2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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砂流恵介氏(以下、砂流):純粋ですよね、そういう意味では。いろんなことを考えるじゃないですか。僕もそうですけど、「PV取らなきゃ」とか、「こういうタイトルを付けたらいけるんじゃないか」とか。いろんなことを考えながら、もちろんそれが正しいと思ってやってることだし、メディアによってはそれが大事だと思うんですけど。
もう、そういう世界観ではないところで、そもそもメディアとしてのマネタイズではなく、商品を売られているということも含めて。朴訥と、純粋に、紹介したいという、自分の気持ちをきれいに書くということを形成されている、ということですよね。
青木耕平氏(以下、青木):そうですね。
砂流:ほかとはぜんぜん違う。メディアとも違いますし、ほかの事業者とも違うと思うんですけど。
青木:あとは、我々がそういうふうにやれることの背景をきちんと説明しないとアンフェアかなと思うんです。我々がそういうふうにやれることの理由は、少ないPVでメディアのビジネスが成り立つからなんです。ウェブメディアを想像してもらうと、雑誌だったら例えば20代女性向けといってもセンスとかスタイルごとにいろんな雑誌があるじゃないですか。
砂流:めちゃくちゃありますね。
青木:だけどWebのことを考えてもらうと、20代女性向け、ママ向け、デモグラフィックな基準でセグメントした「マス媒体」みたいなものしかネットの商業メディアにはない、ということがなんとなく想像ができると思うんですよね。
砂流:これ、想像できますか? 大丈夫ですかね? ほんのちょっとだけ言っていいですか?
青木:どうぞ。どうぞ。
砂流:例えば、『ESSE』とか『CLASSY.』とかなんでもいいんですけど。雑誌って、セグメントを絞って、その人たちに合う言葉を使っていいんですよね。『CLASSY.』だったら、「着瘦せのために服でどう見せるか」とかを、雑誌を読んでいる人は500数十円とか、600円、800円を出して買って読んでいるので、専門性のある言葉でわかるんですけど。
ネットだと「こいつ何言ってんの」ってなっちゃうんですよ。ぜんぜんわからない。なので、もっと広い言葉を使わないといけないという意味で、けっこうマスになるんですよね。
青木:なぜそういうものしかないかというと、1PVあたりの広告の単価が大きくないので。そもそもさっきの話は、読者を一部排除してスタイルとか価値観のある人を集めるというやり方なので、それだと規模的にビジネスが成り立たないんですね。一般的に運用系の広告であれば、1PV0.1円から、よくても0.5円という感じ。
砂流:広く取らなきゃって思います。
青木:そうですね。でも、我々の場合は売上じゃなくて、限界利益という、1個の売上が立つと発生する粗利益みたいなものです。限界利益と、広告の0.1円、0.5円と比べると、だいたい1PV4円くらいあるんです。物販でマネタイズしているから。
そうすると、さっきの話の40倍くらいあるということですよね。PVは40分の1でビジネスと同じくらい成り立つということなので、さほどPVの伸びを意識しなくても体験価値を高めていくことに集中することができたということです。それは、マネタイズ方法が広告ではなくて物販だったからそれができてきたということです。
(客席に)広告のお仕事の方もたくさんいらっしゃるのでおわかりのように、広告というのは間接販売です。小売は直接販売です。直接販売のほうが仕事が多いのでマージンは大きくなります。だけど、物を売るためのコンテンツを作るというところは変わらないんですよね。
その分、直接販売まで面倒を見ることによってマージンが大きくなるので、1PVあたりの収益性が高い。逆に言うと「多くのPVはビジネスを成り立たせるために必要がなかった」ということが、それをできた理由なので。
すべてのメディアさんに対してそれがいいですよということではなくて、あくまでも我々の特殊事例において成り立つ状況だったということを説明しないといけない。
砂流:なんなんですかね? メディアでもありますし、なんて紹介するのがいいんですかね? ネットショップなのかECサイトなのかメディアなのか、今、言葉が……。
青木:相手によってという感じですね。どういうふうに利用していただいているか。最初に僕らがメディア化と言い始めた理由は、ファッション雑誌みたいなものとファッションECって一体何が違うんだろうということに疑問があったからなんです。
ファッション雑誌もECも写真とテキストでほとんど商品の情報がパッケージされているものじゃないですか。本質的なコンテンツの構成要素としては、ファッション雑誌もファッションECも変わらなくて、ファッション雑誌はおもしろくなることを優先的に編集している。
ECはたぶん売れやすくなるということを主に重視しているメディアだということだと、僕らは“売れやすいところ”から“おもしろいところ”に軸足をずらしているということでしか違いはないと思っているんです。なので、「メディア」と言ってくださっても結構ですし、「EC」と言っていただいても本質的には変わらないと思っているんです。
ここも本屋さんですけれども、売れている雑誌の大半は商品情報ばかり載っているものじゃないですか。例えば車、ファッション、アウトドア、インテリアの雑誌、これはほとんど物の情報が載っているということですよね。
砂流:そうですね。
青木:カートボタンが付いていて買えれば、それはECだし、ということを考えると、雑誌あるいはメディアとECは何が違うのかなと思っています。
僕らとしては買える雑誌みたいなものを作ろうと言っていますけど、お客様がお店だと認識していただいてもそれは問題ないです。むしろそう思っていただきたいですし、お店だと思って使っているんだけど無意識にメディアのように利用していた、となってくれれば僕らとしてはいちばんうれしいです。
砂流:そうですよね。何年も見ていて「やっとほしいものがあった」という方はメディアとしても見ていますし、お店としてやっと購入ができてうれしいという。
青木:その人たちの頭のなかではお店だと思っているんですよね。なので、僕らの現場のすべてのオペレーションの責任を持っている共同創業者の佐藤という僕の妹、彼女の呼称を「店長」としているんですよ。
僕らみたいにメディアっぽいことをやるとなると、例えば「編集長に変えない?」とか、「チームリーダーにしない?」という誘惑があるんですよ。かっこいい感じがするので(笑)。だけど、「絶対にやめろ」と。お店という帽子をかぶってメディアをやっているということが非常にいいことなので。これはメディアがECをくっつけてもなかなかうまくいかないんです。
ファーストインプレッションでお店だと思ってもらっているからこそ、そこで物が買ってもらえる。なぜかというと人はオーソリティから物を買いたいんです。僕らが『なんとかマガジン』と書いて、責任者が編集長となった途端に物は売れなくなると思っています。
だから、僕らは「北欧、暮らしの道具店」というお店としての屋号とトップが「店長」という建て付けを絶対に変えない。
砂流:そうですね。物は売れるかもしれないけど、そこから買うかどうかはぜんぜん別な話ですよね。別に量販店で買ってもいいしという話の1つになるか、ここというお店のなかで扱っているものかといったら、またぜんぜん違いますね。
青木:それはやらないことかもしれないですね。
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