2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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ジャパンハート主催のイベントに、同団体の創設者である小児科医の𠮷岡秀人氏と、横浜創英中学・高等学校 元校長の工藤勇一氏が登壇。医療と教育、それぞれの業界で活躍してきた両氏が、「イノベーションが生まれる当事者の作り方」をテーマに対談しました。本記事では、世界でも最低レベルで当事者意識が低い日本人が、これからの社会を良くしていくためのヒントを語ります。
𠮷岡秀人氏(以下、𠮷岡):僕も工藤先生も、やっていたことは、既存のフレームを変えるとか、既存のフレームにとらわれないとか、既存のフレームを変化させるとか、そこから出るという行為だと思います。工藤先生の子どもたちに対する話を聞いていて僕が感じたのは、フレームの破壊ですね。でも、教師たちががっちりフレームの中にいるんです。
例えばマスクをしてないとみんな怒るでしょう。それと同じで、「察しなさい」という人たちが世の中に溢れている中で、「いや、マスクをしなくてもスプレーしたらいいんでしょ」って思えるフレームの外し方をできるかどうかだと思いますね。日本人たちは今からこれをやったほうがいいです。
僕はずっと東南アジアにいるんですが、日本人に比べて東南アジアの人は真面目じゃないですし、働かない人が多いです。男の人がだらだら生きてるし。だけど、もう抜かれます。タイにはほぼ抜かれてるし、びっくりしますよ。
それから貧富の差で言うと、たくさん子どもたちが貧困の国のカンボジアの人たちが、ある意味日本人たちより豊かなんですよ。だって、もう向こうの日本食のレストランで高級なところは(お客さんが)みんなカンボジア人で、日本人たちは安いところへ行ってるんです。日本人たちがみんなで「日本に帰ったら日本食を食べよう」と言い合ってる。
そのぐらい経済格差も逆転現象が起こりつつあって。だから日本人たちは、もうそろそろフレームを外すとか、フレームを変えるとか、フレームにこだわらないということをやったほうがいいんじゃないかな? というのが僕の感想です。
工藤勇一氏(以下、工藤):最初の問いに関わってくるんですが、今日もスライドを1枚だけ出します。いつも出すやつだから、たぶん僕の話を(ふだんから)聞いてくれている人は「あぁ、これか」と思いますが、これです。
日本の今までの急激な人口の増減が出ているんですが、明治維新の時には3,000万人ぐらいしかいなかったのが、130年間人口が増え続けて1億3,000万人ぐらいになった。平均すると、毎年70万人ぐらい増えてるんですね。
ピークは2004年、平成16年です。人口が減ってきたのはその前から感じてると思うんですが、今から30年前まで遡ると、どんな地方に行っても人だらけだったじゃないですか。ついこの間の30年前まで人だらけで、繁華街もものすごく賑やかで、どこも活気に溢れてた時代ですよね。だけど、あっという間に変わるわけですよ。
毎年、人口が今80万人減っています。地方は閑散としていて物が売れないです。人がいないから買う人がいないですもんね。そんな時代に変わったわけでしょ。日本は130年間、勘違いしていた国なんですよ。もしかすると、今のベトナムやインドとかはそんな雰囲気なんですよね。
𠮷岡:そうですね。
工藤:人がどんどん増えて、貧しい人がどんどん豊かになっている時代だから、貧しい人たちに目が行く社会ではきっとない。ほっといてもみんなが豊かになっていく時代ですね。我々はそれをずっと経験したから、この教育が正しいと思っていた。
でも今、急激に人口が減ってきているので、今までのルールではお金儲けができなくなるわけですよね。人がいないんだから、安売り競争にはまってしまったら会社の賃金も上がらない。
工藤:事実、この間「バブルの時代の株価に戻った」と言ってますが、この34年間でアメリカの株価は14倍なんですよね。世界の株価はどんどん上がっているのに、日本は34年前に戻っただけですからね。それだけの話です。だから日本だけ止まっているわけですよ。
人口が減っていくんだから、やらなきゃいけないことは、デジタル化も含めてどうやって生産性を上げていくのかということです。新たな仕事を生み出して、高い価値を付けてモノを売っていく創造性が必要なのに、言われたことしかできない、自分で物事を考えない子どもたちを育てているんですよ。
(18歳を対象にした調査で、日本は)世界で最低の当事者意識。どうにもならないぐらい当事者意識のない子どもたちを育てているけど、これは実際は大人の姿ですよね。
我々大人がいつも要求して、「政府が悪いね」「政治が悪い」「もっとちゃんとしたリーダーが出てこいよ」と文句ばっかり言って、みんなが当事者意識を失って、自分たちで何かを生み出すことができない国民になっちゃったからですよね。
その原因はどこにあるかと言うと、明治維新から130年間続いている、「一斉に同じことをさせる」という教育です。一例に挙げるのが不登校の問題です。(実は世界には)日本と韓国ぐらいしか不登校はいないんですよ。不登校という概念すらない。
世界では不登校が問題にならないんです。アメリカは義務教育があるけど就学義務がないのでホームスクーリングができますよね。だから、不登校で悩む子どもはそもそもいないんですよ。
行政は何をチェックするかというと、学習の進捗状況を測ったり、「標準テストを受けてください」という縛りがあったり。または地域、社会、コミュニティとつながりがあるか、ボランティアをやっているかとかをチェックします。ヨーロッパへ行ったら学び方はいくらでも得られるし、不登校という概念そのものがないわけです。
工藤:日本は「一斉」の教え方に合わない子どもは不登校状態になって、それを学校に適応させようと言っているんだから、とんちんかんな話なんですよ。日本と韓国がなぜ似ているかというと、たぶん教育システムがそっくりだからですね。
𠮷岡:そうなんですね。
工藤:子どもが中心の教育システムに合ってない。じゃあヨーロッパはどうなのかと言ったら、40年ぐらい前に転換を始めて改善したんです。日本はようやく今、人口が急激に減ってきて、国がおかしくなっていることにみんなが気がついた。「どうもこのままじゃダメじゃん」と思い始めて、経済の構造改革や政治の構造改革を始めた。
だって、人口が増加している時代はどんどん税収が増えていったから、金は使い放題ですよね。どんな福祉サービスをするかにお金をさんざん使えた時代でしたが、今は税収がどんどん減っているんだから、使い方を変えなきゃいけないですよね。
「将来どうするんだ?」ということを国民みんなで議論して、一番上の目標で一回握手して、「痛みを覚悟しようぜ」って国民に訴えなきゃいけないじゃないですか。話し合って上位のところで握手できる人間が育っていないわけだから、「思いやりを持とう」とか、心の教育をやっているんです。
僕はあんまり外国語は得意じゃないんですが、外国の話を聞けば心の教育なんてないんじゃないですかね。だって、心って自由でいいでしょう? そもそも育てられないんですよ。「人の心を育てよう」なんておこがましい話なんです。それを前面にうたっている日本の学校教育って、おそらくちょっと異常なんだと思います。
工藤:心じゃなくて、問題を解決する方法を教えなきゃいけない。心が豊かになったり、優しくならなかったら平和が来ないというんだったら、地球には平和が来ないじゃないですか。心がそうじゃなくても握手できる方法を教えるのが、ヨーロッパで言ったら市民教育というやつです。
それを教えていかなきゃいけないのに、日本は相変わらず教室で「思いやりの心を持とうよ」ということを盛んに言っている、ある種変な教育なんだと思います。「フレームを壊す」という意味であえて言っていますが、やはり僕らは本質を考えてないんだと思いますね。
司会者:ありがとうございます。「フレームを壊す」という言葉は、本質を見つめられるかどうかということかなと理解をしています。
自ら考えて本質にたどり着き、そして改善を考えていく時の「自分で考える力」みたいなものは、お二人の場合はどのようなフェーズで(身につけられたんでしょうか)。工藤先生のお言葉を借りると、「自立する自分」になったタイミングやきっかけはあったんでしょうか。
工藤:やはり出会いですね。僕が𠮷岡さんのことを知ったのは……10年以上前なのか。
𠮷岡:10何年前ですね。
工藤:テレビで拝見して、「ああ、こんな人がいるんだ」って。まさか今日みたいな対談が来るなんて思ってなくて、僕の憧れのような人ですね。
𠮷岡:いえいえ、とんでもない。
工藤:その時はまだ医療機器もあまりなく、テレビでは子どもが亡くなっていくCMもありましたし、「イチから周りを巻き込んで人々を変えていくんだ。すごい人がいるもんだな」と思ったんですね。そのテレビだってそうですが、いろんな情報や出会いで自分の創造力は変わってきます。
工藤:ふと今思い出したことで、だいぶ古い時代で20年以上前だと思うんですが、人工透析ってそれなりの技術が必要なんですか?
𠮷岡:そうですね。お金がかかるんですよ。
工藤:当時は土日しか働いている人はなかなかできないということで、夜だけといっても技士がいないと難しいとか言っていたのかな。ある病院が、その時間だけ雇うことはできないから、トータルで技士を雇うことができるようにする仕組みを作ったって、テレビでやっていたんですよ。それを見て、「なるほど」と思いました。
何でもそうなんですが、壁があった時って三方良しじゃないと難しい。例えばボランティアだってお金がなければできないし。じゃあボランティアでお金さえもらっておいてやればいいのかといったらそうじゃなくて、みんなが活かされる仕組みを作らないと継続できないし、回らないじゃないですか。
𠮷岡:そうですね。
工藤:その病院の話を聞いて、僕は部活でそれができないかなと思ったんです。結局はできなかったんですが、目黒の教育委員会に行った時に教育長に提案して。
目黒の役所に2,000人か3,000人の役所の人間たちがいて、クラブチームを作ってみんなで部活をやっていたりしたんですよ。その人たちに僕が「学校の部活とかやってくれないかな?」と聞いたら、「やりたいけど責任もあるし。仕事だったらやるけど」と言ったんです。
それで僕は教育長に「もともとスポーツが好きな人たちってたくさんいるから、例えばこの人たちの勤務時間をずらして、役所の仕事が終わってから、仕事として部活をできないですか?」と言って。結局ポシャったんですけどね。でも、そういうみんなが活かされるような仕組みがすごく大事だなと思うようになりました。
だから「創造」ってこんな調子ですよ。何かをちょっと見て思い浮かんだら、誰かに「やれるかな?」と話してみて、かたちを作るにはどうしたらいいのか、また情報を集めて何かをする。この繰り返しです。
𠮷岡:そうですね。
𠮷岡:やっぱり違和感はあるんですよ。例えば僕は医者になって海外へ行きましたが、若い医者たちが行こうとすると「決死の覚悟で行け」「結婚もできないよ。帰ってきたら就職先はないよ」とか言われたわけです。
でも、ある日空港を見たら、フィリピン人のカップルがバックパックを背負って旅行していたり、ベトナム人のカップルだとか、韓国人のおばちゃんたちとかがいたんです。最初は日本人のビジネスマンぐらいしか(現地の空港に)いなかったんですよ。
だけどだんだんそうなってきて、「あれ? バックパックを背負って現地の人たちがうろうろしているこの時代に、決死の覚悟で東南アジアで医療活動をやる必要はあるのか? ないでしょ」と思い出したんです。じゃあ、この時代に合った仕組みを作ればいいと思いました。
変な話、ボランティアに来る人たちなんて、僕らが雇ったらめっちゃお金がかかるじゃないですか。でも、ふだん日本で病院で働いていてくれて、技術も上がっている人たちが1年に1週間自分でお金を払って来てくれたら、70人いれば50週全部が埋まるでしょう。
そんな感じで何百人と集めたら、医療技術が高い人たちがどんどん入れ代わり立ち代わりやってきて、現地の人たちを助けていけるじゃないかと思い始めたんですね。
この違和感は、さっき言ったようにフレームといえばフレームなんですが、現場での「これはちょっともうおかしくない?」「もう時代に合ってないじゃない」「おかしいじゃない」という思い込みですね。
𠮷岡:コロナ前の2019年は、日本から海外に医療者が短期で700人から800人来ましたよ。実はその時代に合ったものを提示すれば、それが後押ししてディマンドになる。さっき工藤先生が言われたように、行く人たちは自分で自腹を切って行くので、(本人は)お金は損しているじゃないですか。でも、彼らは満足するんですね。
ジャパンハートはリスクがあるわけです。彼らはみんなが医療技術が高いわけじゃないし、治療しないといけないから、ソーシャルの責任を取らないといけないじゃないですか。それはそうなんだけど、勝手にお金を出して(医療者が)来てくれて、現地の人は助かる。
現地の人たちも同じで、それぞれが何かリスクは背負うんですが、みんな得している。ボランティアで行った人たちは、自分でお金を20万円も払って、飛行機代も全部出して、保険も出して行っているのに、「得している、満足である」と思っているんですね。
みんながそれなりに得して、それなりに許せる範囲の損をしている仕組みができれば、事は確実に進みやすいし、横広がりに大きくなっていくなというのは感じています。
工藤:ましてや今の日本って、国もなかなかお金がないじゃないですか。社会保障費がどんどん膨らんでいくわけだから、この中でどうやってみんながオッケーな仕組みを作るかというのは、国に任せてできるわけじゃないと思うんですよね。
𠮷岡:そうですね。
工藤:むしろ民間がやっていることで、法律を変えて規制を外していくという方法を取らないといけなくて。そういうアイデアを次から次へと民間で出さなきゃいけないんだと思います。「人をくれよ」と言ったって、人手不足だからいないし、お金はないわけだから、要求だけしたってできるわけないですよね。
司会者:ありがとうございます。
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