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「伝える×伝える」 〜いま、リーダーに必要な伝え方〜(トークセッション)(全2記事)

「過剰な気遣い」による忖度が、チームの生産性を低下させる 手強い上司にも有効な、相手にスムーズに「依頼」するコツ

リモートワークが一般的になり、課長をはじめとするリーダー層は、“目隠し”をされた状態でマネジメントをしなければならなくなりました。離れた場所で働いているメンバーにどう働きかけて、チームとして結果を出したらいいのか? 「いま、リーダーに必要な伝え方」というテーマで、『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』著者の越川慎司氏と、『課長2.0』著者の前田鎌利氏が対談。本記事では、心理的安全性の低い職場に足りない「声掛け」を増やし、上司と部下が有意義にコミュニケーションを図るためのポイントを解説しています。

「過剰な気遣い」は、絶対に生産性を落とす

堀口友恵氏(以下、堀口):ありがとうございます。じゃあ、続いてのテーマに移っていきたいと思います。今回、管理職へ伝える時のテクニックということで、書籍『トップ5%リーダーの習慣』についてお話しいただきましたが、現場でがんばっている社員の方々もいっぱいいらっしゃると思います。

そういった方々が、管理職に対して伝える際に意識する行動とか、越川さんの過去の経験も踏まえて「こういうことをすると上司とうまくいく」みたいなことをお話しいただけるとうれしいなと思います。

越川慎司氏(以下、越川):ありがとうございます。別に管理職の肩を持つわけではないんですが、コロナで一番大変なのは『課長2.0』にならなきゃいけない管理職なんですね。だって、労働時間が一番増えているのは管理職ですからね。日本と韓国は、90パーセント以上がプレイングマネージャーなので。

昼はプレーヤーで、夜や土日はマネージャーですよね。一般社員の方々は、そういう人たちに話しかけづらいのが正直なところなんですよ。部下から上司に対しても、伝えるじゃなくて「伝わる」を目指すのもありますし。パワハラ法とかもいろいろありますので、今はお互いに気を遣いすぎちゃっているんですよ。

過剰な気遣いは絶対に生産性を落とすんですよ。だから、心理的安全性を担保してくださいね。僕と前田さんは、どっちかと言えば管理職を変えようという感じですが、もし変わろうとしている管理職に声をかけるのであれば、声をかけやすい関係性を作ったほうがいいですよね。

上司が怖いと思ったら、1on1で上司との共通点を1つ見つけてください。共通点があるだけで、圧倒的に心理的安全性の確保の仕方が変わってくるんですね。ラーメン好きとかサッカー好きとか何でもいいですが、共通点を見つけると話しかけやすいです。その土壌を作った上で、「今、ちょっといいですか」と話しかけるのがいいですね。

難しい上司を説得するコツは「承認のサンドイッチ」

越川:うまくいっているチームは、「今、ちょっといいですか」という声かけが、普通のチームの4倍以上多いんですよ。部下もあまり気遣いをしないほうがいいので、こういう関係性を作らなきゃいけないんです。ただ、やっぱり眉間にしわを寄せている上司に声をかけるのは大変じゃないですか。

なので話しかけ方として、さすがに目的は言ったほうがいいかもしれないですね。「今、ちょっといいですか」じゃなくて、「来週の会議資料の件、1分もらいたいのでちょっといいですか」のほうが振り向いてくれますね。目的を言うのがまず1つめ。

もう1つ。みなさんが苦労している、上司を変えたい時のフィードバック。チャットに送ってるんだけど、メールばっかり見ていてチャットの返事がぜんぜんない。「チャットを見てください」と言うと、角が立つ。

ここでおすすめなのが、承認のサンドイッチ。はじめに「メールでお客さんに返答していただいてありがとうございます」で、1回承認しちゃう。「でも、チャットの返答が悪くて経費精算とかに時間がかかる時があるので、1日15分でもいいのでチャットも見ていただけるとありがたいんですけどね」と伝える。

最後に「ありがとうございます・依頼・ありがとうございます」。これは承認サンドイッチと言うんですが、気持ちよくなるから、抵抗勢力の上司であるほど言うことを聞いてくれます。いきなりリクエストするんじゃなくて、「ありがとう」でサンドイッチしちゃうとリクエストが通りやすいので、このコミュニケーション手法はぜひ参考にしていただければなと思います。

トップ5%のリーダーは、うなずきが3〜4センチも深い

堀口:すごい……! ありがとうございます。気遣いしすぎず、こういったアプローチでやっていきたいと思います。鎌利さんも聞いてみていかがでしたか?

前田鎌利氏(以下、前田):もう1個、越川さんのワークショップで「口角を上げる」という、すごくいいお話もありましたもんね。あれ、いいですよね。

越川:コロナの前、某新聞社で口角を上げない常務のおじさんがいたんです。「口角上げてくださいよ」と言ったら、一斉に若手と女性から雑談・相談をされるようになったんですよ。

不動産会社と新聞会社で、「40代以上の男性は口角を上げようキャンペーン」をやったんですね。なんと、社内会議の時間が8パーセント減るという。おじさんの笑顔は会議を救うんですね。

デジタルになればなるほど、ノンバーバルコミュニケーションが大切です。マスクをされている方は「うなずき」ですね。トップ5パーセントのリーダーは(平均よりもうなずきが)3〜4センチぐらい深かったんですよ。

マスクをしていても、うなずいていれば怒ってないとわかるんですね。そうすると過剰な気遣いがなくなりますので、「口角を2センチ上げる」「うなずきを3~4センチ深く」は、けっこう再現性があると思います。

前田:そうですよね。深くうなずいて、口角を上げる。もう、なんて印象のいいおじさまでしょう。

越川:(笑)。管理職、大変なんですよ。

前田:僕は書家の顔もあるじゃないですか。アーティストの時は、ちょっとぶっきらぼうでむすっとしていて、「あんまりうなずかないほうがいいんじゃないかな?」というノリで研修へ行ったら、あまりいい反応がなかったので。それはちゃんと切り替えるようにしてますね。

越川:鎌利さん、Facebook見てますから。書道する時はキリッとしていて。

前田:そうなんですよ。

越川:プレゼンの時は柔らかくて、そのギャップがいいと思います。

オンラインコミュニケーションで相手を気遣うテクニック

堀口:コロナになってからは、答えがない中で、上司に対する接し方もみんな手探りで来たじゃないですか。いったん落ち着いて出社率が増えたんですが、また今回のオミクロンで会社に出てこないところも増えてきています。越川さん的に、今後はリモートに定常化していくから、伝え方は2通りマスターしたほうがいいという感じなんですかね?

越川:そうですね。会う時もデジタルに関しても、本質的なコミュニケーションは一緒だと思うんですよ。例えば、さっきの「伝える」じゃなくて「伝わる」は、デジタルは関係ないですし。

ただ、デジタルとしての伝わり方はまた特殊なので、テクニックは学んだほうがいいと思うんですね。例えば、ウェブカメラの使い方とか。今日、みなさんの中でもノートパソコンを使われている方は多いと思うんですが、ノートパソコンのWebカメラって上にありませんか? 

例えば、僕が鎌利さんの部下だとして1on1をする時に、相手と会話しようと思って鎌利さんの映像を見ながらしゃべろうとするじゃないですか。そうすると、こういうコミュニケーションになっちゃうんですよ。目が合ってないですよね。

そうしたら、ZoomとかTeamsとか、相手のビデオを自分のウェブカメラの真下に持ってくるんですよ。今、鎌利さんの映像を見ながらしゃべってるんですが、そしたら目が合いますよね。

だって、会ってる時に下を向いてしゃべらないじゃないですか。だからノートパソコンの下にダンボールとか座布団を置いて、ノートパソコンをちょっと高くしたほうがいいんですよ。視線が合いやすいから。6割ぐらいはウェブカメラを見てしゃべる。僕もさっきのプレゼンではみなさんの表情を一回も見ていなくて、ずっとウェブカメラを見ていたから。

こういった気遣いは対面ではなかなかできないので、テクニックぐらいは知っておいたほうがいいかなと思います。コミュニケーションの本質は印象だと思います。

前田:ちょうどネットで、パソコンの真ん中にカメラが来る中国製のやつを買ったんですよ。3回で壊れて動かなくなったんですが、越川さんは順調に動いてますか? 

越川:一応動いてはいるんですが、固定が難しくて。モニターに固定できないので、しゃべってるとカメラがぶらんぶらんしちゃって、視聴者に「酔う」と言われたのでやめました。

前田:なるほど。そうなんですね。僕は酔わせる前に壊れたから。やっぱり、こういうデバイスは使ってみないとわかんないですよね。

越川:わかんないですね。

前田:とりあえず試してみるんですが。

オンライン環境で投資すべきは「カメラ」よりも「マイク」

越川:そうですね。トップ5パーセントリーダーにヒアリングしたんですが、彼らはカメラじゃなくてマイクに投資してましたね。

前田:おぉ。

越川:1,000円でも2,000円でも10万円の一眼レフでも、プレゼンテーションの成果にはカメラは関係なくて、実は音質が関係があるということがわかっています。

ノートパソコンの内蔵マイクを使っている方はさすがにいらっしゃらないと思いますし、ヘッドセットを使っている方もいらっしゃると思います。(トップ5パーセントリーダーの)みなさんが投資したのは、3,000円くらいの単一指向性のマイク。

これは4,000円くらいのやつですが、向いている方向の音しか拾わないんですよ。プレゼンテーションする時に、相手が質問してきたらキーボードでメモを取りたいじゃないですか。キーボードは相手にカチャカチャうるさいんです。単一指向性だと、下にマイクがあるんですが、ここしか拾いません。

今、キーボードを打ちますが……ほとんど聞こえてないですよね。こういった気遣いをしていると、宅配便のピンポンや赤ちゃんの「オギャー」という声を拾わないので、マイクぐらいは気遣いしてあげると、相手は集中して聞いてくれるんじゃないかなと思います。

3,000〜4,000円の投資ですので、カメラだったらマイクに使う。会社の会議室にあるやつは全指向性というやつで、音を360度拾うんですね。全員の出席者の声を拾うから、これを家で使っちゃうとマウスの音とかがめちゃくちゃ入るんですよ。だから、もし投資するんだったら単一指向性のマイクがいいかなと思います。

前田:会議室の話も出てたんですが、出社して会議室に集まってわいがやされるのと、今日みたいにリモートでぽつんと追いやられるのだと、どうしても会議室のほうがフィーバーするじゃないですか。

越川:そうですね。(意見が)出ますよね。

前田:しかも、誰がしゃべってるかよくわかんなくて。そんな困ることはたぶんみなさんも経験されていると思うんですが、越川さんはなにか工夫されたりされていますか? 

「数字」を有効活用すれば、上層部の納得も得やすい

越川:マイクロソフトでは、偶然10年前から会議室の参加者とリモートの参加者でやってたんです。それこそ、シアトルから入ってくるメンバーとパリから入ってくるメンバーという感じだったので、文化としては慣れてたところがあるかなと思います。

盛り上がったら人にフォーカスするんじゃなくて、部屋全体の雰囲気をビデオで映すことと、昔はホワイトボードでどんな議論がされているかを共有してましたね。部屋全体の雰囲気とホワイトボードが見えていて、あたかも参加できるようにしている。孤立化しないために、リモート参加者にはたまに振ってましたね。

「堀口さんどうですか?」「前田さんどうですか?」みたいに途中で振ると、没入感が出てくるので。そのへんは今後もハイブリッドになってくるでしょうから、リモート参加者を孤立化させないような工夫は必要だと思います。

前田:管理職の大変な課長さんにしろ、リーダーの方がさらに上の方に伝える時。ここでのポイントはなにかありますか? 「忖度しなきゃ」というのが大前提かもしれない会社さんもいっぱいあると思うんですが。

越川:僕もNTTにいましたので……。

(一同笑)

越川:ラジオ体操第2までやってましたし、忖度オンパレードでしたけれども。じゃあ、どういうエッセンスで相手が動くかと言うと、管理職の上層部になればなるほど「数字」ですね。変化を数字で表現すること。僕も今日は意識的に数字で説明したんですね。

数字で説明すると、特に管理職の方は頭に残りやすいので。例えばダイエットをする時も「スポーツジムに行ったら痩せますよ」と言うよりも、「スポーツジムに2ヶ月行ったら15キログラム痩せますよ」と言われたほうが行動を起こすと思うんですよね。

数字は別に何でもよくて。数字で変化を伝えると、上の方々は受け入れやすいかなと思いますね。階層の高い方には、なるべく数字でコミュニケーションをするようにしています。

オノマトペを活用すると、相手に意気込みや情熱が伝わる

前田:数字があると、安心感とか「任せよう」みたいに委ねやすいですよね。

越川:そうですね。数字の正しさよりも、数字でコミュニケーションできるということはしっかり調べてきたし、しっかり実証実験をやっている証拠なので。

上司も意外と早く認めたいんですよ。気持ちは認めたいんですが、訳のわからない説明をしちゃうと認められないので、「数字で説明されたほうが承認しやすい」って管理職や上層部の方は言ってました。

前田:そうですよね。「このトマトおいしいよ」だけよりも、「糖度が○パーセント」と言われたほうが、買ってみようかなってなりますもんね。

越川:そうですね。

前田:確かに。

越川:あと、特に経営層に近くなればなるほど、意外とロジックじゃなくて感情で理解するので、効果があったのはオノマトペ、擬音ですね。「どんどん」「さらに」「シャキシャキ」という音声を使うと、意気込みや情熱が伝わったり、映像化しやすかったりするので、形容詞・副詞を多めに使っていただくのがいいかなと思います。

前田:ありがとうございます。

堀口:どんどん使っていきたいと思います。ちなみに1個聞きたかったのが、越川さんが数字にビットを立てる時は、「こういうデータがあるといいな」と思って調べられるのか、それとも大きなビッグデータの中から傾向を掴んで、「何パーセントの人は意思決定を何パーセントにする」というのを導かれるのか。個人的に聞きたかったんです。

越川:あまり僕が恣意的に数字を選んじゃうと、客観性がなくなっちゃうんですね。なので出されたデータは、基本的には人じゃなくて全部AIに分析させています。

IBM Watson、Microsoft Azure、AWS、Google、4つのAIを使っています。ただ、そこで仮説を作ってストーリーを作るのは人間なんですね。仮説のままだと僕の思いが含まれちゃうので、本当にそれが正しいかどうか、必ず再現実験をします。それが再現できたら説明するというかたちにしています。

僕は数学がすごく苦手なんですが、ただ数字で説明するよりも案件成約率が高くなっていったので。そのへんは外資で鍛えられたところもあると思うんですが、数字は何でもいいと思っています。ただ、数字で説明するようには気をつけています。

堀口:ありがとうございます。今回、参加者のみなさんのうなずき度がいつもより150パーセント増しで。これは、私調べなんですが。

越川:これは、5パーセントリーダーが5センチ深くうなずいている。

堀口:(笑)。なので、みなさんの納得度もすごく高まってるんだなぁというのをすごく感じました。ありがとうございます。

「本を読む」だけでは意味がなく、いかにアウトプットできるか

堀口:そろそろお時間も迫ってまいりましたので、最後のテーマです。本当にシンプルなんですが、何でも構いませんので、越川さんが伝えたいメッセージをお話しいただきたいと思います。

越川:ありがとうございます。僕はプレゼンテーションが大好きなんですよ。なぜかと言うと、アウトプットだからです。樺沢紫苑先生の『アウトプット大全』を聖書だと思ってるんですが、僕も独立してよくわかったんですけど、やっぱり世の中の変化は全部アウトプットから生まれているんですよね。

インプットだけでは意味がないと思っているんですよ。僕も本を出してますが、本を読むのは意味がないと思っていて、本を読んで活用して意味があると思っているんですよ。

プレゼンテーション協会やEight ONAIRもぜひ見ていただきたいと思うんですが、「学ぶ」で終わりはやめてもらいたいなと。失敗してもいいから、何か試してもらいたいなと思います。2025年に向けてすごく変化が激しくなってくるので、変化を生き抜くためには行動のバリエーションを増やすことなんですよ。

テレワーク、ワーケーション、週休3日とかですね。この行動のオプションを獲得するためには、失敗しても成功しても、行動実験を続けるしかないんですよ。なので、インプットしたら必ずアウトプット。行動実験をして、自分に役立てて、学びをさらに高めて行動進化していただきたいなと思います。寝ると忘れちゃうんですが、何かしら明日から1つでもやっていただければなと思います。

堀口:ありがとうございます。

前田:たぶん、明日からみんなEight ONAIRで2本ぐらいはウェビナーを見るんじゃないかな(笑)。

堀口:ありがとうございます。以上で対談を終了させていただきたいと思います。みなさま、拍手をお願いいたします。ありがとうございます。

(一同拍手)

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