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【手放すTALK LIVE#25】あたらしい経営 あたらしい会社 ゲスト:若新雄純さん(全5記事)

​​人間に機械のような生産性を求めると、効率が悪くなる 若新雄純氏が考える、パフォーマンスの上がる働き方

管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、ユニークなプロジェクトを次々と生み出している若新雄純氏がゲスト出演。社会活動家の武井浩三氏やラボ所長の坂東孝浩氏を相手に、パフォーマンスの上がる「若新流仕事術」や、楽しく豊かに生きていくために必要なことなどを語っています。

若新雄純氏が考える、楽しく豊かに生きていくために必要なこと

若新雄純氏(以下、若新):人間が積み上げてきた知的なものというか、科学してきたものとかはすごくすばらしいと思うし、僕も頼りにしているんだけど、そっちは競争相手がめちゃめちゃ多いし。

人並みにはやっているけど、自分の人生の中でどんな状況になっても楽しく豊かに生きていくためには、よくわからない曖昧な人間というものをお天気みたいに敏感に感じ取ることができるようになると、よりおもしろくいろんなことができるんじゃないかなという気はしていますね。

坂東孝浩氏(以下、坂東):NEET株式会社を知らない方のために言うと、若新さんはニートだけで会社を作ったんですよね。何年前ですかね?

若新:2013年の冬です。自称ニートやニート的な人たちが100人以上いて、全員が従業員じゃなく取締役で、会社の経営者側という理屈になっています。自分たちがやらなければ何も生まれないというものだったんですけど。人に雇われるんじゃなくて、自分が経営する側になったら人はスイッチが入るんだろうかという仮説のもとにやっていて、まぁ、そう甘くはなかったわけですね。

坂東:甘くはなかったんですね(笑)。

若新:ずっと派閥争いだったりとか、いじめや対立、権力をめぐるいろんな攻防みたいなことがあって。その中で、僕も組織を立ち上げた人として、いろんなことを期待されて、期待に応える部分もあれば、期待を放棄するような部分もあります。一生懸命やってきて、なんとか歴史を続けているという感じですけど。

あれもその1つで、いろんな実験的な取り組みの中で関心があるのは常にそれだし。ちょうど明日(イベント開催は2021年11月24日)、日比谷で研究セッションをやるんです。チケットは全部売れちゃっているんですけど、俳優さんたちと一緒に、人の表現ってなんだというものを研究していて。

山田孝之さんとか木村多江さんというかなり一流の役者さんと一緒に、感情をやりとりするってどういうことなんだろうという。これが学校の授業で教えられるものになるとは思っていないんですよ。でも完全に体系だった科学にならなくても、何かあるじゃないですか。

坂東:なんかあります。

若新:その手がかりだったり、感じるヒントを増やしたいと思っていて。大学の研究としては、感情を完璧に科学することではなくて、感情のような科学しきれないものとどう向き合うかが、僕の関心というか研究なんですよね。だから全部を体系化するんじゃなく、体系化できないものとの向き合い方のほうが大事というか。

一握りの自己管理ができる人に、憧れる人たち

坂東:コントロールできないものとどう向き合うかということですね。

若新:たぶん経営者もできることなら従業員を全員管理したいし、従業員の動きとか気持ちとかも完璧にプログラム化できたら楽ちんじゃないですか。でも結局、究極できないと思うんです。できない時にそれとどう付き合うかという付き合い方のコツみたいなものはあると思うんですよ。

年功序列もその1個だったんだろうし、10人に1人上司をつけるとか、派閥争いをさせるとか、思いどおりにならない人間をなんとかつなぎとめる施策を打ってきたと思うんですけれども。やっぱり完璧には思いどおりにならないと思うんですよね。

坂東:私たちはその組織の進化を研究しているんですけど。「社会の変化が激しい、正解もわからないという時に、コントロールできるものはできるだけコントロールして、できない余白の部分をできるだけ大事にしていこうよ」と言っているんですよね。

でも私的には、今まであまり人にはフォーカスしていなくて。例えばコロナウイルスみたいなものも、社会の情勢がどう変化するかもコントロールできない。

だけど今日、同時に人の感情もコントロールできない対象だなと思ったんですね。人もコントロールできるところはするんだけど、できないものをどう扱うかというのは、同じぐらい大事というか、すごく大きなテーマだなと思いました。

若新:僕の場合、自分自身もそうだと思います。たぶん今日このイベントを見ている方の中でもタイプが分かれると思うんですけど、やっぱりまず最初に自分を完璧にコントロールしたいじゃないですか。だから自己管理とかがあると思うんですよ。

受験勉強とかも、生まれ持った知能とかもあるけど、膨大な量をこなしていかなきゃいけないので自己管理も相当問われると思うんですよね。ちゃんと自分のあれしたい、これしたい、寝たい、サボりたいみたいなものとどう折り合いをつけて自分を管理していくかという。

方向性は2つあるかなと思っています。徹底的にいろんなことを学んで習慣化して、自分を理想どおりに管理していく。この時間になったら寝て、この時間になったら起きて、毎日必ずこれだけは本を読んで、何時間走るようなことができている人もいるから、「管理できる人はいる」と思っているんだけど。

でも、それはごく一部の人の特殊能力かなと思っていて。みんなそこに憧れるんだけど、やっぱりできない人が多いからごく一部の自分を管理できる人に憧れているのかなと。それが少数派なんだったら、そうじゃなくて管理できない自分とどう付き合うかがけっこう大事だと思っていて。

自己管理ができない人におすすめの「ついついやっちゃう場のデザイン」

若新:僕が自分で心がけていることは、常に気分を乗せておくことなんですよね。人間って子どもの時から気分が乗っている時は、けっこうやる気が出るじゃないですか。「明日はこうするぞ」と決めたとおりにこなすことができないなら、どちらかと言えばいいパフォーマンスになるように気分を上げる。気分を乗せるのはすごく大事だと思っています。

自分の気分を乗せるのは、思いどおりに管理できないから「せめていいコンディションになるように」という心がけなんですよ。だからそういう管理じゃないかたちで、自分をうまく動かしていくのはけっこう大事かなと思っていますね。

武井浩三氏(以下、武井):その環境デザイン的なことは、俺もわかる。俺は10代の頃、ずっとミュージシャンで、ギターがめっちゃ上手くなりたかったから、上手くなるには練習するしかないんですけど、気分が乗らない時に練習はできないし。

無理してがんばるものでもないと思った時に、気分が乗る環境をどう作れるかというアプローチで、自分の部屋を作ったんですよね。ソファーとかくつろげるものをあえて置かずに、椅子に座ると目の前にギターがあって、つい手に取っちゃうみたいな。

坂東:なるほど。おもしろい。

武井:環境を設定すると、ついついやっちゃうという状態は作れるんですよね。それを組織でやっている感覚があります。ティール組織というか、俺がやってきた組織デザインは、ついついやっちゃう場のデザインをしていますね。

「気分が良い日に一気に仕事をする」が若新流

若新:時間もいい感じになってきたから、ちょっと踏み込んで話をすると、今日お話していて、けっこう整理できておもしろいなと思うことが1個あります。お天気の例えが自分なりに良かったと思っているんですけど。人間の気分も、絶対に毎日同じ気分にはできないじゃないですか。

いい気分だった時は、天気が良かった日と一緒だなと思っています。僕のじいちゃんが農民だったからわかるんですけど、農業などをやっている人は天気がいい日にめちゃめちゃ働くんですよ。天気がいい日がずっと続くとは限らないから。

「今日は天気がいいんだから、ちょっと無理してでも全部やっておかない」とってばあちゃんもすごく言っていたんですよ。「今日はいい天気なんだから、寝てる場合じゃない」と。なんでかと言うと、ずっと晴れなんだったら毎日同じ量ずつで終わっていくじゃないですか。だから、そんなに無理しなくても今日はここまでで、また明日にしようと。

ところがお天気は気まぐれなので、明日やろうと思っていても次の日だだぶりだと、天気の良かった昨日やっておけばよかったとなるじゃないですか。だから天気がいい時に一気に片付けるのはすごく大事だと思うんですよ。これは人間の気分も一緒だと思っていて。

とはいえ思いどおりにコントロールはできないんだけど、コントロールできないものと付き合うことは可能だと思うんですよ。だから僕は気分がめっちゃいい時は、とにかくあれこれやって、それで結局寝る時間が遅くなっても、調子に乗ってあれこれするって大事だと思うんですよ。

気分が落ち込む時とか、会社の中でもタイミングが悪い時ってあるし、僕が福井でやっている会社も、コロナの時期はサービスとかぜんぜん回せなかったんですよ。でもそれは天気が悪いのと一緒だから、とりあえず今天気悪い時期だから、最小限にしておいて。その代わりに晴れた瞬間、つまりコロナが明けた瞬間には、「ちょっとありえないぐらいやるから、みんなそのつもりで」みたいな感じです。

機械のような「毎日一定量の業務」は、人間には馴染まない

若新:近代の工場で大量生産するフォード式みたいなものは、天気が晴れてようが何しようが毎日同じ量を生産するというやり方だったと思うんです。そういうふうに経営をしたくなるのはわかるんだけど。それができる人もいるかもしれないけど、僕はできないタイプだったし。多くの人は思いどおりにはいかないから、いい日はめちゃめちゃやる。

でも会社って、天気がいい日も社員が気分がいい日も同じ時間働いて、同じ時間休むとなっているから、あれはなんか効率が悪いんじゃないかと思うんですよ。僕は独立していて自分が経営者だから、気分がいい日にいっぱいやれて、気分がいまいちな日はもう何もしないことが可能だけど、究極の理想は社員とかもみんなそうしたほうが実際は絶対パフォーマンスが上がりますよね。

武井:晴耕雨読ですね。晴耕雨読経営。

坂東:出たよ、自然経営のアップデート。若新さんは自分のチームではそういう感じなんですか? 

若新:もちろん一人ひとりの気持ちが読めるわけじゃないんですけど、みんなの気分が上がっていて歯車があっている時は、なんとなくその雰囲気がわかるから、そういう時は「もうとにかくもうちょっとやろう、きつくてもやろう」とめちゃめちゃ進めようとするわけです。でも農作業と一緒で、それが曇ってきたり雨が降ってきた時のための貯金もしておくわけですよ。

なんか今○○ちゃんが気分が乗っていないらしいとか、なんか元気がないらしいとなったら、本業が少し止まるというか遅くなったとしてもやっぱり集まったりするのが、さっきのギアの話とつながっていると思っています。だめな時に「お前はこのペースでやるって言っていたんだから守れよ」みたいなことを言うのは、実は人間に馴染んでいないのかなという気はしますね。

坂東:なんか事業を立ち上げて、例えば今流行っていないけどすごく流行ってる時にタピオカ屋を作ったら、「今が売り時だ」と言って割っていきたくなるけど、もしスタッフの機嫌があまりよくなかったり、雨ムードだったら「ちょっと待てよ」と。コントロールしたいし動かしたいけど、ちょっと待てよということになるということですよね。

若新:景気の「気」というぐらいだから、たぶんマーケットが加熱しているかとか、それが来ているかどうかも、天気と似たようなものなんでしょうね。だから景気の「気」と、社員の元気の「気」とがものすごくあわさったタイミングでやる人が爆発するんでしょうけど。

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