
2025.04.02
働く人が増えても、日本の「人手不足」問題は解決しない “労働力=人手”という捉え方の盲点
Turns Out Fish Can Count(全1記事)
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ステファン・チン氏:魚はヒレで電卓を持ったり、黒板で難しい数式の解を披露したりしませんが、簡単な数なら理解できます。実は魚は数がわかるのです。
このたび、魚が「数」を推量し、4までなら数えられることが明らかになりました。ゼブラフィッシュという魚を使った実験で、脳が「数」を推量する仕組みが調べられたのです。
数を扱う際の魚の脳の基礎的な仕組みを調べて、将来的に人間の学習障害の診断や研究に役立てるためです。それに、日常で微積分は使いませんが、基本的な数はよく使いますからね。
実は、人間でなくとも数を理解する生き物はいます。外敵に立ち向かうか、逃げるかを値踏みする時に、外敵の数が推量できれば役に立ちます。
魚はよく大きな群れを作ります。魚群が大きければ大きいほど、個々の個体の生存率は高まります。2つの群れのどちらに属するかを選択する際には、群れの大きさを判別できるか否かが最重要課題です。
上のような状況が、実際に検証されました。カダヤシとグッピーが実験で用いられ、魚は2倍以上の差がある、大きな群れを判別できました。2つの群れのうち、片方が倍以上大きい場合、魚は確実に大きい方の群れを選びました。しかし、大きい方の群れが密集して小さく見えた場合、選択の精度は下がりました。
別の実験では、小さな群れが2つ選択肢として魚に与えられました。すると、興味深い結果が出ました。
この実験では、エンゼルフィッシュ、グッピー、カダヤシに、数に1匹しか差がない2つの群れを選ばせました。たとえば、エンゼルフィッシュに2匹と3匹や、3匹と4匹などの群れが選択肢として与えられ、どちらを選ぶかが検証されたのです。
果たして、エンゼルフィッシュは、3匹以下の群れであれば確実に数が多い方を選択することができました。つまり2匹と3匹、2匹と1匹の群れの差を判別できたのです。カダヤシはなんと、3匹と4匹の群れの差を判別できました。しかし、ここまでが限界でした。
とはいえ、魚群の小ささから考えると、魚が把握しているのは魚群の「サイズ」ではなく「数量」、つまり数を基準に比較検討していることが考えられます。音、におい、視覚情報など、群れの「数量」のヒントとなりうる他の因子を隠してしまった場合でも、魚は「こちらが多い」と判別できました。
さらに、カダヤシを使って、図形を利用して2匹と3匹の群れを判別する訓練をする実験が行われました。まず、カダヤシに、図形が2個もしくは3個表示されたドアの向こうに同数の仲間の群れがいることを覚え込ませました。
その後、2個の図形群と3個の図形群をどのように判別しているかが調べられました。数量以外で判別の基準となりうる、図形の表示面積やサイズなどの因子を徐々に排除しましたが、変わらないのは図形の数だけであっても、カダヤシは図形の数をはっきりと判別したのです。
こうしたことから、図形が多い少ない以外にも、カダヤシには数を数える基礎的な能力がある可能性がわかりました。これは、大きな特性です。人間であっても、すべての人に備わっている能力ではありません。
とはいえ、魚が群れに所属する前に、個体数をすべて数えているわけではありません。魚は通常は4匹以上で群れるので、それ以上の数であれば推量をしていると考えられます。
人間も、たくさんある物をとっさに選ぶ時に同じことをやっています。例えば食堂の列に並んでいる時に、フライドポテトがたくさん盛ってある皿を、いちいち本数を数えずに選べるでしょう。この時に、パッと見積もる能力を使っているのです。
魚にしてみれば、フライドポテトどころではなく、この能力には生死がかかっています。大きな群れに所属すれば、外敵に食われる可能性を下げることができます。パッと推量できれば、追う体力を消耗するに値するのはどちらのエサの群れを襲うことかを判別できます。
残念ながら、魚の脳にこうした推量が可能なわけはまだわかっていません。しかし、ゼブラフィッシュを使った実験から、人間の脳にも同様のことが起こっていると考えられています。ゼブラフィッシュは縞模様の小魚で、他の脊椎動物と類似点が多い「モデル生物」であり、さまざまな実験に役立てられています。
たとえば、ゼブラフィッシュが持つ神経伝達物質やホルモン、受容器などは、人間などの哺乳類と共通です。
数がわかるなどの習性の複雑さも哺乳類と似ています。
さらに特筆すべきなのは、幼生が透明であることです。脳や神経の働きが、文字通り透けて見えます。
研究の結果、ゼブラフィッシュと人には共通点が多いことがわかりました。たとえば、数を推量する際に使う脳の領域は、哺乳類や鳥類とよく似ています。
人間の数を推量する能力は、はるか大昔、祖先が海に住んでいたころに発達したと考えられています。つまり、魚の脳の仕組みを調べることで、人の脳の働きも解明することができます。また、学習障害など基礎的な数の理解に困難がある特性の究明にもつながります。
近所の池に住んでいる魚は、複雑な計算式こそ解きませんが、生存のために簡単な数を理解し、推量する能力を持っています。魚の脳を調べることで、人の脳の仕組みも解明できます。数が得意なら、魚も人もたいへん便利なのです。
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