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厚生労働大臣塩崎恭久氏トークセッション(全2記事)

保育園は厚労省、幼稚園は文科省… “管轄バラバラ問題”を厚生労働大臣はどう考えている?

2017年4月19日(フォー・イ・ク)、保育の日。保育関連業界で働く人、行政、政治、メディアなど、あらゆるステークホルダーらが「保育」について語るイベント「みんなの保育の日2017〜子どもは社会で育てよう!〜」を開催。その中で、厚生労働大臣・塩崎恭久氏と、フローレンス駒崎弘樹氏による対談が行われました。今のままでは「保育=つらい」はなくならない。この状況を変えるために必要な改革とは? 大臣初の“イクボス宣言”を行なった塩崎氏に、駒崎氏が保育への覚悟を問いかけました。写真提供:(株)フォトクリエイト

厚労省が「イクボス」を推進中

駒崎弘樹氏(以下、駒崎):大臣。この前、イクボス宣言をされていたじゃないですか。「大臣初だ、すごいなぁ」と思って、安倍内閣のほかの省庁の大臣も「俺も続くぞ!」と来るかと思ったら、みんな「えぇ〜」みたいな感じで引いてるじゃないですか。あれとか、情けなくないですか?

塩崎恭久氏(以下、塩崎):これ、厚労省の若手がアイデアを出してやってくれているのですが。彼らが今、各省庁と各企業を回っていて、「ぜひイクボス宣言をみんなもやってくれ」とお願いにいってくれています。やっぱり、政治家が率先してやらないといけないことなので、これから各大臣にもよく言っておきます。

少なくとも、我々の厚生労働省の中では、前月に子供さんが生まれた人たちは、大臣か副大臣か政務官の部屋に一同を集めて、その上司である課長も一緒に呼びまして。それで、「おめでとうございました。ぜひ育児休業を取ってください!」と伝える。

駒崎:ちょっと、圧迫面接みたいですね(笑)。

塩崎:課長に対するパワハラっぽいけど(笑)。目の前でやると、やっぱり言いやすくなるというので。どの時期に取るかは、ご夫婦がどのようなカップルかということによります。この時期に取るのが一番効果的な育児休業だというのは、それぞれですから。それぞれがお好きなように取ったらいいのではないかと思い、それを言い出しやすくするように我々は部屋に呼んで言ってるんです。

駒崎:なるほどね〜。そういうかたちでいろんな手を使って、働き方を変えて、親御さんたちがちゃんとお迎えにも行けて、ちゃんと家に帰ってこれて食卓を囲めるというようにしていかないと。

やっぱり今の働き方だと、「子育て=つらい」ということになってしまうと思うんですよね。

塩崎:さっきの働き方ですが。テレワークというのは、やっぱり子育て中のお母さんなんかはフル活用しないといけないものの1つとしてあるのですが、まだまだ使い勝手が悪くてですね。テレワーク、テレワークってずーっと言っているのですが、たいしたことないんですよ。

役所の中でも、今までは総務省が一番でした。今度は厚労省が一番になろうと言って、一生懸命やっているんです。

駒崎:いいですね。

塩崎:そういうことを率先してやりながら、テレワークの制度を直していかないと、長時間労働になるのではないかという説もあります。しかし一方で、例えばみなさんもどう考えるかですが。

まず家に帰って、お子さんにご飯を作って。そして終わったあと、寝付かせてから仕事をさぁやろうというと、夜22時からは深夜の時間帯です。割増賃金を払わなきゃいけないことになる。そうすると、「深夜労働をさせていると割増賃金がかかって予算がねぇぞ」なんて上司に言われるとか。非常にやりにくくなっているのですね。

これをどうやって健康を保ちながら、でも仕事もちゃんとやって子育てをしても不利にはならないようにしていくか。がんばればなれる、やれるということを、どう制度として担保していくか。我々は本当に考えなきゃいけないということです。

駒崎:おっしゃる通りです。そうですね、がんばらなきゃいけない。

屋内完全禁煙化で「受動喫煙防止」

あれ、大臣。これなんですか? なんか付いてますけど、これ。

塩崎:これは受動喫煙を禁止しようというバッジでありまして。厚生労働省は今、健康増進法を改正して、受動喫煙を禁止しようということになっています。

我々の案はですね。実はオリンピックを開催した……。例えば北京から始まって、バンクーバー、ロンドン、ソチ、そして、リオ。次は東京なのですが。今言った北京からずーっと全部、建物が禁煙なんです。全面禁煙。

駒崎:屋内禁煙なわけですね。

塩崎:屋内禁煙なんです。全部。ところが、我々のところはいろいろなご意見があるものですから、原則禁煙です。でも、喫煙ルームがちゃんとしたものだったら、外に煙が出てこないので「まぁいいかね」というギリギリの案で今やっているのですが。

問題は居酒屋とかですね。「そういうところも許してくれよ」みたいな話になっていて。

駒崎:大臣、その話と子供の話と、どう関係があるんですか?

塩崎:要するに、最近は居酒屋もですね、子供さんがけっこう行っているんですね。とくに、外国の方は子供連れでよく行っています。

そういう子供たちに、タバコの煙を吸わせるようなことは絶対あってはならないし、もちろん妊娠してる女性とかガンの患者さんとか、そういう人たちはいっぱいいるわけです。それと従業員もいますから。

駒崎:妊娠している女性は確かにそうですね。

塩崎:いずれにしても、子供に関連して言えば、未来の子供たちのために「これはやっておかないと、健康は守れないよ」と。お母さんのお腹の中にいるかもわからないし、そういうような人たちにもちゃんと配慮をする。そういうことで、未来の子供たちのためにがんばろうと言って、今これをやっているんです。

駒崎:そうなんですね。確かに、保育園でも一番怖いのはSIDS(シズ)と言って、お子さんが突然死しちゃうということがあるのですが。その発生確率が、やっぱり受動喫煙してる子供は5倍くらいになっちゃうんですよ。

そういう意味でも、やっぱり受動喫煙は良くないなということで、すごくがんばってほしいなと思うのですが。

社会で子供たちを「抱っこし放題」できる日本へ

ちょっと話を戻すのですが。やっぱり厚労大臣には待機児童解消もそうだし、保育、子育てというものにもっと4倍くらい力を入れてもらいたいんですよ!

塩崎:4倍。

駒崎:なんですか、あの「3年間抱っこし放題」とか。そうじゃないでしょ(笑)。「地域、社会で子育てをしよう」だから、親だけが抱っこし放題じゃなくて、社会で抱っこし放題にする。社会でハグしていくというようにしていかないとダメなんじゃないかなと思うのですが。

塩崎:僕、アメリカの大学院に留学した時に「あぁこんな風になっているのかぁ」と思ったのが、キャンパスの中に家族寮があるわけです。その1階は全部保育園ですよ。アメリカ、ハーバードはそうだった。

例えば、スキーに行く。そうすると、必ず子供を預けられるようになっている。ものすごく、子育てフレンドリーに社会全体がなっています。

それから、ベビーシッターというものがあります。僕もずいぶん、高校生でアメリカに行った時も隣近所の子供を、金曜の夜とかね、そういう時に、子供と一緒にご飯を食べて遊んであげて、寝かしつける。ということをやって。昔ですから、1ドル360円の時代ですけども(笑)。1時間50セントとかね、そうやって小遣い稼ぎをしていましたよ。

大学院で行ったときも、実はその家族寮の中で、ベビーシッティングプールというのがあってお互いに時間だけ付けとくんですよ。何時間預かった、何時間預けた。それを付けといて、最後に学年が終わる時に清算をしていくという。

だから、預けたり、預けられたり、いろんなことがその中である。そういうことで、別に制度がなくとも自然に子育てをお互いで助け合うということをやっています。

ですから、それをやれるような社会に変えていくということが大事。日本の大学でキャンパスに保育園があるところは、まだ少ないですよ。圧倒的に少ない。どこに行っても子育てができる、子育てをしている人たちが働いていける。あるいは、学生をやっている。そういった社会に変えていかなければいけないなぁと思いますね。

駒崎:おっしゃる通りですね。ありがとうございます。

保育の質と量の問題は3省のうちどこが突破するのか

それではですね、ここでみなさん。特別に「厚生労働大臣に質問したい!」みたいな方がいたら、本当に1人とか、そのくらいですけれども、ぜひ手を上げてください。いらっしゃいますか? 

あと5分くらいしかないので。すごい機会ですよ!? いかがですか? ないようでしたら、コメント。2万人の方々がコメントをしてくだされば拾いますが、いかがでしょうか?

いませんか? そうしたら僕が(あと5分の時間を)使っちゃいますよ、勝手に。いいんですか? 

(会場挙手)

はい! じゃあ、奥の方。お願いします。どうぞ〜。来てください、来てください。

質問者1:こんなに近くで質問をできるのは恐縮なのですが(笑)。すみません、簡潔に聞きます。

先ほど、経産省の方が話をされました。「保育園の問題は厚労省です。幼稚園が文科省です。こども園が内閣府です」。バラバラになっていますが、保育の量の問題と質の問題は、どこが突破するのでしょうか?

駒崎:縦割りのご指摘でしたけれども、大臣、どうでしょうかね?

(会場拍手)

塩崎:さっき申し上げた、待機児童がたくさんおられる市長さんたちと話をしてみてもですね、やっぱり認定保育園の話と、保育園の話と、幼稚園を活用して、働くお母さんたちが子供を預けるということをやっているということでやってます。

ですから、それは我々が、今言った3つの役所がバラバラにやるものではなくて、いつも連携をするようにしていかないといけない。結局、困るのは市役所の中も3つに分かれていますよ。たぶんね。それじゃダメなので、市長はちゃんと全部を見て割り振っていますね。

したがって我々政府も3省が、今ももちろん一緒にやっていますりでも、その連携をもっと強化をしていかないと、お互いに「そっちのせいだよね」みたいなことで、逃げたり、押し付けあってしまう。そのようなことではダメなので、そこのところはしっかりやっていかなければいけない。

たぶん私の感覚からいくと、子育ての担当大臣は加藤勝信さんでありますから。彼を先頭に、我々3つの役所の中で、一緒にやる仕組みをもっと強化をしていくということが大事なのかなぁと。

そのために安倍内閣は、子育て担当の大臣を置いているということでもありますので。加藤さんにもよく言っときます!

駒崎:一応、子ども・子育て支援制度は2015年から始まって、内閣府がとりまとめるぞというように、今まで空いていた溝を埋めようといった感じになってきているとは思いますが。

まだまだ制度の壁はあり、そこの制度と制度の間へこぼれ落ちる子供たちもいますよね。だからそれを連携して、拾っていこうじゃないかということだと思うんですよね。

「待機児童解消加速化プラン」第2弾の具体案は?

ありがとうございます。ほかにどなたかいらっしゃいますか? 

(会場挙手)

はい、じゃあそちらの女性の方。ありがとうございます。ちょっと時間がぜんぜんないので、簡潔にお願いします。

質問者2:2017年度末までに待機児童解消を実現できなかったということで、また6月に新プランを策定されるということなのですが。今の時点、4月20日になろうとしていますけれども、どの程度、具体的に話が進んでいるのかをお聞きしたいと思います。

駒崎:どの程度、具体的に進んでいるか!

塩崎:プランに向けて、先ほど申し上げたように、まず4月の新年度になった時に、どういう状況かということを、今徹底的に調べています。それで、これからやるわけでありますが。

先ほど申し上げたように、女性がこれからさらに働くようにたぶんなるだろう、社会で活躍されるだろうということが1つ。そして、我々は出生率も上げていこうということでやっていますから、子供さんがどのくらい出てくるのかなぁと。

それから保育園をどれだけ整備できるのか。そして、保育士をどれだけ満足するかたちでやれるのかという、連立方程式を解かないといけない。

待機児童は、先ほどもちょっと話していましたが、最後の尻というか、今言った連立方程式の最後に出てくるものであります。ここが一番の症状として出てくるわけですが。それぞれ女性にはもっと活躍してもらいたい、でも子供さんももっとたくさんいたらいい、そして、保育園も用意をする。

それもいろんな保育園を今やっていますから、そういうことを全部連立でやってみて。それでゼロになるように、絶えずしていこうということは、いろんな変化があるのでそれをどうやって絶えずゼロにできるのかと。

例えば29年度に仮にゼロになったって、すぐにまた変わりますよ。それをいつもゼロにし続けて、困る人がいないようにするというプランを作っていこうというのが、今度のプランでなきゃいけないのだろうと思っています。

なので今、一生懸命みんなで考えつつ、まずは調査をして、さらにどういうことが今後起き得るのかということを今の連立方程式のそれぞれについて考えていこうと思っています。

駒崎:ありがとうございます。大臣、2ヶ月ですからね。もうガッツリ集中して、プランを作っていきましょう。

子育てフレンドリーな日本を目指して

最後にですね、大臣、この国の保育の未来ということで、保育士の方や、あるいは、親御さんの方、いろんな方々が見られています。ぜひ、政府として、どんな気合いでやっていくのかを一言いただいて終わりにしたいと思うのですが。

塩崎:先ほど申し上げたように、すごく子育てフレンドリーで、今、出生率も2倍ちょっといっているアメリカを見てみると。やっぱり保育園で働いている人たちは、男性もいるということと、みんな本当に子供が好きで、明るくやっています。

そんなに疲れた顔をしていない。日本は、保育士さんがちょっと忙しすぎますよね。なんかね。

そういうことで、保育士さんがあまり元気がないと、やっぱり子供は元気がなくなっちゃうので。保育士さんも、そして子供さんも、みんな明るく元気になるように、我々は諸条件を整えていかなきゃいけない。そこで、さらにこれからがんばっていきたいと思います。

駒崎:なるほど。ありがとうございます。

ぜひですね、このように大臣は直接、聞く耳を持ってくれている。

先ほど、天野妙さんもおっしゃっていましたが、とにかく声を上げていくこと。全国で、「こうしてほしいんだ」という本気の声を、しっかり届けていくということが大事ですね。政府も我々民間も一緒になって、この国の子供の課題、親子の課題を解決していきたいと思っています。

この「みんなの保育の日」が、この場が、そのムーブメントの出発点になればいいと思っております。ぜひみなさん、これからも共に走っていただければと思います。

大臣、今日は本当にどうもありがとうございました。

塩崎:ありがとうございました。

(会場拍手)

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