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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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斉藤知明氏(以下、斉藤):ありがとうございます。その二元的な仕組みをしていくには「自分自身の業務をこなします、チームとしてもやります」となった時に、このスライドについて小田木さんにお伺いしたいです。業務プロセスの部分が「ヘルプシーキング」という言葉の、最初の印象の“優しい組織”とは真逆だな、と。やはりここがキーなんですかね。
小田木朝子氏(以下、小田木):(笑)。ほのぼのした組織。
斉藤:(笑)。ほのぼのっぽく、先ほどはおっしゃっていましたけど、ここってキーなんですかね? 「ヘルプを出す訓練」「(組織が)どこに向かっているかわかる」。
小田木:「訓練」と書きましたけれども、成果につながる助け合いって、どんな助け合いか? というところで考えていくと、ヘルプを出す訓練。特に一人ひとりがセルフマネジメント力を上げたりとか、よりチームの成果のために「今、何をすべきか?」という視点・観点を明確にする、というのが欠かせないんです。それがヘルプを出す訓練にもつながっているのかな、と思っています。
あと、さらに「上手なヘルプ」と「あまり上手でないヘルプ」みたいなものをイメージして比べていただくと、わかりやすいかもしれないです。上手じゃないヘルプって、要は“ゲボる”みたいな(笑)。そんな感じなんですね。直前まで抱え込んで、特に業務整理されていない仕事を「ごめん!」(と言いながら、誰かに渡す)みたいな。ゲロロロって。
沢渡あまね氏(以下、沢渡):わかります。
小田木:「あとはケアしかできない」という、そういう状態だと思うんです。ごめんなさいね、言葉が(笑)。失礼しました。
小田木:じゃあ、上手なヘルプ・チームの成果につながるヘルプってなにか? というと、まず自分の仕事をきちんと要件定義していて、その仕事のプロセスを明確にしていて、自分がやったほうがパフォーマンスを出せる仕事なのか? それとも、仲間の手を借りたほうがパフォーマンスを出せる仕事なのか? これを判断できること。
そして自分のタスクやチームが抱えている仕事の成果を最大化するために、必要なことを要件定義し、必要な人を巻き込みながら成果につなげるというところが、上手なヘルプのイメージなんです。
沢渡:スキルと環境って、ものすごく大事だと思いました。小田木さんの話を聞いていて、スキルで行くとヘルプ出した時に「その人がどこで困っていて、何を自分に期待しているのかがわからないケース」って、あるんですよ。
いきなり「助けてくれ!」と言われて「なんの案件であなたはどこで困っていて、私に何をしてほしいの?」っていう“現在地の説明能力”って、ものすごく大事だと思うんですよ。「この案件のここで困っていて、これができない。だからこれを期待する」という。
そのためには、例えば図解の能力とか、プレゼンテーション能力とか、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングというものが、ヘルプを出す側も受ける側も持っておかないと噛み合わないよね、という話なんですよ。
斉藤:はい。
沢渡:もう1つが環境の話です。環境、例えば「1on1」というきっかけがあるとか。あるいは、ビジネスチャットが利用可能であるとか。いちいち「そんなことは対面で言うのが常識だ」なんて言っていたら、もうどんどんヘルプ挙げるのが遅くなるわけですよね。
場やきっかけがないと、いわゆる「ヒヤリハット」すら挙げられないわけで。「Slackでもいいから気軽に挙げてくれ」というような、非同期でつながれるヘルプ。第一声を挙げられるようなITの仕組みとか、使いこなせるリテラシーがあるとか。もう総合格闘技ですよ、これ。
斉藤:めちゃくちゃ難しいですよね、ヘルプを出すって。「いろんな観点で言い合える環境をつくりましょう」とか「嫌なことも言える環境をつくりましょう」とか、さまざまな観点の議論が昨今では多いかなと思うんですが。やはり「自分の仕事は自分で抱え込まないといけないんだ」と。
「抱えて抱えて抱えて、もう爆発寸前です」という中で「どうしようもないんです、助けてください!」となってしまうと、お互い歩み寄りが難しいヘルプの出し方になってしまう。これがまさに、先ほど小田木さんが表現された「ゲボる」というものなのかなと思います。
一方で、じゃあその状態にならないために、チームとして「もっとこういうふうにしていったらいいんじゃないですか?」と考える。それを定義した上で提案する。
だからこそ、さっき言った「チームや組織がどこに向かっているかわかる」ということが、業務プロセスの理解としてみんなに求められるって、難しいなと思ったんですよ。だって僕、経営者やっていますけど、自分自身もまだ難しいなと思っちゃう中で、新卒のみんなだったりだとか、新しく組織に入ったばかりのみなさんがこれをやれるようになるって、難しいなって思うんです。
斉藤:小田木さん自身がスキルを獲得された過程でもいいですし、他社のみなさんをご支援されていらっしゃった経験でもいいんですけど。ヘルプシーキング行動ってみんな、できるようになるものなんでしょうか?
小田木:「タイプや性格論ではなくって、ビジネススキルとして、しかも技術論としてきちんと認識すべき」。こう考えることがスタートですね。
そして「さあ、やってください!」と言うだけではなくて、実践者たちに「武器を与える」という意味で、きちんと知識や体系として教えるということって必要なのかなって思います。
私たちはそれを「ヘルプシーキング行動研修」と呼んでいたりします。いわゆるセルフマネジメントという観点だとか、ロジカルシンキングという観点だとか、あとはタイムマネジメントとかいろんな切り口があります。個々のビジネススキル、あと業務マネジメントスキルを引き上げていく、というのが大前提にあるんですね。
少し難しく感じるかもしれないですが、今コメントを見ていると“評価”というキーワードがめちゃくちゃ出てくるんですよ。評価の問題って、私は見方を変えると、目標設定や役割設計の問題と、かなり綿密につながっているのかなと思っています。
評価の段階で問題になることって、実は評価制度の問題以上に「最初にそもそもなにに力を注ぐか?」とか「チームの成果のためにどんな役割を担うか?」「なにに最もリソースを割いてほしいか?」という、この目標や役割の合意形成があんまりされてない場合に、評価の問題っていろんなかたちで出てくるなと思っています。
ビジョンの話をして「言って聞かせる」という観点も、もちろんあると思います。一方で、そのチームの成果を定義して、かつ、その成果を達成するためにメンバーの一人ひとりの役割や個々人への期待を明確にして、上司とメンバーと合意形成していくことが必要だと考えています。
斉藤:助け合えるとかダイバーシティ、インクルージョンというのを、女性というキーワードに落とし込んでいますが「支援から起点へ」というのが今日のテーマなのではないかと、小田木さんのお話を聞いていて改めて思いました。
小田木:ありがとうございます。
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