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攻めのダイバーシティ推進 -女性活躍の最前線から学ぶヘルプシーキング行動とは?-(全9記事)

組織を「助け合えないチーム」にしてしまう、お互いの無関心 ITツールの不使用や、席の固定化で失われる“知る機会”

近年、組織の成長戦略を加速させるため、重要性が高まっている「ダイバーシティ推進」。しかしその取り組みは、コロナ禍において「働き方」「価値観」「ライフスタイル」が多様化していることを鑑み、新しい視点を取り入れることが必要ではないでしょうか? そこで本記事では、ダイバーシティ推進を考えるべき理由や、推進を加速させる新たな視点"ヘルプシーキング行動"について、新刊『バリューサイクル・マネジメント』が好調な作家・沢渡あまね氏と、株式会社NOKIOO 取締役/経営学修士・小田木朝子氏が徹底解説したイベント「攻めのダイバーシティ推進 ー女性活躍の最前線から学ぶヘルプシーキング行動とは?ー」の模様を公開します。

「助ける」と「手伝う」の大きな違い

斉藤知明氏(以下、斉藤):お二方、ありがとうございました。今の話を聞きながら、チャットをずっと眺めていたんですよ。たくさん、いろんな意見をいただいている中で「『助ける』と『手伝う』って違うよね」というコメントがあって。これ、まさにそうだなと思いながら、お二人の講演をお伺いしておりました。

斉藤:まさにヘルプシーキング。ダイバーシティを受け入れる中で、やっちゃうのが「手伝い合う」。1人が抱え込んじゃって「忙しいから枝葉のタスクをもらってくれない?」と相談すること。これって「手伝う」なんですよね。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):うんうん。

小田木朝子氏(以下、小田木):「手伝う」ですね。

斉藤:1人が抱え込むんじゃなくて、複数人で1つの大きな問いを解決できるように役割分担をすることで、一人ひとりの力を活かし合う。これが「助け合う」。ダイバーシティを許容して、大きな成果をつなぐ組織。

今日のダイバーシティというテーマで、女性を例に取ってお話しいただきましたが、ここがまさに今日一番の気付きとなるべきポイントだし、深掘りのしがいがあるポイントだと思いました。

「助け合えないチーム」でもっとも根深い、相互無関心

斉藤:改めて、小田木さん、沢渡さん。次のスライドについて、簡易的にご説明いただいたので、改めて深掘りさせてください。

斉藤:例えば「成果を出すチーム、助け合えるチーム」の対比といいますか。助け合えないチームってどういうチームで、だからこそ、どういうチームが必要だと考えていらっしゃいますか?

小田木:助け合えないチームとは、どんなチームか。

斉藤:そうですね。助け合えていないとか、手伝っちゃうチームです。

沢渡:いろいろありますね。私が見ていると、一番根深いのは「相互無関心」。

斉藤:はい。

沢渡:相互無関心って、いろいろな背景があるんですよ。お互いを知る機会がなかったり、あるいは中途採用の人が入ってきても「この人、どういうバックグラウンドがあって、どういうミッションを持ってここにいるのかな?」みたいなことが、わからない。

さらに、コミュニケーションがしやすい風土だとか、場だとか、隙だとか。そういったきっかけがなかったりとか。そこを「なぜなぜ?」で深堀っていくと、さまざまな要因がある。本人のスキルの問題、メンタリティの問題、カルチャーの問題がある。

あるいは、垣根を超えてコミュニケーションできるようなITツールみたいなものがなかったりとか、オフィスも堅苦しい狭い固定席と会議室。昼休みは45分で社食に駆け込んで、また戻ってくる、みたいな。コミュニケーションする隙とか場がないじゃないですか。

つながって仕事をするようなチャンスがないなど、さまざまな要因があります。あとはどうしても、目先の成果主義に陥りがち。そうすると自分は今日明日の仕事を回すのが手一杯ですから、相手にかまっている暇がないし興味がない、とか。さまざまな要因が考えられます。

斉藤:そうなっちゃうと、その人が抜けたら、もうチームは回らないですよね?

沢渡:間違いないですね。

チーム成果より個人成果が優先されていると、助け合いは起こりにくい

小田木:もう1個、今の問いかけについていいですか? 

斉藤:はい。

小田木:もし、今の沢渡さんの話に加えるとしたら「チーム成果よりも個人成果のほうが優先」されている文化だと、必然的にやはり「助け合わない」って状況が生まれやすいのかなと思います。

本当は「チーム成果」が共有されていたり、共通認識になっていると、たぶん「助け合わないことには、チーム成果が最大化されない」と考えるんじゃないかと思います。

それよりも、個人成果のほうが優位・上位概念にあったりすると、助けることに対してなんの得もないんです。要は「個人成果を減らすだけの面倒なプロセスが『助けるという行為』」になってしまう。あと、助けられるほうも「それだと相手に迷惑をかけてしまう」という意識が先行しちゃうんで、自ずと助け合えないみたいな(笑)。

斉藤:とてもイメージが沸きます。コメントで「外資系グローバル企業って、助け合っていないイメージですね」という書き込みがありますが、今のお話を聞いていると、もしかしたら逆なのかな? と思いました

外資系のグローバル企業さんって、一人ひとりの強みがはっきりしています。大きなプロジェクトに携わるにあたって「自分、プロジェクトリーダーです」となったら、いろんな人を寄せ集めて、プロジェクトチームをつくって。結果、それで「大きな問いを解こう」という考え方なんです。

自分自身が解かないといけない課題を理解しているから、どんどん相手の強みを理解して「そこに人を当て込もう」という動き方をする。それをリーダーとか経営者だけじゃなくて、一人ひとりがやっている。

二分化の傾向にある、外資系企業

斉藤:これってまさに「ヘルプシーキング行動の現れ」じゃないかな? と解釈しているんですけど、どうでしょう。

沢渡:私は、外資系のグローバル企業も二分化していると思います。

斉藤:なるほど。

沢渡:1つ目。結局、日本法人に権限がなくて「数字だけ出せ」というような、目先成果型でミッションを負った組織だと、やはり目先成果主義で「目先の成果を出せない人はレイオフ」。さらにはみんな、目先の自分の仕事に一生懸命になって、助けるということをしなくなりますね。これは、そういうマネジメントしているからなんです。

一方で斉藤さんがおっしゃるような、ビジョン、ミッション、バリューを明確にして、そこに対して「自分が何ができるか? 今のステータスが何か? お互いの期待役割が何か?」を明確にし合って、つながらないと解決できないというような、限界を感じているところがあります。

私が去年書いた『職場の科学』という本にも例を掲載した、日本マイクロソフトさん。

職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」

「コラボレーション」を経営の軸に据え、人事成果制度はもちろん、ツールもいわゆるTeamsのような「Microsoft365」をベースにして、どこにいてもお互いがつながって、非同期でコミュニケーションができるようなものを整えた。「コラボレーションが企業価値だ。コラボレーションこそ、我々が大切にするものだ」を、社長をはじめとする経営陣も発信し、コラボレーションを後押ししています。「つながることによって問題解決する人を評価する」制度と風土に変えているのですね。 

斉藤:はい。

沢渡:このように、外資系企業においても二分化していると思います。

「変化に名前を付けること」の大切さ

斉藤:なるほど。まさにそうですね。そこは一極的に議論することはできないかなと。まさに今、おっしゃった「評価している」というのが大事ですよね。

これが個人の目の前のKPIだけでの評価になってしまうと、当たり前だけど他の人を手伝っても助けても、自分の評価にならないからやらない。それを「やる前提」で同じイシューを問うている。それが評価されるようになれば、このヘルプシーキング行動・活動って起こりやすくなるんですかね。

沢渡:評価ってたぶん、二元的に行っていく必要があって。

斉藤:二元的。

沢渡:マトリックス的に2つの軸で考えると、1つの軸は「個人評価とチーム評価」ですよね。個人としてパフォーマンス出した、チームとしてパフォーマンス出した。そしてもう1つの横軸が「成果と変化」だと思っているんです。

成果を出した。例えば「1,000万円を1ヶ月で売り上げた」。これは成果ですね。もう1つが、変化。変化って、例えば改善活動なんかもそうなんですけど、成果が出るまでに5年かかるかもしれない、10年かかるかもしれない。それに対して例えば、なにか新しいアイデアが出てくるようになったとか、あるいはモチベーションが上がったとか、エンゲージメントが上がったとか。こういうのって、わりと変化なんですよね。

変化に意味を付けて、変化に名前を付ける。変化を言語化していく。それをリーダーが率先してやっていくことによって「この職場では助け合うことがいいことなんだ」。あるいは「改善するっていいことなんだ」とか「みんなが見えてないけれども、データを整備しているナントカさんの仕事って、新しいことをやる時に役立つんだ」。こういう気持ちが芽生えてきます。

変化に名前を付けていく。あるいは変化に対して「ありがとう」を言っていく。これをリーダーが率先してやっていくかどうかが、組織風土を決めるのかなと思っています。この二元的な評価とか仕組み、仕掛けがものすごく大事かなと思っています。

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