CLOSE

トライセクター・リーダー公開対談 渋谷区長・長谷部健氏(全8記事)

代々木公園をスポーツの聖地に? 区長が語る渋谷の未来図

日本政策学校学長 金野索一氏と株式会社フロンティアインターナショナルが共催している「トライセクター・リーダー公開対談」。第6回は渋谷区長・長谷部健氏を迎え、企業、NPO、行政の3つの分野で活躍してきたこれまでのキャリアについて振り返りました。質疑応答では会場からの質問が殺到しましたが、一つひとつに丁寧に回答し、これからの渋谷の可能性について現時点で考えていることを語りました。

パートナーシップの証明書を発行するまでの過程

質問者6:お話ありがとうございます。○○と申します。長谷部さんがLGBTの問題に気づいてからパートナーシップの証明書を発行するまでの制作過程とか、立案までのプロセス、具体的な内容をお聞きしたいと思います。

長谷部健氏(以下、長谷部):さっき話したとおり、文野くんと出会って考え出して。「パートナーシップ証明書というのがいいんだろうな」というのは自分の中で思って、聞いたリアクションもそうだったので。まずは法的根拠をどう作っていくのがベストかなと思って、弁護士の人に相談しました。その人はいろいろネットワークで調べてくれて、「こういうのがいいんじゃない?」と。

あと、当事者たちに相談して……。当事者たちのネットワークもあるんですよ、霞ヶ関とかにもあるし、法曹界にもある。当事者にもネットワークがあって、その人たちと話をして、どんどん肉づけしていきました。議会での発言は、人権問題と言うだけの切り口はやめようと思ったんです。というのは、決して僕が日本で初めてそれを言い出したわけではなくて、当事者の人たちがすでに言ってるんですよ。だけど、みんななかなかそこに寄り添えないんですね。

だから、僕はさっき言ったように、渋谷がこれから国際都市として成熟発展していく上で、この問題を通過点にしなければいけないし、クリエイティブシティーとして、エンターテインメントシティとしてもっと成熟してくるんだったら、LGBTのみなさんともっと一緒になって混じり合って。LGBTだけじゃなくて、外国人もそうだし、障がい者もそうだし、いろんな人が普通に混じり合っていくのが渋谷の成熟に繋がるんだという文脈で、議会で発言しました。

そうすると、やっぱり渋谷の区議会議員は渋谷が好きですから、「そうだよな」と思ってくれたと思うし。みんながみんなじゃないけどね。でもやっぱり、前の区長も高齢だったけど、「そうかもな」と。ただ、最初は前の区長さんも「そんなことあるんだ」というくらいだったんですよ。だけど、その後に当事者を紹介して会ってもらったりとか、当事者を入れた委員会を立ち上げてもらったりとか。

ほかの議員、岡田(麻里)さんという議員の方がいて、次の年に無所属で出た女性の人、その人はちょっと人権っぽく言ってくれたんだけど。「僕(長谷部氏)の答弁で、前向きに考えて検討すると言っていたのはどう進んでいるか?」とか、かぶせてくれて。委員会ができるようになったりとかして。やっぱり3年かかって答申のところまで持っていったという感じです。

質問者6:ありがとうございます。

金野索一氏(以下、金野):ほかにはありますか?

(会場挙手)

渋谷について議論できる場を作りたい

質問者7:○○と申します。今日はどうもありがとうございます。すばらしい話で、本当にありがとうございました。変な言い方ですけど、「21世紀の区長さんというのは、こういう方なんだろうな」と思っていた方が、目の前にいらっしゃるのでうれしく思います。僕は生まれも育ちも渋谷で「I love 渋谷」なんですね。ですから、すごくうれしいです。シブヤ大学とか、昔、green birdにも参加したことあります。

長谷部:本当ですか?

質問者7:ありがとうございます。
それで、ちょっとお願いがあるんです。行政のあり方なんですけど、私は、地域が自分たちのことを考えて決めるということを生み出せないのかなと思っています。もともと行政というのは、集落ができて、例えば洪水があって、それをどうしようとみんなで考えて、お金を出し合ってという感じで集まったと思うんですね。ですから、行政と私たちがすごく……なんか外にいると(感じている)。

この間、私は区に要望があって(区役所に)行ったんです。そしたら区の方が、ずっと怒ったような顔をしていらっしゃって、僕は「なにか悪いことしました?」と言ったら、急に「え?」と言って、違う態度になったんですね。だから、なにか行政の方は勘違いをされていて。

「私たちの権限をあなたたちに委託して、あなたたちがやっていられるんですよ。私たちが主権者なんですよ」ということを言ったら、嫌な顔されたんですけど(笑)。でも、本来そうなんです。主権者は私たちなんです。もちろん、その方もそうかもしれませんけどね。

ただ、行政の執行を代弁させていただいていると言うんですかね。私たちがやっぱりいろんなことを決められる。例えば教育です。この地域でこの子たちはどう育てるかというのは、やっぱり変なことをやっている子供には「こんなことやってちゃダメだぞ」と、みんなが口を出すと思うんですね。だから、そういった仕組みを作れないのかなと思ってます。それが1つです。

もう1つ、私は渋谷が大好きなんですけど、すごくきれいな渋谷。あとは、落書きが書いてあるエネルギッシュな渋谷も嫌いじゃないんですけど、やっぱり自分の建物に書かれてみると、すごく嫌なんですね。すごく迷惑で、あれはなかなか落ちないんですよ。

僕は、あれを本当に警察の方がなくそうなんて思ってないなと。私、電話したんですけど、「いや、いたちごっこなんだよ」ということを言われて。でも、本当に張りついてパトロールして、みんなで監視カメラをやって……。あの人たちが本当にやめてくれれば、もっと街はきれいだと思います。そういった取り組みをぜひ、していただきたいなと思ってます。

長谷部:おっしゃることはよくわかります。みんなで、自分たちで考える……例えば、学校なんかはコミュニティスクールとなってますんで、実はできるんですよ。先生を選ぶこともできるし。こういうテーマでやっている学校だから、「英語教育でいきたいから、英語が得意な先生を呼ぼう」と、そういうこともできる。みんな知らないだけ。

あとは、僕はもっとフューチャーセッションみたいな、ああいうものを取り入れていこうと思っていて。なんかタウンミーティングに近いんですけど、フューチャーセッション形式でファシリテーターを置いて、ポジティブにこの街をどうするかという議論できるような仕組みを作りたいんで。少なくとも、新庁舎にはそういう場所を作ろうかなと思ってます。

防犯カメラを街に増やす

行政の人がこうだというのは、「申しわけないな」という思いもあるんだけど。一方で、これはやっぱり夫婦ゲンカと一緒で、「どっちが悪い」と言い合っている感じもあって。要するに、強く言ってくる人が多いんですよ、区役所に。だから、(行政側も)構えちゃってる。「いけない、クレームを言われた!」と思っちゃうのかもしれない。
お願いしたいのは、時々いいことやってる、けっこうがんばってやってるので、そういう時は褒めてあげてほしい。だから、お互いがそうやって近づいてもらわないと、きっと今の関係は解消しないと思うんです。

もちろん行政も悪いところがあるし、でもがんばってる人もいる。だから、叱ったりけなすこともいいけど、褒めることもできれば両方してもらえたら、もっと関係がよくなるんじゃないかなと思います。

落書きについては「いたちごっこなんだよ」と、僕も言っちゃうんですよ(笑)。当然、できる限りのことはしていこうと思うし。もう少し、僕的には防犯カメラを街に増やしたいなと、実は思っています。というのは、やっぱりテロが心配なんです。監視されている感じが嫌だという思いはあるけど、でもなにも悪いことをしてない人なら大丈夫だし。

別に毎日人がずっと見ているわけではないので、監視カメラがあったほうがやっぱりいいかなという気がしています。ただ、これはちょっとナーバスな話なので。僕はそう思っていますけど、それこそ、これからそれぞれの街と話しながらやっていくつもりです。たぶん、23区内のなかでは渋谷は非常に少ない、実際。それは考えていかないといけないかなという気がしています。
質問者7:ありがとうございます。

金野:今日のスケジュールもあるので、お2人で最後。

コミュニティリーダーは合コンがうまく仕切れそうな人

質問者8:お話ありがとうございます。今、シャープという会社で働いているのと、あとは金野さんの日本政策学校でもやらせていただいております。今、私は会社の業務の1つで街作りをやっているんですけど、そのなかでやっぱりおっしゃられていたコミュニティのリーダーとなる存在が、すごい大きいなと感じております。

やはり何人かお会いしていると、もともと普通の主婦だった人がそういうポジションになったりとか、「この人はダメだろうな」と思っていた人がなったりとか、いろいろあるんですよ。私よりぜんぜんいろんな方に会っていると思いますので、コミュニティのリーダーとなる人がどうやって生まれるのかとか、どうやって見つけられるのか……。においみたいなものだと思うんですけど、そのへんでなにかあったら教えていただきたいと思います。

長谷部:まず、シャープがんばってください。

(会場笑)

コミュニティリーダーは、green birdの場合でいうと、基準があって。合コンがうまく仕切れそうな人とか、大学のサークルのリーダーをやっているようなタイプが向いているなと思って、選んでいました。というのは、ゴミ拾いだけだとおもしろくないので、人を呼ぶために次々とアイディアを考えるんですよ。

さっき言った、歌舞伎町だとホストクラブにオープン前に行けたりとか、福岡のチームなんかは必ず飲み会をしていたりとか、あとは三重のチームだと農園を作って、そこで一緒に農業ができるようなものだったりとか。そういう空気のある人というのは、やっぱりうまく合コンを仕切る人。僕、別に合コン番長じゃないですよ(笑)。

(会場笑)

サークルのリーダー、キャプテン。ただ、部活の体育会のキャプテンほど重たくなくていいと思っていて。僕もそうですけど、ちょっとお調子者で、ちょっと和ませる系みたいな。いろんなキャラがあっていいと思いますけどね。そうやって選んでました。

質問者8:ありがとうございます。思ってみると、そうかもしれないですね(笑)。

長谷部:頼りにならない答えですみません(笑)

金野:では最後、女性の方。

ITを使って健康な社会に

質問者9:今日はすごく楽しいお話、ありがとうございました。私は今、房総半島でエコ・フューチャーセンターということで、社団法人efcoというところを、地方の自治体の首長さんたちと一緒にやっているんですけども。

もともと原宿商店会のあたりにおりまして、今日ご案内をいただいた時に、「あそこでgreen birdをやっている方が今、区長さんなんだ」ということを改めて知って、ぜひすてきなコラボができたらいいなと思って、今日はお話をうかがいに来ました。

やっぱり地方なので地方創生とか、ふるさと納税とか商品開発とか、そういうことをやっているんですけれども。今、医療の問題というのが、私がこのプロジェクトに関わる前からずっとやっていることなんですけど。

国も区でもそうだと思うんですが、やはりガンの問題に代表されるように、非常に国家財政を圧迫するようなかたちになっているんですけれども、本当に効果のある伝統療法というものが、なかなか深刻な病気を宣告されちゃった人は選択しにくいと。

身近なところでたっぷり滞在時間取りながら、なおかつ健康を取り戻して、都心の自治体の方が医療費削減にすごく画期的なデータとして出せるようなものをやっていただくと、国としてもものすごくほしいソリューション事例になると思うので、そのへんについてイメージをおうかがいできればと思って、質問させていただきました。

長谷部:この都心でどれだけみんなが健康に暮らせるかというのは、当然大切になってくると思います。今、ITを使ったやり方があるんじゃないかなと思っていて、データを取ったりとか、もちろんセミナーもそうですけど。

あとは、例えばですけど……。今、日本人の人は、学生時代の部活が終わると急に運動しなくなるんです。「あのころの嫌な思い出を……」と思っている人もいるかもしれないし(笑)。でも、部活が終わった時に急にスポーツ人口が減るんですね。だから、そこをなんとかしたいなと思っていて。(キャッチフレーズは)部活復活で「ブッカツ」とかいいかなとか、いろいろ考えてるんですけど(笑)。

(会場笑)

でも、そこも例えば今、ネットとかで野球チームの対戦相手を見つけてくれる会社があったりするんですよね。ただ、それに近い……パクったわけじゃないんですけど(笑)。「今週末、フットサルをしたいな。でも、僕、チームも入ってないし、どうしよう?」という時に、そこに「フットサルしたい」「レベルは2くらい」「土曜日」とか入れると、渋谷区でちょうど空いているところでグラウンドの推薦がプッと出てきて、「あそこに行こう」とか。

なにかそうやって、みんながスポーツに親しむとか。あと、これはもっと考えなきゃいけないと思っているのが、渋谷区のど真ん中に代々木公園と明治神宮があるんですよ。僕は今、朝、代々木公園を走るんですけど、やっぱりあそこをもう少し、スポーツの聖地じゃないけど、みんながあそこでなにかを感じてもらえる……。そこで育ったというのもあって、思い入れも強いんですけど。なにかそういう場所として位置づけられないかなと。

たぶん、これは1つのことじゃ解決しなくて。今度1校、小学校の校庭を芝生化するんですけれども、この夏。そこもたぶん、子供たちにとっていい場所になるかもしれないし、地域の人たちが関わってくれるいい場所になるかもしれない。そういう仕掛けをどんどん今、していこうかなとし始めています。

質問者9:ありがとうございました。

金野:本当に長時間、今日はありがとうございました。いろいろお忙しいなかで、このあともいろいろ入っているにも関わらず、来ていただきました。じゃあ、みなさん、拍手で。

(会場拍手)

金野:ありがとうございました。やりたいことはやったほうがいいということで、実践というお話があったと思います。みなさん、ぜひ目の前のできる範囲でトライセクター・リーダーを目指して、日本、世界のために活動を始めていただければなと思います。どうも、今日は本当にありがとうございました。

長谷部:ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 大企業の意思決定スピードがすごく早くなっている 今日本の経営者が変わってきている3つの要因

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!