CLOSE

孫正義氏講演(全2記事)

全知全能の最先端AI「Cristal」が企業の大脳となる ソフトバンク孫正義氏が語る、現代における「超知性」の可能性

2025年2月3日に行われた法人向け特別イベント「AIによる法人ビジネスの変革」で、OpenAIとソフトバンクグループ、Arm、ソフトバンク合同で、企業用最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」に関するパートナーシップについて発表しました。ソフトバンクグループ株式会社 会長・孫正義氏が冒頭の講演に登壇。大企業のビジネスに企業用最先端AI「Cristal」がどう貢献するかをプレゼンしました。

AIエージェントの次は「長期記憶」が鍵に

孫正義氏:2024年からAIエージェントが大切になるということを僕は言ってきました。そして2025年からAIエージェントがキーワードになるということを言ってまいりましたが、まさに今日、今からこの後サム(・アルトマン)がデモをしますから、ぜひ見ていただきたいと思います。

これから先、AIエージェントの次は長期記憶が鍵になります。実は、長期記憶についての基本特許を10年前に取っているんですね。僕が出したんです。さっきサムに言ったら「えっ」とか言って驚いてます。



もっと言うと、AIの専門家は、今一番中心に使っているこの強化学習というAIの基本の考えがあります。リーズニングをしていく。論理的な推論をしていくのに、強化学習がこのAIの世界、生成AIの世界の一番中心に今なってきているんですけれども。

この強化学習の一番の中心のロジックは報酬、リワードなんですね。英語でリワード、報酬を基にAIがその報酬をマキシマイズするために何回も何回も繰り返し強化学習をしていくと。

例えばイルカが芸をしたら報酬として魚をあげると。すごく上手に芸をしたら報酬をたくさんあげると。そのうちにイルカが芸を覚えるようになるわけですね。これが強化学習の基本的なものの考えなんですね。

これをAIの世界で、強化学習に報酬という体系をつけて特許に出したのは実は僕なんです。

しかも、ここに書いてますけども、リワードに基づく強化学習は10年前です。2015年3月17日に僕が出願して、なんと特許が下りてたんですね。僕、出したのは覚えてたんですけども「特許下りてたっけ? 確か俺だったよな」と。今日さっき、昼間に部下に「調べてみてほしい。俺が特許出したはずで、もしかしたら取れてんじゃないの」と言ったら、取れてたんです。

僕は知らなかったんですよ。出すのは出したんですけど、世界で初めて、この強化学習AIの今一番中心の生成AIの基本中の基本の発明ですが、実は発明者は私だったんです。発明者が私だったから、特許が下りてるんです。

出願を最初にした人に特許が下りるんです。つまり、正式に発明者は私だったんだと、自ら今日初めて確認して、さっきからうれしくてしょうがない。今日は一日楽しいなぁと。

全知全能のCristalが、企業の大脳となる

このリワードに基づく強化学習の基本特許を出願したのが、10年前の2015年3月17日ですね。さらに長期記憶の感情に基づく重み付け。この長期記憶の基本、一番基本特許になる、この部分も同じ2015年の6月17日。そして、長期記憶のインデックス化。これも、今度は翌年2016年5月13日。この3大基本特許の特許が下りてたんですね。

うれしいですよね。特許で、お金がどれだけもらえるかとかそういうことじゃなくて、自分が発明したものが人類初だったと。10年生きて、特許ですから。約10年経ちましたけど、これからの10年がAI、AGI、そしてASIにとって非常に重要になりますから。

すべての会議、すべてのネゴの過去の長期記憶を全部覚えて、その上で交渉に入る。会議の意思決定に使う。日本の我々が持ってる特許ですからね。考えてみたらおもしろいなと思います。

ですから、これはすべてのマーケティングや技術、財務、法務・人事、ありとあらゆるところのデータを全部一括して入れると。Cristalがそれを全知全能の、その企業の知恵として、大脳として、まさに包括的に請け負うようになるということであります。

大規模な複雑処理をCristalがすべて行う

これを世界で初めて日本から我々が、OpenAIとソフトバンクグループが一緒にやると。我々グループにはもうたくさん、何百社とあります。携帯のお客さんも何千万人いますし、我々のソフトバンクのグループでは4,000万人のお客さんがいます。PayPayも、7,000万人ぐらい今お客さんがいます。



またLINEも毎日、デイリーアクティブで9,000万人ぐらい活用しています。1日あたり10億本ぐらい、LINEのメッセージがアクティブに動いてます。

これに我々のエージェントが入って、全部グループをまたがって。今までヤフーとLINEが統合してIDをどうやって統合するんだとか、ものすごいお金かかって大変なんですね。

そのIDの統合の作業をプログラミングで人間がやろうとして、ものすごくコストも時間も手間もかかってたわけですが、もういらないと。いや、Cristalが全読みすると。Cristalが全読みして、IDの統合なんていちいちそんなシステムでめんどくさいことをしなくてもやってくれると。

人類の最先端の技術における「超知性」

グループの企業をまたがって、しかも営業や技術など異なった部署、人事の報酬体系も全部含めて、まとめて一発でこのグループ内でクロス・統合した大脳として、Cristalが全読みするということであります。

お金がかかります。大変なシステムになります。大変な頭脳になります。ソフトバンクグループが、OpenAIに対して、このCristalの開発とそして運用のための費用として年間4,500億円。ドルで言うと3ビリオンドルを払ってまいります。

ですからOpenAIは、よくいろんなニュースで、大変な設備投資してるけどもまだ赤字じゃないかと。大丈夫かと。儲かるのかと。回収できるのかという話がありますが、たった1社の契約で年間4,500億円入るんですよ。10社で4兆5,000億円ですよ。ソフトバンクグループのような会社は世界に少なくとも100社以上あります。



100社入れると、100社の100個のCristalができると、1個あたりいわゆる我々のグループのような規模の会社であれば年間3ビリオンドルですから。100社で300ビリオンドル。300ビリオンドルというと45兆円。その頃になりますと、システム費用などいろんなものを足しても十分に利益が出るようになると考えています。

まずその1社目のそれを実現する企業として、我々ソフトバンクグループが自らこのCristalを、我々のすべてのシステムや情報、データを統合したCristalを作るということであります。

ですから我々のグループにはZOZO、PayPayなどの会社もいっぱいあります。何百社あります。Armももちろんあります。そこにすべてCristalが、このインテリジェンスとして入れていくということであります。Cristalです。覚えといてくださいね。

この戦略的パートナーシップに調印しましたので、もう僕はうれしくてしょうがないです。今人類の最も関心のある最先端の技術で、しかも世界に類を見ない、完全統合の、データによる企業内のこの超知性。これを作りにいくんだということであります。

Cristalはその企業独自に特化してカスタマイズする

もうわくわくしてしょうがないですね。このCristal、今は光って見えてますが、この中にチップが入ってるわけじゃないです。これは我々のブランディングと……そして後々これを使った製品が出てきますけども、その製品にこのCristalのイメージが使われます。

ですから、このCristal自体がチップじゃないです。ごまかしで出したなとかそういうことじゃなくて、これは我々のその企業特有のものですね。

ですから、例えば今日で言うと、自動車会社のAさんとBさんがいます。その自動車会社のAさんの会社の中で得たデータ、得たインテリジェンスは、Bの会社のほうで再利用されるわけではありません。

ですから、自分のところでエンジンを開発した。Cristalに全部データを入れると、ライバル企業に自分のとこの会社で学習された知見、インテリジェンスがライバル会社に筒抜けになるんじゃないかと。再活用されるんじゃないかと。そんなことはありません。

あくまでもその企業に特化した、その企業にカスタマイズされたその企業のためだけのCristalになります。

ですから、みなさんが、これを何か心配して情報が漏れてしまうんじゃないかと。再学習されるんではないかということではありません。

したがってこれは、1社1社の企業に対して、カスタマイズしたファインチューニングを行います。学習を特化させますから提供側が導入するのに手間暇がかかるんですね。

また、みなさんの企業に一番適したエージェントをどう設定したらいいのか。ソースコードをどう読んでいったらいいのかという作業がありますので。

1,000人体制の専任部隊を作る

ジョイントベンチャーのSB OpenAI Japanは、この企業向けのインテグレーション、導入、販売をします。今年中に、ソフトバンクグループからセールスアンドエンジニアということで、この導入のための作業、システムインテグレーションに特化したかたちの1,000名体制の専任部隊を作ります。

もちろんOpenAI側からも、そのためのエンジニアが特化して入ってきますし、特化されたシステムのインフラが日本に作られます。

例えば日本の通信のデータの機密や規制があります。日本の携帯やLINEのお客さんのデータが、アメリカのデータセンターで使われるわけにはいきません。

基本的な開発はアメリカなんですが、そのトレーニングのファインチューニング、論理的な推論をするためのインフラは日本にあります。Stargateの延長として、Stargateジャパンのようなかたちで、日本にそのAIのためのデータセンターを拡張して作ると。その運用はOpenAIが中心になって行います。

もちろん、その設置は、我々ソフトバンクグループを挙げて、OpenAIと協力しながらStargateとして延長してやっていくかたちになります。

1業種1社からCristal提供を行う

また導入においては、エンジニアの数に限りがありますので、いきなり50社も100社も手が回りません。まずは1業種1社ぐらいから絞って始めるかたちになります。

今日はいろんな会社さんに来ていただいておりますので、もしぜひ我が社で検討したいということであれば、我々の開発陣容に限りがありますので、まずは1業種1社ぐらいから始めることになります。

ある程度ノウハウができたら別の会社に広げていきますが、その時には、その会社には先ほど言ったように知恵の再利用はされないと。学習されたものが漏れないという、その会社専用にカスタマイズしたCristalになります。A社専用、B社専用の別々のCristalになるということで、ご安心して取り組んでいただきたいと思います。

実際に興味があるという方は、この新会社SB OpenAI Japanにこれから担当がつきます。まずは、今井(康之)くんのほうによろしくお願いします。営業部隊の今井部隊がいますので、そちらのほうですぐにフォローアップをさせていただきたいと思います。ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 深津貴之氏が教える、企業のAI導入で“やってはいけないこと” AIと社員の連携に必要な視点

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!