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【コミュニティー×デザイン】新しい価値を生むCommunityのデザインとは_YOUTRUST(全1記事)

プロジェクト検証メンバーは事業責任者×デザイナーの2人だけ キャリアSNS「YOUTRUST」が少数精鋭で開発した理由

社会課題×デザインをテーマに社会課題に取り組んでいる企業が登壇する「ReDesigner Social Impact Day」。各登壇者は、Design Action・Creative Actionの重要性が叫ばれている中、自社が社会課題に対してデザインの力でどのようなアプローチを取っているのか、その中でデザイナーはどのような役割を担っているのかを話しました。ここで登壇したのは、株式会社YOUTRUSTの大前宏輔氏。「新しい価値を生むCommunityのデザインとは」の主題に対して、自身の考えを語りました。

自己紹介

大前宏輔氏:YOUTRUSTの大前と申します。まずは簡単に自己紹介をします。今はYOUTRUSTでCMO兼SNS事業の責任者をしています。私は新卒でサイバーエージェントに入社しました。在籍期間は約7年で、その間は主に広告・デジタルマーケティングの領域に幅広く従事していました。その後、株式会社メルペイが立ち上げるタイミングでマーケティングチームにジョインし、マーケティングマネージャーを経験したあとでYOUTRUSTにジョインしたという流れです。

かなり長い間マーケティングバックグラウンドで過ごしてきたので、こういったデザイナーの方が多く集うイベントで話す機会は非常に珍しい経験で、少し緊張しています。ただ、それ以上に今日を楽しみにしていたので、少しでもみなさんの為になる話ができればいいと思っています。よろしくお願いします。

YOUTRUST 「信頼でつながる日本のキャリアSNS」

そもそもYOUTRUSTとは。すでに登録していたり、ふだんから使っていたりする方もいるかもしれませんが、私たちYOUTRUSTは「信頼でつながる日本のキャリアSNS」を標榜しています。

2021年8月末、シリーズBの資金調達を実施した際に、代表の岩崎(岩崎由夏氏)とリードインベスターのパートナーでもある南場さん(南場智子氏)とのアイキャッチが話題になりましたが、その際メッセージとして出した「日本型キャリアを、ゲームチェンジする」を、会社としても大きく目指しています。

これから人口が減っていく中、戦える日本にどんどんしていくためには今の延長では厳しいのではないかと思っています。なんらかの変化点、モメンタムを作れる会社にしていこう、サービスにしていこう、という思いで今の事業を運営しています。プロダクトを展開する上でミッションとして「信頼される人が最良のキャリアを歩めるサービスを創る」を掲げており、それがチームの求心力にもなっていて、ユーザーにもすごく響いている部分ではないかなと思います。

個人がキャリアを作っていかなければならない時代のSNS

なぜそれをやっているのか、どういうアプローチでやっているのか。そもそも国民総転職スタンバイ時代には、機会を逃さない仕組みが求められているのではないかと思っています。みなさんの中にも、こんなことを感じた人がいるのではないでしょうか。

今すぐ会社を辞めたいわけではないけど、これからは1つの会社にずっといる時代ではないし、この会社にずっといるわけでもないんだよなと。そういう思いはあるけれど、今すぐに転職するわけではない。そうだからと言って、副業にチャレンジしようと思っても、どうやればいいのか、自分でやるべきなのか……。

個人がキャリアを作っていかなければならない時代、今まで悩まなくても良かったたくさんのことが、キャリアを作る悩みのポイントとして存在していると感じています。

そういったところを私たちがSNSで作っていく。要は、今までの仕事仲間とYOUTRUST上でつながることによって、これまでの信頼やその人との関係性が蓄積・可視化され、つながりを基に個人にキャリア機会が勝手に舞い込んでくる世界を作っていければいいなと思っています。

当然ながら、自分から機会を求めにいくこともできます。私たちがあえてここで「キャリア・オポチュニティ」という漠然としたワードで呼んでいるのは、先ほど話したように、転職だけではない、副業だけではない、数多のキャリアのいろいろな悩みに対して1つの機会になるようなものをユーザーに提供できるといいなと思っているからです。曖昧な時代に最適なのは、個人がつながるSNSというプロダクトのかたちではないかと思っています。

これを体現するために、例えばYOUTRUST上には紹介コメントのような機能があります。みなさんもぜひつながっている方に書いてみたり、書き合ったりしてみてください。こういった情報がその人の信頼性を作り、その人に良い機会が舞い込むツールになるのではないかと思います。

ユーザー数は2年で約20倍の増加、10万人以上が利用している

幅広い職種の方が、YOUTRUSTに登録しています。もともとデザイナーやエンジニア、プロダクトマネージャー、プロダクト開発ドメインにいる方の登録が多かったのですが、おかげさまでここ1年くらいで世の中にかなり認知を広げることができたため、それ以外の職種の方にも登録してもらえるようになりました。ユーザー数は、2年で約20倍に成長し、今は10万人以上が利用しています。

YOUTRUSTのプロダクトの特徴を簡単に紹介します。私たちはユーザーの投稿をサービス上で「脳内メモ」と定義しています。優秀なビジネスパーソンの脳内を覗き見られるので、非常に多くのユーザーから「これがいい」「YOUTRUSTで脳内を見るのはすごく学びになって楽しい」という評価をもらっています。

これらから、自身が悩んでいるポイントへの共感、あるいはそれに対するソリューションを発見してもらうことが、YOUTRUSTのプロダクトの使い方の1つ目です。2つ目は、自身のスキルや考え方を蓄積していく場所の1つとして使ってもらえるのではないかと思っています。

今、世の中にはいろいろなSNSが存在しています。今日一緒に登壇しているnoteさんも、私もよく使っていますが、考えを蓄積する場所として存在しています。それらと並行してYOUTRUSTを使ってもらう。

見られる人が限定されていることも、YOUTRUSTを使ってもらうメリットです。気軽に発信しづらいこともYOUTRUSTならラフに投稿できるという声ももらっています。

3つ目は、冒頭のキャリア機会に通じるプロダクトの特徴です。転職・副業の意欲を登録することができます。今は転職も副業もしない、現職でがんばりたいモードであれば意欲を低くして、逆に少し副業にチャレンジしてみたいとか、転職も中長期で考えてみたいと思ったら段階的に意欲を上げたり、その方にあったキャリア機会が舞い込んでくるような使い方もできるサービスです。

プロダクト外の活動の紹介

直近1年間のYOUTRUSTは、プロダクトの中の変化はもちろん、プロダクト外の活動が取り沙汰されることも多かったので、2例ほど紹介します。

資金調達の直後に、OOH(屋外広告)を展開しました。渋谷駅や六本木、品川などの東京都内の主要駅で展開し、大型の媒体の中にユーザーの実際の投稿を多数掲載しました。

合計約200名に出てもらったのですが、自分の投稿が広告に出ているということで、みなさんがソーシャルメディアで拡散してくれたり、これをきっかけに自分もYOUTRUSTに投稿してみようと、アクションを起こしてくれたり、実際の成果につながりました。ユーザー巻き込み型の施策として、いろいろなメディアに取り上げてもらいました。私たちはUGC(User Generated Contents)を使ったコミュニティー巻き込み施策を、マーケティングの側面でもかなり意識しながらやっています。

また、少し形の違うアプローチですが、2021年の秋頃にCHOOSEBASE SHIBUYAでのスペースタイアップで、ダジャレですが「ユートラウンジ」を展開しました。YOUTRUSTはSNSなので当然ながらオンラインが主軸ですが、一般的なWebサービスに比べると特に東京都内のスタートアップの方の利用が多いので、リアルな場所との相性がいいのではないかという仮説のもと、ユーザーが集まる場所を提供してみたいと思いました。

運営も足を運んで偶然ラウンジに来ているユーザーと話す機会ができる。ふだんのユーザーインタビューやソーシャルボイスでは聞けないような本音を聞けるのではないかと思って、やってみました。ユーザーへドリンク無料のキャンペーンも実施しました。非常にソーシャル上の反応も良く、たくさんのユーザーにYOUTRUSTという場所の延長として楽しんでもらえたのではないかと思っています。SNSの会社でありながら、リアルな場所を絡めていろいろ展開をすることが好きで、それが得意な会社だと自負しています。

自分なりに解釈した「新しい価値を生むCommunityのデザインとは」

今回は「新しい価値を生むCommunityのデザインとは」を主題としているので、このテーマに則した話をします。お題を見た時、率直に難しいと感じました。これを少し言い換えてみたり、自分なりに解釈してみたりすることから始めてみましたが、要は価値を生み出すコミュニティーをどうデザインするかというお題なのではないかと思いました。

価値を生み出すコミュニティーとは何かを考えてみたのですが、勝手に解釈すると、コミュニティーとはおそらく、そこで保たれているつながりとそのつながりに対して存在するアプリケーションとのかけ合わせでできているのではないか。それが価値を生む状態を、どう作っていくのかだと、解釈しています。

中学校で喩えるコミュニティーが価値を生んでいる状態

例えばコミュニティーが価値を生んでいる状態を、中学校に喩えてみます。公立中学校の場合、同じ地域に住む13歳から15歳くらいの子どもたちのつながりに、授業や部活、文化祭のようないろいろなアプリケーションを提供すると、それぞれが知識や達成感を得られたり、それぞれに協調性を育むという価値が生まれたりする。

逆にそのつながりだけでは、価値は生まれにくいので、そのつながりにどんなアプリケーションを提供すればどんな価値が生まれるのかをデザインしていくことが、私たちが考えなければいけないことであり、YOUTRUSTとして日々考えていくことでもあると解釈しています。

つまり同じつながりでも、組み合わせるアプリケーション次第で生み出す価値が変わるということです。先の例にしても、転職・副業意欲ならキャリア機会を得られるという価値が発生し、脳内メモをかけ合わせると自分の考えが整理できるという価値に変わる。それらアプリケーションデザインを日々考えています。

音声通話機能「ルーム」リリースに至った経緯

直近で取り組んだ施策について話します。スライドは2022年2月28日にリリースしたアプリケーション「ルーム」です。仕事の息抜きやちょっとした雑談として、友だちやYOUTRUSTでつながっている同僚と利用できる音声通話機能です。

特徴として、YOUTRUSTの友だち4人までと話せます。どちらかというと、Twitterのスペースのようなオープンな会話というより、クローズな会話を楽しめる場所として提供しています。なぜYOUTRUSTがこのタイミングでルームを出したのかと質問される機会が多いので、私自身の思考の整理も含めて話したいと思います。

そもそもなぜYOUTRUSTがこれを考えるに至ったのか。課題として、私たちが持つSNSを多くのユーザーに使ってもらう、かつそのキャリアは毎日なにかしらの変化が発生するものなので、できるだけ高い頻度で使ってもらいたいというのがありました。そう思った時に、YOUTRUSTに存在する、つながりを活用したキャリアに良い影響をもたらすようなアプリケーションを新たに生んでいく必要があるのではないかと考えました。

YOUTRUSTが持っているつながりは、同僚や元同僚、あるいは過去の取引先の方や仕事仲間とのつながりだと私たちは解釈しています。まだまだYOUTRUSTは、SNSとしての価値を発揮しきれていないと、自己批判的に考えたところ、0→1をもっと生んでいかなければいけないフェーズだと感じたので、こういった思考の起点に至りました。

事業責任者とデザイナーの2人で始まったプロジェクト

生み出したい価値は、漠然とした状態だったんです。生み出したい価値が明確なら、目指すべき方向が明確なので、チームを組成してこれを作るぞ、こういう価値を生むぞと一気に施策を走らせていくこともできると思いますが、私たちはキャリアになんらかのプラスを生みたいという、ぼんやりとした価値から始まったので、大人数を巻き込んでしまうとプロジェクト自体が路頭に迷うのではないかと感じました。

なので、まずはプロジェクトの参加メンバーをしっかり定数化する。具体的には、事業責任者である私と、フルタイムのデザイナー1名でプロジェクトを開始すると決めました。それによって生み出したい価値をどんどんシャープにすることができるのではないか。要はプロジェクト自体をスムーズに進めることができるのではないかと考えました。

価値を決める人と体験を決める人が揃っていれば、いち早く検証を進められるのではないかと思い、2人で議論していきました。私は事業責任者として、最後は責任を持って提供すべき価値を決める。デザイナーには、体験としてそれがきちんと成立しているか、どういう体験を提供すべきなのかを意思を持って決めてほしいという、そういう職務分掌を持って2人で進めていきました。

先ほど話したとおり、非常に曖昧なところから始まったプロジェクトだったので、まずはすごく粗い仮説から検証ループを繰り返して、解像度を上げました。具体的にはスライドのようなステップをグルグル回していきました。課題を発見して、意思決定する。それをもとにプロトタイピングして、検証して、また課題を発見する。いわゆる一般的な検証フローかと思いますが、人数を絞ってプロジェクトを小さく回したことで作業時間を短縮しました。

要は、タスクを切ってその納期を追うというより、課題を見つける・意思決定するという調整にかかる時間を削減しながら検証を回すことができたのは非常に良かったと思います。

粗い仮説を少しずつシャープにした結果、生まれたプロダクト

実際の変遷について。YOUTRUSTに存在するつながりには、どんな価値が必要なのかという問いから、自動販売機の前やタバコ部屋のような場所で生まれていた、偶発的でリラックスできる会話が最近ないという点において、こういった価値を提供できるのではないかと思いました。YOUTRUSTのユーザーにとってもつながりができるし、そこでしか話せない情報交換という価値を提供できるのではないかという観点からプロジェクトを開始しました。

初期の仮説はスライドのように粗いものでした。具体的な話をすると時間が足りないので、ステップだけ見ていきます。このような粗い仮説から、まずはプロトタイプを作ってみました。そのあとにユーザーにインタビューしたところ、「通話ができるのはおもしろそうだけど、誰も入ってくれなかったらどうしよう」という課題があることがわかったので、それを解決する仮説のアイデアが必要だと思いました。

例えば、BGMを聞きながら作業するようなものだったら通話の機会につながるのではないかという仮説にブラッシュアップして、そこからまた、BGMはいいけれどオープンな印象があるという課題が出てきたり。

クローズな演出をするために友だちだけ・少人数を強調するプロダクトのプロトタイプができないかと思い、テキストとアイコンスペースを配置して、またプロトタイプのインタビューをユーザーにしてみました。

そうすると、今度は入室ハードルを下げる工夫が必要だという課題が出てきて、再度できるだけ気兼ねなく入れるようなものを作らなければという仮説につながり、最終的にこのようなものをリリースするに至りました。

「どういう価値を生むとコミュニティーが活性化していくのか」を粗いところからシャープにしていき、このアプリケーションを使う方の課題や価値の解像度を上げるプロセスを経た結果、コミュニティーをデザインすることができたのではないかと感じています。

まさしく身近で起こった変化をヒントに愚直に向かい続けた結果、YOUTRUSTの新たなコミュニティーとなり得る新しいアプリケーションを生むことができた事例です。

コミュニティーはつかみどころのないものですが、多くの機能開発と同様に、価値を見つけに行くことからだんだんコミュニティーが活性化するようなアプリケーションとして具体性を持たせていく、解像度を上げていくプロセスが重要なのではないかと感じています。

さらに魅力的なコミュニティーをデザインするためには、まだまだやれるアプローチがあります。例えば、つながりの切り口を変えてみるとか、参加者の価値を他にも並べてみるとか、そういったことができるのではないかと思っています。

例えばつながりをひとまとめにするのではなく、もう少し小さいサイズにすることができればもっと違ったアプリケーションのデザインができそうだなとか、今はそんなことを考えています。

一緒に合意形成に関わりながらプロダクトを作るデザイナーを募集中

価値を生むコミュニティーをどうデザインしていくのか、という話をしました。YOUTRUSTは先ほど言ったとおり、そもそもサービス自体がコミュニティーです。その中にアプリケーションという小さなコミュニティーをもっと生んでいく動きを、まだまだ行っていきたいと思っています。

最後に宣伝です。デザイナーを積極的に採用しているので、YOUTRUSTに興味を持った、少し話を聞いてみたいという方は気軽に声をかけてもらえると非常にうれしいです。まだまだ小さなサイズの会社なので、事業責任者である私と一緒に合意形成に関わりながらたくさんの課題に着手できるのが魅力だと感じています。

以上でYOUTRUSTからの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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