟、おじいちゃんおばあちゃんたちと過ごしたとても楽しい記憶で、これがまた来年も来るんだなと思うとそれが非常にうれしいことだったんです。この原点となる部分をやっぱり忘れないように、10代の子たちに対してもおせちの良さを伝えられるチャネルを作っていきたいなと思ったんですよね。

じゃないと、親が勝手に商品を選んできて買ってきて、さあ正月だからみんなで食べようねってなっても、子どもは食べるものがないのでスマホで遊びながらどっか行っちゃう……こんなふうになると、そのお正月ってけっこう寂しいと思うんです。

子どもたちも、わーっと集まって「コレ美味いね」「昆布巻き好き」とか言いながら、食べて話して過ごせるお正月が来たら、これは1年のスタートとして最高のものかなと。

だから10代とか若い人たちに対して販売するおせちを作ると言うよりも、この文化をしっかりと伝えられるチャネルやメディアを作っていきたいな、と思ったんです。

高校生のみんなが、試食や盛り込みのときに、本当に楽しそうだったんです。10代の若い子たちがおせちっていうけっこう渋い文化に触れているところ、これは見た目としても非常にいいもので、ここが忘れたらいけない原点のところかなと思いました。

離れ業の販売ばかりをやると原点を見失うかなと思ったし、逆に楽天さんと一緒に去年販売した「ハーフメイドおせち」(注:重箱の半分が空になっていて、手作りや単品の好きなものを詰め込める商品)とか、そういう今までの食品の会社だけじゃ考えられない部分も必要で。そうやって、いろんな人たちを巻き込めるのが、ネットから始まったおせちの強みなのかなと思っています。

すべての家庭でおせち料理を、文化の再創出を目指す

──ハーフメイドや、今回高校生が作った小さめのおせちなど、最近のトレンドは意識されているんですか?

松田:例えば、結婚したての若い夫婦に対して、「2人だけどお正月しようね」というのも、文化を忘れないとか継承していくにあたって大事かなと思っています。

その需要が伸びているというよりも、掘り起こしているというイメージのほうが強いですね。

今年、新作で2~3人前の小さなおせちを作りましたが、一方で量の多いおせちも作ったんです。6~7人前の超特大のを。

いろんな人数分、価格帯とか、トレンドとなるものをしっかりと押さえていって、私は全世帯でお正月におせちを食べていただけるようにと思っています。

おせちっていうのは、お正月に届くもの。基本的には予約必須の商品なんです。ネットでの最大の利点は予約を事前にとっていけること。配送、配達でお客様の手元にお届けできるのがメリットだと思うんです。

これを使えば、リアルでの販売だって同じなんです。予約を取って、お正月の日程にお届けするということなので。インターネットのおせちはもっとリアルの方に目を向けても十分にお客様を掴むことができるんじゃないかと。

みんなおせちを買う場所がなくて困っているんじゃないかと思っているんです。店頭のおせち売り場って、クリスマスが終わるまでほとんどないんですよね。わずか一週間くらいしかなくて。

でもお正月もすごく大事な行事なんです。だからWebの楽天市場には今、「クリスマス特集」と「年越し特集」が同時にありますし、もしクリスマスの需要が(年越しよりも)20倍以上もすごいんだったら私もあまり大きな声では言えないんですけれど、実は「年越し特集」ってお客様からすごく支持されているんです。

もちろんお正月勤めの方もいらっしゃると思うんですけれど、それだったら会社で楽しめる商品も作りたいですし、365日介護型の老人ホームで過ごされている方が多くいらっしゃるので、そういう施設向けのおせちも展開していけたらな、とか。

いろんな世帯に向けて、「元旦はおせち食べよう」という文化を作っていく、文化を再創出するということを今は考えています。

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