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阿部広太郎さんに学ぶ、「傷つかず、傷つけない」オンライン時代の言葉の使い方/受け止め方(全2記事)

誰かの悪意を重く受け止めてしまう、スマホ特有の「個室感覚」 自分1人で不安を“培養”し、膨らませないための心がまえ

ログミーBizのオリジナルYouTube配信イベントより、阿部広太郎氏が登壇された「阿部広太郎さんに学ぶ、「傷つかず、傷つけない」オンライン時代の言葉の使い方/受け止め方」の模様を公開します。 ※元動画は、こちらからご覧ください

「傷つかず、傷つけない」言葉の使い方/受け止め方

--みなさん、こんばんは。本日は「『傷つかず、傷つけない』、オンライン時代の言葉の使い方/受け止め方」について、阿部広太郎さんにお話をうかがっていければと思います。

現代社会ではチャットやビデオ通話といった「オンラインのコミュニケーション」が当たり前になりました。しかし、それらは「テキストのみ」であったり「映像&音声のみ」であったりして、相手の発言の意図を汲み取りかねて傷ついてしまったり。逆に自分の発言で誰かを傷つけてしまったりする可能性もあります。

なので、このオンライン時代において、どんな言葉を使っていったらいいのか? そして相手の言葉をどのように受け止めていったらいいのか? について、お聞きしていきます。では本日のゲスト、阿部広太郎さんです。

阿部広太郎氏(以下、阿部):阿部広太郎です、よろしくお願いします。コピーライターという仕事をしております。また、昔から音楽が好きで今では作詞をしております。学生時代はアメリカンフットボールというスポーツを、大学時代を含めて8年間やっておりました。

社会人になってから広告会社に入社して、最初は人事に配属されたんですけど、そのあとコピーライターとして10年以上働いているといったキャリアでございます。今は広告のコピーを作るということはもちろん、コンテンツの企画をしたり、プロデュースをしたりして「広げていく」。そんな仕事をしております。

今日はログミーさんのイベントに呼んでいただいたんですけど。これまでもいろんなトークイベントだったり、書籍の刊行記念イベントを書き起こして記事化してくださっていて、今日呼んでいただけてとてもうれしく思っております。よろしくお願いします。

--ありがとうございます。(机の上を指して)書籍『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』もご用意させていただきました。

阿部:ありがとうございます。

--これは私の私物なので、めちゃめちゃ付箋が付いていて大変恐縮なんですけれども(笑)。現在好評発売中ということで、特にこちらの『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』が現在4刷ですよね。

阿部:そうなんですよ。重版が決まって、本当にありがたいです。あとは本に付箋を貼っていただいているんですけど、すごいうれしいですね。

--付箋を貼りすぎて、逆に「なにがなんだか、わかんなくなっている」みたいな感もあるんですけど(笑)。

阿部:でも「ちゃんと読んでくださっている感」が伝わってくるといいますか。こうして本を読んでくださったことをきっかけで、僕に(今日のテーマについて話を)聞いてみたいと思ってくださったのが、とてもうれしいです。

--ありがとうございます。

阿部:ありがとうございます。

--みなさん、書店やネット等々でお買い求めいただければと思いますので、ぜひお願いいたします。

阿部:今日の話で興味を持ってくださったら、ぜひよろしくお願いします。

上司からの「もっと『人を傷つけたほうがいい』」の真意

--では、さっそく1つ目のテーマに入っていければと思います。「なぜ人間は非対面の状態だと、相手を傷つけたり、自分も傷ついたりしてしまうのか?」に関して。

これはけっこう「無意識なところ」と「意図的なところ」があるなと思っています。「無意識なところ」でいうと、こうやって対面でお会いして話していれば気にしないはずなのに、(オンラインのやり取りだと)「ちょっと刺々しい言葉を使っちゃったな」とか。

あと「意図的なところ」でいうと、対面で会っていたら「そんな言葉遣いしないでしょ……」というような言葉も、(オンラインだと)平気で送っちゃったりするのって、なんでなんだろう? というのが、すごく気になるんです。

阿部:そこで一つ、思い出した話があって。今日は「傷つかず/傷つけない」というテーマですが、僕がコピーライターを始めて、本当に駆け出しの頃。コピーライター1年目の時に、上司のクリエイティブ・ディレクターの人に打合せ後に呼ばれたことがあって。その人のデスクがある部屋に呼ばれて、面談というか話をしていたんですよ。

当時の僕はというと、打ち合わせで自分なりの一生懸命なコピーを書いて出して、そして見せていくんですけど、それが「誰にも届かない」というか「会議で自分のコピーが選ばれない状態」みたいなのがありまして。

そんな時に、上司の方から何を言われるのかなと思ったら「大丈夫か?」とすごく心配されて。そこでアドバイスとして「お前はもっと『人を傷つけたほうがいい』」と言われたんです。

--へぇ!

阿部:そう言われて、当然、すぐには理解が追いつかなくて。「人を傷つけるって『え?』」と。「どういうことなんだろう?」と思ったんですよね。

ずっとその問いかけというか、メッセージが心の中にあって。ここ数年かな? ようやくわかったことがあるんです。人を傷つけるというのは「相手の心の中に踏み込んでいって、その相手の心を手で触れるような瞬間」だなと。

「傷つく」というのは、もちろん意味合いどおりに、誰かに本当に悲しい思いをさせたり嫌な思いをさせる傷つけ方もあるけど、僕たちがいう「感動する」「喜びを感じる」「幸せを感じる」というのも、ある意味で「ポジティブな傷」なんじゃないかなと思うんですよね。

触れてしまったその痕跡が後々まで残って、それが温かい温度を持つのか、それとも冷たいまま、寂しさとか切なさみたいなものを宿してしまうのか? これは「受け取るほうがどう思うか?」次第ではあるんですけど、喜びとか感動も含めてある種「傷」なんじゃないかと思い至ったワケです。

「お前はもっと人を傷つけたほうがいい」というのは、つまり「それだけ人の心に踏み込むようなコミュニケーションをもっとしていかなくちゃいけないし、そこまで考えないと『いいコピー』というのは生まれていかないんだよ」ということを、あの時言ってくれたんじゃないかと、今、自分なりの解釈しているんですね。

スマホを見ていると陥る「個室の中」にいるような感覚

阿部:その問いかけのことを思い出しながら、今日のテーマである「なぜ非対面だと『相手を傷つけて/自分も傷ついて』しまうのか」ということを考えてみた時に、また思い出したことがあって。

きっと誰しもが家に住んでいて……特に広い家に住まれている方は、最初から「自分の部屋」があったと思います。でも僕が自分の部屋を与えてもらったのが、小学校高学年くらいだったかな?

それくらいのタイミングで自分の部屋ができた時に、すごく世界が広がったような「ここは『自分の部屋』なんだ」という安心感もあったし「そこで何をしても自由なんだ」というのを感じられた時があったんですけど。

すると「リビングにいる時の家族とのコミュニケーション」と「自分1人で自室にいる時のコミュニケーション」に分かれ目があって、空気とかが変わってきたなと思っていて。

今の時代の非対面。「誰かと接していない状態」というのは、限りなくそういう「誰かと一緒にいるリビングのコミュニケーション」じゃなくて「個室のコミュニケーション」だと思っていて。個室の中でスマホを見ている。スマホを見ている自分がいる。

実際は周りにたくさんの人がいるんだけど「スマホを見ている自分」というのが「個室の中にいるような感覚」になっていて。家の自分の部屋の中だったら何をつぶやいても、誰に野次を飛ばしたりしても、その言葉は誰にも届かないような感覚を自分の中に持つと思うんです。

それと同じような感覚でスマホと向き合ってしまって、野次を飛ばしてしまったりとか、時に悪意のあるようなコミュニケーションを発信してしまったりする。スマホがあることによって、外にいようとも誰か一緒にといようとも、その瞬間が「自分の中の心が個室」になっているな、と思っているんです。

--なるほど。

自分の中で、嫌な気持ちを勝手に膨らませてしまう

阿部:発信するほうもそうだし、受け取るほうも、スマホを見ている瞬間って、周りに家族がいてもパートナーがいても友人がいても、それを見る瞬間ってすごく「1人で部屋にいるような感覚」になるから、受け取る言葉に棘があったり、チクチクするようなものを自分の中で転がしてしまうというか。心の中でチクチクするものの“炎症”が広がってしまう。

今、こうやってお会いしていたら、すごく悲しい思いをしている表情とかである程度は伝わるものがあるんですけど、オンラインの出来事は1人の部屋みたいな個室の感覚だから、自分1人で受け止めてしまうんですよね。

だから、非対面にいることによって相手からの言葉を重く受け止めてしまい過ぎる。今、そういったコミュニケーションが生まれてしまっているんだな、と。

「傷つけあってしまう瞬間」が、ここ数年で急速に……スマホと付き合う時間が増えたことで、人の心に踏み込んでしまう瞬間も増えてしまっているんじゃないかなと思います。

--なるほどですね。事前の打ち合わせをさせていただいた時に、阿部さんが「自分の中で不安を培養してしまうんだ」という言葉をおっしゃっていて、それが私の中ですごくしっくりきて。「なるほどなぁ……」と思ったんですよね。

阿部:ありがとうございます。最近だったら新型コロナの研究とかで「培養液に漬けてウイルスを増やす実験映像」とかをニュースで見た方も多いと思うんですけど。「何か自分に悪意があるんじゃないか?」とか「なんかちょっとした“含み”があるんじゃないか?」ということに対して、その実験みたいに、自分の中で養分を与えてしまって不安を増やしてしまう。

自分の中でどんどん、そういう気持ちを膨らませてしまう。本当に、パン屋さんがパンをふっくら焼き上げるように。

自分の中で嫌な気持ちが膨らんできてしまうことは、誰しもあると思います。そういう時に、ちょっとストップをかけないと。そういう傾向が自分の中に見られているなという時に「ああ、違う違う。いったん冷静になろう」じゃないですけど、自分の気持ちを見つめ直して、今の状況を判断しなくちゃいけないことはありますよね。

「○○さんがコメントを入力しています」に感じるモヤモヤ

--なるほどですね。本番を始める直前に、私がチャットの話をしていて。最近のチャットだと、例えば私が阿部さんになにかメッセージを送ったとして。そのお返事をいただく際、チャット欄に「阿部広太郎さんがコメントを入力しています」みたいな文字が出るようになったじゃないですか。

阿部:うんうん。出ますよね。

--その時に「コメントを入力しています」となって、それが1回消えて。また「コメントを入力しています」となって、また消えて……その結果、結局、なにもメッセージが送られて来ないみたいな時があって。

ああいう時に「あれ? あんなにチャットに何かを書き込もうとしていたのに、結局止めたということは、もしかしてめちゃくちゃ怒っているんじゃないか……?」と勝手に思ってしまうんです。

阿部:Netflixで「SNSが人にいかに影響を与えてしまっているか?」という、FacebookだったりとかTwitterだったり、SNS起業に勤めていた人たちの証言をまとめたドキュメンタリー番組「監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影」というのがあるんですね。それを見ていると、そういったチャット相手が何か書き込もうとしている際の「・・・」って吹き出しのマーク。

ああいった瞬間も(ユーザーが)目を離さないように、1秒でも長くそれを見てくれるためにはどうすればいいか? という仕組みを考えて、実装しているそうなんです。

今、おっしゃってくださったことは、まさに相手のことが気になる、相手のことを考えてしまう。その「キャッチされている」というか「SNSという仕組みに捕まっている部分」があるし。

実際にテキストを打ち込んでいるのかどうか? というのは、(受け手側には)わからないじゃないですか。実際は他の作業をしているんだけど、たまたまチャット画面を開いているから、それ(「コメントを入力しています」)が表示されているみたいなこととか。「なんか今、打ち込もうとしているのかな。でもぜんぜん送られてこない」ということ、僕もよくあるんです。

だからそれに振り回されないようにするというか、相手のことを考えすぎない。いつも僕たちは、過剰に何かに反応してしまうことで、自分の心を振り回してしまっている。今はスマホがあることで、いつでも情報に触れることができるから「振り回されすぎてしまってもいる」という自覚はしておきたいですよね。

--なるほどですね、ありがとうございます。

オンラインで発信する際の「半個室の心がけ」とは?

--では、続いてのテーマなんですけども。オンラインで自分が発信側になった時、それがテキストでもビデオ通話であったとしても、どのような言葉遣いをするといいのか。どんな言葉を使えば相手を傷つけないのかについて、うかがえればと思います。

阿部:そうですね。さきほどもお話したように、スマホを見ていたりパソコンで作業していて夢中になっている状態を「個室の状態」だとすると「半個室」をイメージしてほしくて。

居酒屋とかで「半個室です」といって、けっこう周りが自分たちの席から見えるし、逆に周りの人からも自分たちが目に入るような席に案内されることがあると思うんです。だから「半個室の状態」にしておかないといけないな、といつも思っていて。

それは何かというと、自分が今、打ち込もうとしている・書き込もうとしていることに「他者の目線」というものを入れておかないといけないなと。

もちろん自分は他人にはなれないので、自分の中で「これを自分の大切な人が見たらどう思うんだろうな?」とか。自分が書き込もうとしていることを、自分が大切に思う人にも直接言えるのか、見せられるのか? と、他者の目線を入れる。完全に1人きりの個室に閉じこもるのではなく、半個室にしておくような心持ちでいるというのは、いつも意識していますね。

--なるほど。確かに「半個室」は非常にわかりやすいですね。「完全な個室」だと、やりたい放題しても誰にも迷惑をかけることはない。でもネットの世界やビジネスチャットの世界には、そんな「完全個室」なんてものは、鍵アカウントでない限り存在しない。

どんな状態であれ、基本的には「半分個室である」「みんなから見えている」ことを意識すべき、ということですよね。

ビデオチャットで「自分の顔を非表示にしたい」という欲求

阿部:そうなんです。ZoomとかTeamsといったオンラインツールでビデオ通話している時、画面に自分の顔が写るじゃないですか。「自分が今、どう写っているか?」という画面。あれに対して「見るの嫌だな」「別に自分の顔を見たいわけじゃないんだけどな」という思いは、誰しもあると思うんですけど。

あれは捉え方・解釈の仕方によっては「自分は見られているんだ」ということを、自分で自覚するために表示させているのかもなと。「君は誰かから見られているよ」というのを伝えるための表示でもあるのかなと、自分なりに捉えていて。

だから例えオンライン会議であって、リアルのその場に誰もいなくても「自分はどこかで見られているんだ、聞かれているんだ」という意識を忘れずにいる、というのは心がけていますね。 

--なるほどですね。私も「自分の顔は見たくないな」と思うので、ビデオ会議の時って、あえて違うタブを開いたりしているんです。でもおっしゃるとおり「どう見られているのかを確認する」ための、要は“手鏡”みたいなものということですよね。

阿部:そうです、そうです。ZoomしかりTeamsしかり「自分が映ってる画面を消したい欲求」ってみんなあるはずなんですけど、その機能ってないですよね。自分で画面をオフにするしかないじゃないですか。

--そうですね。

阿部:その機能が実装されてないというのは「自分が見られていることを忘れないようにね」という隠れたメッセージでもあるのかな? なんて想像をしつつ解釈していますね。

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