2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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アメリカ・ニューヨークを拠点にする植物工場ベンチャーであるオイシイファーム(Oishi Farm)は、日本生まれの甘いイチゴを工場生産して高い注目を集めています。創業者CEOの古賀大貴氏と、オイシイファームの初期投資家の川田尚吾氏が、日本発メガベンチャーの可能性を語りました。200億円という大型の資金調達をしたオイシイファームの今後の可能性とは。
後藤直義氏(以下、後藤):川田さん、どうですか? 長らく「日本の新産業を作る」ということで、日本のテクノロジー企業のスタートアップのパイオニアとなる企業の1つ、ディー・エヌ・エーを創業してきた川田さんにとって、実際に今の古賀さんのお話は説得力があるのか。
川田尚吾氏(以下、川田):2つぐらいあって。まず1つが、こういう先端的な技術を持ってる会社を統合して、システムとしてすばらしいものを作ってくというのは、やはりオペレーションをやってる会社じゃないとできないんですよ。
例えば新幹線は当時の国鉄、今のJRという鉄道会社が作っていて。その下に、日立さん、川崎重工さん、日本車両さんとかいろんなパーツのメーカーがいるんですが、そういうのを全部インテグレーションして陣頭指揮をとって開発したのは、やはり国鉄なんですよね。
それと一緒で、植物工場というビジネスをオペレーターとして運営してるOishii Farmという会社がしっかりと陣頭指揮をとって、新しい技術を持ってる会社をインテグレートして作っていくというところは、非常に勝ち目がある。
例えば、LEDとかロボティクスをやっている会社それぞれについても、新幹線のような新しいプロジェクトをやることによって、本当に意味のある新しい技術の開発に非常にメリットがあるというのが、まず1点目。
2点目が、さっきから僕は機械工学出身だと言ってるんですが、ハードウェアと、いわゆるスタートアップ的なリスクマネーの掛け算って、実はあんまりなかったんですよ。ITの領域だとずっとあったんですが、その前のトヨタやホンダの時代って、なんだかんだ言って銀行の融資で回していたので、リスクマネー的なものはなくて。
本来だったらVCとかが出資して、リスクマネーで開発していくような新しい技術は、アメリカではベンチャーキャピタルが中心としてやってるのが、日本だと大企業の中での1ポートフォリオみたいな感じで、大企業の中でやってるというかたちで閉じてたんですよね。
それがようやく20世紀、21世紀になって、いわゆるリアルテックに対してリスクマネーがつくようになってるので、日本もここから非常におもしろいと思いますね。
後藤:古賀さん。リアルテックのお金を集める時に、「すばらしい、出したい」とビジョンをわかってくれた人たちと、「君は何を言ってんだ。ソフトだけやりなさい」ということを言った人たちもいると思うんですね。誰が一番賢く、Oishiiの価値をわかってくれましたか? それで、誰が一番わかってくれなかったのか。
古賀大貴氏(以下、古賀):「わかってくれなかったか」……(笑)?
(一同笑)
古賀:でも、わかってくれたのは、まずは間違いなく川田さんですよね。わかってくれなかった人でいくと、これは未だに根に持ってるんですが……(笑)。
UCバークレーというと、アントレプレナーをたくさん排出しているスタートアップのメッカみたいな場所なので、「起業する」と言ったらみんなが応援してくれるもんだと思ってたんですよ。
当時バークレーで一番有名な、アントレプレナーシップの授業を持ってる先生がいて。ちょっと名前は言わないですが、僕はその人にすごく憧れて、その人の授業をビッディングポイント全部かけてとりにいって。その人に「僕はもう起業すると決めた。こういうすばらしい戦略があるから、これでいくんだ」と言ったら、「絶対やめろ。絶対に失敗する」と。
川田:(笑)。
古賀:一番の理由は、当時はITとかSaaSで3年ぐらいで上場するようなビジネスモデルが描けてないところには、誰も出資なんかしないと。
当時、彼は「シリコンバレーは全員知り合いだから、僕のところに来たら誰でも紹介してやる」って授業で言っていたんですよ。だからそれを楽しみにして行ったんですが、1人も紹介してくれなかった(笑)。
後藤:なるほど(笑)。
古賀:「これは、紹介したところで誰も投資しないと俺はわかってるから紹介しない」と。だから、シードはしょうがなく自分で一生懸命やって。それでシードできて、なんとかちょっと売上が立ち始めたから、シリーズAの時にまた行ったんです。ただ、それでも「紹介しない」と。
後藤:今、そんな彼に一言言うなら何て言いたいですか?
古賀:何ですかね……(笑)。でも、たぶんそのうち「授業で話してくれ」って来ると思いますけどね(笑)。
後藤:いやあ、優等生的な回答ですね(笑)。
後藤:みなさんご存知の方もいると思うんですが、実は最近Oishiiが200億円ぐらいの大型の資金調達をしています。公開されていますが、NTTさんとか安川電機さん、ロボティクスの会社であったり、荏原製作所さんというポンプや水の会社とか、もちろんVCも入ってます。
いろんな実業の会社が入ってるんですが、僕の予想ではOishiiに出資した企業と、古賀が作りたい最強の植物工場みたいなものがたぶんあって。「NTTさんはこれをやってくれ」「あなたはこれやってくれ」「ものすごい空調でこんなものを作りたい」みたいなことを一緒に言ってると思うんですが、どんな話をしてるかちょっとだけ教えてほしいですね。
古賀:まだ発表できないものもあるんですが……(笑)。さっきお見せした農場で、けっこう大規模でできることがわかってきて、ビジネス的にも回るところが見えてきたんですよね。
ただ、さっき後藤さんがおっしゃったとおり、いつまでも高級イチゴでやっていてもそんなにマーケットはないので。これをもっと抜本的に、自動化をどんどん入れていって、1パック数百円でそこらへんのスーパーで買えるようなところまでもっていく。
「これとこれとこれをやれば、だいたいもっていける」というのは、もう完全に見えているんですよ。ただ、今までは全部自前でやってたんですが、例えば植物工場専用の空調を作るのはうちの会社ではできないですから、例えば(他の企業に)お願いしてやっていく。
今は、あくまでも世の中にあるものやありものを合わせて、その中でなんとかエコノミクスが回るようにやってきた。それを、技術を持ってる会社と実際に組んで、我々が理想とするものをゼロから商品を作ってもらうことによって、圧倒的にCAPEX(設備投資)も落ちるし、OPEX(運用維持費)も落ちるよう。
後藤:そんなに違うんですか。
古賀:もうぜんぜん違います。なので、ちょっと時間はかかるんですが、一緒にオープンイノベーションをやっていきたいなと思ってます。
後藤:川田さん、オープンイノベーションについて。毎月ミーティングされてる川田さんでしたらちらほら聞いてると思うんですが、ちょっとリーク的な話を(笑)。
川田:リーク的な話(笑)? いやいや……。でも、非常にドリーミーなやつをいろいろとやってますよ。最初に実験工場ができて見に行った時に、植物工場を見た瞬間に宇宙を感じたんですよね。いかにも『2001年宇宙の旅』に出てきそうなレベルの宇宙感を感じたんですよ。だから、現代におけるテクノロジーの圧倒的最先端にいるのがこの工場なので。
そこに対して新しいテクノロジーがどんどん入っていくというのは、今後も非常に楽しみです。中身は僕もあんまりタッチしてないので、あんまり言えないですが(笑)。
古賀:融資の後押しが。
川田:大変楽しみ。
後藤:今日のお客さんは言えないことを聞きに来てるわけなので、1つだけ簡単な質問なんですが、例えば空調ってダイキンさんとかいろんな会社がありますよね。
普通の業務用の空調とか、普通の農地でやる用のイチゴの種や汎用のポンプとかと、「植物工場だけのために作った空調」「植物工場だけのために作ったストロベリーの品種」って、具体的にどう違うものができたらすばらしいんですか?
古賀:品種を例にとって言うとけっこうわかりやすいと思います。今までのイチゴは、例えば「静岡県の気候の中で選抜したイチゴです」となると、静岡県の日照時間や雨の量の中で「これが一番良いです」と、良しとされて生き残った品種なんですよ。
ただ、植物工場って環境を自由自在に変えられるので、静岡県の日照量よりもっと多い日照量にしてあげたら、もしかするとイチゴのポテンシャルが(向上するかもしれない)。
それに耐えられて、もっとたくさん光合成できて、もっと大きく育って、もっと甘く、もっと収量が出る品種があってもおかしくないわけなんですよね。ただ、静岡県で選抜してるから、その品種は生き残らなかった。
それを我々植物工場で、きちんとイチゴの生態を理解したサイエンティストたちが「イチゴのポテンシャルはきっとこのへんにあるから、もっとガンガン日照量増やして、もっとガンガン水あげて……」という育て方をしたら、今まで日本の気候だったら育てられなかった突然変異的なDNAが発生するんじゃないかという仮説があって。
古賀:要は、植物工場できちんとイチゴを栽培できる技術がないと、そもそもその選抜自体ができないので。これをやると、世界で初めて「植物工場専用品種」というものが出てくる。
例えば、静岡県のグリーンハウスに入れたら大した収量が出ないんだけど、「うちの植物工場でやるから収量が2倍になります」みたいなことが確実にできるんですよ。なので、今はそういうことを少しずつ始めていて。
後藤:つまり、リアルな静岡や福岡や栃木ではその条件に制約されちゃうけど、人工的にイチゴを極限まで甘やかした環境で育てると、見たこともないイチゴができるかもしれないと。
古賀:そういうことですね。
後藤:「こがおとめ」みたいな。
古賀:……そうですね(笑)。
後藤:……すみません、ちょっとスベって。本当に申し訳ありません。
(一同笑)
後藤:スベったので次の質問にいきますね。
NYで「世界最大のイチゴの植物工場」を運営する、日本人起業家の野望 倒産続きの業界の中で生き残るための戦略とは
世界で戦うため、日本発の「イチゴ」で勝負をかけた理由 投資家も注目するスタートアップ「Oishi Farm」CEOの狙い
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