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社会現象のつくり方~ビジネスブレイクスルーをもたらすクリエイティブの力とは~(全5記事)

大ヒットの原点は「その人だけ泣いてくれたらいいと思った」 大切な1人にしっかり刺さるものを考えることの重要性

MBA(経営学修士)に特化した専門職大学院「グロービス経営大学院」主催の「社会現象のつくり方」をテーマとするセミナーに、『超クリエイティブ』『言語化力』の著者で、The Breakthrough Company GO代表の三浦崇宏氏が登壇。プロレスラーの言葉の力や、インプットの質を高めるコツなどが語られました。

『言語化力』の著者に聞く、言葉の磨き方

田久保善彦氏(以下、田久保):三浦さん、ありがとうございました。

三浦崇宏氏(以下、三浦):ありがとうございました。

田久保:コロナという嫌な流行り病が始まってから、リアルでこうやって人を集めてやるのは3回目です。1回目ははやぶさ2のプロジェクトの津田さん、2回目はアーティストの小松さん、今日、3回目は三浦さんということで。

三浦:ありがとうございます。光栄です。

田久保:とても熱量高いお話を聞いて、みなさんもいろいろ勉強になったのではないかなと思います。Zoomの向こうでもたくさんの方に聞いていただいていると思います。もはや捌ききれないぐらい質問が来ているんですけど、2つほど私から三浦さんにご質問させていただいて、あとはみなさんの質問をいっぱい拾いたいと思います。

三浦:うれしいですね。

田久保:まず、私からのお薦めです、みなさんこの本を買って読みましょう。

三浦:ぜひよろしくお願いします。

田久保『超クリエイティブ』という本ですね。でも僕が本当に好きなのは、実は『言語化力』のほうです。

三浦:『言語化力』のほうは、青春小説みたいなところがありますからね。

田久保:まあね。ただ、「コピーじゃない」「動画じゃない」「何じゃない」と言いながらも、やはり言葉が人間の感情を揺さぶり、言葉によって僕らは何かを感じ……というところ、ものすごく大きいかなと思います。

私からの1つ目の質問ですが、三浦さんはどうやって言葉力を磨いていますか。僕は、三浦さんはクリエイティブディレクターの側面もあると思うんですけれども、やはり言葉のプロフェッショナルだと思うんですよ。

そういう意味での言葉の磨き方。みなさん、これは本当に悩まれているし、どうトレーニングしたらいいか、何か1つ2つヒントをいただけたらなと思っております、いかがでしょう。

三浦:言葉の力は『言語化力』という本を僕も書いていて、言葉が持つ可能性に対して、僕はすごく信頼を持っていますね。

例えば、それこそコップの水を飲んだ時に、「もう半分しかない」と思ったらネガティブになるし、「まだ半分もある」と言えばポジティブになる。言葉1つで世界の捉え方は変わる。

プロレスラーの言葉の力

どうやって言葉の力を磨いているのかという質問についてですが、世の中の本当に優れている人は、だいたい言葉がすごいんですよ。

みなさんで言えば経営者だったり、起業家、投資家とか、あるいは会社の先輩とかもいると思うんですけど、僕の場合は最初はプロレスラーでした。僕、小学校5年生の時に、もう亡くなってしまいましたけど、アントニオ猪木を見て、プロレスにめちゃくちゃハマりました。プロレスラーってめちゃめちゃ言葉の力が強いんですよ。

例えば猪木さんの言葉で言ったら、「スキャンダルは追い風だ」と言うんですよね。彼が奥さんと、当時女優の方とお付き合いしている時に、大きい大会の前にフライデーされて、「このスキャンダルどうですか」と言われて、「スキャンダルは追い風だ」と彼は言った。結果的に大会のチケットは、すごく売れたんですね。

ネガティブな状況をポジティブに変えるとか、すごくシンプルなことだったりとか。あるいはみなさんも名前だけは知っている長州力さんというプロレスラーもいて、彼、活舌が悪くて何を言っているかまったくわからないんですけど、言っていることはものすごく言葉の力があるんですよ。

例えば彼は、新日本プロレスという団体に所属していたんですけど、いろいろあってそこを辞めたんですね。辞めてまた帰ってきたんですよ。帰ってきた時、乱入してリングのど真ん中に立った。

その時のチャンピオンが永田という選手で「お前、何してんだ。ふざけんな」と止めに来た時に、長州力が「□●×△~」と何言っているかわからないんですけど、言った。字幕とか慣れている人間にはわかるんですけど、彼は「リングのど真ん中に立てなかった奴が、今さらノコノコ出てくるんじゃねぇよ」と言ったんですね。

これ、「ど真ん中」とはどういう意味かというと、彼が乱入してきてリングのど真ん中に立っているということは、「そこに来るまでお前、誰も俺のことを止められなかったろ」と言っているんです。「警備が手薄いぞ」と言っているんです。

それプラス、「業界のど真ん中、リーダーに彼(永田)はなれなかったでしょ。俺のほうが有名で人気あるでしょ」と、警備の手薄さと皮肉を両方言っているわけですね。

こんな感じで僕の場合はプロレスから学びました。そのあと、ラップとか漫画と小説もすごく好きですけれども、そういったものを見る中で学んできました。

インプットの質を高めるコツ

三浦:これは僕がたまたまプロレスとラップと漫画と小説から学んだだけで、そうじゃなくてもいいと思うんですよ。

例えば、アスリート。イチローの言葉はものすごく豊かです。あるいは本当は誰でもいいんですよね。政治家の方でもいいです。起業家の方でもいいです。事を成した人は圧倒的な言葉の力があります。孫さんは誰が見たって言葉の力がすごいんですけど。

例えば、グロービスの堀さん。「堀さんの言葉、俺はあまりわからないんだよな。堀さんのことは尊敬しているんだけど、彼の言葉はあまり響かないんだよな」と思ったら、それはみなさんが感受性が弱いからだと思います。長州力の「ど真ん中に立ってねぇじゃねーか」は、たぶん悪口じゃないですか。でもちゃんと聞き取るとすごく深い意味があるんだなとわかるわけですね。

自分が尊敬する人。自分がいる業界のロールモデルになっている人。自分がこのような成果を出したいと思っている人の言葉をつぶさに追って、それにどういう意味があるのか。どういう意味がかけられているのか。どういう意味が複数あるのか。そういったところを分析していくと自然と身に付いてくるのかなと思います。

田久保:このあとの質問と今のお話が僕の頭の中ですごくリンクしました。やはり根本的に、興味を深く、強く持つことがすべての第一歩で、猪木さんの言葉でも長州力さんの言葉でも何でもいいと思うんですけど、まず深く興味を持ってちゃんと考えてみる。捉えてみる。

受け流してしまうと、そこから得られる学びはまったくないと思うんですけど、そこがポイントということですかね。

三浦:おっしゃるとおりです。これ僕、社員とかによく言うんですけど、あらゆる情報の価値は、発信者ではなくて受け手に委ねられているんですよね。例えば、僕が水を飲む。これはただの情報でどうでもいいことじゃないですか。でも本気で何かを学ぼうと思ったら、「このタイミングで水を飲むことによって、聴衆の心をコントロールしているんだな」みたいな、深読みもできるわけですよ。

というくらい、自分が何から、どれくらい受け取ろうと思っているかという心構えによって、その後の能力とか成長具合はガラッと変わります。今日僕の話を40分聞いた中でも、ただなんとなく聞いている人と、絶対に三浦を超えてやろうとか、あるいは逆に、来月三浦に発注してやろうとか。

そういう具体的な何かを持って聞いている人では、圧倒的にインプットの質が違っているはずです。そういう聞くだけのセンサー。受け取るためのセンサーを自分の中に持っているかが、ものすごく重要だと思いますね。

創造のカギは、自分にとって一番大切な他人の想像

田久保:私の2つ目の質問です。今日の三浦さんからいただいたお話の中で、私が一番大事だなと思ったのは、「他者の感情を想像する。その感情を動かすものをクリエーションする」という話があったと思うんですけれども。みんなが困っているのは、やはり「わからない」ことだと思うんですよね。

Z世代がわからん、α世代がわからん、誰がわからん、彼がわからん、結局顧客がわからん。何をやっているのかわからん、みたいな状態になっていると思うんです。

顧客の感情を想像する中で、三浦さんがどうそれをひもといているのか。もしくはGOという組織の中で、何を大事に顧客の感情をひもとこうとされているのか。この辺りを教えていただければと思います。

三浦:ビジネスで感情を想像する時に、3つキーになるものがあって、1つは自分にとって一番大切な他人です。例えばパートナー。あるいは親友。あるいは子ども。誰でもいいです。

自分が本当に大切にしている誰かのことをめちゃくちゃ想像して、その人がどうしたら買ってくれるか。その人がどうしたらこの企画を楽しいと思ってくれるか。どうしたらその人が幸せになってくれるか。これを考えるといいと思います。

Z世代と言ったらわからないですよね。でも、たぶん姪っ子とかいますよね。お子さんでもいいです。自分の知っている誰か。欲を言えば自分の好きな誰かのことを想像して、その人が買ってくれるものであれば、だいたいうまくいきます。

僕の師匠の鈴木おさむさんという方がいて、放送作家で、僕はこの人にけっこう企画を教わってきました。彼は10年くらい前に『ONE PIECE FILM Z』という、めっちゃ強いおじいちゃんの海兵とルフィたちが戦う『ONE PIECE』の映画の脚本を書いたんですね。

今はもう超えられてしまったんですけど、その年のその時点までの日本のアニメ映画の最高ヒットになったんです。それを鈴木おさむさんに「すごいですね」と言ったら、「こんなにヒットすると思わなかったよ」と言ったんですよね。

「何でですか?」と聞いたら、「これ、すごくシンプルで、俺のお世話になっているフジテレビの誰々さんがこの間辞めてしまって、その人のために作った映画なんだよね。その人だけ泣いてくれたらいいと思った」と言ったんですね。

1人にしっかり刺さるものを作ることの重要性

三浦:日本中に会社を辞めて次のキャリアを探している、若い奴に負けたくないと思っている方が、たくさんいたわけですよね。『ONE PIECE』なんてお子さんは自動的に見る。それプラス、日本中の仕事を辞めて「次どうしようかな」と思っている、50代くらいの大人の人たちの気持ちをめちゃくちゃ動かした。

つまり、特別な人なんていないんですよ。自分のような人、自分の彼女のような人、自分の妻のような人、自分の旦那のような人、自分の子どものような人は1人に見えて日本中にたくさんいるんです。1人にしっかり刺さるものを作れば、必ず一定のマーケットに届くということです。これが1つ。

2つ目は、自分の欲望を捨てないことです。自分が「何か嫌いだな」とか、「理論上はこうなんだよな。でもなんか俺、これは気に食わないんだよな」と思ったら、その自分の感情を絶対に無視してはいけない。これ、すごく大事です。

3つ目。社会です。他人、自分、3つ目に社会があります。できるだけマクロで見たほうがいいです。Yahoo!トップのニュースをバーっと見るとか、新聞をバーっと見るとか、今の社会の気運はこっちなんだなとか。

例えば僕だったら、今誰が人気かで世の中の空気をつかみます。例えば今だったらガーシーと成田さんがちょっと前まで人気でしたよね。ガーシーさんが標的にしているのは、「金持ちとモテる奴」ですよね。

僕もG1で友人関係の成田さんは、すごくシンプルに言うと「年寄りの政治家に全員降りてくれ」と言っているんですよ。ということは、この2人が人気なのは、今はすごく破壊願望があるんだなとか、何かちょっとめちゃくちゃにしたい雰囲気があるんだなとか。

なんとなく新聞とか、ネットニュースとか、YouTubeとか、何が流行っているのかの共通項の中で、そういう社会の空気を感じることをやっています。

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