2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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マサチューセッツ工科大学の卒業式に、モデルナ創業者のヌーバー・アフェヤン氏が登壇。卒業生に向けてスピーチを行いました。新型コロナウイルスのワクチン開発を約1カ月半で終え、パンデミック中200万人以上の命を救ったモデルナ社。本記事では、一見不可能と思われるミッションを達成するための3つの力についてお伝えします。
ヌーバー・アフェヤン氏:MIT(マサチューセッツ工科大学)の歴史は、こうした特別なパワーを支えてきました。電話、デジタル回路、レーダー、e-mail、インターネット、ヒトゲノム計画(人間のゲノム解読プロジェクト)、ドラッグデリバリー(薬物送達。薬を必要最低限の量で、必要な時間・場所へ狙いどおりに届ける技術)の制御、磁場封じ込め核融合発電、AIなどです。
これらすべてや、数多くのブレイクスルーは、MITのエージェントたちによる驚嘆すべき変革から生み出されてきました。ではみなさんに質問です。MIT出身ということ以外の、これらのエージェントたちの共通点は何でしょうか。一見不可能と思われるミッションを達成できる、共通の資質とは何でしょうか。
こうした飛躍を可能としているのは、3つの行動です。想像し、革新し、動いていく力です。そして今度はみなさんが実践する番です。まずは想像力を開放してください。想像力とは、アートや映画製作、文学や絵画の世界に限られた世界だと考えられがちですが、それはナンセンスだと思います。私の考えとしては、想像力とは科学のブレイクスルーにおける礎です。
私は論理性に異議を唱えているのではありません。MITにおいてはなおさらです。論理には論理の役割があります。しかし不可能なミッションを達成する際には、論理は主人ではなくしもべです。
論理には想像力の役割は果たせません。科学的探究とは、とどのつまり、真にクリエイティブな試みなのです。みなさんは証明と問題提起、デザインプロジェクトをマスターしましたね。しかし、数学者にして作家のルイス・キャロルの言葉を借りれば、「想像力は現実と戦う上で唯一無二の武器」なのです。
アイルランドの偉大な作家、ジョージ・バーナード・ショーにとっては、想像力の役割はより根源的なものです。ショーは、「想像力は創造の起点」だとしました。まず、私たちは望むものを想像します。そして想像したとおりに行動しようと考えます。そして考えたとおりに創造するのです。
みなさんは、これから革新を起こすでしょう。革新とは、想像したことを行動に移すことだと考えてください。ラテン語で言うところの「mens et manus」、つまり「心と手」です。(「mens et manus」はMITの校訓ですから、)みなさんはすでにご存知ですね。
MITの教育は、みなさんに未知なるものを避けるようには教えていません。むしろ逆で、星に向かって飛翔することだって、文字通り可能です。40名以上いるMITの卒業学位を持つNASAの宇宙飛行士に聞いてみるとよいでしょう。
飛躍とは、論理的ではなく時にクレイジーに思えるアイデアも含みます。凡庸な革新は、アイデアの論理性で測られ、既存のものの延長であり、提案者が論理的であることが求められます。でもここで、本質的な疑問を1つ提起してみましょう。論理的なことをする論理的な人に対して、非凡な結果が求められるのはおかしいとは思いませんか。
もうみなさんはおわかりかと思いますが、私は論理的ではなく、常に楽観的です。それは、これまで起業家 兼 イノベーターとして生きていく上で必要なことでした。実は私は、ある特殊な楽観主義を実践してきました。それを「偏執的楽観主義」と呼んでいます。それは、極端な楽観主義と根深い懐疑主義との間を行ったり来たりすることです。
科学的もしくはテクノロジカルな飛躍において必要とされる偏執的楽観主義は、信念から始まります。この場合の信念とは、「事実の裏付けのない信念」といったところでしょうか。
信念とはしばしば宗教と結び付けられますが、おもしろいことに、経験上、科学における新規開発は信念から始まることが多いのです。飛躍的な信念に基づき、実験を実施します。まれに実験は成功し、飛躍的信念は科学的事実へと変貌を遂げるのです。これが実現すると心の底からわくわくします。
楽観主義と信念を超えて歩むイノベーションの道中では、自分の信念を維持する勇気も必要になってきます。
MITを出たみなさんは、特務を担うエージェントとして出発します。今後たくさんの選択肢が現れますが、これから先に何を残したいのか、よく考えて選んでください。そしてその思考を生涯、定期的に続けてください。みなさんを待ち構えるミッションのすべてが、受けるに値するわけではありません。
みなさんは単なる技術屋ではなく、モラルの実践者でもあるのです。利益と権力におもねるだけの選択は、みなさんを空虚にします。このことを忘れると、世界を貶め、自分自身の価値をも落とすことになります。
この場にいる多くの人や、2024年卒業生で式に出席できなかった何人かは、紛争などの悲劇の犠牲者です。「アルメニア人虐殺」の生き残りの子孫である私は、「オーロラ人道イニシアチブ(Aurora Humanitarian Initiative、アルメニア人虐殺の生存者救済をルーツとした人道救済機関)」の共同創設者でもあり、こうした紛争の傷の深さを実感しています。
私たち全員にとっての解を見いだせればよいのですが、残念ながらそれは無理です。でもこれだけは断言できます。信念を持つことは、すべての解を持つことと同義ではありません。
起業家と人道的活動家を兼務して何年も活動していますが、相手がどう考えているのか問い、異なる考えを持つ人に耳を傾けて共通の落としどころを見いだすことには、きわめて大きな意義があります。
みなさんが今日、もしくは未来において難しい選択に直面する時、ぜひご自身の想像力を駆使してください。ご自身が作り上げたい世界を想像し、そこから逆算して行動してください。ゴールに至ることのできる複数の道程に意識を開いて、どの道程が成功に導くか情報を引き出していってください。
さて、これまでみなさんに「想像」と「革新」を勧めましたね。最後に「動く」ことの必要性についてお話ししましょう。これから内容に踏み込んでいきますが、その前に私のように母国を出た人たちへエールを贈りたいと思います。
母国を出て遠いアメリカへ来たご本人、もしくは父母、祖父母がそうだったという方、どうぞご起立ください。
(大多数の人が起立する)(会場拍手)
この方々に拍手を贈ります。
それは時に大きなハンデに思えることがありますが、実は逆なのだときっとわかります。初めてMITに来た時、私は疎外感に苦しみました。言葉には訛りがありましたし、今でも少しありますね。
余暇にホッケーやラクロスをすることはなく、アルメニアのフォークダンスを踊っていました。1年目も終わろうというある午後、インフィニットコリドー(廊下の名前)を歩いていると、あるポスターが目にとまりました。
ポスターの中からこちらを見つめていたのは、ネイティブアメリカンの首長でした。ヘッドドレスの正装を着け、挑むような目つきで、その指はまっすぐ私を指しているように思えました。ポスターにはこうありました。「誰が移民だって? お前だってよそから来たんじゃないか」。
(会場笑)
その時受けた衝撃はとても言い表せません。ネイティブアメリカンの人々を除いて、私たちはみな、どこかの時点でよそから来ているのです。おかげで私は、米国の、そしてMITの一員だと自覚できました。卒業生のみなさん、ご家族のみなさん。みなさんもそれは同じです。
私が数年かかって学んだ興味深いことが他にもあります。「移民」になるには、他国から来る必要はありません。移民という経験が、慣れ親しんだ環境を背にして未知の領域に放り出されることならば、生育地がどこであれ、MITに来た時点でみなが移民だと、私は主張します。
そして移民である以上、みなさんはミッション:インポッシブルをこなす上で大きなアドバンテージを得ることになるのです。それはなぜでしょうか。
みなさんは、慣れ親しんだ地を離れています。未知のテリトリーに足を踏み入れています。慣れ親しんだ地の安寧を捨ててなお、努力を続け、生き延びています。ミッション達成を模索し続けています。精鋭のエージェントのように、移民とは究極のイノベーターであり、困難を乗り越える力を備え、決してあきらめることをしません。
事実、私は革新を「知的移民」と呼んでいます。他国から移民してくる私たち同様、イノベーターは新たな環境を開拓し、よりよい未来を求めます。そしてそれは己のためだけではなく、よりよい世界を作るためです。
ですから、みなさんの出自がカンボジアであろうと、カリフォルニア州であろうと、ここケンブリッジ市であろうと、「移民」は可能です。動き続けるべきなのです。安寧を捨て、新たな手法で考え、見知らぬものに慣れ、不確実性を受け入れるべきです。想像し、革新し、動き続ければ、不確実な人生を送れます。
不確実なものに囲まれるのは、確かに不安です。しかし、みなさんのあるべき場所はそこです。なぜなら、宝が眠るのはそこだからです。ブレイクスルーの出発点だからです。不確実性をリスクと混同しないでください。まして、大きなリスクなどと考えるのは論外です。
不確実性とは、ハイリスクではなく、未知なるリスクです。つきつめればそれは、チャンスなのです。
さて、このスピーチはテレビ番組から始まりましたが、映画で締めくくることにします。最新の映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、昨年夏(2023年7月)に公開されました。映画はみなさんの世代が立ち向かう脅威を警告しています。混迷を極める地政学、気候変動やテクノロジーのプレッシャー、世界を簡素にも複雑にもすることができるAIツールなどが登場します。
卒業生のみなさん。見渡せば、ミッションを達成する力を持つ大いなるチームとしてのみなさんが見えます。善のエージェント、変革をもたらすエージェントです。
MITは、みなさんに実現不能なミッションに挑み、未来をつかんで光へと向かわせる力を授けました。私がみなさんに向ける熱い願いは、みなさんに実現不能なミッションを選んでもらうだけでなく、それを楽しんでもらうことです。勝ち目のない戦いを歓迎し、不確実性を受け入れ、想像力をもってリードしてください。
勇気と自信、そして執念と楽観主義と共に、移民の好奇心をもって未知に挑んでください。チームとして働く力を忘れず、MITが「ミッション:インポッシブル・チーム」と呼ばれるゆえんを世界に知らしめてください。
(会場拍手)
卒業生のみなさん。実現不能なミッションに着手し、それを受け入れ、楽しんでください。世界はみなさんを必要としているのです。人生というアクション・アドベンチャーの主演を務めるのは、みなさんです。ありがとうございました。
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