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ピーター・ティール氏:独占企業の確立の仕方についていくつかポイントを挙げます。逆説的に思えるかもしれませんが、独占するには小さな市場を狙うことです。スタートアップ、新しいビジネスを始める時には市場独占を狙います。
独占とはマーケットの多くのシェアを勝ち取ることですが、どのようにそれをすれば良いでしょうか? まずは小さな市場を勝ち取り、時間をかけてその市場を拡大するのです。最初から巨大市場を独占しようとするのは大きな間違いです。
それは多くの場合、しっかりとカテゴリーを確立していないことの表れであり、競争相手が増えるということであるからです。シリコンバレーで成功する企業の多くが、最初は小さな市場独占を狙い、市場を徐々に拡大していくというビジネスモデルを持っていたはずです。
例えばAmazonは最初は本だけを売っていました。まずは世界中のどんな本も揃える世界で唯一の存在を目指しましたね。90年代には誰も考えもしなかったことをAmazonはオンラインで成し遂げ成功しました。そこからゆっくりと様々なフォームのEコマースへと拡大していきました。
Ebayはどうでしょうか。最初はペッツ・ディスペンサ、そしてビーニーベイビーズ、そして最終的には様々な商品のオークションへと展開していきましたね。
意外だと思われるかもしれませんが、成功するこれら企業は多くの場合は小さな市場、多くの人が「そんなことをしても成功しない」と思うところから始めているのです。
Paypalの場合を見てみましょう。PaypalはEbayのパワーセラーとして始まりました。市場はたったの2万人。1999年12月、2000年1月、Paypalをローンチした当時、こんな小さな市場を追いかけるなんて、ガラクタをオンラインで取引している市場を追いかけるなんて本当にバカげていると思ったものです。
しかし、まずはその小さな市場で皆に使ってもらうプロダクトとして確立させるのです。数か月でマーケット・ペネトレーションは25%から30%となりました。皆にプロダクトを知ってもらいブランド化への道筋を開く。
そこからより大きなビジネスへと展開させるのです。小さな市場を狙う価値がよく理解されていないと常々感じています。Facebookはどうでしょう?
Facebookの最初の市場はハーバード大学の1万人の生徒でした。そしてFacebookのマーケットシェアは10日で0から60%になりました。とてもさい先良いスタートですよね。
ビジネススクールでは「小さな市場では成功できない。市場が小さければそれだけ価値が低いのだから」と教えられますが、私はそうは思いません。初期のFacebook、Paypal、Ebayも小さな市場にフォーカスした結果、価値あるビジネスへと成長しました。
過去10年で大きな市場を狙うクリーンテクノロジー会社は多くのポイントで間違いを犯しています。しかし共通したミスは大きな市場を最初から狙い過ぎることです。2005年から2008年、シリコンバレーではクリーンテクノロジーバブルが起きました。その市場価値は莫大でしたが、そこに飛び込むのは広大な海にコイが紛れ込むようなもの。巨大市場にはものすごい数の競合が存在する上に、彼らの実態すら掴めないのですから。
皆さんが狙うべきは小さなエコシステムの中の唯一無二の存在です。4番目に誕生したオンラインペットフード会社や10番目のソーラーパネル会社、パロアルトの100番目のレストランにはなってはならないのです。
レストラン業界は巨大市場です。マーケットサイズを分析した結果、レストランビジネスに参入すれば上手くいくと結論づけることができるかもしれません。しかし既に存在する大きな市場とは、つまり既に競合が存在する場所でもあるという意味です。
つまり、差別化することが難しい。意外に思われるかもしれませんが、成功する為には小さな市場を狙いましょう。多くの場合、「小さな市場」は小さすぎて人々にまだその価値を気づかれていません。多くの人はそんな小さな市場を狙っても意味がないと思う。
皆さんは皆が気にもとめない今は小さな市場、そして今後の市場拡大が見込める市場に目をつけて、それを足掛かりに大きな独占ビジネス展開を狙いましょう。
次にお話したいのは、独占企業をつくる為のたったひとつのやり方は存在しないということ。第2のマーク・ザッカ―バーグはソーシャルネットワークをつくることは出来ないし、第2のラリー・ページがサーチエンジンをつくることもできない、第2のビル・ゲイツがオペレーティングシステムをつくることもできない。これまでに成功した人の真似をするだけでは成功できません。
誰も過去にやっていない新しいことをするユニークなビジネスは、今後市場を独占できる可能性を秘めています。オペラの「アンナ・カレーニナ」の始まりのセリフはこうです、「幸せな家庭は皆同じような理由で幸せだが、不幸せな家庭はそれぞれの家庭ごとに別々の理由がある」。
この逆がビジネスです。幸せな会社はどれもそれぞれが違うことをやっていて幸せなのであり、不幸せな会社は皆と同じことをやって失敗するから不幸せであると言えます。
独占企業であるということはある意味で特権技術を持つ企業であるとも言えるでしょう。私の中のルールでは、誰にも超えられることがない技術を持つことが成功の鍵です。
Amazonは技術は必ずしも高くはないですが、どこにも負けない数の本を揃え、オンラインで効率的にそれを販売するビジネスを確立しました。PaypalはEbayでの支払いのスピードを速めました。
つまり、それが何であれ、既存のやり方を変える、要所を大きく改善するんです。もちろん、これには今まで存在しなかったものを世に生み出すことも含まれます。例えばiPhoneは1番最初に成功したスマートフォンです。テクノロジーとは世に素晴らしい価値をもたらすものであるべきだと私は信じています。
ネットワーク効果が大きく影響してきますし、これは長期的に見ると市場を独占することとも関係します。ネットワーク効果の厄介なポイントは、それが始まることがまず難しいし、皆にそれを気に入ってもらい、その価値を認めてもらうことも難しい。
そしてこれもまた厄介な疑問なのですが、とどのつまり1番最初にそれに目を付けた人はそれのどこに価値を見出すのでしょうか。
規模の経済性についてです。固定費用がとても高い、限界費用がとても低い場合、それは大抵市場独占的なビジネスです。そしてブランディング。ブランディングとはある意味人々の心に入り込むというか。どうやってブランディングが成功するかについては未だに理解できません。
私はブランディングにばかり取り組んでいる会社に投資したことはありません。しかし、それが流行ったり、注目されると価値が出るということは理解しています。後で詳しく触れたいと思いますが、ソフトウェアビジネスはなぜかこれに長けていることが多いです。
特に規模の経済性の部分に。なぜなら、ソフトウェアの限界費用はゼロ。そして良いソフトウェアを生み出すことが出来れば世に存在する既存のソリューションより優れたものになるということなので、優れた規模の経済性となり、規模は急速に拡大します。
小さな市場から始めてもビジネスを急速に成長させることで、成長過程にある市場と同じ規模を保ちながら独占力を保持することが出来るのです。独占を考える時に忘れてはならないことに、一定期間だけ市場を独占してもダメであるというポイントがあります。
独占を長期に渡って続けられなければ意味がない。シリコンバレーでは「最初に動いて勝ちに行け」とよく言われますが、私はそれを「最後に動くが勝ちだ」と言い換えます。そのカテゴリーで最後の会社になることです。
Microsoftはこの数10年間の最後のオペレーティングシステムです。Googleは最後のサーチエンジンです。Facebookに関してはもし彼らが最後のSNSとなったら不動のポジションを得る事になります。
最後に動いたもの勝ちという概念を考えると、成功する企業の価値は遠い未来にあるということです。DCF法で収益をみてみる。成長率が割引率より遙かに高ければ、ビジネスの価値は未来にあるということです。
このエクササイズを2001年の3月にPaypalで行いました。その時点でPaypalを始めてから27か月が経っていました。毎年の成長率は100%、将来のキャッシュフローの割引率は約30%。そこでわかったのは2001年の時点でビジネスの価値の4分の3は2011年以降のキャッシュフローから来ている、ということでした。
このような計算をシリコンバレーで成功する会社、AirBnB、Twitter、Facebook等に対してやってみると、彼らの4分の3、85%の価値は2024年以降のキャッシュフローから来るということがわかるはずです。
遠い未来の話ですよね。シリコンバレーでは成長率が過大評価されており、ビジネスの耐久性、持続性を過小評価していると感じます。成長率は現在の数字から正確に測ることが出来ますが、「この会社は10年後も生きているか?」これはある意味今ある数字だけでは測ることが出来ません。
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