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基調講演 日本が実現する “Connected Industries”(全5記事)

経済産業大臣「日本企業は競争しすぎ」 国として競争力を高めるための“データ共有”を強調

日本や世界の政治・経済・文化・技術・環境などを学び、リーダーシップを発揮するための知恵やネットワーク基盤を提供する「G1経営者会議2017」が開催されました。そのなかで行われた基調講演「日本が実現する “Connected Industries”」に、世耕弘成経産大臣とGPIFの水野弘道氏、そしてモデレーターとして竹中平蔵元経済財政担当大臣が登壇。インターネットの進化で、企業競争はどう変わっていくのか。そのなかで日本ならではの力を発揮し、第4次産業革命を生き残るヒントを語り合いました。

Connected Industriesの5つの入口

世耕弘成氏(以下、世耕):今は我々、政策的にどういうことをやってるかというと、この間「CEATEC」というイベントがありました。これも日本のIT関係の大きなイベントになりますが。そこで「Connected Industries」の「東京イニシアティブ2017」を打ち出させていただきました。

そのなかでは、最終的に我々はなんでもConnected Industriesにしていきたいんですが。とは言ってもやっぱり、入口はいくつか絞ったほうがいいだろう、ということで。5つの分野に絞ってやっていきたい、と思っています。

まず1つが自動走行、モビリティサービスであります。これは例えば、自動車産業。今はバラバラに自動運転に取り組んでますが、もうそれでは戦えません。

ですから、ここは自動車産業にしっかり連携をしてもらう。日本の自動車産業が、みんなで連携してセンサーを開発して、そこから取れるデータを共同で蓄積して活用する。そうしたら、もうこれは最強の自動運転を進めていくプラットフォームになるわけでありまして。こういったことを視野に入れながらやっていきたいと思っています。

2つ目は、ものづくりとロボティクスであります。これも日本の産業のもっとも強い分野。これをさらにデータでしっかり繋いでいくことによって、研ぎ澄ましていく。

場合によっては各メーカーで、製造現場から上がってくるデータを共有をしていただく。それをビッグデータとして解析をして、さらに製造業全体のレベルを高めていく。こういうこともやっていきたいと思います。

プラントやインフラ保全でもConnected Industriesを

世耕:そして3つ目は、プラントとインフラ保安であります。これは、インフラや、あとは工場から出てくるデータで予防保全ができます。「潤滑油の温度が何度になってきたら」「この部分の振動の周波数がこれぐらいになってきたら、まもなくこの機械は壊れますよ」が先にわかればラインを止めずにずっと保全をやっていくことができる。

これは各企業、各工場でやっておられるところではあるんですけれども、これをもっと産業全体で共有をしていけないか。あるいは今、神戸製鋼の事件が起こっていますが、あれも結局コネクトされてないから、ああいうことが起こるんですね。

びっくりするのは、今いろいろと安全性の検証をやっていますが、実は正確なデータは残っているわけです。残っているからわかるんです。

ところが、それをユーザーさんに報告するときに伝票を書いてるわけですよ。そこでちょっとデータをつくり変えるというようなことをやっている。だから、ああいう事案が起こっていると我々は見ています。

これもですね、例えば原材料をつくっているメーカーと、実際に製品をつくっているメーカーも繋いでしまえば、いちいち伝票を書かなくていい。そのうえ、メーカー側も、例えばアルミだったら、今出てきたデータのなかで、うちの製品はこれぐらいのレベルでいいから、もうすごく高品質なものは高く買う気はない。だけど、そこそこの品質の物はある程度は安く買いたい。

そういったことをリアルデータを見ながらその場で判断をしていく、なんていうこともできるようになります。もちろん、ああいう偽装のようなこともできなくなる。ということで、プラントやインフラ保安といった分野でも、このConnected Industriesを使っていきたい。

そのほかバイオ、素材の分野。これを4つ目で考えてます。あとはスマートライフといった分野でも、Connected Industriesの概念をしっかり広めていきたいと思っています。

Connected Industriesを進める上で「競争はやめて」

世耕:政府としては今度の補正予算で、できれば、まさにこのConnected Industriesを具現化するような、目に見えるような……。まだ、だめなんですけどね、補正予算はこれから内容を詰めますので。

「なるほど、Connected Industriesってこういうふうに入っていくんだ」がわかるようなテストベッドをつくって、みなさんにもぜひ参加をしていただきたい。こういうことも、しっかりとやっていきたいと思いますし、やっぱりいろいろルールをつくっていかなきゃいけません。

例えば、製造機械から出てくるものづくりのデータは、いったい誰のものなのか? その製造機械を買った人ものなのか、製造機械を納入した側のものなのか。

このあたりを、きちっとガイドラインとしてルールをつくっていきたい。できれば、そのデータをみんなで共有できる分野もしっかりと広げていきたい。こういうルールもつくっていきたいと思っています。

あとは、このConnected Industriesに使えるようなAIチップの開発、あるいは人材育成ということもやっていきたい。国際的な展開のもしっかりと進めていきたい。これは政府の役割だと思っています。

そんななかで、今日お集まりの経営者のみなさんにConnected Industriesを進めていくうえでも、ただ1つだけお願いをしたいと思っています。それは、競争のしすぎはやめていただきたい。

日本企業は競争しすぎなんです。すべて、どこでも、なんでもかんでも競争しすぎなんで、ここの考えを改めていただいて、できる限り協調領域を広くとっていただく。

そしてみんなで協調してデータを共有して、ビッグデータを使う。それによって、日本全体の競争力を高めていく。そのうえで、極めてハイレベルな部分で、しっかりと各社が競争をしていただきたい。

そういう発想にぜひ転換をしていただきたいということを今日、経済産業大臣として、お集まりの経営者のみなさんにしっかりとお願いをさせていただいて。まずは私の講演を締めくくらせていただきます。本日はどうも、ありがとうございました。

(会場拍手)

バズワードは飛び交う、けれど外郭はぼやけている

竹中平蔵氏(以下、竹中):おはようございます。改めて、このような機会をありがとうございます。そして世耕大臣、第4次安倍内閣の発足、そして経済産業大臣の再任、誠におめでとうございます。

(会場拍手)

今、世耕大臣からConnected Industriesという言葉に対する思いを述べていただきました。

ドイツが「インダストリー4.0」という言葉を2011年につくって、そのあと世界経済フォーラムが「第4次産業革命」という言葉を積極的に使うようになった。

そして実は、日本の経済界を中心として「Society 5.0」という言葉ある。そして「Connected Industries」という言葉が生まれて。ちょっとわかりにくいな、という思いを持ちながらも、しかし、今の思いが非常にみなさんに伝わってこられたのではないかと思います。

今、いろんなバズワードというか……バズワードって俗に言う流行語になりますけれども、いろんな言葉が飛び交うわけですよね。FinTech、ブロックチェーン、そしてAI、ロボティクス。非常に重要だっていうことはわかりながらも、その外郭がなんとなくぼやけていて本当にこれからなにが起こるんだろうか? と。

そのときにまず「Connected」。データを中心にコネクトしようという、その概念を大臣として提唱してくださったことだと思います。そのことに関しては、非常に私も高く関心を持って評価をさせていただいております。

日本には個人ベースのネットワークが少ない

竹中:さあ、それを受けてなんですが、水野さんは金融、民間企業、そしてとくに海外の経営者との対話を通して、いろいろなご経験を積んでおられますが。今の大臣のConnected Industriesの思いを受けて、どのような印象をお持ちなのかっていうことを、少しお話ししていただけますか?

みなさんの質問の時間を残さないきゃいけないので、ちょっとやり取りは、できるだけ手短にお願いします。

水野弘道氏(以下、水野):はい。おはようございます。ストレートにお答えしますけれども、私は通常ですね、日本発の用語には反対しておりまして(笑)。「グローバルに説明しにくいからやめてください」といつもお願いしてるんですけど。

Connected Industriesについては、日本人の間ですごくわかりやすいことと、英語の意味合いとしても言いたいことがわかりやすいので、そのまま使っていればいいと思っております。

私は、投資のほうからはESGを進めておりまして。それもですね、企業間の連携やマルチステークホルダーモデルが全体的に必要になる。同じ価値観に向けていっているんじゃないかな、と思っています。

ただ、経営者についてということだったので、コネクテッドをするために経営者のみなさんになにが必要だと私が思っているかっていうことだけ、簡単に申し上げますと。

海外に出ていて思うのは、日本はポジションでコネクションをつくろうとしているんじゃないか、と。社長が出てきたら相手も社長みたいな感じで、ファンクショナリティでネットワークというか、コネクションをつくろうとしているんです。海外は個人ベースでネットワークがつくられていっているので、ここがもう大きな違いがあると思っております。

なので、Connected Industriesと言ってるときに、産業のかたちや組み合わせとしてのコネクティビティだけじゃなくて、やっぱり個人のコネクティビティをどうするかっていうことに思いを馳せてもらえればいいかな、と思いながら聞いておりました。

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