2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):今日はお時間いただきありがとうございます。この対談のきっかけは、先日北村さんと話していたときに「そもそもPRって何なんですか? マーケティングやブランディングとどう違うんですか?」と私が疑問を投げかけたことが始まりでしたよね。
そこでお話しいただいた内容がすごくおもしろくて、これはぜひ記事にしたいと。
北村俊二氏(以下、北村):私には荷が重いテーマですが、がんばらせていただきます(笑)。
川原崎:それでは、簡単に自己紹介をお願いします。
北村:もともとは、デジタルハリウッドで社員として働いていて、1年半ぐらい、企業のコンサルや人材育成、Web系の講座の開発、そして新規事業の開発などを担当しました。
前職はビルコムというPR会社にいまして、その創業メンバーとして立ち上げを行いました。そのあとアウルという会社を2006年に立ち上げ、今年で12年目になります。
川原崎:ありがとうございます。まず「そもそもPRってなんですか?」というお話からお聞きしたいです。
北村:これ、難しいんですよね。
川原崎:難しいんですか?
北村:一般的には、メディアを通じて情報発信していくというのが広義のPRです。Public Relationsなので、メディアだけじゃなくて、例えば行政やステークホルダーなど、そういったところと良好な関係を作っていくというのがもともとPRの意味でした。ただ、最近だと「メディアを通じた情報発信」という解釈に少し変わってきているという側面がありますよね。
川原崎:なるほど。PRとか広報の方は、メディア側からすると、「タダで情報を載せてくださいという内容の一斉メールを送ってくる人」という印象があると思うのですが(笑)、そのあたりってどうなんでしょうか?
北村:基本的にはお金を払わずに載せてもらうのがベースですね、15年前ぐらいに『ゲリラマーケティング』という本が流行りました。
まさに「お金を使わずにいかに自社をPRしてプロモーションしていくのか」というのが、その時のテーマだったんですよね。それが現代マーケティング・PRの根っこにあるのかな、という気がします。
川原崎:そこでちょっと潮流が変わったということなんですか?
北村:変わったと思いますね。さらにメディアだけじゃなくてソーシャルとか。加えてメディアも細分化していて、Webとか、YouTuberとか、Instagramerとか、PRの対象となるものがすごく増えました。
それは、ネットが出てきたからこそ増えたという世界観があって。それまではテレビと雑誌といくつかの新聞だけPR担当者は押さえておけばよかったんですが、ネットが出てきて一気に細分化して。
ニュースメディアだけでも数千あって、オウンドメディアも含めたらおそらく数万とか、ブログメディアも含めたら数十万に増えてしまったので、そこまで含めた全部をPRの対象にしているというのが現状のPRです。
川原崎:そのメディア環境の変化と、「お金を払わないのがベース」ということの関係性についてもう少し詳しくうかがえますか?
北村:メディア環境の変化により、誰でもSNSやブログを立ち上げて発信できるようになりました。その結果、世の中の情報量がグンと増えたので、受け手側は「価値が高い」と判断した情報には反応するけど、逆に価値が低い情報はスルーする、という傾向が強くなりました。
つまり、世の中全体的に、「価値が高い情報」の需要が高くなったんです。そのため、企業はそのような情報をつくることに、より投資するようになった。一方で、「価値が高い情報」は当然、メディアにとっても重要性が高まりました。
これまで企業はメディアによる情報伝達の対価としていわゆる「広告費」を払っていましたが、その代わりに「価値の高い情報」を対価として提供する、といった考え方が広まり、その結果「お金を払わないのがベース」といった状況を生み出したのではないかと考えています。
川原崎:最近ログミーだと、イベントを実施している企業からお金をいただいて記事広告を掲載することがあるんですが、宣伝会議さんの雑誌などを読んでいると、イベントに対する投下費用というのが年々増えてきているようです。
「これ、なんでですか?」と中の人に話を聞いたら、結局ソーシャルだったりオウンドメディアは誰でも簡単に始められる代わりに、今おっしゃったように数がありすぎて、競合も多いと。だから、余計埋もれてしまうというか。
だからイベントを開いて、リーチできる数が1,000分の1であっても、決裁者と直接会ったほうが営業効率がいいよね、という文脈でイベントを実施したり、社内セミナーを開いたり、というのが増えてきているらしいです。
北村:それ、完全にありますね。僕らもそのニーズは非常に強くなっていて。単純に、イベントの熱量って高いんですよ。体験価値なので。来る方にいかに体験してもらうのかというのは、やっぱり記憶にも残るし、すごくいいですね。
その流れは来てるので、僕らにもイベントだったり、体験できるなにかをベースにしたPRをしたいという声はすごく増えていますね。そして、回り回ってログミーさんにそういう広告の話が。
川原崎:はい。いつもありがとうございます(笑)。
川原崎:一方で、P&Gなどが「デジタル広告にもうあまりお金を払わない」みたいなニュースが出ていましたよね。またCMなどのマス広告のほうに戻ってしまうかもしれないと。
参考:世界の2大広告主、P&Gとユニリーバがデジタル広告費を削減 - BUSINESS INSIDER JAPAN
北村:どちらかというと、ブランドを守るという観点のほうがなんとなく強いのかな、と思っています。インターネットは自社の広告がどこに掲載されるのか、コントロールが利きにくいところがあると思うんですよね。
例えばネットワーク広告でバーっと広がってしまうと、変なサイトにも自社の広告が出てしまったり、いかがわしいYouTubeのTrueViewに自社の広告が出てしまったり、コントロールがなかなかしづらい部分もあります。
そういった意味では、もしかしたらマス広告のようにコントロールできるところにフォーカスしたい、という思いがあるのかもしれないですね。
ただ、それによってリーチできる層はけっこう限られてきています。10代20代ってあんまりテレビを見なくなっていますよね。実際スマホしか持っていないし、家にテレビがない一人暮らしの人も多いわけです。
そうなってくると、その人たちがどういうふうに情報収集するのかということを考えると、やはりスマートフォンをベースにするしかないわけです。となると、やはりネットメディアやソーシャルメディアは、テレビではリーチできない層にもリーチできるので、無視はできない気がします。
川原崎:なるほど。ジレンマですね。
北村:企業のブランドを守りつつも、ユーザーに対して情報をしっかり届けていく。認知と好感度を上げていくところを両立していくというのは、企業のマーケティングという意味でいくと、課題ですよね。
だから僕らも「PRをやってくれ」というオーダーだけじゃなくて、「自社の好意度を上げてくれ」とか「好感度上げてくれ」というオーダーが増えてきています。
川原崎:それって、どうやって計測するんですか?
北村:まあ、もちろんいろいろな計測手段があります。年に1回全国的にモニタリングして、他社と比べて好感度・好意度がどれぐらい上がったのか下がったのかとか、「社名を聞いたときに、第一想起としてどんなイメージを持ちますか?」みたいな、そういったところを調査しています。
「それをこう変えてるためにこういう情報をもっと発信していこう」とか、そういったことをブランド戦略として企業さんは立てたりしています。
川原崎:なるほど。
北村:だからこういう製品とかプロダクトのPRで、僕らはメディアを通じて情報発信させてもらうのですが、さっきも言ったようにメディアも数千以上ありますし、ソーシャルやインフルエンサー、InstagramerとかYouTuberとか。
昔でいうメディアのような存在、影響力のあるコンテンツホルダーが今は大量に増えたので、PRとしては今すごく難しい局面に差しかかっています。
川原崎:今のお話聞いて思ったんですが、メディアの傾向として、PVやインプレッションを重視することが少しずつなくなってきていて。現実には、広告代理店やクライアントの中にはなんだかんだ評価指標としてそこしか見ない人たちもいるので、難しいところではあるんですけど。
WebでPVをコスパよく集める方法は存在するものの、それで集まったPVに意味がないというのはいまや誰でもわかってることだと思うんですが。
北村:エンゲージは下がりますよね。
川原崎:なので今、メディアも数よりターゲティングやブランドに戻ってきてるというか。例えば新聞って、広告載せたとしてもそこから何個買ったかわからないじゃないですか。でもお金を払う、というのがブランドの1つの象徴なのかなと思っていて。ああいう方向に戻ってきてるんじゃないか、という気がしているんですけど。
北村:かもしれないですね。だから、僕らはPRバリューといって3つに分けて考えています。
1つがカバレッジバリューというんですが、「掲載される価値」が一番根底にあります。三角形の一番下のところです。まず掲載されないとそもそも人目に触れないので、それが大事ですと。
その次が、コミュニケーションバリューです。これはユーザーがその記事を見た上でどれぐらいの態度変容をしたとか、もしくはソーシャルプラグインを何回押したかなど。FacebookとかTwitterとかですね。
もしくはそういったものをベースに、自分の気持ちが少し変わって好意度が変わっていくみたいな。そのへんは全部コミュニケーションバリューに入ります。
その上で、最終的にエコノミックバリューというものが経済的な対価としてあります。クライアントの売上が上がるとか問い合わせが増えるとか、経済的な価値として返ってくるところです。平たくいうと、企業はお金を投資して何を求めているかといったら、掲載量ではなくて、エコノミックバリューなんですね。
川原崎:はい。
北村:これは、「いくら投資して、いくら上がったの?」しか見られないと思うので。結局、そこが今の課題なんですよね。なかなか見られない。PRをやってもエコノミックバリューまでは見られない。せいぜいコミュニケーションバリューぐらいまでが少し見えてきたという段階です。
だから、次のステップにいくためには、ここからもう1個上の段階に行かなきゃいけないという。そこはこれからPRとしての課題になるかなと思いますね。
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