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基調講演 日本が実現する “Connected Industries”(全5記事)

「国会想定問答をAI化したおかげで徹夜がなくなった」 世耕経産大臣が語る、省内でのテクノロジー活用

日本や世界の政治・経済・文化・技術・環境などを学び、リーダーシップを発揮するための知恵やネットワーク基盤を提供する「G1経営者会議2017」が開催されました。そのなかで行われた基調講演「日本が実現する “Connected Industries”」に、世耕弘成経産大臣とGPIFの水野弘道氏、そしてモデレーターとして竹中平蔵元経済財政担当大臣が登壇。インターネットの進化で、企業競争はどう変わっていくのか。そのなかで日本ならではの力を発揮し、第4次産業革命を生き残るヒントを語り合いました。

官邸主導とはトップダウンで調整するための機能

竹中平蔵氏(以下、竹中):「いや、もうこれ大変だから」「こういうとき思い切った政策やると、かえって内閣にご迷惑がかかるから」。これは、憲法改正でも同じような問題が出てくるのではないだろうか。実はそこを懸念しています。

そこはやっぱり、本当に強い政治のリーダーシップで砕いていっていただくしかないんですけれども。決意表明も含めて、大臣いかがですか?

世耕弘成氏(以下、世耕):安倍政権の主要メンバーは、我々の政権が国民のみなさんからご期待をいただいている一番大きなところは経済だ、ということはよく認識をしています。今回は、マーケットも明確にメッセージを出してくれていました。途中で我々が「選挙に勝てそうだ」となったときから、株価もグッと上がってきたということですから。

この期待はぜったいに裏切れないし、応えていかなければいけないと思っています。よく官邸主導っていうことが、あたかも悪いことのように言われますけれども。やはり選挙の結果として生まれた総理大臣が、強いリーダーシップを持っている。

官邸主導というのはなにも、加計学園とか森友学園のためにあるわけではなくてですね。各省庁の利害が対立したときに、トップダウンでそれを調整するという機能です。これは引き続き躊躇することなく、萎縮することなくワークをさせていきたいと思っています。

竹中:ぜひですね、その強い姿勢を持っていただきたいと思います。

加計学園の話は、私も特区諮問会議のメンバーで一部始終を見ておりますけれども。あれは、もう言いがかり以上のなにものでもないわけですよね。みなさんは言えないから私が言いますけど、これは言いがかり。関西弁で言ったら「いちゃもんですわ」ってやつです。

(会場笑)

しかし、現実問題として、それによって世論は影響を受けるんですよね。印象操作で。その怖さは民主主義社会のなかにあるわけです。それとしっかり闘っていただきたい。

長期政権としてのレガシーをどう残すか

竹中:それともう1つ、チャレンジ。すみません、モデレーターの特権を活かして。

先ほど言いましたように私はConnected Industriesの1つのきっかけとして、政府が自らやれることはずいぶんあると思うんですよ。これをやっていったら、安倍内閣は非常に大きなレガシーを残せるのではないか。長期政権としてのレガシーをどう残すかは、やっぱりみなさんすごく関心があるんです。

民間にいろいろ要請して民間を誘導するというのが、政策の基本ではあります。例えば、法務省の不動産の登記や法人登記、あの登記の制度を全部ブロックチェーンで変える。これを政府が自らやったらどうですか? 

そしてそれを外部に発注して、みなさんにビジネス機会を与える。政府がやっているいろんな会議とか取り引きを全部、要するに対面じゃないようにする。そのための設備投資をする。

消費税が上がって2兆円入ってくるんだったら、それを初期投資に使えば、かなりのことができます。これは初期投資だから1年だけ使えばよくて。2年目からは、教育とか別のことに使えるわけです。そういうことを実は私も民間の立場から提案していきたいと思うんですが、大臣はいかがでしょうか。

世耕:これ、まったく同感です。ただ、やるのはすごく大変。だから今「隗より始めよ」ということ。この間、就任した直後、省の全局長を集めてやったのが、まず我が省にまつわる手続きを全部電子化、簡素化。電子化はできていたんですけど、こんな電子化だったら紙のほうが楽っていう電子化になってまして(笑)。

(会場笑)

本当そうなんですよ。この間も、あるベンチャー企業家が経産省の受注を受けようと思って、まず会社の登録っていうのやんなきゃいけないんですけど。

その登録のために法務局を訪ねて、ちゃんと自分の会社だっていう証明をして。それから入札のための入力をするのに、全部成功するためには、ドラゴンクエストをやるよりも難しかった。「カタカナ」って書いてあるんだけど、全角か半角かわかんなくて何回も入力する、とかですね。

そういうところの簡素化をまず、経産省の受注のところからしっかりとやっていって、それを他省庁に広げていく。ということもやっていきたいと思います。

経産省で急速に進むAI化

竹中:私は本当は、想定問答をつくるのも国会のあれも全部AIにやらせたらいいと思うんですよ。

世耕:いや、今うちはやってます!

水野弘道氏(以下、水野):まったく同感です(笑)。

世耕:経産省は今、AI化しました。それで、全部速くできるようになってます。

水野:それ「国会軽視」って言われちゃうんじゃ……(笑)。

世耕:国会の質問なんて日頃から準備してりゃ、だいたいわかるんです、これ。

(会場笑)

竹中:いやいや、ストップ、ストップ。

水野:私も想定問答、毎日つくらされてますから言いたいことはあります(笑)。

竹中:私は言ってもいいですけど、この人たちはちょっと(笑)。あまり言ってはいけないのでですね……。でも、本当にそうなっていかなきゃいけないと思います。

世耕:経産省は、国会想定問答づくりで徹夜はなくなりましたから。もう締め切りを11時にしましたから。「夜の11時までに絶対につくれ」「そのためには、日頃からちゃんと準備をしとけ」ということも今やっていますね。

民間が民間に対してもっと寛容になるべき

竹中:はい。GPIFができることもありますよね?

水野:GPIFができることは、いろんなマーケットに世界のスタンダードを入れたりして、働きかけることだけなんですけど。

私が最後に言わせていただきたいのは、政府はどうでもいいじゃないですか、と。やっぱり民間の力だと思います。あとは民間の人たちが民間の新しいチャレンジに対して、もっと寛容になる必要があると思うんです。

シリコンバレーの人たち、昨日私も(アル・)ゴアと一緒にテスラに乗りましたけど。テスラの自動運転のソフトウェアなんて、どうしようもなくだめなんです。でもみんなね「今回もだめだったよね。来月はどうだろう?」って言いながら、楽しみながらいっしょにチャレンジしていて。

ああいう環境にしていかないと、やっぱり日本はだめだと思うので。「安全性とかは全部政府に担保してもらって、しかし、そのなかでも自由を与えてくれ」みたいな。その相反するような期待を政府に抱くよりも、ぜひ経営者のみなさんがお互いに寛容になって、いろんなチャレンジをしてほしいな、と思っております。

竹中:はい。ありがとうございます。本当に今チャレンジの時代だということだと思います。

Connected Industries、シュンペーターがイノベーションという言葉を使いましたけれども、最初の言葉は「新結合」。新しい結びつきというのが、イノベーションの語源だ、と。改めて原点に戻る、というご提案だったと思います。

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