2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
リンクをコピー
記事をブックマーク
小泉純一郎氏(以下、小泉):あーあー、大丈夫かな?(笑)。これでいいか。ご紹介いただきました小泉です。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。 私はここに初めて来たと思ったんですが、今、写真を見たら、現役の総理のときに1回来てるんですね(笑)。
最近は過去のことをほとんど忘れてますけどね(笑)。ちょっと気にかかってるのは、最近、何を言おうとしてるかも忘れることがあるんですよ(笑)。
(会場笑)
今日は1時間といっても、ブライアンさんが通訳をしてくれますから、中身は30分のようですので、「トモダチ作戦」と、それから私が原発ゼロ運動をしていますから、その点についてできるだけ簡単にお話しして、あとは質問を受けたいと思っております。
私は、今日通訳していただくブライアンさん、奥様のエイミー(辻本)さん、お子息のジュリアンさんの3人のみなさんと、城南信金の吉原さんと一緒に、5月に4日間の予定でサンディエゴにうかがいました。
それは、エイミーさんから、この(「3.11」の)救援作戦で被害に遭った兵士たちがかなり出てきていて、それがあまり知られてないということを聞いたんですね。アメリカのメディアにおいても、日本のメディアにおいても知られてないと。
そこで、エイミーさん曰く、元総理の小泉さんがサンディエゴに行って、じかに被害者の兵士の方々と話しあえば、あるいは実情を聞けば、少しはメディアでも報道してくれるんじゃないかという話だったんです。
本当に「トモダチ作戦」で放射能による被害に遭った兵士がそんなに多くいるのかと。それはやっぱり人から聞くよりも、じかに聞いたほうがいいかなと思って、「行こうか」という話になったんです。
その話を聞いたのは3月のことでした。そこに城南信金の吉原さんも同席してたもんですから……。私は城南信金のシンクタンクの名誉所長を仰せつかっているんですね。
初代の所長が、私の慶應の時代の先生で、政府の税制調査会長をしていた経済学者の加藤寛先生でした。加藤寛先生というのは、名前を聞けば日本人は全部知ってますよ。有名な人だから。もう説明する必要ない(笑)。
私も総理時代、経済政策等でいろいろご指導いただいた先生です。その方が亡くなったあと、「小泉さん、2代目の名誉所長どうか?」という吉原さんの話で引き受けたんです。
その吉原さんが、ブライアンさんとエイミーさんを紹介して、この会談になったんですね。3月に初めてお会いしたんです。
それで「サンディエゴに行って、じかに兵士の話を聞いてくれ」って話のとき、ちょっと考えたんです。ところが、吉原さんがすぐ「ホテル代と飛行機代は私が出します」と言ってくれたんです。城南のシンクタンクの名誉所長をしていますけれども、給料は一切もらってないんですけど(笑)。
(会場笑)
そこまで熱心に言っていただくんだったら、やっぱり聞く必要があるなと思って行ったんですよ。5月に4日間ですね。10名の健康被害に遭った兵士のみなさんとお話をいたしました。だいたい20代〜30代の方ですね。
その方々が、トモダチ作戦で韓国に行く途中、日本政府からの要請で、(航空母艦の)「ロナルド・レーガン」が「すぐ東北沖へ行け」という司令を受けたと。
東北沖合で停泊して、ヘリコプターで被災した地域等に行ったり来たりしながら、救援活動に励んでくれたんです。
約1ヶ月間、そこに滞在しながらさまざまな救援活動に励んでくれて。その後、しばらく経ってから、体の調子がおかしいという状況だったようです。半年後、1年後、病院でお医者さんに診てもらったんだけども、原因不明と言われたと。
そのうち日が経つにつれて、鼻血が止まらない、下血が止まらない、そういう状況のようだったようです。それで「これは放射能の被害じゃないかな」とだんだん感じてきたようですよ。
3月にこの話を聞いたときに、ブライアンさん、エイミーさんが、あのレーガンで、その状況を映していたビデオがあったんですね。残ってるんですよ。ビデオも拝見しまして。
彼らは放射能が来てると知らないものですから、福島の原発でメルトダウンが起きたとき、海のほうへ風が吹いてたんですね。彼らは、まさか放射能が出てるとは知らないものですから、防護服を着ないで救援活動をしてたわけです。
帰って来たら、原子力空母ですから、当然ガイガーカウンターなり、放射能測定機能を載せてますよね。それが鳴り出してるわけですよ。「すぐ服を脱げ、シャワーを浴びろ」というような話も、ちゃんと音声も入ってるんですよね。
だから、東北地方の人よりも放射能の風、「放射能プルーム」って言うんですか? それが海に行ったもんですから、もろに放射能の汚染のなかにいるんじゃないかという状況を恐れてたわけですね。話に出てるわけですよ。「ことによると、俺たちは放射能のなかにいるんじゃないか」って。
「服を脱いでシャワー浴びろ」と言われても、今から考えると、シャワーを浴びるの海水ですから、海水の塩分を除くシャワーを浴びてたと。放射能の物質は除けないんですよね。
なおかつ、料理は海水を真水にして、淡水にして、海水を使って料理してるんですから、当然放射能の汚染された海水、塩分だけ取った真水ですけれども、放射能物質が残っている、汚染された汚染水によって料理してたわけですよね。それを食べてるわけですよ。
日が経つにつれて病気の症状は重くなる。しかし、「この病気は放射能の被害によるものとは断定できない」というのが、病院においても医者においても共通の言葉だったようです。
彼らとじかに会ってお話を聞いたんですが、彼らは海兵隊ですから。聞くところによると、海兵隊というのは一番厳しい訓練を要求される部隊のようですね。
だから、みんな頑健な兵士だったんですよ。20〜30代ですから。頑健で健康状態が良くなきゃ海兵隊員に採用されないわけですよね。
その頑健な兵士がもう軍隊の隊員としての活動も十分にできなくなった。日々体の症状が悪くなってるのはよくわかってる。そういう状況の話をじかにうかがいました。
私が行ったときは、もうすでに7名の方が病気でなくなったと。300人も病気で苦しんでいる兵士たちが出てきたと。そういう話で、サンディエゴに来てくれるという人は限られてたようですね。
さまざまな病状の方から聞こうと思ったんですけれども、最後もう1人来る予定の人は、病状が重くて来れないという人、その人は来ませんでしたけれども、だいたい症状の比較的軽い人が来てくれたようです。
女性兵士の1人で、妊娠しながらその救援活動をしていた女性がいたと聞いています。その方は、本人は見えませんでしたけれども、生まれたときは障がい児で、もうその子供は亡くなったと。本人も今病気で、除隊しているという話でした。
それぞれ若い兵士が、頑健な体にもかかわらず思いがけない放射能に汚染されて、病状に苦しんでいる姿。
会ってみてね……1つ驚いたことには、病気を抱えながらも、あきらめというか、なにか明るいんですよね。みんな暗くないんですよ。「仕方がない」と言って。
しかし、軍隊の隊員として、病気が重くなっていくと、ふだんの正常な活動ができない。体が思わしくないので自分から除隊した人もいるし、あるいは外から見てても、これはもう活動できないだろうと思えば除隊せざるをえない。そういう状況のようですね。
除隊すると、お医者さんにかかった場合、医療保険がきかないという人がいましたね。兵士のなかで、自分が除隊させられると。今までは軍隊にいた限り、軍の病院で面倒を見てくれた。しかし除隊しちゃうと、もう軍の病院と関係なくなって、民間の病院に自分で行かなきゃいけない。
どちらかというと、海兵隊員のみなさんは比較的裕福ではない家庭の方が多いと。アメリカは日本のように国民皆保険じゃないですから、医者にかかるだけで相当なお金がかかるようです。
あの頑健な兵士がね……こういう活動ができないで苦しんでる姿をどうしてもっと早く知らなかったのか、またあんまり新聞で報じられてないのはなんだろうかのかと、不思議に思いましたね。
ロナルド・レーガン空母にいる乗組員は5,000人ぐらいいるようです。そのほか、空母ですから、付随する艦隊も一緒に来てます。
あとで聞いたことによると、あのトモダチ作戦1〜2ヶ月の間に、米軍は日本政府の要請にもとづいて、海兵隊のみならず、海軍、陸軍、空軍、約2万人を超える兵士が、あのトモダチ作戦に参加して、救援活動に励んでくれたようです。
しかし、放射能があれほど漏れて、防護服を着ないまま活動をしていた兵士が、放射能被害によると思う病に苦しんでいるというのをじかに聞いて、「これはほっとけないな」と思ったんです。
兵士たちは淡々と話してましたね。「私は任務としてこういう活動をしている」と。「ヘリコプターに乗った」あるいは「ヘリコンプターを整備していた」とか、そういう任務について淡々と話してましたよ。しかし、これが病気になっちゃって、「仕方がないな」というわけですね。
私は行くとき、300人と聞いたのもビックリしたんです。病的に苦しんでる人が300人も出ているなと。
お見舞いに行くんだから、行く前に吉原さんと相談して、お見舞い金かなにがしか持っていかなきゃ悪いなと。お菓子とか持っていったってしょうがないだろうと思って、200〜300万円持っていけばいいかなと思ったんですよ。
「10人かそこらじゃないかな?」と思ったら、300人を超えてると聞いてね。これは200〜300万円だったら恥かいちゃうなと思って。じゃあ、手ぶらで聞こうと。なにも持っていかない。聞いただけです。
(会場笑)
ところが、行ったときは300人を超えた。4日間ですけど、帰るときは400人を超えたって話を聞いたんです。
それで話を聞いて、又聞きじゃなくて、じかに病気で苦しんでる兵士に聞いて、「お気の毒ですね」とか「かわいそうですね」と言って、それでおしまいにするわけにはいかないなと思ったんです。
今、兵士たちは裁判を起こしてますよね。兵士はいかなる被害に遭っても、アメリカ政府を訴えることはできないという制度なようですから、東電とGEとか会社を訴えているようです。それは日本で裁判するのか、アメリカで裁判するのかというのを今、争ってる最中のようです。
私は5月にサンディエゴに行く前に、外務省の北米局長担当を訪ねて、「こういう事態だけど知ってるか?」と聞きました。聞いてみると、事情は正確に把握していたようです。
「じゃあ、私たちはこれからサンディエゴに行って、じかに兵士に聞いて、また話をする」と言って行ったんです。そして、帰って来てからまた報告に行きましたよ。
北米局長は同情はしてくれましたけどね、「せっかくトモダチ作戦に救援して来た方々がこういう苦しい事情というのは、本当に残念だ、かわいそうだ」という話はしてましたけれども、「政府としてはこれはなにもできないんだ」という話でした。
そこで、政府の考え方もわかりますし、それからアメリカの上下両院も国防総省に「どうなってるのか?」と聞いてるんですよね。
アメリカは国防総省のその問いに対する返答は、だいたい東電やGEと言ってることが同じことでした。「これは放射能による健康被害とは断定できない」という結論です。
しかし、医者でない私が言うのもなんですけどね、断定できないにしても、頑健な兵士がこれほどの被害に浴びて、鼻血が出て、しかもレントゲンを撮ると、「内部に腫瘍ができてる」とか言われてる状況、これを見ればだいたい「あ、これは放射能による被害だ」というのはわかりますよ。常識で。
そこで、政府はなにもできないんだけれども、じかに聞いた私としては、なにか自分にできることをやらなきゃいかんと思ったから、「なにがしかの治療に役立ててくれるような基金を立ち上げて、わずかでも感謝の気持ちを表さなきゃいかんな」と思って、この「トモダチ作戦被害者支援基金」を立ち上げたんです。
私は政府の人間じゃありませんから、もう一民間人ですから、そんな資金もないし、できるだけ多くの国民にこの実情をわかってもらって、少しでも寄付してもらえればいいなと思って、7月5日にこの支援基金を立ち上げました。
200〜300万円じゃ笑われちゃいますからね、なんとか1億円を集めて、ミリオンダラーを集めて、それを今後の治療かなにかに役立ててもらえればなと思って、今、吉原さんとかと協力しながら募金活動を始めております。
それでも足りないことはわかってますけれども、感謝の気持ちだけでも、日本人が感謝してるんだと。帰ったときは、「トモダチ作戦ありがとう」日本国民が賞賛の声でしたね。
トモダチ作戦に参加してくれた米軍の兵士たちに、政府も賞賛の声をあげて「ありがとう、ありがとう」感謝の念を伝えてましたよ。
しかし、実際に実情を聞いて、「なにもしてない。これはまずいな」と思って、そのような基金を立ち上げたわけです。
政府でもないし、ダラダラ長く続けるわけにはいかない。ただ、気持ちだけでも少しかたちに示そうかなと思って、来年の3月31日までに1億円ぐらいを集めて、お見舞い金として渡そうかなと思って、今、その活動を進めています。
私の記者会見をテレビで見て、「感銘を受けた」と言っていち早く協力してくれた、ある有名な人がいます。それは建築家の安藤忠雄さんです。
安藤忠雄さんから連絡があって、「小泉さん、自分も協力するよ。1,000万円ぐらい寄付しようか?」と言うんですよ。「1人でそんな出せるのか?」と言ったら、安藤さん曰く「いや、俺が1人で出すんじゃないよ。1万円で1,000人集める。1万円の会費を取って、1,000人の講演会を開く。小泉さんが来てくれれば1,000人集めるから。1万円が1,000人だったら1,000万円じゃないか」と。「なるほどな」と。
「しかし、1万円のお金を出して、私の話を聞いてくれる人なんか1,000人もいないよ」と言ったら、「いやいや、俺は大阪で集めてみせる」と。
さる8月18日、大阪で「日本を考える会」で、小泉が講演をするというチラシを作って、会費・入場料は1万円。「これは全部、トモダチ作戦に寄付します」というチラシを作ってくれたんです。
だいたい券は1,000枚買ってくれる人がいたとして、まあ10〜20枚買ってくれる人もいるでしょうけど、実際に1,000人その会場に来てくれるのかと心配しましたけれども。実際の会場は、当日1,000人の椅子が足りないというんですよ。
椅子が足りないから300足した。1,300人……1,300万円集まっちゃったんです。たいしたもんだなと。「安藤さんみたいな人はいないだろう」と思ったら、最近、「安藤さんの話を聞いた。東京でやりたい」という人が出てきましたよ。なるほど。「そのチラシ、参考にしたいから教えてくれ」と。ありがたいなと思ってます。
今、だいたい4,000万円近くそういう基金が集まりましたから、なんとか来年までには1億円達成しようと思ってがんばってます。
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略