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片付けパパ対談 #17 実践的思考力の鍛え方 ~ 「知識創造」が注目される理由 ~(全3記事)

知識は「学ぶ」だけでなく「創造」するプロセスが大事 AI時代に人間がスキルを磨くためのポイント

『片付けパパの最強メソッド』の著者・大村信夫氏が旬なトピックでゲストと対談するシリーズ。今回のゲストは立教大学 経営学部 准教授で『マンガでやさしくわかる知識創造』著者の西原文乃氏。そもそも「知識」とは何か、そして人間がAIに負けないためにはどのように学べばいいのか、そのポイントを語りました。

「知識創造理論」のキーコンセプト4つ

西原文乃氏(以下、西原):今日ご紹介するキーコンセプトは4つあるんですが、1つは「知識」。特に形式知と暗黙知の話です。そして2つ目が「SECIモデル」。SECIプレイスやSECILALAとか、先ほどからちらっと出ているSECI(セキ)です。

そして(3つ目と4つ目が)「場」と「実践知リーダーシップ」。こちらの写真は野中郁次郎先生です。2024年5月で89歳になられますが、まだ元気に研究されていらっしゃいます。ここでちょっと質問なんですが、「ナレッジ・マネジメント」を聞いたことはありますか?

大村信夫氏(以下、大村):「ある」という方は1番、「なかった」「あんまりよく知らない」という方は2番をチャットにお願いします。「聞いたことある」という会場の方は手を挙げていただければなと思います。あ、かなり……。

西原:(手が挙がっている人が)ほとんどですね。ありがとうございます。

大村:チャットのほうは、9割ぐらいの方が1番かなという感じです。

西原:そうですね、ありがとうございます。重大な発言をしてしまうんですが、ナレッジ・マネジメントと知識創造は違うんです。

私からすると、ナレッジ・マネジメントは知識を物のようにして移転・共有・創造することなので、知識をベースにしてマネジメントをするんですね。なので、私たちは自分らを「ナレッジ・ベースド・マネジメント」と定義しています。もう1つ違いがあって、どうしても私たちは「知識を学ぶ」と思うじゃないですか。

大村:インプットしますよね。

西原:それは学習、いわゆるラーニングなんですね。

でも、私たちはそこからさらに一歩進んで、創造、内から外へ出したい。知識を入れたら出しましょう。笑っていただいてありがとうございます。これがとっても大事ということです。

AIに負けないためには「経験の質と量」を高める

大村:ナレッジ・マネジメントなので、ナレッジをマネージするとか、管理するとか、知識をちゃんと伝波させる・ドキュメント化するということだと思っていたんですが、それだけではなかったと。

西原:もちろんそれも重要なんですが、そこからさらに進んで創造に向かっていこうということです。ChatGPTさんに「人間と同じように新しい知識を作れますか?」って聞いてみたんですよ。そしたらいろいろと答えを書いてくれました。長いので読まないんですが、要は何なのかを説明します。

AIは新たに知識を創造するわけではないし、AIは意識を持っていないので、訓練データから見つけたパターンを返してるに過ぎないんですよ。要は、単なる情報の組み合わせに過ぎないんですと回答されました。

「じゃあ、私たちはどうしたらいいんだろう?」ということなんですが、人間こそが身体を持っているわけです。だから、新しい知識やイノベーションを作ったりするには、身体を持って、意識や経験に基づいて創造性を発揮することが重要なんだと。

大村:なるほど。それはAIにはできないってことなんですね。

西原:できないですね。ひょっとしたら遠い未来、あるいは近い未来かもしれないですが、身体的な意識を持ってしまうAIが出たとしても、じゃあ誰が(AIに知識を)与えているかというと人間なので、やっぱり人間起点なんですね。

逆に言うと、人間はAIに負けないように自分を磨いていかなきゃいけない。経験の質と量を高めていく必要があると思います。これが、知識創造の重要なスターティングポイントだと思っています。

大村:(参加者コメントで)「ChatGPT、自分のことをよくわかってるなぁ」と。

西原:そうなんです。ChatGPTさん、すごく謙虚に答えてくださいましたよ。

そもそも「知識」とは何か?

西原:あらためて知識って何でしょう? ということなんですが、立教に来る前の2016年、あるセミナーに出た時に「あなたは何の仕事をされてるんですか?」と聞かれたんです。「知識創造を研究してます」と言ったら、「じゃあ『知識』を定義してください」と言われて、サーッとなったんですよね。

大村:確かに。知識って何ですか? 「知ってる情報」とか?

西原:チャットに書き込んでくださってる方もいらっしゃるかなと思うんですが、ぜひ会場の方も自分なりに考えてみてください。……思考力ですよ。

大村:思考力を上げなきゃね。

西原:もちろん調べると定義は出てくるんですが、私たちはこんなふうに定義をしています。「個人の全人的な信念・思いを『真・善・美』に向かって社会的に正当化するダイナミックなプロセス」。

これには重要なポイントが3つあるんです。みなさんも「信念」を持っていらっしゃると思うんですが、なんらかの思いですね。信念を起点として、理想が絶対にあると信じて、そこに向かっていくということなんです。

ただ、それをやり始めると自己満足や自分よがりになってしまうので、社会的なプロセスで正当化していきましょうという定義になっています。

形式知よりも、目に見えない「暗黙知」のほうが多い

大村:「真・善・美」って、実は僕は去年ぐらいに初めて知りました。禅か何かの言葉なんですか?

西原:実はこれはギリシャ哲学の時代から言われております。どこの文化でも理想を置いていると思うんですが、それのことですね。

大村:そうなんですね。これを知ってから、僕も使うようにしました。真・善・美に向けてね。

西原:真・善・美、理想に向けてね。私たちは、もうすでに理想を持ってると思うんです。なぜかと言うと、真・善・美に当てはまらない醜いものや嫌なものを見たら、わかるじゃないですか。それがわかるってことは、すでに真・善・美の判断軸を自分が持ってるからだと思います。

大村:なるほど。

西原:それを暗黙知にとどめずに形式知化する。形式知・暗黙知は、たぶんみなさんよくご存じかなと思うので、ちょっと飛ばしますね。

重要なことは、この氷山のモデルで示しているように暗黙知の部分が非常に大きいということです。これは言葉になっていないから、自分がどれだけ持っているかわからないので、できるだけいろんな機会をもって揺さぶる。そうすることによって、上に上がるイメージがありますよね。それをやっていただきたいんです。

暗黙知はすべての知識の基盤になるんですが……。

大村:どのぐらいが暗黙知なんですか?

西原:これが難しくて。(喉元まで出てきて)「ここまで出そう」みたいなこともありますし、暗黙知は言葉にならないので、自分でもどのくらいあるかがわからないところもあるんですよ。

大村:確かに。暗黙知は言葉にならないから、どのくらいあるのかがわからないんだ。

西原:そうなんです。逆に言うと、どれだけ持っているかがわからないので、なんなら無限大にあると私は思いたいと思っています。

大村:なるほど。形式知のほうが、本当に氷山の一角ってことなんですね。

西原:氷山の一角ですね。

知識創造を語るうえで「哲学」が重要な理由

大村:「経験から暗黙知の質と量を増やすことが必要」と書いてありますね。これはどういうことですか?

西原:暗黙知というのは、身体に埋め込まれたり、考え方のパターンのことだったりするんですが、やっぱり経験を積まないと増えないので、質と量を増やすことが大事です。なので、最初のメッセージの「毎日今ここを大切にして生きる」というのもそこなんです。

大村:なるほど。ちなみに「集合意識との関係は?」という質問が来たんですが、集合意識って、遠くに離れた猿山の猿さんが同じことをした、とかですかね? よくわからないんですが。

西原:フロイトさんやユングさんの話もそうなのかなと思うんですが、暗黙知の底に入って下のほうに行くと、人類、あるいは私たちが地球で生きてきた過去の生物からの記憶みたいなものが暗黙的に入っていると言われていて。

私たちが気がつかないだけで、たぶんそういったものは「事実」だと思うんですよね。なので暗黙知の部分は、そういった部分も含めているところがあると思います。野中先生の『知識創造企業』『ワイズカンパニー』という本があるんですが、哲学を必ず取り上げているのはそういった背景もあるんです。

「知識って何だろう?」「『知』って何だろう?」ということを考えて掘り下げるために、知識創造を語るうえで、哲学を知っているのと知らないのとではぜんぜん違う結果になると思います。大丈夫ですか?

大村:じゃあ、いきましょう。

西原:はい。あと5分ぐらいで終わるので(笑)。

大村:本当に、もうちょっと大丈夫です。

西原:大丈夫ですか(笑)?

大村:大丈夫ですよ。ゆっくりいきましょう。

西原:私が言っちゃなんですが、それこそ知識の部分は形式知なので、本を読めばなんとなくわかるんですよ。

大村:なるほどね。実際に実践することが大事なんですよね。

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