
2025.02.26
10年前とここまで違う 落とし穴だらけの“ERP to ERP”基幹システム刷新が抱えるリスクと実情
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瀬尾傑氏(以下、瀬尾):そういうマナーやスキルが、さっきおっしゃったような本当にカミングアウトできる環境をつくるんですよね。
僕らは、LGBTというと他人事のような気がしますけど、どの人も……僕も、たぶんみなさんもそうだと思うんですけど、人に言えない悩みやコンプレックスを必ず抱えてるわけですよね。もしくはぜんぜんない人もいるかもしれないですけど(笑)。
それをなかなか言えないんだけど、それが職場やコミュニティで言えるとすごく楽になりますよね。
杉山文野氏(以下、杉山):そのことで言うと、僕はこうやってカミングアウトをして生きているので、本当にありとあらゆる悩み相談が全国からくるんですね(笑)。それは自分が人に言えないことを先に言っているので「あ、この人にだったら自分の言えないことも言えるんじゃないか」と。
例えば、みんなでこうやってバァーって話す機会があって、最後に握手をしようとしたら、パッと手を引かれた方がいて。「あれ? なにか悪いことしちゃったかな?」と思っていたら後から連絡がきて。「実は自分は、手に汗をかくのがすごくコンプレックスなんです」と。だから握手とかもできないし、恋愛でもデートに誘われると「手をつながれたらどうしよう」と思うと怖いという。
そういう話を聞いたら「いや、別にそんなことぐらいさ」と、いい意味で声をかけてあげたいなって思うんですけど。でも自分の悩みが世界で一番大きな悩みじゃないですか。悩みに大きい、小さいもないと思うんです。そういうことで言うと、誰だってマイノリティ性を持っていると思うんですね。
今のこの社会でこういう話をすると、セクシュアルマイノリティをどう受け入れてサポートして……と、あたかもセクシュアルマイノリティに課題があるかのように語られるんです。
例えば、セクシュアルマイノリティが弱いから、いけないから、自殺率が高いなんて言われてるんですよ。マイノリティが弱くていけない存在だから自殺をしてしまうのか、それとも自殺に追い込むほどプレッシャーをかけていることに未だに気付いていないマジョリティの課題なのか。というと、やっぱり、この後者に比重がある。
「マジョリティって一体なんなんだ?」というと、マイノリティの集合体なわけですよね。僕も、セクシュアリティに関してはマイノリティかもしれないですけれども、ほかのことに関してはマジョリティのこともあるんですね。
そうすると、誰だって人には言えないコンプレックスやマイノリティ性が、1人1つぐらいはあるんじゃないかと。そのマイノリティ性を持っている人、マイノリティ、マイノリティ、マイノリティ……と集まってマジョリティになっているのであれば、マイノリティの課題に向き合うということは、マジョリティの課題に向き合うことになるんです。
マイノリティにとって優しい社会っていうのはマジョリティにとっても優しい社会なんじゃないかな、と思いますね。
瀬尾:なるほど。
谷家さんは経営者であり、投資家であるわけなんですけど。このLGBTの問題にいろいろ取り組むようになって、そのなかで得た気付きはなんでしょうか?
谷家衛氏(以下、谷家):そうですね、今、文野くんがすごくいいことを言っていたと思うんです。僕は逆にLGBTの人たちに学ぶことが、本当たくさんあると思っています。
GLOBISで学んでおられる方は、将来、起業家になりたかったり、経営者になりたかったりされてると思うんですけれども。例えば、スティーブ・ジョブズとか、小林りんちゃんとか、自分の個性を思いっきり表現したからすばらしいものがつくれたんだと思うんですね。
でも、僕も含めなかなか、社会の基準に合わせようとすると簡単じゃない。ある意味ものすごくエネルギーが強い人であれば、自分の個性を発揮できると思うんです。でも、いろいろ遠慮してできないときもありますよね。
それでLGBTの人たちの、文野くんやまささんたちを見てて思うんですけれども、きっと、カミングアウトするまでは本当に大変だったと思うんです。けれども、1回カミングアウトしてしまったら、正直もう社会の基準に合わせようがない(笑)。
もう自分の個性を発揮するのに、すごく正直だと思うんですよね。これは本当すばらしいことだなと思っています。逆に、すべての人は本当はクリエイティブなんだと思うんですよ。みんなそういう部分を持っているんだと思うんです。しかし、社会の基準に合わせようとしても、なかなか表現しにくい。
でも、LGBTの人たちはいったんカミングアウトをしてしまったら、今度は自分を思いっきり表現することに対してより正直であるから、クリエイティブなんだと思うんですよね。その前の悩みは、本当に大きいと思うんですけど。
僕は本当にLGBTの人を含め、マイノリティの人が次世代のリーダーになるんじゃないかと強く思っています。
というのは、僕に言われたくないかもしれないですけど、資本主義はどう見てもいき過ぎだと思います。
力による支配とか、極端な貧富の差とか。こういうのにみんなけっこう疲れていると思うんですよね。だから次世代のリーダーは、そういう痛みのわかるマイノリティから出てくるんじゃないかと思っています。
僕は、LGBTの人たちと話しいてるとすごく学ぶというか、自分こそこっちのほうに近づかないといけないなと強く思うんですよね。例えば、文野くんの本、瀬尾さんの講談社の『ダブルハッピネス』、めちゃくちゃいい本ですよね。いや、読んだら本当に感動するんですよ。起業家になりたい人とか、経営者になりたい方、ぜひちょっと読んでいただいて。
そうするともっと自分を、正直に思いっきり表現するということについて、より考えさせられると思うんですよね。いい起業家や経営者になろうと思ったら、絶対それが必要だと思います。逆に、LGBTあるいはマイノリティの人から学ぶことのほうが、ずっと大きいなと思うようになりました。
瀬尾:さっき文野さんがおっしゃった、まさにそこで学びを得ることができるということですね。
マイノリティの問題を考えるときに、今話題になってるバニラエアの問題で、僕は非常に暗い気持ちになったり怒ったりしてます。
ご存知の方はご存知だと思うんですけれども、ネットでかなり話題になってますよね。車いすの方が「車いすを利用する」と言わずに予約をした、と。その場でかなり揉めたうえで乗ったんですけど、自分で(階段を)上がるようなかたちになった。ということで、話題になっているわけですよね。
これ、僕はなにが一番暗い気持ちになったかというと、1つは、そもそもその航空会社にもし問い合わせをしていたら、お断りする方針だったということなんですよね。その飛行機には、車いすで介護が必要な方、介助がないと乗れない方は乗せないと。これはもう論外なんですけど。
実はそのあと、いろいろ議論が出てくるなかで、その方はどうも運動としてそういうことをやってる方なんだと。問題提起としてやってる方だ、ということもわかってきた。
だから、あえて言わなかった、それで反応を見ようとした。あるいはその社会に波紋を投げようとしてやったんですね。それに対して「結局、彼はクレーマーじゃないか?」みたいな話がネットでどんどん出ていてですね。
僕はこれを見てると、2つ思うことがある。1つは、そういう社会運動を起こすときに、なにか波紋があるとそれに対して「迷惑だ」「クレーマーだ」というのは僕はすごくおかしいなと思ったんです。そして、そんなことを言い出したら、キング牧師だってクレーマーなわけで(笑)。
そして、もう1つ。「障がい者」というときに、その根底になにがあるかというと、「その障がいとはなににあると思っているか」ということ。障がいをもたれてる方にあると思っているのか、あるいは障がい者が自由に生きれない社会に、社会の側に障害があると思っているのか。ここで、見方がぜんぜん変わってくると思うんですよね。
だから「クレーマーだ」という批判なんか出てて、なんかこう、すごくイヤな感じを受けて、非常に悲しくて怒ったりしてたんですけど。
そこのご意見をおうかがいしたいなと。柳沢さん、いかがですか。
柳沢正和氏(以下、柳沢):この話、みなさん、ご存知の方多いと思うんですが。同じようなことが40年前にも起きています。1977年、川崎駅前の東急バスなんですけど。
これは、車いすの方がこのバスを利用しようとしたところ拒否されたという事件でした。その年に、運動家の方々が這いつくばってでも乗るというのをビデオに撮って、当時NHKに流れてすごく大きな問題になりました。
そこで東急バスがすごく偉かったのは、「『プロ障がい者』だ!」と責めるより「これはいい機会だ」と考えて、自分たちのバスの設計をし直して、ステップが低いバスにしたんです。そして、フレンドリーな会社になっていったわけですね。同じようなことを東急インも、10年ほど前にやられてたので。覚えてらっしゃる方もいると思うんですけれども。
どんな企業も、どんなサービスも、常に完璧であるというのは非常に難しいですよね。常に組織は変わらなきゃいけないというのは、今日のあすか会議のテーマにもなっていると思うのですが。
こういった問題があったときに、「これがチャンスだ」と捉えられる会社、社会と、これを今の頭のなかにある効率性だけで済ませてしまい「迷惑だ」と拒絶してしまう社会とでは、やっぱり10年後、20年後の強さが変わってくるんじゃないかと思っています。
今、うちの会社がLGBTということをやっていて、次の課題としてあがってるのが「世代」なんですね。往々にして年を取ってくるとだんだん「窓際族」と言われるわけですけれども。これは、完全に人材の損失でもあるということで、じゃあどうやって会社をもっと世代間を超えて利用できるか。利用というか、活用していけるのかと。
そういうかたちで次々あらわれてくるテーマを、「どうやって今の組織を変えていくか」ということによってチャンスと捉えられるかどうか。これが命運を分けるんじゃないか、と私は思っています。
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