「別にヤフオクあるじゃん」を信念ではねのける
MEGUMI氏(以下、MEGUMI):「ないものを作っていく」というのは、ものすごくエネルギーも必要ですよね。あと、周りの人を説得していくということにくじける人が多いと思うのですね。
小泉文明氏(以下、小泉):ありますね(笑)。
MEGUMI:「なに言ってるの? そんなわけないじゃん」と、私がお店をやったときもこのサイトをやったときも言われたのですが。
新しいものをやるときのそのエネルギーというか考え方のようなものは、誰かがやっているからこそ大きなビジネスが生まれたり、新しいものが生まれるのだと思うのです。しかし、そこはかなり孤独というか、壁が厚いと思うのですが、そうしたときはどのようにくぐり抜けたのでしょうか?
小泉:僕らでいうと「別にヤフオクあるじゃん」と言われるのですよ、当時。
MEGUMI:そうですよね。
小泉:「別にヤフオクで売れるじゃん」と。ミクシィのときも「誰が日記書くの?」と言われました。だから、そうしたコメントはかなりあるわけですよ。
それはもう半分は信じるしかない。エゴでなんとか押し通せるというか、やり続けられるのです。
大企業との戦いは意外と難しくない
小泉:(事業の)相談に来る人たちが、よく「大手の企業に潰されたらどうするんですか?」と言います。やはり、怖さはあると思うんですよね。
実際のところ、フリマアプリはヤフーさん、LINEさん、サイバーエージェントさん、ミクシィさん、ZOZOTOWNさんとみんながやっているのですよ。みんながやっていて、みんなが撤退していっているのです。
MEGUMI:そうなんです。
小泉:楽天さんが買った会社、フリルというサービスが唯一今残っているような感じです。
意外と大企業と戦うときには、僕自身はそんなに難しく考えてないです。
大企業には2つ理由があって、1つは新規事業に大きな予算をかけられないんですよ。要は大企業の論理としては、成長している既存サービスにお金をぶっこんだほうがより成長するので、「新規事業にお金を使います」と言っても、実際はそんなに使わないのですよね。
MEGUMI:確かにそうですね。
小泉:プラス、そこにエースなんて入らないんですよ。結局エースは一番儲かっている事業にしか張らない。
そうすると、大企業の新規事業がどうして失敗するかというと、エースもお金も張らないからなのですよ。しかも上場していたら、急に「10億円使います」なんて絶対できませんから。
MEGUMI:じゃあ全力でやっていないというのが、感覚としてはあるわけですね。
小泉:全力かどうかはわかりませんが、こっちとしてはなんとなく一見強そうに見えるのですが、実はやりようがある感じです。
ですから僕らとしては、そういうのは別に入ってきてもいいのだけど、むしろベンチャーの……先ほどお話した楽天さんが買ったフリルという会社との戦いのほうがむしろシビアですね。
僕らは1年遅れてからこのマーケットに参入しているので、かなり後発なのですよ。だから、フリルさんをはじめ、まだどこか1社がみんなのマインドシェアをとっているサービスはなく、かつ大手もやっているという中でいうと、自分たちのことをある程度信じただけですね。
MEGUMI:全力で丁寧に、大手ができないぐらい細かいところでいろいろと気を配ったという感じですかね。
売り上げゼロから掴んだ「Winner Takes All」
小泉:インターネットサービスでよくあるのが、「Winner Takes All」という言葉です。「勝者がすべてを取る」という意味ですね。勝者総取りなどともいうのですが。
要は、ある1つのサービスに人、物、情報が集まれば集まるほど価値が上がる。ミクシィもそういう感じですね。こうしたサービスというのは、本当に1つのサービスが全部取っていっちゃうんですよ。2位以下はもう全員負けのように。
MEGUMI:そうですね。イメージとしてありますね。
小泉:イメージ、ありますよね。それがすごくインターネットっぽくて。みなさんが使っているサービス、全員が使っているサービスというのは、本当にそのWinner Takes Allのwinnerなサービスですね。ここになれるかどうかというのが極めて大事です。ですから僕らは、最初の1年半ぐらいは売上が0なんですよ(笑)。
MEGUMI:いやー、だから新しいことをやるときってそこが怖いんですよ。そうやって笑いながら言いますけどね。怖いですよね。
最終的には10億円を超えた赤字
小泉:一方でどんどんたまっていくと、どこかで自分たちだけが伸びるような、2次曲線のようなカーブに入っていくんですよね。
MEGUMI:急に?
小泉:急に。勝手に人や情報が回り始めるんです。最初は僕らが無理してトラクションを高めていかないといけないのですが、どこからか急に自走し始める。
でもそこまで僕ら、会社は10億円以上の赤字なんですよ。
MEGUMI:ええっ、怖すぎる!
小泉:1年強……そうですね。
MEGUMI:死んでもおかしくない金額ですよね(笑)。
(一同笑)
小泉:それは僕らが幸い投資家を説得できたので、投資してもらったお金で10億円以上赤字というのが許されていました。そこは最初、かなり胆力が必要というか、おっしゃるとおり怖いですよね。
MEGUMI:怖いですよね。
小泉:だから僕らも別に自分のお金でやっていないので、最後に投資家の方にごめんなさいと言えば、極論、殺されはしないだろうなというような。
MEGUMI:確かにそうですよね。
小泉:失敗してたらマグロ漁船とかはひょっとしたらね、わかりませんが(笑)。
MEGUMI:危ないかもしれない(笑)。
小泉:まあ一応常識的な人であれば、マグロ漁船もないだろうなと。そういう意味で、「もう1回やるときにちょっとバツ印ついたけど、まあ死にはしないだろう」という感じでやったというのはありますね。
MEGUMI:うわ、強いなあ。なるほどね。
一回数億円のテレビCMを打ち続けた理由
でも、やっぱり基本的になにかをやるときというのは、結果はすぐ出ないのですね。
小泉:そうですね。僕らは先ほど言ったように、売上が立つのがちょうど1年半頃です。それまではもう本当に赤字でしたね。
MEGUMI:でも、ひたすら仕掛けて「こうやっていくよ」など、いろんなキャンペーンをやってみたり。
小泉:最終的に僕らは手数料10パーセントで売上を取るモデルになるのですが、最初は手数料ももらっていないのですよ。
MEGUMI:ええっ?