2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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アメリカ・ニューヨークを拠点にする植物工場ベンチャーであるオイシイファーム(Oishi Farm)は、日本生まれの甘いイチゴを工場生産して高い注目を集めています。創業者CEOの古賀大貴氏と、オイシイファームの初期投資家の川田尚吾氏が、日本発メガベンチャーの可能性を語りました。日本にしかない技術を活かして世界の市場に挑む、オイシイファームの今後の展望とは。
後藤直義氏(以下、後藤):今さら(話が)戻るんですが、「とは言っても売れてんのか?」と。
古賀さんは夢を語るのはうまい。実際に今、アメリカのスーパーマーケットの100店舗ちょっとで「Oishii Berry」は販売されている。本当にこれは売れているのか、みんな買っているのか、この価格で満足しているのか、ここをぜひ教えてください。
古賀大貴氏(以下、古賀):もともと我々が販売した時は、そもそも高級フルーツって市場がないところで勝負をしていたので、どれだけ売れるかもよくわからない中で、「いや高いよ」という根強いフィードバックは当然あります。
ただ、やはり味が圧倒的に違うので、1回食べると「私は毎日は買えないかもしれないけれども、少なくとも確かにこれが一番おいしいよね」というふうには絶対になるんですよ。なので、あとはどこまでコストを下げていけるかっていうところだけですね。
もし既存品と同じ価格まで落とせたら、品質に関しては圧倒的だという自信がありますし、それはもう実際に消費者からのフィードバックでもわかっているので。あとはどうやって価格を落としていって、どれだけこの5兆円のピラミッドの上から下まで速く進んでいけるか、ということかなと思います。
後藤:先ほどおっしゃいましたが、テスラはロードスターから出して、モデルSとモデル3、モデルYといろいろ出しています。確かに、モデル3を出すまでには十数年かかってるわけですよね。川田さんは投資家として日々、イチゴのモデル3を「古賀くん、何年までに出せい」と言ってらっしゃるかと思うんですが、ズバリ何年に出していただきたいわけですか?
川田尚吾氏(以下、川田):その話と、あとは「地域広げる」という、例えばシカゴやほかの地域で展開するということの掛け算だと思うんです。
後藤:「掛け算」ですか。
古賀:高級イチゴのままで、例えばドバイやシンガポールとかへ行けば、価格なんか落とさなくてもいくらでもマーケットは広がっていくということですよね。
川田:そうそう。
後藤:確かに、そりゃそうです。それも、どちらも答えてほしいですね。今、エリア的な広がりとしては、非常に人々が集まっていて消費欲も旺盛であるアメリカのニューヨークを中心に東海岸でやってますが、次にモデルSを売るんだったらどこですか?
古賀:西海岸とかはまだぜんぜん出られてないので、そっちも当然あります。今、ホールフーズで80店舗ぐらい出してるんですが、アメリカ国内だけでまだあと420店舗あるんですよね。なので、当然そこも埋めていかなきゃいけないですし。
あとは中東や東南アジアの都市圏は、「日本の農作物がおいしい」というのを知ってる消費者や、すでに教育が済んでる人たちがいるので、そういったところに投下していくのはぜんぜんありですね。
後藤:シンガポールですと、「ドンドンドン、ドンキ~♪」の有名なドン・キホーテが17店舗ぐらい展開していて、日本産のフルーツがバカ売れしてるんですね。例えばシンガポールはどうなんでしょう?
古賀:ぜんぜんありですよ。ただ人口がそんなに大きくないので、シンガポールを次のターゲットとしていくかというのは、ちょっとまた別の話です。
後藤:なるほど、シンガポールは却下と(笑)。
古賀:(笑)。
川田:そういう意味で言うと、マネジメントはけっこう難しいですよね。プライシングをどうするか、広げ方をどうするか、単に大量生産してモデル3まで落とすだけでいいのかとか。
古賀:ビジネスとしては上澄みをどんどん横展開していきつつ、研究開発はどんどん価格を下げていって、いつでも投入できる準備をしておくというのが基本的な考え方ですね。
後藤:廉価版。廉価であっても、めちゃ甘いんですか?
古賀:廉価であっても、当然ぜんぜん違う品種のものを作りますので。
川田:だって、さっきのは1パック10ドルでしょ。あれは前は50ドルだったから、そういう意味だと、もうすでにモデル3っちゃモデル3なので(笑)。
後藤:でも、もしめちゃくちゃ甘い1パック5ドルのOishiiと、すげえ酸っぱい1パック5ドルのストロベリーが並ぶとするじゃないですか。これはOishiiが売れますよね。ほかの人はどうなるんですか?
古賀:まあ、そこは僕に聞かれても困るところなんですが(笑)。
後藤:(笑)。
古賀:ある種、その時代にとって正しいやり方でやって、それで実際に品質が良くて価格も良いものになったら、時代の流れとしてどんどん少しずつリプレースされていくとは思います。
ただ日本で言うと、まだまだおいしいイチゴはたくさんありますし、そもそも農業人口がとんでもないスピードで減ってるんですよ。だから僕らが日本に参入して、植物工場をいっぱい建てるペースなんかよりも、もっとすごいスピードでイチゴ農家がいなくなっていくので。
後藤:なるほど。
古賀:むしろ、誰かの職を奪うという心配はあんまりしてなくて。今はアメリカでも労働者がぜんぜん足りないので、農業のコストがものすごいペースで上がっちゃってるんですよ。これで、もし僕らがよりおいしくて安いものを提供できるんだったら、消費者にとっては完全にWinしかないと思いますね。
後藤:暫定でいいので、この価格のモデル3が出るのがだいたいいつ頃かだけ教えてください。
古賀:我々がプロダクトとしてマーケットに出すかどうかは別として、我々の社内でコストを落としてくという意味では、モデル3は間違いなく10年はかからないです。
後藤:では、2030年とか、2035年とか、それぐらいのレンジでくる。
古賀:そうですね。5年とか。
後藤:みなさん、ここはテストに出ます。「イチゴのモデル3が出るのは〇〇である」と。
古賀:言っちゃったけど大丈夫かな(笑)。
後藤:(笑)。わかりました、忘れてください。テストには出ません(笑)。
後藤:そんなビジョナリーなお二人に、最後のクエスチョンにいきます。Oishiiというブランドは別にイチゴに限りませんよね。「このメロン、おいしい」とか「このじゃがいも、おいしい」とか。僕なんて、本当にOishiiブランドの代理店をやらせていただきたいぐらいですが、未来のOishiiについて言える話をちょっと紹介いただきたいですね。
古賀:結局、僕らが最初からやろうとしてることって、農業のあり方をよりサステナブルなかたちで、この時代に合ったやり方に刷新していくことがゴールなので。最終的には、今スーパーで売られてるようなものの大半を植物工場でやっていきたいなと思っています。
なので、そのためにまずはイチゴ、トマト、メロンとかで始めていく。「野菜や果物といえばOishii Farm」というブランドを作った上で、もうすでにできているようなレタスとかをどんどん投入していく。
今までスーパーに行った時、ブランドの棚って生鮮コーナーにはなかったんですよね。トマトのコーナー、レタスのコーナー、ブロッコリーのコーナーみたいなかたちだったと思います。
これをもうちょっと意識を高くというか、食通の人がスーパーに行ったらまず「Oishii Farm」という棚があって、「ちょっと高いかもしれないけど、ここに行けば一番安心・安全でおいしいものが揃ってる」というところまで。これは数十年かかる話ですが、それを日本の技術や日本の種苗でできたらうれしいなと思います。
後藤:ものすごくおもしろいですね。この「メロン」っていうのは?
古賀:これは研究開発で出来上がったメロンで、まだ商業化はしてないんですが、もうメロンも作れます。
後藤:作れる。
古賀:作れます。糖度17~18とか、千疋屋さんで1玉1万円で売られてるようなメロンを作ろうと思えば作れる。
川田:え、じゃあ早く作ろうよこれ(笑)。
古賀:いや、そうなんですが(笑)。投資家さんからいただいたお金で、イチゴは作れば作るだけ売れることがわかってる中で、メロンに今はどれだけお金を投資するのか? っていう。そういういろいろトレードオフがあるので、なかなか。お金が無限にあればいくらでもできるんですが。
後藤:まずはイチゴに全力を挙げると。
古賀:そうですね。Oishiiブランドを作っていくということですね。
後藤:ちなみに先ほどの200億円の話、リリースには「次世代工場にも注力している」というふうに書かれてたんですが、先ほど映像で見せていただいたのは現在の工場ですよね?
古賀:はい、そうです。
後藤:次世代工場ってどんなものなんですか?
古賀:これはまだ発表してないので、細かいことは言えないんですが(笑)。さっきの工場のさらに何十倍の大きさの規模になっていまして、かつソーラー発電を活用して、よりクリーンなエネルギーでやっていくというコンセプトです。とにかくデカくて、とにかくサステナブルだというものを、近々発表できるかなと思います。
後藤:楽しみですね。川田さん、最後に投資家として、今後Oishiiに期待したいことを一言いただいてもいいですか?
川田:日本発で海外でスタートアップというのが、なかなかITの領域だとストラグルしてるような状況もあったんです。ただ、ようやく日本のリスクマネーで、世界に本質的に打って出れるものが出てきたなというのがすごく強く思ってるところで、僕は非常に楽しみにしていますね。
なんだかんだいって「スタートアップ=IT」みたいな感じだったんですが、そうじゃないと。リアルこそ、日本が外へ打って出れるチャンスがある領域なんだということを、古賀さんに証明してもらいたいというのは、インベスターとしても非常に強く思ってるところですね。
古賀:がんばります。
後藤:古賀さん。私が聞きたいわけじゃなくて、ここに来た方々が聞きたい質問だと思うんですが、Oishiiは「イチゴや植物工場の最先端ですごい企業を作る」と。でも、古賀さんはやらないけど、「これをやったらほかにもすごい会社を作れるのにな」というアイデアを、古賀さんみたいなビジョナリーは持ってると思うんですよね。
川田:(笑)。
後藤:それを僕がやってもいいでしょうか? みたいな。もしOishii Farmで見えた世界で戦うやり方とか、「僕はやらないけど、ああいうやり方やこういうやり方があったらおもしろいんじゃないか」みたいに、見えてるものがあったらぜひ。
古賀:「これ」っていう具体的なものではないんですが。僕らが今、なんとかここまで生き長らえてる理由は、日本にしかない技術をうまく使っていること。だけど通常だったら、それを日本のマーケットでやろうと思っちゃうんですよ。そうじゃなくて、もっと競争環境が良い海外でやろうというプレースメントを我々はしたわけです。
この原理に基づいて考えると、日本が独自で強いのは食領域もそうですし、発酵技術とか水産業、コンテンツなんかもそうですよね。世界的に見て(日本は)何が強いのかというのは、もう機械的に洗い出していけるはずなんですよ。それを今度は、プレースメントするマーケットがどこか、全世界で見た時にどこが一番正しいのかをきちんと見る。
特に今はサステナビリティという文脈があるので、日本の知られざる研究者が趣味でひたすら研究してたものが、サステナビリティという分脈になった瞬間に、ものすごいバリューが出ることがあるので。そういった文脈で考えると、けっこうあるかなと思います。
後藤:ありがとうございます。今日来たみなさんにはこれを持ち帰っていただいて、Oishiiに続くような企業やアイデアをみなさんの会社でも作っていただけたら、もっと日本が盛り上がるのかなと思います。古賀さん、川田さん、ありがとうございました。
川田・古賀:ありがとうございました。
(会場拍手)
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