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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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三浦崇宏氏(以下、三浦):500年前にブランディングとサービス化の大成功事例を作った人がいます。僕は、その人が日本最初のクリエイティブディレクターだと思っています。なんとなく誰だかわかりますか? イメージしてみてください。500年前の、日本初のクリエイティブディレクターです。ブランディングとサービス化の成功事例を作った人。
この人ですね。千利休です。みなさん名前は知っていますし、なんとなく「茶道を作った人」というイメージがあると思います。彼のやったことは、まず「詫び寂び」という概念を発明したこと。
今日オンラインも含めると600人くらいの方が視聴していて、僕より茶道に詳しい方もいると思うんですけど。詫び寂びという概念に関して、すごくざっくりと言います。ちょっとズレていたり、違ったとしても、その解釈についてはまた別の話としてください。
豊臣秀吉とか織田信長がいた安土桃山時代は、それまで金箔の貼られた豪華絢爛なものが美しいとされていました。それに対して、利休は「質素で落ち着いたもの、時間の流れを感じるものこそ美しい」と再定義しました。
美しさの定義はコロコロ変わります。例えば10年前と今では、女性のメイクやちょっとした雰囲気が変わりました。あるいは今だと、男性がメイクすることが普通になっていたり、「美しいの概念」は変わります。
しかしながら、千利休は500年前に「美しいの定義」をそれまでとはまったく違うものに作り直して、それが今でも続いているんです。
(スライドの写真は)千利休が作ったお茶碗で、今でも国宝として納められているものです。
原価は土なので、10円、20円ですよね。これ、今いくらぐらいだと思いますか? 500年前に千利休が「これが美しい」「これが詫び寂びの1つの象徴である」として作ったお茶碗がどれくらいの金額か。イメージしてみてください。
イメージできましたか? オンラインの方もいるので、会場の方だけで当てるのも良くないので、答えを出しちゃいますね。12億円です。彼が作った土の塊。そこに彼が詫び寂びという価値を乗せてブランディングしたものが、今でも12億円という価値で取引されています。このように我々は詫び寂びこそが、日本最初のブランディングの大成功事例だと考えています。
あるいは茶道。これもやっている方もいらっしゃると思うんですけれども。お茶って、言ったらただの飲み物じゃないですか。でもそこにはマナーがある。お茶を点てる技術がある。そしてお茶の師匠と弟子、一般の会員のようなヒエラルキーがある。そういった技術・マナー・ヒエラルキーを作ることによって、彼はお茶を単なる飲み物から文化的体験、あるいは技術体系にまで進化させました。
もしかしたら講義を受けている方の中にも、茶道のお稽古をされている方がいらっしゃるかもしれません。今でも日本では、136万4,000人の方が茶道のお稽古をしています。当然、毎月のお月謝も払っています。すごい経済効果ですよね。
「茶道は『お茶』という飲み物のサービス化の成功事例だ」と捉えると、これがいかにすごいかわかると思います。
このブランディングにもサービス化にも、クリエイティブの力が必要不可欠なんですね。クリエイティブというのは、デザインのことじゃないんです。これ、けっこうみなさん勘違いしている。
「かっこいいデザインを作ること」「素敵なコピーを書くこと」「良い映像を作ること」。それらは全部技術でしかないんです。「それらを可能にする根本的な力のこと」をクリエイティブといいます。
もうちょっと厳密に言うと、クリエイティブとは「想像し、創造する力」だと我々は定義しています。
1つ目の「想像」は、他者の感情を想像することです。「こういうことをしたら喜んでくれるかな?」「こういうことをしたら嫌だろうな」「こういうことをしたらハッピーになれるかな」「こういうことをしたら悲しんでしまうかな」……顧客、大衆、ユーザー、あるいは自分の大切な誰か。
他者の感情をどうやったら動かせるか。どうしたら他者がハッピーな気持ちになるのか。どうしたら他者が自分の提案を飲んでくれるか。このように、他者の感情を「想像」した上で、そのモノや事業の新しい可能性を「創造」する力。イマジネーションした上でクリエーションすること。我々はこれをクリエイティブと呼んでいます。
他者の感情を想像し、新しい可能性を創造すること。これをイメージするだけだったら、マーケターの仕事ですよね。「なんかこういうことをやったら、お客さんが喜ぶと思うんですよね」で終わり。
あるいは、自分の好きなモノ、作りたいモノを創造するだけだったら、それはアーティストの仕事です。「これ素敵だよね」「まあ、そうかもしれませんね」でいい。
だが我々はあくまで顧客、ユーザー、大衆、あるいは自分の目の前の家族・パートナー・友人・社員、そういう大切な誰かのことを想像して、それをクリエイションする。他者の感情への想像があった上で、新しい可能性を創造する。これがあるからこそ、我々クリエイターは顧客や社会の課題を解決することができるんです。
今日ここにいるみなさんは、デザイナー、コピーライター、フィルムクリエイター、動画クリエイターじゃない方のほうが多いと思います。でも、そういったあなたがた一人ひとり、ビジネスパーソン一人ひとりにも、「他者の感情を想像して、自分の会社やブランドや事業の可能性を創造していくこと」がめちゃくちゃ大事ということ。これをなんとなく理解してもらえると思います。
世界的なクリエイティビティの発現の成功事例をお話ししましょう。例えばAppleのPC、Appleのスマートフォンよりも速いものはたくさんあります。もっと賢いAIもたくさんあります。
でも、彼らは速いことより、「プロダクトが美しいこと」「プロダクトが素敵であること」を優先しました。その結果、彼らは今世界で最も時価総額の高い企業になっています。
あるいはトヨタ自動車。彼らは自動車を売って、売って、売り尽くした先に、新たに「移動しやすい都市を創ろう」と考えました。
あるいはユニクロ。ユニクロは世界中に服を売っています。そして服を売ると同時に、彼らはニューヨークの近代美術館「MoMA」にスポンサードしているんですね。毎週、ある曜日は誰もがタダで入れるようになっている。
それによって、ニューヨークの人々は「自分たちを応援してくれている」「自分たちにとってすばらしいことを届けてくれる、すばらしいブランド」と、ユニクロのことを理解しました。
Appleの「美しいプロダクトを創る考え方」、トヨタの「車を売った先に、都市を創ろうという考え方」、ユニクロの「服を売るだけではなく、アートを民主化することによって世界から受け入れられようとする考え方」。
これらは全部コンサルティングからは出てきません。他者の感情、ユーザーの感情、大衆の感情を想像したことで生まれる新しいビジネスです。
理論だけでは出てこない、ある種「顧客の感情を考えることによって、新しい可能性を生み出すような創造的なプロジェクトを作ること」。これをクリエイティビティだと考えています。
デザインやコピーライティング、動画を作ることだけではないんです。自分のビジネスや社会の「新しいあり方」を考える力になっている。こういうことを発信する力、こういうことを考える力を、我々はクリエイティビティと呼びたい。
コンサルタントでは絶対に考えが至らない、非連続なのにリアル、儲かるのにワクワクする。こういうものを考えるのが、我々人間が持っているクリエイティビティという力です。
資本主義経済の限界を迎えた今、日本経済をこれからどうやって良くしていくのか。そのためには「ブランディングによる値上げ」と「サービス化によるLTV(Life Time Value)の向上」。
つまり1人のお客さんにリピートしてもらうこと。何度も何度もそのブランドや会社にお金を払ってもらうこと。これが必要不可欠です。このどちらにも、顧客の感情を想像して、新しい可能性を創造するクリエイティブの力が必要不可欠であるということです。
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