2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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記者G:今朝Facebookで、友人たちに「教授にどんな質問をしたらいいか」とポストして聞いてみました。ある友人たちが個人的にあることを聞きたいと言っていまして、聞いてもよろしいでしょうか? 答えたくなければ結構ですから。
友人のうち数人が、教授の市民権変更についてコメントしていました。彼らは、教授がアメリカ市民権を取ったのは、日本に失望したからではないかと言っています。そして教授自身も今日本人は海外に出るべきだと主張されていましたね。アメリカ市民権を獲得したことについて、ご自身はどのようにお考えなのでしょうか?
中村教授:カリフォルニア大学の教授になったことが、アメリカ市民権を獲得した理由です。教授の最も重要な仕事のひとつはファンドレイジングです。ファンドレイズした基金のおよそ50%がアメリカ政府から寄与されました。ファンドレイズする為には、大学教授はアメリカ市民でなければなりません。もし私が市民権を持っていなければ、アメリカ政府から支援を受けることは出来ませんでした。
資金がなければ研究が出来ません。もちろん企業からも支援を受けていますが、アメリカ政府、軍からのファンドが研究には欠かせません。私が市民権を獲得したのはアメリカ政府からのファンドを得る為でした。
記者H:ノーベル賞受賞おめでとうございます! なぜ日本最高峰の研究者が日本を出なくてはならなかったのかと、不思議に思われていますよ。東京大学の教授に中村教授が日本を出たことについてどう思うか、なぜ中村教授を迎え入れなかったのかと聞いたところ、「もちろんそのことについては協議しましたが、もっと普通の教授を迎え入れたいという結論に至ったのです」と言われました。
昨日は文部大臣と会合されていましたね。安倍首相と一緒に写っている写真も拝見しました。安倍首相から「日本を出てくれてよかった! あなたは日本社会に波紋を生むからな!」など言われたんですか?(笑) もしくは「日本に戻ってきてほしい」とか? 安倍首相は教授が日本を出たことについて、何か触れましたか?
中村教授:彼は私が日本を出たことについてまったく触れませんでした。挨拶しただけです。教育については少し話しました。彼は日本の教育制度を根本から変えようとしています。彼は「現在の日本の教育制度は100年前から続いている。この時代に合わない制度を変えなければ」と言っていました。
日本の入試試験制度はとても理に適わない、と私は常々発言してきました。小中高の受験の目的とは最終的に、有名な大学に入学することです。ただ将来有名な大学に入学したいが為に、子供は塾に通ったり必死に勉強する。それが現在の日本の教育システムです。入試試験制度を廃止して、誰でも好きな大学に行けるようにしたらいいのではないかと思いますが、首相もそれに賛同していました。
記者I:将来成功したいと願う若い科学者、物理学者はどんな学校に行き、どんな道を歩めばいいとお考えですか?
中村教授:日本以外の大学がいいですね。個人的にはアメリカの大学がベストだと思います。なぜなら、様々な国から様々な学生がアメリカの大学に集まってきます。アメリカでは世界の様々な文化を学ぶことが出来ます。そしてアメリカの教育制度はとても優れています。若者にはアメリカで学ぶことによって、英語を身につけ、様々な文化に触れて欲しいと思います。
最も重要なことには、日本の外に出たことがない日本人は、日本が世界中で最高の国だと思いがちです。日本政府が国民をそのようにマインドコントロールしているからです(笑)。どの国もある程度政府がコントロールしているとは思います。例えば北朝鮮もアメリカもそうです。
しかしアメリカ人はアメリカの外に出ていきますから少し状況が違いますね。日本は小さな島国なので、政府が国民をコントロールしやすいのです。日本人は、日本を日本の外から見てみることが最も大切です。若い研究者は少なくとも5年は、日本の外で過ごしてみると良いと思います。
記者J:最初に訴訟について少しお話されていましたね。研究者にフェアであれ、というアイディアは理解できます。しかし、日本社会のより良い未来、という観点で考えてみると、あなたが起こした裁判の再発防止の為の法律へと変わろうとしている。発明がすべて会社のものと定める法です。
これが日本人の優秀な人材が日本から離れていく原因となるのではないでしょうか。発明者に対して支払われる対価が変わることは、日本社会の今後にとって、実は良いことであると思いませんか?
中村教授:それはそうかもしれませんが、安倍さんにはそんな上手く出来ませんよ(笑)。アメリカ市民権を持つ韓国人の生徒に「卒業したらどんな仕事をしたいんだ?」と聞きました。アメリカ市民権を持っているのだからアメリカに残ったほうがいい、スタートアップをやってIPOで大きく稼げるし、ここは自由だぞと。
しかし彼は言いました、「親も親戚も全員が口をそろえて、卒業したらサムソンに入るんだ、と言ってくるのです」と。韓国ではサムソンに勤めることが皆の憧れなのです。韓国の若い研究者の夢は、サムソンやLGなど大企業に就職することなのです。
日本も同じで、親も親戚もその子が大企業に就職することを夢みます。パナソニックだとかNECだとか。それが大きな夢になってしまっていることが問題です。
大企業に入ってしまえば生涯をサラリーマンで終えることになります。インセンティブがもらえる仕事ではありません。しかも50歳や60歳になってから、大企業に勤めたことの愚かさに気がつくのです。今の私よりも若い人達がリタイアの時期を迫られるのですから。
日本の研究者が置かれる現状を変えたいものですが、日本の企業は何も出来ません。大企業は政府すらコントロールすることが出来ますから(笑)。日本の政府と大企業は太いパイプでつながっています。韓国も同じだと思います。日本にはベンチャー、スタートアップが成功出来るシステムが整っていないのです。これが大問題です。
記者K:今韓国人の学生の考え方について触れられましたが、彼らの視野が広げる為のお勧めの本があれば教えてください。
中村教授:私の著書を読んでください(笑)。『怒りのブレイクスルー』というタイトルです。韓国語にも翻訳されています。
私が在籍する大学の生徒の約50%がアジア圏からの留学生です。そして他50%がアメリカ人、そしてヨーロッパからの留学生です。アジア人留学生は誰もが同じように見えます。韓国人、日本人、台湾人。
アジアからの留学生はとても熱心にラボ(実験室)で授業に取り組みます。アメリカ人やヨーロピアンはそこまでではありません。しかし、テストとなるとアメリカ人やヨーロッパ系の学生のほうがよい点を取ります。
アジア系の学生はラボでがむしゃらに一生懸命にやって、とんでもない発見をしてブレイクスルーしたりします。アメリカ人やヨーロピアンの学生はガツガツやりませんが、とてもスマートです。学説を学ぶことに関しては、アメリカ人やヨーロッパ系の学生のほうが優れていますが、実践のラボの現場ではアジア人のほうが一生懸命やります。双方のよいところを足して二で割れたらいいですね(笑)。
アジア系の学生は入学試験に必死になりますが、私はそれは時間がもったいないことだと思います。アメリカ人やヨーロッパ系の学生は、そんなに必死にガリ勉しなくても良い成績を取ります。
アジア圏の教育制度が間違っているような気がします。中国も日本も韓国も、勉強の目的が学校に入ることになってしまっている。若者は入試に必死になるよりも、好きなことを追求したほうがいいと思います。
記者L:今お話されたことについて一緒に賞を受賞されたお二方とも話されるのですか? 日本の学界は教授の今お話された考え方をどのように受け止めているのでしょうか?
中村教授:昨日下村文部科学大臣と会いましたが、彼は私の意見に同意してくれました。彼は日本の教育システムについて書いた私の著書を読んでくれていたようで、どのように日本の教育制度を変えるべきか、私が書いたことに対してコメントをしてくれました。
記者M:アメリカ社会、アメリカ人を尊重していますが、それと同時に日本と日本人はアメリカ、アメリカ人の真似をする必要もないと思います。日本にも良いところがたくさんあります。教授の考える日本の良いところとは? 誠実さ以外に。個人よりも輪を重んじるところとか、空気を読むだとか。日本社会は現在まで機能してきましたよ。
中村教授:先ほども言ったように、日本人にはたくさんの素晴らしい特性があります。イノベーションを起こしたり、信頼できる素晴らしい製品づくりにも長けている。日本人は誠実で一生懸命仕事に打ち込みます。
日本人に悪いところがあると言っているのではなく、問題は英語が話せないこと。そしてこれは教育問題であります。日本人の問題というよりも、日本政府の問題であります。日本の裁判制度は最悪です。世界で最もひどいものかもしれません(笑)。
法制度と言い直しましょう。アメリカでは訴訟が起きる時、最初の一年、二年は「ディスカバリープロセス(開示手続)」です。そのプロセスの中ですべての証拠を集め、弁護士に提出します。日本にはそのようなプロセスはありません。
次に証言録取です。アメリカでは、誰にでも、大統領にすら証言録取を求めることができます。日本にはそんな制度はありません。日本の裁判制度において、裁判官は証拠なしに裁判を進めることを強要されるのです。証拠もなしに判決を下すんですよ、信じられますか? 問題は、そのようにして裁判官が下す判決を誰も疑わないことです。
実際に裁判で戦ったことがある日本人だけが、日本の裁判制度がどれだけ悪質なものなのかを知っています。授業でもよく言っています、日本はこの最悪な法制度、裁判制度を変えるべきだと。日本の裁判では賠償金を支払うのではなく、和解の方向に持っていこうとします。証拠がないので、裁判官は賠償金をいくらにするか決定することができません。
記者N:80年、 90年代の日本でも国際化が謳われていましたよね。どのように教育制度を変えて、日本人の英語能力を伸ばすか、ということが。この25年で状況はほとんど変わっていません。素晴らしいイノベーターたちに「これが日本だからしょうがない」と言わせて終わらせてはならないということですよね。しかし日本の教育制度は「しょうがない」で終わっている。
この状況に変革を起こす為の鍵はなんでしょうか? それができるのは、おそらく政府でも日本の大企業でもないはずです。何が日本を変えると思いますか?
中村教授:とても良い質問ですね。日本は経済が落ち込むと、様々なことに変化が起きるというパターンがあります。第二次世界大戦後、日本は崩壊し、全てを変えて再建しました。経済がどんどん落ち込み、「サラリーマン」達の給与がほぼゼロになってしまった時がくれば、その時にようやく「全てを変えなければならない」という動きが始まるのではないでしょうか?
日本人はとても辛抱強く保守的です。アメリカや中国では不満があれば人々は声をあげます。日本人はとてもおとなしいです。日本経済が崩壊しない限り、大きな変革は起きないでしょうね。
記者O:教授がこの功績の成し遂げる為のモチベーションの何%くらいが、功績を挙げたあとの報酬によるものだったんでしょうか? 例えばノーベル賞を取るぞ、だとか出世、お金等。そしてモチベーションの何%ほどがシンプルに科学をする喜びだったのでしょうか?
中村教授:97年、大学を卒業した私は以前勤めていた会社に入社しました。働き始めてすぐの時のモチベーションは、問題を解決することでした。私は問題を解決することが好きで、研究とは問題解決することです。ひとつ解決して、また次の問題へ取り組み、それを繰り返していく。
その10年後、フロリダ大学に一年間行きました。その時私は修士号しか持っていませんでした。一緒に研究した博士号の生徒たちに「君も博士号過程か?」と聞かれ「ノー」と応えました。「論文を発表したことがあるのか?」と聞かれ「ノー」と答えました。そこで彼らは私を学術界に生きる学者ではなく、技術者のように扱いました。博士号でないのであれば、技術者だろ、という風潮があったのです。
アメリカでは博士号がなければ科学者のサポート役で、貢献した研究の論文に名前も出ない、博士よりも給料も安い裏方で終わってしまいます。そこで博士号を取得することの重要さを学び、博士号を取ることが当時の私の目標となりました。そこでどんどん論文を発表して博士号を取ることが、私の研究へのモチベーションとなりました。
(了)
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