2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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坂東孝浩氏(以下、坂東):みなさん、こんばんは。「手放すTALK LIVE」が始まりました。どうぞよろしくお願いします。
武井浩三氏(以下、武井):こんばんは。
倉貫義人氏(以下、倉貫):こんばんは。よろしくお願いします。
坂東:今日はこの3人でお送りしていくんですけれども、まず私のほうから概要を説明して本編に進んでいきたいと思います。「不確実な世界での速く作れるチームのつくり方」というタイトルで、今日は進めていきます。
「手放すTALK LIVE」について、「常識や固定観念を手放す」をテーマに、ゲストを招いてお送りするトークイベントになります。今日出ていただいている倉貫さんは、以前にも出ていただいたことがあって、(その節は)ありがとうございました。ドタ入り返しみたいなのもやったのを覚えてます?
倉貫:なんかやりましたね、そういえば(笑)。
坂東:(笑)。そんなことがあったんです。今日主催している私たち「手放す経営ラボラトリー」は、新しい組織や経営スタイルを研究するラボということで、進化型組織のリサーチ数はおそらく日本一です。
今、2,300人ぐらいのオンラインコミュニティのメンバーと、200名のチームで、コミュニティカンパニーというかたちで、僕ら自身も組織作りをいろいろ試行錯誤しながらやっています。「世界がごきげんにめざめる」というのを存在目的として、いろんな活動をしています。
こちらは一部なんですけれども、僕らの活動のメインは「DXO」(ディクソー)という、組織を進化させるプログラムを開発しています。随時バージョンアップされているんですけれども、テキストを無料で公開して、無料で郵送もしていますので、まだお手元にないという方は、ぜひ手に取っていただきたいと思います。
それからいろいろなイベントをやっています。「手放す経営ラボ」と名前が似ているんですけど、「手放すじぶんラボラトリー」という、武井浩三さんがナビゲーターの(経営塾を)やっています。
坂東:それからYouTubeで「経営ヲタクが語るシン・経営論」ということで(笑)、最近たけちゃんが経営オタクだと勝手に僕が意味付けしているんですけども、いくつかのテーマでやっているんです。最近一層おもしろくなっています。
(ピーター・)ドラッカーとか稲盛和夫とか、そういうビジネス界で名の轟いている人は、「この人、いったい何やったんだ?」みたいなことを、たけちゃんなりの切り口でわかりやすく語ったり。
あとは「ドラッカーってあれ、すげえ有名なのはわかるけど、どういうふうに今自分たちの経営に活かせばいいの?」というのも、たけちゃんなりのいろいろな実践とかを踏まえて、「今の時代はこういうふうに使えるよ」みたいなことを話しているんですね。これはけっこうおもしろいです。よかったら見てみてください。こういった動画コンテンツもいくつかやっていたりします。
今日のスピーカーなんですけれども、私は手放す経営ラボラトリーの所長の坂東と申します。(あと)仲が良さそうな2人でですね。
倉貫:(笑)。
坂東:私はちょっと端っこで寂しい感じです。これはちなみにいつの時の写真でしたっけ?
倉貫:これは2023年6月ですね。
武井:2ヶ月前。
坂東:たった2ヶ月前ですか。
倉貫:2ヶ月前に僕らの会社のイベントがありまして、そこに参加していただいて、お会いした時の写真ですね。
僕らの会社は「納品のない受託開発」というシステム開発をしていて、それのお客さまに、たくさんいらっしゃるんですけど、せっかくなので集まっていただいて。社員も全国各地に散らばっているのを一堂に集めて交流しようみたいな、交流会みたいなイベントをさせていただいた時の写真ですね。
坂東:武井さんは取引先でもあるということですかね? お客さんでもあるということですか?
武井:そうです。eumoのシステム開発とかをお願いしていたり。またおもしろいのが、倉貫さんもeumoの株主だったり。
倉貫:そうですね。ややこしいね(笑)。
武井:(笑)。
坂東:ということで、今日は武井浩三さんと倉貫義人さんと私とで進めていきます。武井さんのことはいつも「たけちゃん」と呼んでいるんですけれども、よかったらたけちゃんのほうから「倉貫さんがどんな人か」を、簡単に紹介してもらってからスタートしてもいいですか。
武井:そうですね。みなさん、こんばんは。倉貫さんとはもう10年ぐらい前かな? それぐらいのお付き合いです。知り合ったきっかけは、当時「ホラクラシー経営」という言葉が、2014年ぐらいに日本に入ってきたんですね。「え? この経営スタイルって、俺らがやってることじゃん」とそれぞれ気づいたのが、俺と倉貫さんだったんですよね。
坂東:それぞれ。
武井:「これ、俺らがやっていることと一緒じゃん」みたいな。倉貫さんもそういう情報をブログで発信したり、俺もブログとかSNSで発信したりして。言っちゃなんですけど、「ホラクラシー」という言葉を日本に広めたのは僕ら2人ですね。
坂東:あ、なるほど(笑)。
武井:いや、けっこうマジで。それぐらい他に使っている人もいなかったし、知っている人もいなくて、まずそれで知り合いました。
でも僕もIT系で、倉貫さんもゴリゴリのエンジニアで、自律分散型経営は「合理性を追求すると絶対ここにたどり着くよね」という、合理的な帰結なんですよね。だから、経営者にとってこれをやらない理由がないというのが僕とか倉貫さんの結論で。
実際、倉貫さんのソニックガーデンはどんどん事業規模も大きくなっているし、お客さんも増えているし、この取り組みを支持する方々が増えているのは、これが理にかなっているということだと思うんですよね。
この「理にかなっている」というのを、根性論とか精神論じゃなくて、エンジニア的な目線でひもとけるのが倉貫さんで。だから付け入る隙がないんですよ。
倉貫:(笑)。
坂東:付け入る隙がない? どういうこと?
武井:だって、「こういう自律分散のほうがいいでしょ」という理由(を語ると)、「じゃあこれはどうなんですか? これはどうなんですか?」って(必ず)いろんな質問が来るじゃないですか。支配したい経営者は「社員に任せたら会社がおかしくなりませんか?」とか、「意思決定は責任を持っている経営者がやるべきじゃないですか?」とか。
そんなの、やっている僕らはもう100回以上考えているんです。それを、僕とはまた違う言葉、切り口で説明できる、本当に稀有な方なので、今日は倉貫節をみなさんに聞いていただきたいですね。
倉貫:いえいえ(笑)。
坂東:それ、いいですね。倉貫節。いきましょう。
坂東:その話ともつながるんですけれども、最近出された『人が増えても速くならない』という本。僕も読ませてもらって、すごくおもしろかったんですけど。
『人が増えても速くならない ~変化を抱擁せよ~』(技術評論社)
これは基本的にはソフトウェア開発についての話で、エンジニアの話であり、そういう意味では組織作りとか経営とはまたちょっと違う内容だったんですよね。だけど、すごくおもしろかったんですよ。
それは今たけちゃんが言ったように、僕も初めて「そうなんだ」と思ったんですけど、エンジニアはクリエイティブな仕事なんだと。そして設計をしていく時に、シンプルに美しくしていくことを追求しているという。それは経験を重ねていくとできるようになるんだという。
ただ僕、本当に失礼な話で、プログラマーのイメージからいうと「すげえ速度で打っている人なのか」と思っていたんです。クリエイターなんだって考えたら、ある意味すごく腑に落ちたというか、「そりゃ付き合い方もぜんぜん変わってくるな」と。
そう思ったのと同時に、僕の質問でもあるんですけど、「経営も同じだ」という書き方もしていて、「だから倉貫さんはすごくユニークなんだ」と思ったんですよね。本質的に問題を見つけて、それを解決するための仕組みを整えていく。それをシンプルに美しく、仕組みを作って解決していく。それを経営とか組織作りに当てはめているんだなと思ったんです。
まさにエンジニアとしての思考回路でやっていて、それがエンジニアの仕事そのものでもあるから、だからソニックガーデンという組織は、はたから見ると非常にユニークになっている。僕らの自律分散型組織という、いわゆる進化型組織といわれる世界からすると、すごく先を行っているなという感じがするんですけども。
普通の人から見ると、「意味がわかんないぞ」みたいな印象を受けるんですけど、倉貫さんなりにエンジニアとしての切り口で、シンプルに美しく、本質的に会社とか組織を設計すると、そうなっているんだなと思ったんですよね。
自律分散型組織は、意思決定したい人がするとか、一人ひとりが自分らしく働けるとか、そういった意味合いの組織のことを言っているんですけども。なぜこの組織がいいのか、合理的な帰結でそこにたどり着いた倉貫さんの視点からぜひお話しいただきたいです。
倉貫:そうですね。どこからお話をするといいのかなと。今聞いていらっしゃる方がどれぐらいいらっしゃるかわからないですけど、たぶん僕のことを知らない方もいると思います。簡単に自己紹介しないと「何なんだ?」ということだと思うので。
僕はソニックガーデンという会社を経営しているんですけど、もともとはエンジニアでして。エンジニアとして大企業に就職をしました。
そこでいわゆるシステム開発をしていたんですが、もともと僕は学生時代から開発やプログラミングとかをしていたので、楽しくクリエイティブな仕事だと思っていたら、大手のシステム会社さんでは、どうも管理されて手を動かすだけの仕事に置き換わっていて。
「いや、これは自分が楽しく仕事をできないな」と思い、「エンジニアが楽しく仕事をするにはどうすればいいんだろうか?」というところを追求した結果、最終的には自分で会社を作ることになったんですね。
そこからソニックガーデンという会社を作らせてもらって、僕はシステム開発が好きなのでお仕事としてさせていただいて。ただ、その中で僕ら自身がずっと理想としているシステム開発がありまして。最近だとよく聞かれる「アジャイル開発」というやり方なんですけど。
お客さまと一体になったり、作りたい人と作れる人が一緒のチームになって、同じ目的に向かってソフトウェアを作り、作ったソフトウェアを使って、また使ったらそれを直していくみたいなスタイルが、作る方にとっても一番うれしいし、作りたいお客さんにとってもいい関係性が作れるんじゃないかと。
「お客さまとシステム開発をしている会社が一緒のチームになるには、何が一番邪魔なんだろうな」と考えたら、納品だと気づいたんですね。
坂東:(笑)。すごい話ですね。
倉貫:納品があるからチームじゃなくなっちゃうので、「納品をなくしてしまえば一緒のチームになって、ゴールに向けて、もしくはその会社のミッションだとかビジョンに向けて、一緒にやっていけるんだよな」と思ったんです。
それで「納品のない受託開発」という、納品をなくしてシステム開発を月額定額で、顧問のようなかたちで一緒に入らせてもらってやっていくというビジネスをやり始めました。そこからソニックガーデンという会社を徐々に徐々に成長させて、今13期目に入ったという感じです。
倉貫:システム開発をしていくエンジニアの人たちが、どういう働き方をするとより生産性が出せて、本人たちも楽しく働けるのか考えた時に、先ほどの『人が増えても速くならない』という本にも書かせてもらったんですけど、ソフトウェア開発、プログラマーのやっている仕事って、「キーボードを打つ仕事だな」と思われがちなんですけど、そうじゃないんですよね。ドラマとかを見ると、キーボードカタカタってめちゃくちゃ打ちまくっているから……。
坂東:(笑)。はいはい。
倉貫:実際のプログラムをやっている人たち、システムを作っている、ソフトウェアを作っている人たちの仕事って、「何を作ればいいのか」とか、「どういうふうに作ればいいのか」を頭の中で考える仕事なんです。キーボードを打っている時間より、考えている時間のほうが長い仕事なんですね。
キーボードを打つより頭で考えてする仕事の場合、たくさん人がいたらたくさん作れるのかというと、これも違っていて。昔の原始人の仕事が畑を耕すことだとしたら、5人より10人のほうがたくさん畑を耕せるのかもしれないですけど。ソフトウェア開発の場合は、そんな簡単なものではないと。
Aさん、Bさん、Cさんがいたら、Aさん、Bさん、Cさんは全員違う仕事をしている。全員作り出しているものが違うという中において、とはいえ整合性を取らないとコンピュータがうまく動かないとなると、人が増えれば増えるほどコミュニケーションのコストがかかっちゃうので、結局うまくいかないよねという話がある。
「一人ひとりの創造性とか能力をより活かして作っていくほうがいいです」となった時に、自律分散のほうがなぜいいのかといったら、先ほどの原始人が畑を耕すみたいな、もしくはマンモスを獲りに行くみたいな時は、リーダーがいて、手足の人がいて、全部決めて、その通りに動くことで生産性を出したりするんです。
倉貫:でも先ほどの一人ひとりが成果を出していくとなった時に、上司とかマネジャーがいて事細かに指示できるかというと、そうではない。言ってみたら、途中で出てきた「創造的な仕事」が頭を使ってアイデアを出す仕事だと思った時に、アイデアを出す仕事に対して上司が「アイデアを出せ」と指示を出して出るのかというと……そんな簡単に出るんだとしたら、そんなマネジャーはめちゃくちゃ楽じゃないですか。
坂東:いや、楽。うんうん。
倉貫:でもそんなことはないんですよね。ということは、個々人で考えてもらって、個々人で意思決定してもらわないとうまくいかない。「これ、上司とかが管理して仕事をさせている場合じゃないな」という。
どっちが生産性が出るのかといったら、一人ひとりが自律して考えて、意思決定をし、成果を出していくほうが、トータルで見た時に生産性は上がる。そう考えて、自律分散型というかたちにしています。僕らは「セルフマネジメント」と言っていますけど、セルフマネジメントの組織にしているんですよね。
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