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藤原和博x尾原:プロセスエコノミー対談(全4記事)

「新しいスポットライトの当たり方」に、喜んでお金を払う時代 “何者か”になれる仲間・冒険を提供する、プロセスエコノミー

『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』の著者・尾原和啓氏と、「朝礼だけの学校」校長/教育改革実践家/​​奈良市立一条高校元校長/杉並区立和田中学校元校長/元リクルート社フェローの藤原和博氏の対談の模様を公開します。

尾原和啓氏×藤原和博氏「プロセスエコノミー」特別対談

尾原和啓氏(以下、尾原):はい、みなさんこんばんは。「尾原のサロンハック 特別編」ということで、前回もゲストに来ていただいて大好評でした、藤原和博さんです。

藤原和博氏(以下、藤原):教育界のさだまさし、今日も元気です。藤原です。どうも!

尾原:今日も本当にお元気ですごいんですけれども(笑)。しかも今日は「朝礼だけの学校」のほうにも特別配信ということで、ご一緒させていただいていて、今リアルタイムで20名弱の方が入ってきておりますし、このあとも入ってくるので。

皆さん是非、学校の雰囲気で、チャット欄でコメントをしましょう。前回も藤原さんのお話は、参加している方々との丁々発止で楽しい時間でしたので、是非今日も盛り上がっていただければと思います。今日はこちら『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』です。

藤原:素晴らしい! ベストセラー! Amazonベストセラーランキングで、ちょっと前まで1位!

尾原:いまは落ちてますけれども(笑)。とはいえ、もう4刷で4万部までいきまして。

藤原:素晴らしいです。

尾原:しかも新しい版からはですね、表にひろゆきさん、堀江(貴文)さんの帯も入っているんですけれども。裏側にはバッチリ、藤原さんのお言葉「プロセスエコノミーとは体験の共有であり、共犯関係を築くこと」を入れさせていただいておりまして。

そのくらい、この『プロセスエコノミー』に書いた「正解主義から修正主義」という言葉は、前回の藤原さんとの対談でいただいた言葉を、まぁ……徹底的にパクらしていただいたらですね(笑)、ものすごい反響があって。これはもう『プロセスエコノミー』に関しては、もう一度、藤原さんと対談させていただきたいということで、ご快諾をいただきまして、ありがとうございます。

プロセスエコノミーとは?

尾原:まず『プロセスエコノミー』について、どうでしたか? というご感想を聞きたいんですけれども。「朝礼だけの学校」の方々や、ぼくのサロンでも、まだ『プロセスエコノミー』を読んでいない方がいらっしゃると思うので、ちょっと簡単に説明をさせていただいた上で、藤原さんの感想に入れればと思うんです。

ひと言でいうと、プロセスエコノミーとは名前通りで「プロセスで経済が起きるよ」ということです。それなら今までの経済はなんだったの? というと。今までっていうのは「アウトプット」ですね。「完成品で価値を感じて、完成品で儲ける」というビジネスだったんです。

今起こっているのは、良いモノだけでは稼げない時代、つまり、インターネットが加速することによって、もうどこでもいいものが出せるようになってしまったので「良いモノを出しても差別化ができない」。そうすると、どうしてもヘトヘト競争になって、儲けることができない。

じゃあどこで人と違うモノを見つけるんですか? どうやって「あなたのモノを買いたいよ」って言ってもらえるようになるんですか? それは、今日、ぼくが藤原さんとお話をさせていただいているみたいに、プロセスのほうが“一回こっきり”という「希少性」が生まれるし、その裏側にその人の「信念」だったり、その人の「価値観」だったり、その人の試行錯誤の中に「その人らしさ」「そこらしさ」だったりが立ち上がってくるので、むしろ、プロセスのほうが価値になる。

だとしたら、制作過程をどんどん開示していく中で「あなたの商品を買いたいよ、あなたのサービスを使いたいよ」って言われる存在になったほうがいいんじゃないか。

アウトプットエコノミーが今までは中心だったのに対して、プロセスというものに軸足を移せば、新しいビジネスだけじゃなくて、個人としての輝き方というものも、広がっていくんじゃないか。それを『プロセスエコノミー』として書かせていただきました。

旅費・参加料を払ってでも手伝いたい

尾原:読まれてどうでしたか、藤原さん。

藤原:読む前から噂は聞いておりましたし、誰が帯を書くかもですね。

尾原:(笑)。

藤原:ホリエモンにひろゆきですよ。もう足りないのは藤原くらいでしょう(笑)。

尾原:そうなんですよ!

藤原:さらに山口周さんもコメントを寄せていてですね、あとはキングコングの西野(亮廣)くんくらいでしょうかね。

尾原:キンコン西野さんはもう提言者なので、中に練り込まれていますので。

藤原:そうなんですよね。西野さんに詳しい人からすれば「そりゃあ、もう分かっていることじゃないか」と。プロセスエコノミーって西野さんが言う、ユーザーとの「共犯関係」をつくる、というね。共犯関係という言い方をしていますよね。

たとえば色んなイベントをやるときに、オンラインサロンの人たちと一緒に創りあげていきますよね。たとえば、エッフェル塔で自分の展覧会を『えんとつ町のプペル』の原画展とかをやろうっていうときに、サロンの人たちに参加料を払わせて、働かせる、っていうですね(笑)。

尾原:人聞きが悪い、人聞きが悪い(笑)。「共犯関係にしている」ということですね! 一緒に創りあげる「セカンドクリエイター」みたいな言い方もしています。

藤原:手伝ってもらうんだったら、それまでは「まずお金を払わなきゃいけないんじゃないの?」っていうことだったと思いますし。百歩譲って、ボランティアで来てくれる、と。飛行機代を出すのはなかなか大変だから、ホテル代ぐらいはぼくが持つよ、とかね。そういうのが経済だと、みんな思っていたと思うんですけれども。

そうじゃなくて、ホテル代も航空運賃も(自分で)持った上で、参加料も払って、それでも手伝いたい。つまり、西野さんと一緒に働いて、自分のイベントにしたい、っていう。そういう情念が渦巻いているんですよね。これは、豊かな社会になって、成熟社会になったからだと思うんですけれども。

そのように、尾原さんと一緒に働いて何かを成し遂げたい、という人はものすごくいるわけで。たぶん、この「尾原のサロンハック」に参加している人はそうでしょうし、ぼくが去年の11月27日からチャレンジをして、1月1日に仮開校、3月1日に開校しました「朝礼だけの学校」っていうですね、おばらっちも加わってもらっていますけれども。

尾原:やぁ、本当に楽しいです。

藤原:「朝礼だけの学校」で今までいて、また出て行った人もいますけれども、400名くらいののべ人数で、いま現在で280名くらいですけれども。この人たちもね、ここで「単に学びたい」ではなくて「一緒に創る」と。こういう情念で動いてきていると思うんですよね。しかも「お金を払って」ですね。

11月13日に『60歳からの教科書』(朝日新書)という著作が「朝礼だけの学校」発でみんなにもまれながら出て行ったりしますし。そういう作り方が、まだまだ今は全体の生産物の1%か2%かもしれないけれども。それがメジャーになってくるということを『プロセスエコノミー』では言っているんですよね。

時代によって移り変わる、マーケティングのあり方

尾原:おっしゃる通りです。本の中でも紹介させていただいているんですけれども「共犯関係で一緒にモノを作っていく」ということが、今は逆に言うと足りなくて、ユーザーが求めている。ということを、フィリップ・コトラーさんというマーケティングの神様が定義していて。

この人も藤原さん同様に、お年を召しても、考えにどんどん磨きがかかってですね、どんどん自分の論理をアップデートされる方なんですけれども。この方は、つい先日90歳にして『マーケティング5.0』を出されたんですけれども。この方が84歳のときに『マーケティング4.0』というのを出されていて。

マーケティングというのは何かというと、お客様に買っていただく。こちらが売り込むのではなく「お客様が自然と買いたくなるものって何なんですか?」っていうことを定義しているんですけれども。最初はモノが足りない時代なので「大量にみんなに『無い』を埋めることを始めましょうよ」というのがマーケティングの始まりで。だから「4P」とか「3C」みたいな話をしたわけですけれども。

そのあとにマーケティング2.0になって「いやいや一律の『無い』はだいたい埋まってきたよ」と。だとしたら「自分ならではのモノは何なんですか?」っていう、いわゆるセグメンテーションって呼ばれることで。女性・男性、趣味嗜好、いろんな形でセグメントに合わせたものを提供していきましょう、というものになったんですけれども。

80年代後半に入ってくると、セグメント自体も機能のモノは埋まってくるので「同じようなモノだったら、会社自体に共感ができるようなところから買いたいよね」という「ビジョン」っていう話だったり、そこが提供する「世界観」みたいなことが大事ですね、っていう話になってくるんですけれども。

いま藤原さんがおっしゃったように、最後に人が求めるものは何か? というと、使っているサービスだとか商品を通して「自分らしさ」が磨かれるのか、っていう「自分らしさ」が増える「共犯関係」。一緒に創る関係、というところが大事になってきていて。なので西野さんは「セカンドクリエイター」という言い方をしていますけれども、お金を提供することで、普段ではない、何者かになれるような冒険ができる場所だったりとか。

冒険を一緒にする仲間の中で、気づいたら遠くに行けて「自分もこういうことができるんだ」と、新しいスポットライトの当たり方みたいなところに、むしろ喜んでお金を払う。そういう「共犯関係」「セカンドクリエイター」の時代というのも、プロセスエコノミーの背中を押しているところっていうのが大きいんじゃないかって思うんですよね。

「自分ネットワーク」という考え方

藤原:いま「自分」っていうことについて話が出たので、「朝礼だけの学校」でぼくがみんなと共有している考え方を、ちょっとだけここでホワイトボードに書いてみようと思うんです。こういう個体のような人間観はね、終わっていると思うんですよ。この中にね、自分というものがあって「本当の自分」というものを掘り出そうみたいな。これって、すごく無理のある考え方なんですね。

尾原:ほうほう。

藤原:でね、ここからね、どうならなければいけないか? というと。こういう風にね、周囲にいろんな人がいますよ、いろんなものがありますよ、と。

で、ここのね、干渉している場所・交わっている場所。この交わっている場所の集合体が……。

尾原:自分である、と。

藤原:哲学的にも左側の「自分」の考え方は終わっているんですよ。たとえば、尾原さんと私がいま対談しています。そこでは、キンコン西野くんやホリエモンと普段やっているときとは、全然違うぼくの人格がここに出てきているんです。

それを含めて「自分」じゃないですか。“尾原藤原”というのが、いま瞬間的に出来て、しかもなおかつ参加者がいて。「朝礼だけの学校」から元リクルートの大塚寿くんとか、色んな人からチャットがきていますが、その人たちの参加もあって初めて出ている藤原もいるんです。そういうものの集合体「自分ネットワーク」という考え方で、「自分」というものを考えた場合、ここに色んな商品が提供されたり、いろんなことが起こったときに。

ここに「自分」というものが感情移入できないと、やっぱりイヤだと思うし。だからそうやって、自分の周りに自分の「かけら」を生み出していくという風にどんどんなっていくんじゃないか、と思うんですけれども、違いますからね?

尾原:もう、今の図を見てから、是非皆さん、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見てください(笑)。

藤原:そっちに行くか(笑)。

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