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2024年ハーバード大学主席卒業スピーチ(全1記事)

不確実な時代だからこそ「知らないこと」を武器にする ハーバード主席卒業生の逆説的なメッセージ

南アジア移民の長女としてネブラスカの平原で育ち、ハーバード大学の2024年の主席卒業生となったShruthi Kumar (シュルティ・クマール)氏。COVID-19パンデミックから政治的対立まで、幾多の不確実性に直面した彼女が卒業式で語ったのは、私たちが慣れ親しんだ「知識の力」ではなく、逆説的な「知らないことの力」でした。彼女は「わからない」という状態を倫理的立場として捉え直し、そこから生まれる謙遜と共感、そして学ぶ姿勢こそが真の連帯を生み出すと訴えかけます。

ネブラスカからハーバードへ

Shruthi Kumar (シュルティ・クマール)氏:本日は、私たちの知識が称えられる日です。実際、人生の大半において私たちは、子ども時代の家を彩る賞や栄誉、表彰状といったものの中に達成感を見出してきました。どれだけ多くの知識を持ち、どう活用してきたか。それが私たちをここまで導いてくれたのです。

しかし本日は、2024年卒業生一同から学んだ、ある直感に反することについてみなさんを納得させたいと思います。「知らないこと」の力です。

私はネブラスカの広大な平原、牛の牧場やトウモロコシ畑に囲まれて育ちました。南アジア移民の長女として、私は家族の中で初めてアメリカの大学に進学しました。知らないことだらけでした。大学への出願時期になった時、両親にどうすればいいか尋ねましたが、両親も「わからない」と答えるしかありませんでした。

「わからない」という言葉は、まるで敗北を認めるかのように、私に無力感を与えました。答えがなく、進むべき道もないように感じていました。

ネブラスカからハーバードに来て、私はこの「わからない」という感覚を再定義することになりました。「知らないこと」の多さの中に、新たな力を見出したのです。科学史という学問分野が存在することすら知りませんでした。人生で初めて、有色人種の教授、科学史の教授に出会い、歴史とは、私たちが知っている物語と同じくらい、知らない物語についても目を向けるべきだと教わりました。

科学史においては、しばしば欠落しているもの、記録に残っていない資料、歴史に捉えられていない声を探し求めます。沈黙はめったに空虚ではなく、しばしば大きな声を上げていることを学びました。私はこれを、教室だけでなく、2024年卒業生一同からも学びました。

私たちの学年が直面した未知の出来事

ハーバードでの私たちの共通の時間を振り返ると、想像もしていなかったような、より大きな何かが不確実な瞬間から生まれてきたことに気づきます。私たちの学年は、未知の出来事を十分すぎるほど経験しました。1年目のCOVID-19の流行の間、私たちにはアネンバーグ※1のような、1時間に100人もの人に会い、5人の名前を覚えて帰るといった場所はありませんでした。

私たちは「新しい普通」を受け入れ、カフェが新しいアネンバーグとなり、友情において量より質を重視し、異なる方法で繋がりを築くことを学びました。2年目には、ロー対ウェイド判決※2が覆され、今もなお多くの地域でリプロダクティブ・ヘルスケアへのアクセスに不確実性が蔓延しています。3年目には、ハーバード大学は最高裁判所に直面し、アファーマティブ・アクション※3を覆す決定が下されました。

私たちが気づいているかどうかにかかわらず、私たちは未知の領域を泳ぎ続けてきました。そして、それは私たちの最終学年、非常に大きな不確実性に彩られた1年へとつながります。秋には、私や他の黒人、褐色人種の学生の名前とアイデンティティが、ハーバード大学で公然と標的にされました。有色人種の学生の多くが、将来の仕事、そして身の安全に不安を抱えることになりました。

この学期、私たちの言論の自由と連帯の表明は罰せられる対象となりました。卒業式への参加さえ不確実なままです。

「知らないこと」の倫理的価値

今日、みなさんの前に立つにあたり、私は仲間たちに思いを馳せなければなりません。今日、卒業できない2024年卒業生の13人の学部生たちに。学内における言論の自由と市民的不服従の権利に対する不寛容さに、私は深く失望しています。1500人以上の学生が嘆願書を提出し、500人近くの職員と教員が、前例のない制裁に反対の声を上げました。

アメリカ人として、そしてハーバードの卒業生として、私にとって学内で起こっていることは自由に関する問題です。これは市民権と民主主義の原則の擁護に関する問題です。学生たちは声を上げました。教員たちも声を上げました。ハーバード大学よ、私たちの声が聞こえますか?

私たちは今、ガザ地区での出来事※4を巡り、コミュニティ内で激しい対立と意見の相違の中にいます。私は学内で、苦痛、不安、そして動揺を目にします。しかし、まさにこのような時こそ、「知らないこと」の力が重要になるのです。

もしかしたら私たちは、民族的に標的にされることがどういうことかわからないかもしれません。暴力や死と直面することがどういうことかわからないかもしれません。しかし、連帯は、私たちが何を知っているかには依存しません。「知らないこと」は倫理的な立場だからです。それは共感、謙遜、そして学ぶ意欲のための空間を生み出します。

未知の世界へ踏み出す勇気

私は「わからない」ということを選びます。そうすることで、私は質問し、耳を傾ける力を得るのです。重要な学びは、特に不確実な瞬間に、すべての答えを知っていると決めつけずに会話に耳を傾ける時に起こると信じています。

私たちが知らない人々の中にある人間性を見出すことができるでしょうか?

私たちが同意しない人々の痛みを感じることができるでしょうか?

私たちが卒業するにあたり、私たちが知っていること、つまり物質的な知識は、もはやそれほど重要ではないかもしれません。真実は、私たちが知らないこと、そして私たちがどう向き合っていくかが、今後私たちを際立たせるということです。不確実さは不快なものです。しかし、私はみなさんに、不快の深淵に飛び込み、微妙な差異と向き合うことをお勧めします。

そして、初心の心、「知らないこと」の倫理観を持って進んでください。

エミリー・ディキンソン氏※5はこう言いました。「夜明けがいつ来るかわからないから、私はすべての扉を開ける」。ありがとうございました。そして、おめでとうございます。

※1 アネンバーグ:ハーバード大学の1年生用食堂。1874年に完成し、当初は「アラムナイホール」として知られていた。
※2 ロー対ウェイド判決:1973年に米国最高裁が下した妊娠中絶に関する画期的判決。妊娠初期の女性に中絶の権利があることを認めたが、2022年6月に覆された。
※3 アファーマティブ・アクション:少数派や弱者集団に対する過去の差別を是正するための積極的な措置。教育や雇用などの分野で機会均等を促進することを目的とする。
※4 ガザ地区での出来事:パレスチナ自治区の一部であるガザ地区で起こっている政治的、軍事的、人道的な状況。
※5 エミリー・ディキンソン:19世紀のアメリカを代表する女性詩人(1830-1886)。生前はほとんど無名だったが、死後に発見された約1,800編の詩により、アメリカ文学史上最も重要な詩人の一人として評価されている。

関連リンク:https://www.youtube.com/watch?v=1snjxJR_gLk

※本記事は、一部AIを使って翻訳しています。

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