2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Why Inducing Hallucinations Might Be a Good Idea(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:「実体的意識性」とは、実際には誰もいないはずなのに、自分以外の誰かがそばにいるように感じる幻覚を指します。
研究者たちは、このような幻覚を研究室で人為的に誘発する研究を進めてきました。
不思議なことに、健康上なんら問題ない場合でも、幻覚は現れることがあります。また条件が整えば、このような幻覚は病気の存在を教えてくれることがあります。なんと、「実体的意識性」の感じやすさを数値化することで、パーキンソン病その他の病気の早期診断や治療につなげることができるかもしれません。
「誰か他の人がいるような気がする」という感覚から、大きな可能性が生まれるのです。
このような幻覚を作り出すために心理学者が開発した実験が2つあります。まずご紹介するのは最新のもので、スイスの大学生を被験者とした音声を使った実験です。参加した学生たちは、自分たちが歩き回る音を聞かされました。詳しく説明していきましょう。
実験の前に、参加者は自分がたてた音を録音されました。具体的には、学生たちはあらかじめ決められたルートに沿って部屋の中を歩き回りながら「星の王子さま」の一節を暗唱させられました。
こうした音はすべて、バイノーラルマイクを通して録音されました。バイノーラルマイクとは、実際に耳で聞くのと同じように3Dで音を録音する装置です。
このマイクは、後の実験で学生らが座る予定の場所に設置されました。
学生らは目隠しをして録音マイクが設置された位置と同じ場所に座り、ヘッドフォンをつけて自分自身が歩き回る音を聞かされました。さらに、同性の他の参加者がたてた同様の音を聞かされました。
音声を聞いた後、参加者たちは「部屋に自分ではない別の人がいた」という感覚をどれだけ鮮明に感じたかを、最大で14点の評価アンケートで測定されました。また、どの程度それを「自分自身である」と意識したかということや、これまでの幻覚の経験の有無も調べられました。
こうして自分がたてた音声を聴かされた学生は、なんと「他者が一緒に部屋にいたように感じた。そして、その他者とは自分自身である」と答えたのです。いわゆる「ドッペルゲンガー現象」ですね。
自分自身のたてた音を聞く機会はよくありますが、他の誰かが部屋にいるかのように感じることはあまりありません。たとえば、スマホでTikTokerの配信音声を聞いても、彼らが部屋に一緒にいると感じることはまずありませんね。このように、他者の存在を感じる幻覚が「実体的意識性」なのです。
さて、「実体的意識性」を誘発する2つ目の実験は、2014年刊行の論文で初めて発表されたもので、ちょっとサイバーパンクなものです。
この実験ではロボットアームが使われました。参加者には目隠しをして、自分の体の前で手を動かしてもらいました。その参加者の動きは、自分たちの背後に設置されたロボットアームで再現されます。つまり、参加者たちにはロボットアームを使って自分たちの背中を撫でたり突いたりしてもらったのです。すると言語性IQと動作性IQの差である「ディスクレパンシー」が生じます。
脳は、知覚している感覚と身体の感覚を一致しているものとして捉えようとします。そのため、この奇妙な不一致の感覚が理にかなうよう、最も可能性の高い状況を見つけようとします。それは時には、ありえない状況になる場合があります。たとえばそれは、「魔法のように現れた誰かが自分を撫でている」といった状況です。
さらに不思議なことに、ロボットハンドの動作を遅らせてみたところ、被験者は自分の体の感覚がまるで別人のもののように感じられたのです。まるで幽霊と一緒にいるような状態です。これもまた、「実体的意識性」の幻覚の一例ですね。脳は感覚の不一致を解決しようとして、被験者が身体に経験する刺激が、後方のロボットアームから発生していると捉えたのです。
当然のことながら、被験者らは研究の事前にきちんとした説明を受けていましたが、研究者らは実験で予測される体験について、被験者らが変に身構えないよう細心の注意を払いました。実験の結果の偏りを避けるためです。
そういった配慮があった上でも、同じ部屋に他者がいるという感覚が非常にはっきりと知覚されました。また、何人かの被験者は実験の中止を希望するほどでした。
これら2つの実験を実施した研究チームによりますと、普段から幻覚を知覚している人は、こうした幻覚の誘発実験に対しても敏感に反応します。実は、この特性をうまく利用すれば、この手法は単なる“おもしろ実験”で済まされることなく、病気を診断して人ひとりの人生を変えることのできるツールになるかもしれません。
ロボットアーム実験を開発した研究チームは、これを病理診断ツールとして転用することを試みました。
幻覚は、パーキンソン病患者に非常に多く見られる症例です。パーキンソン病には、運動機能障害や認知機能障害をはじめとするさまざまな症状がありますが、他の症状に先駆けて幻覚が発症するというのが定説になりつつあります。つまり、早期に幻覚の発症が発見できれば、早期治療によって症状の改善がより期待できるかもしれません。
レボドパ製剤などのパーキンソン病治療薬の投与や適度な運動は、発症の早い段階で症状を食い止めるのに効果的です。しかし、医師に「幻覚症状がある」とはなかなか話しにくいものです。「幻覚症状が出る」のは、単なる老化現象だと思っていたり、幻覚が出るような健康状態に不安を感じたりするからです。
ロボットアームの研究チームは、一部のパーキンソン病患者が、この手法で幻覚を発症しやすいことを突き止めています。この特性を利用した「ストレステスト」を開発すれば、幻覚を発症しやすい人や、すでに幻覚を発症している人を本人にわからないように特定できます。
パーキンソン病診断の決定打とまではいきませんが、さらに検査が必要な患者を判定するのに役立つかもしれません。うまくいけば、パーキンソン病の早期発見につながる診断ツールになる可能性があるのです。
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