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導入担当者が語る、 創業120年のロート製薬でのkintone活用と定着までの取り組み(全2記事)

2022.02.21

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「脱Excel」で作業時間を70%削減 創業120年のロート製薬が実践した「情報集約」の大改革

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2021」。その中で行われた、「kintone hive 2021」は、日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するライブイベントです。本記事では、創業120年を誇る老舗製薬会社・ロート製薬の柴田久也氏によるプレゼンテーションの模様をお届けします。営業部門が抱えていた課題と、それを乗り越えるためのkintone活用の工夫が語られました。

3つのフェーズで語る、kintone活用と定着までの取り組み

柴田久也氏(以下、柴田):みなさん、こんにちは。ロート製薬の柴田と申します。約40分間の講演にお付き合いいただけますと幸いです。

このセッションの概要です。大きく3フェーズに分けてお話しします。まず導入期では、なぜkintoneだったのか、そもそもなぜ検討しだしたのか、何が課題だったか。その背景をお話しさせていただこうと思います。

次に運用期から浸透期というフェーズでは、実際に導入をして運用が進むにつれて、苦労したことがめちゃくちゃありました。それをどう乗り越えてきたか、工夫したことをお話ししたいと思っています。

そして今、吉澤(一敏)さんにも触れていただきましたが、7月の「kintone hive」登壇後にユーザーも広がって、用途も広がっています。その事例のお話と、今後社内においてkintoneはどんな姿を目指していくのか。今後の近い将来のお話もさせていただきたいと考えております。

胃腸薬で創業したロート製薬

まず弊社の会社紹介をさせてください。我々は「健康」と「美」という2つの大きな領域において、ユニークで新しい商品を開発して、販売・サービスの提供をしている会社でございます。

代表的なブランド・商品を一部抜粋しています。医薬品ではやはり目薬ですね。ロートといえば目薬、目薬といえばロート。社屋の上空に鳩が飛んでいる(TVCMの)イメージをお持ちの方も多いと思うんですが、ありがたいことに国内では大きなシェアをいただいている分野になります。

あまり知られていないんですが、実は胃腸薬で創業した会社です。今は「パンシロン」というブランドになっていますが、その前身の「胃活」という商品が、ロートにとって初めての商品でした。

製薬会社でありながら、今の売上の半分以上は化粧品・スキンケア用品です。中でも代表的なのが「肌ラボ」というブランドですね。化粧水、乳液、クリーム、シートマスクといった、さまざまな機能・用途に合わせた商品をラインナップしています。あとはメンズブランドの「OXY(オキシー)」や「デ・オウ」ですね。

あとはなんといっても「メンソレータム」。このイメージもあるかと思いますが、リップクリーム、ハンドクリーム、外皮薬と、さまざまな商品をラインナップしています。12月は寒くて乾燥してる時期ですので、みなさまのポケットの中や鞄の中、あるいはご自宅に1つでもメンソレータム商品があるとうれしいなと思っています。

あとは食品分野です。子どもの成長を後押しするサプリメントや、アイケア用品の内服薬。そういったものを展開しているかたちになります。

ビジネス面で注目される、特徴的な制度や風土

ロートがビジネス面で注目される理由は、特徴的な制度や風土にもあると思います。

まず「健康経営」を掲げておりまして、社内で「CHO(Chief Health Officer)」という業務責任者が配置されています。社員の健康促進や運動習慣の啓蒙といった取り組みがなされておりまして、その一環で、社内運動会や体力測定をやるんですね。

運動会ですと、いい大人が全力でリレーをしたり、体力測定だとプランクを何秒できるかとか、目を閉じて片足立ち何秒できるかとか。そういったことを全社員でやっている、ちょっと変わった会社でございます。

制度面でいうと、複業をいち早く解禁したことでも有名かと思います。原則、競合会社以外であればどんな会社に所属してもいいルールになっています。のちに触れますが、私も複業をしています。それから「社内ダブルジョブ」という呼び方をしてますけども、部署の兼業ですね。営業兼人事がいたり、情報システム兼営業企画がいたりという働き方をしています。

フラットな社風も1つの特徴かなと思っています。役職や年代に関係なく「ロートネーム」というあだ名で呼び合う文化がございます。弊社のトップの山田邦雄をみんな「邦雄さん」と呼ぶんですよね。私は柴田ですが、会長からも「柴ちゃん」と呼ばれています。そんなフラットな制度もあります。

社会貢献、地域貢献、スポーツ貢献といったところでは、サッカーのガンバ大阪、Bリーグ(バスケットボール)のバンビシャス奈良のスポンサーをやらせていただいています。

会社概要はこんな感じですね。国内単体でも約1,600人、グローバルで7,000人弱の規模になっています。本社は生野区にございまして、駅で言うと桃谷駅。あとは千日前線の北巽駅にありますね。ちなみにこのグランフロントにも、コーポレート部門の一部がオフィスで入っています。

創業120周年を機に全社プロジェクトが始動

自己紹介させていただきますと、私は柴田久也といいます。DX戦略デザイン本部という部署に所属をしておりますが、今日は、私が今の部署に異動する前の、営業企画推進部での話が中心になっています。なのでちょっと営業視点でお話をする文脈になっています。

出身は愛知県名古屋市で、写真にもあるとおり、野球をガチでやっています。複業でスポーツトレーナーの資格をいくつか持っていて、この写真は大学の硬式野球部で指導をしている風景でございます。私にタグをつけるとすれば「#ゴリゴリの文系」「#体育会系」、そして「#非IT要員」。こんなタグがつけられるかなと思います。

ここからが本題でございます。2019年に我々は創業120周年を迎えました。そのタイミングで、2030年時点で世界がどうあって欲しいか、そして我々がどんな姿でありたいかを宣誓した経営ビジョンを掲げました。それが「Connect for Well-being」になっております。

どんなビジョンかといいますと、「ウェルビーイング」はよく聞くと思います。心も体も生き生きとして、笑顔あふれる毎日を過ごせること。この状態を社会のより多くの人に届けたい、そんな願いのこもったビジョンなんです。

そのために我々はまず、既存のさまざまな事業をつなぎ合わせ、コネクトしていく。そして社内外の仲間ともコネクトをしていく。そこで生まれたイノベーションを世界のウェルビーイングにコネクトしていく……。こういった意思表示でもあるビジョンを制定しました。

このタイミングで、全社・全部門の課題を洗い出して、施策を立てて組織をもっと強くしていこうという全社プロジェクトが始まったんですね。

営業部門が社内共有したい4つの情報

当時所属していた営業部門の我々は、商談や店頭といったお店から得られる情報を活用して、のちの営業活動に活かしたり、メディアプランニングを立てる参考にしたり。もっと言えばSCM(サプライチェーンマネジメント)にその情報が活かされていないんじゃないかという、ちょっと抽象度が高い課題設定をしました。

大きくこの4つの情報分類をしました。まず「取引先」、いわゆる小売企業さまです。「どの商品を・何個・どの店舗に・いつ」と、商品にまつわる商談・お話を当然してきます。かつ例えば「この1ヶ月間は2個買ってもらったら何円引きしましょう」という販促計画も取引先さまと詰めます。こういった情報も社内にナレッジする必要があるということで定義をしています。

あとは「店頭」。売り場のことですね。コロナがいい例です。弊社でも日焼け止めを販売していますけども、やはり外出の自粛・ステイホームの影響もありまして、ちょっと売上は落ち込むんですよね。代わりにマスクや消毒液がめちゃめちゃ売れるといった市場の変化、お客さまの購買行動の動向変化。これも社内にシェアする必要があるということでまとめています。

そして「競合」、我々のライバル会社さまですね。「新しい商品を、こんなタレントさん使って、こんなプロモーションしてる」といった外の情報も貯めていく必要があるということで(定義を)示しています。ここまでの3つは、外から入ってくる情報ですね。

我々は「チーム」で営業をしてますので、当然チーム内での活動状況の見える化やシェアも大事になってきます。ToDoやタスク進捗をもとにチームアクションをとったり、トラブルやイレギュラーの推知に役立てようということで、大きく4つの必要な情報があると整理をしました。

Excelを使った「報告のための報告」が繰り返される現場

これが従来、どんなかたちで社内に流れていたかというと、所属するチームによって日報か週報かがバラバラだったんですね。どんな手段で報告していたかというと、言わばメールしている状態でした。宛先に投稿先のフォルダを指定して、件名にレポートのタイトルをつけます。本文に自由記入で定性的な報告を書いていくような報告形態でした。

そうすると何が起きるかというと、情報が集まる頻度と質がバラバラになるんです。情報の受け手側としては探しにくいし、そもそも書かれていないということが起きていたので、情報という資産がまったく活用されていない状態でございました。

そうすると続けて何が起きるか。他の部門からすると「この商品はいつ出荷されるの?」「どこに何個送ればいいの?」というのが当然気になるわけですね。マネジメントラインの上役の方々も「商談の進捗はどうなの?」「うまくいってんのか?」ということが当然気になるわけです。

さらに上の経営層からすると、「全体の進捗をちょっとまとめておいてくれ」ということで、ここでExcelが登場するんですね。報告のための報告が繰り返される。Excelあるあるだと思うんですけど、ファイルが開かないとか、誰かが編集中だとか、そんなトラブルが頻発していました。

おそらく当時、聞く側の社員たちの心中としては、「ふだんから報告をくれればこんなExcelを作らなくていいのに」と思いながらExcelを作っていて、書き手のほうも「これ、前も同じようなことを違う人から聞かれたな」と思いながら書いてるわけです。

そんなことを繰り返すうちにどんどんExcelが積み重なっていって、記入ミス・漏れが当然起きました。やはり手作業で加工しますので、集計をしてみると数字が合わないことも多く起きていました。つまりこの時点で、我々がぜんぜんコネクトできていなくて、ウェルビーイングには程遠い状態でした。

情報が集まる場所を作るための「営業日報」を作成

この状態を打破するために、何かを変えなければいけない。そう考えた我々が出会ったのが、kintoneというソリューションです。このkintoneをSFA的に採用しまして、情報が集まる場所として、みんなが集まる場所にしたい。そんな願いでプロジェクトが動き出しました。

実際のアプリの使用例として、代表的なものを2つご案内をします。まず「BPレポート」というアプリですが、我々は営業職のことを「BP(BusinessPlaner)」と呼んでいます。BPがレポートするアプリ、つまり営業日報をまず1つ作りました。

ルールは3つだけです。「毎日書いてください」。小売の本部のバイヤーさんや商品部長さまと「商談したら書いてください」。我々は管販ビジネスが大半ですので、代理店さまと商談した時もこのBPレポートにちゃんと書いてくださいとルール化しました。

あとは「商談以外」ですね。例えば「今日は社内で資料を作りました」「データ分析をしました」ということも書くようにルール付けをしました。シンプルにこの3つだけです。

アプリの画面も至ってシンプルです。企業マスタのアプリを1個作っていますので、そのマスタをルックアップ(参照)するかたちで企業名を取得します。そして業務内容をあらかじめカテゴライズして、商談なのか資料作成なのかデータ分析なのか市場調査なのか、プルダウンで選択させて定性報告を書くようなフィールドを設けてます。

そしてブランドマスタもアプリを1個作っているので、今日報告するレポートがどのブランドに対しての業務・商談なのかを、必ず選択させるようにしました。そうすると、いろんな部門にまたがるブランド担当者もブランド状況の全体感が見えますので、非常に有用なものとなっております。

営業部門と調達部門の間にあった、Excel運用の2つの問題点

あともう1つ、アプリを紹介させてください。「セット品・企画品積み上げアプリ」です。「セット品・企画品とは何なのかというと、スライド左側の「ロートジー」という目薬は(『ドラゴンクエスト』の)「スライム」とコラボをして、ボトルの形状をスライム型にした企画品です。右側はデ・オウというメンズブランドで、『北斗の拳』のキャラクターをパッケージにデザインした商品です。

こういったデザイン品、キャラクターコラボ品や限定商品のことを「企画品」と呼んでいます。そういった商品が店頭にはまとまって複数本、ドンと納品されるんですよね。セット組みされて納品されるので、我々は「セット品」とも呼んでいます。

この企画品・セット品なんですけども、生産が常態的に行われていない期間限定の商品になりますので、各BPが「この小売さんに何個売りたいです」「何個提案したいです」という意思表示をするんです。そこから実際に商談を経てクロージングされた数をもとに製造するという社内運用をしています。

商談が始まる前の意思表示の時点で、「目標数量」を申告して商談を進めて、クロージングしたら「責任数量」を書くという運用をしています。従来はこれをExcelでやっていました。この例で言うと、「目標数量を5月15日までに書いてね」「責任数量は6月11日までに書いてね」と。このExcelシートで運用していた時の問題点が2つあります。

この赤いところなんですが、目標数量の時点で「100個」「50個」と数量が積み上げられています。ただ、責任数を書く時点でゼロになっているんですよね。要は商談がうまくいかなくてゼロになったと思われるんですけど、Excelの数値上だけだと、それが読み取れないんです。要は振り返るにも振り返れないし、そのギャップの分析が非常に難しい状態でした。

即時性のないやりとりで、イレギュラーが頻発

調達にも影響を及ぼす運用になっていました。後に詳しく話しますが、人間は不思議なもので、締切日を設けると締切日に書くんですよね。猶予があってもなぜか寝かせちゃうんです。頷いてる方が多いと思うんですけど、ロート社員も例に漏れずそんな感じでした。

セット品・企画品の発売までの流れを見ると、BPは約3ヶ月前に目標数を申告します。目標数が締まると、調達部門は資材発注の作業に移行します。どれくらいの規模感で包材・資材などが必要になるかの検討段階に入るわけです。その期間と並行してBPは商談を行ってクロージングし、責任数をフィックスさせていく。最終的に責任数が決まったら、その数をもとに加工をする。

こんな流れなんですが、問題はここだったんですね。要は商談状況がリアルタイムでわかれば、包材・資材数を調整することができるんです。商談が決まった、上振れした、下振れした。それがリアルタイムに分かれば調達部門も柔軟に動けるんですけど、みんな責任数を締め切りの日に書くので、即時性がまったくなかったんですよね。

なので調達部門がどんなことをしていたかというと、まずは目標数の合計値上限で、資材の確保を行っていました。責任数が締まった段階で蓋を開けてみると、目標数より責任数が下振れをしている。でももう包材は手元にあるから、廃棄しなければいけないというイレギュラーが頻発していました。

この状況も変えないといけないと思った時に、kintoneが出てくるわけです。Excelはユーザーに浸透していましたので、Excelのいいとこ取りもしたいということで、「KrewSheet」というプラグインを採用したわけです。

kintoneアプリをカスタマイズし「Excelのいいとこ取り」を実現

見た目はほぼExcelだと思うんですけど、kintoneのアプリです。従来どおり、目標数の記入をKrewSheet上に直接行いますが、責任数の書く場所の導線を変えました。BPレポートから書くようにしたんですね。ここにちょっとカスタマイズを入れていまして、仙台に拠点を置くアーセスさまにお力添えをいただいています。

どんなカスタマイズかといいますと、BPレポートを投稿する日、つまりレコードの作成日がセット品・企画品のヒアリング期間中だった場合、日付をキーにしてヒアリング対象品目を自動的にサブテーブルで表示する、というようなカスタマイズです。

BPは毎日書いている日報に書く場所が突如現れるので、そこに数を書けばいい。そういった環境を構築することができました。大事なのが、そこに数だけじゃなくて「どんな相手に」「どんなプロセスで」「どんな交渉をしたのか」といった定性報告も同時に記入させるようにしたことです。

BPレポートに書いた責任数量が、プラグインの「KrewData」を使って、KrewSheet上の責任数の欄に反映される。KrewSheet上のレコード詳細画面に入っていくと、最後に責任数量が書かれたレポートがどのレポートか示しているんですね。ここをクリックすると、そのBPレポートの詳細に遷移する、といった運用になっています。

定性的な報告も定量的な報告も、すべてワンストップでシームレスに確認できる環境を構築しました。

「脱Excel」で70パーセントの作業時間の削減に成功

この2つのアプリを使って実現できたことは、まず「脱Excel」です。このインパクトは非常に大きかったので、のちにデータも示してお話をしたいと思います。あとは「調達の連携」です。リアルタイムに近い状態で他部門連携が取れるようになりましたので、調達のロスの削減にも寄与できました。

チーム運営、チームビルディングという観点では、やはりメンバーが毎日書くようになりましたので、活動状況が可視化されたことにより、メンバーの業務状況によって仕事を振り合う、助け合うことも徐々に生まれ始めています。

部門を越えたコミュニケーションも増えた印象があります。kintoneのコメント欄に「今日、競合がこんな売り場を取っていた」ということを、マーケ部門や部長陣に宛先を指定してメンションを飛ばすわけですよね。

それを見たマーケ部門で「じゃあちょっとこういうアクションをとってみようか」という議論が生まれて、次のアクションが立てられることも散見されるようになってきました。

これが「脱Excel」でのインパクト、工数削減の割合です。従来の運用は、定性的な報告は日報もしくは週報で、定量的なヒアリングの回答はExcelでというように、煩雑な環境だったんですが、画面上部の運用に変えたことで、すべてkintone上で完結するようになりました。

このヒアリングシート1枚あたり、従来は51時間ぐらいかけて担当者が作っていたんですけど、時間にして37時間ほど、割合にして70パーセントぐらい削減できた。こんなインパクトがある取り組みでございました。

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