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導入担当者が語る、 創業120年のロート製薬でのkintone活用と定着までの取り組み(全2記事)

2022.02.22

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課題解決のヒントがあるのは「ゲンバ」と「ホンバ」 Excelからの脱却を叶えた、ロート製薬の“泥臭い”取り組み

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2021」。その中で行われた、「kintone hive 2021」は、日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するライブイベントです。本記事では、創業120年を誇る老舗製薬会社・ロート製薬の柴田久也氏によるプレゼンテーションの模様をお届けします。kintone導入後の「浸透・定着」フェーズでの苦労や、その乗り越え方が語られました。

​​「kintoneにする必要あったの?」という“隠れた声”に向き合う

柴田久也氏(以下、柴田):ここまではkintone導入による成果のお話をしてきました。これも間違いなく事実です。ただ、ここに行き着くまでにはすごく苦労をしましたね。悩みました。実は今も続いてはいるんですけども、本日は一応、乗り越えられたアドバイス・メッセージをちょっとお伝えしておきたいと思います。この部分は、非常にコアになってくると思います。

kintoneを入れたあと、すぐメンバーからこんな声が上がりました。「なぜ日報なの?」「毎日書く? やること増えた」「Excelのままでよかったのに」という声もありました。裏側には、言葉にしない声があるんですよね。「kintoneにする必要あったの?」。こんな声が隠れていたわけです。

「いかんいかん、この状況は変えないと」ということで、私は他社事例をめちゃめちゃ調べました。すごく参考にさせてもらって、実際にアプリのUIに反映させています。そして今日のような「Cybozu Circus」「Cybozu Days」「kintone hive」といったイベントに積極的に足を運ぶようにして、より深い事例を知るようにしました。

そうすると、kintoneユーザーさまの悩んでいることってだいたい一緒なんですよね。やはり運用が進まない時の悩みごとはほぼ一緒だなと、ちょっと安心もしました。

あと、声を上げるメンバーにも向き合う必要があるので、全国行脚しましたね。東京以外に7営業所あるので、そこに通って、メンバーと向き合って対話をするということも行いました。

どうしても移動と時間の制約があるので、いろんな質問を受けて、そのフィードバックや回答集をちゃんと整備をして、kintone上に格納しました。

kintoneの浸透に貢献した「デジタルチャンピオン」の存在

柴田:この中で特に私が役に立った・ためになったなと思うのが、他社事例と、「kintone hive」の事例を知ることでしたね。そこから学んだことをロート流にアレンジして、自己流にカスタマイズして行ったことが3つあります。

まず1つ目が「デジタルチャンピオン」です。これだけ聞くと「何だそりゃ?」だと思います。kintoneあるあるだと思うんですが、運用や浸透を進めるために、kintoneに共感してくれる方や使いこなしてる方を巻き込んで取り組まれるユーザーさまが、非常に多いなと思って聞いていました。

ただ、言うてその方はkintone専従者じゃないので、どうしても優先順位が下がってしまう。そんなことも想定されたので、私はこの「デジタルチャンピオン」という肩書きをその人材に与えまして、kintoneの浸透にコミットしてもらう取り組みをしました。

肩書きと役割を与えると、自覚・責任感が芽生えて、浸透にコミットする。モチベーションも上がる。「チャンピオン」ですから、なんかモチベーションが上がる。そんな効果もありました。

そして、「デジタル=若手」ではなく、僕の諸先輩方、年代上の方でも挑戦心・向上心溢れる方が多くいますので、デジタルチャンピオンはあえて年代を混在した人材を任命させていただきました。そうするといろんな化学反応が起きたので、これも良かったなと振り返っています。

チャンピオンと私は、各営業所から上がってくる質問に対して私がフィードバックするという運用をしながらも、チャンピオン同士のコミュニケーションの促進も意識しました。kintoneのスペースを活用し目的ごとにスレッドを立てて、コミュニケーションを取っていただいて、そこで決まったことを営業所に展開していってもらう、落としていってもらう。

今の我々のkintoneの浸透具合は、やはりデジタルチャンピオンの存在が非常に大きかったかなと思っています。

ネガティブな感情を払拭する「いいね」の工夫

柴田:2つ目は「便利さと楽しさ」を非常に意識しました。これもkintoneあるあるだと思うんですが、既存のコア業務をkintone化することで、必然的にkintoneを使う状態を作るといった事例も多いと思うんですね。

ただ私は「使わなきゃいけないもの」というネガティブな感情が浸透を妨げると思ったので、「無理にkintone化しない」ことを意識しました。勝ち試合しかやらないことですね。「使うと楽しいな」「便利だな」というポジティブな感情をトリガーにしたほうが、確実に浸透は早まると思いました。

「社内コンクール」と書いてますが、これはどういうことかと言うと、我々営業部門は特定期間、ゲリラ的にお店に出向きます。売り場の担当者や店長さまと交渉をして、「商品のポップをつけられたら5ポイント」「ボードを貼れたら10ポイント」「ポスターを貼れたら20ポイント」というかたちで、店頭のシェアを上げながら商品の視認性を上げていく取り組みをしています。

コンクール期間中はチーム戦で競い合ってもらうイメージで、イベントページ的にスペースを使ったり。SNS要素を取り入れるために「いいね」プラグインの実装なんかもしたりしました。

これが実際のイベントスペースです。チーム状況のポイントが今どうなっているかを可視化してます。ある意味ゲーム感覚で使ってもらっているようなスペースですね。

あとはもう1つ、「店頭レポート」というアプリもございます。店頭での活動状況や、できあがった売り場の写真を共有するアプリです。そこに「いいね」プラグインを実装することで、やっぱり大々的に売り場が取れた・陳列できた投稿には「いいね」がめちゃめちゃ付くんですよね。

そうすると投稿者も、「もっと『いいね』をもらいたい」と思う。応援されているような感覚でどんどんモチベーションが上がっていく。それを仕掛けるために、「いいね」プラグインを実装しました。そうするとポジティブな感情がどんどん増えていくので、「(kintoneを)もっと使いこなそう」という感情が生まれたと振り返っています。

課題と等身大で向き合うための「ゲンバ」と「ホンバ」の考え方

柴田:そして最後に、「ゲンバ」と「ホンバ」に行くことです。

「ゲンバ」は課題の根深い現場、つまり課題の震源地です。そこに必ず足を使って出向いて、課題に等身大で向き合う。うわべだけで理解しない。不平・不満の声が上がる理由があるので、必ず現場に行ってそれに向き合うことを意識しました。

そして現場で持ち帰ってきた課題を、次は「ホンバ」に持っていくんですよね。「ホンバ」は、例えば今日の「Cybozu Circus」もそうだと思います。他社の取り組みを知る、先進的な企業に触れるというところで、「ホンバ」に課題を持っていって、そこで得たヒントをまた「ゲンバ」に持っていってフィードバックする。この「ゲンバ」と「ホンバ」を行き来するようなちょっと泥臭い取り組みも行いました。

そうやっていくと、メンバーたちも共感と言いましょうか、「僕たちのためのkintoneだったんだ」と理解してくれるようになりました。説得ではなく納得させるということですね。どんどん共感の輪が広がり、称賛が生まれる環境が徐々に醸成されていきました。

そうすると他の部門が噂を聞きつけて、「営業で使ってるkintoneって何? 知ってる?」という会話が社内に生まれるわけです。そうすると「ちょっと使ってみたいです」「教えて欲しいです」という声をいただくようになりました。

人事総務部が行う予約管理も、kintoneで簡易化

柴田:実際に「kintone hive」に登壇した7月以降で、新たにユーザー・用途を拡大した事例を1つだけお話ししたいと思います。

社内でインフルエンザの予防接種や体力測定をするという(健康経営の)話をしましたが、その時にいわゆる社員の時間割や予約管理を行うケースが多く、kintoneが使えないかなと考えました。実際に人事総務部から「営業で使ってるkintoneを使ってみたい」という相談を受けたんですね。

トヨクモさんの「kViewer」というプラグインを採用させていただきました。左上の方に、社内で今行われている全イベントがあります。対象イベントをクリックしていただくと、そのイベントのその時間帯に申し込めて、残りの予約人数が表示されるんです。

なので申し込みたい人はここをクリックして「フォームブリッジ」に遷移をして、予約に必要な情報は自動的に値がセットされていますので、あとは保存ボタンと「申請」を押すだけ。こういった運用を実現しました。

本当にシンプルで簡単ですよね。まさにCMで言ってる「カンターン、トヨクモ!」というフレーズが、構築中に頭に思い浮かんだくらい、本当に容易な構築作業でした。

裏側のkintoneはどうなっているかというと、「イベントマスタ」なるアプリを作りました。イベントの種別やイベントの開始日・終了日を、まずマスタとして登録をします。そしてフォームブリッジから予約が入ると、「予約者管理アプリ」にレコードがどんどん登録されていきます。

別で作った、イベントに申し込める人数があと何人かを管理する「予約人数管理アプリ」に、申し込み者数をどんどん連携させていくんです。そうすると残数が更新されていきます。ざっくり言うと、こういう構成になっています。

「リアルタイム実行プラン」で懸念点を克服

柴田:ただ、乗り越えなければいけなかった懸念事項がありました。申し込みを受け付けるので、残数をリアルタイムに反映しないといけなかったんですよね。ここでグレープシティさんのKrewDataの「リアルタイム実行プラン」です。従来のKrewDataは特定の任意のスケジュールで連携されるプランだったんですが、その上位版であるリアルタイム実行プランを契約しまして、この環境を実現させました。

人事総務に限定した、ちょっとコアなところをご紹介させていただきましたが、今はいろんな部門で使われています。これもアーセスさんにお世話になっています。本当に感謝しています、ありがとうございます。

これも従来はExcelでやっていたんです。この時間割管理業務では、希望者からの申し込みをメールで受付け、それをExcelに転記して、ということを人事総務でやっていたんですが、kintoneを中心にプラグインを使ったことで大幅に改善されました。電話やメールの受け付けがほぼなくなって、当事者によるオンライン操作によって申し込みから時間割変更まで完結するようになりました。

こうやって使われていくと、「他のイベントでも使っていこうよ」となるので、もし今後あればコロナワクチンの職域接種の3回目でも使おうと思っていますし、歯科検診も行っていますので、そういったイベントでも使っていこうという話を今しているところです。

悩みどころが一緒だからこそ、同じ数だけヒントに出会う可能性がある

柴田:​​振り返りも兼ねて、「今後目指す姿」です。まずメインユーザーは、我々で言うと営業でした。そこでまず、「ちゃんと使われること」が大事です。そうすると使ってみたいユーザーが増えるので、そのユーザーに対してもきちんと使ってもらう、叶えてあげることが非常に大事です。

ゆくゆくはそのサイクルをどんどん回して、我々は「基幹業務プラットフォーム」的な位置付けでkintoneを昇華させていきたいと考えています。基幹システムというとどうしても在庫や販売管理、会計のようなニュアンスだと思うんですが、基幹業務、コアな業務をどんどんkintoneに移していきたいと考えています。

そして最後にメッセージ的なものを残させていただきます。同じ悩みを持った人はめちゃめちゃ多いです。僕はそれを実際に経験しました。こういったイベントに行くと、やはり悩みどころは一緒なんですよね。

ということはつまり、同じ数だけヒントに出会う可能性が高いんです。「足を使う」という話もしましたけど、こういったコミュニティやイベントに顔を出すこともすごく大事になってくると思います。

あとは伴走してくれるパートナーさまの存在ですね。我々は仙台に拠点を置くアーセスさまにお力添えをいただいています。本当にお世話になっていて、今日のkintoneの姿があるのはアーセスさまのおかげだと言い切れます。そんな信頼の置けるパートナーを見つけることで、kintoneの運用をもっと進められると思っています。

最後はちょっと情緒的なんですけど、「kintoneを信じて惚れぬく」ということですね。私も最初に営業部門でSFAとして導入した時は、まさか予防接種の時間割管理までするとは思っていませんでした。やはり使い続けることで「予防接種に使ってみよう」「他のことにも使ってみよう」と広がっていったわけです。信じて信じて惚れぬくと、必ず運用が浸透し定着していきます。そんなメッセージでございました。

プロに相談することで、kintoneでやるかどうかの取捨選択の時間を削減

柴田:まだまだ道半ばですが、徐々に社内がコネクトし始めています。このつながりをもっと強く・大きくしていくことで、世界のウェルビーイングにコネクトしていきたいと考えています。ご清聴いただきありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:柴田さま、ありがとうございます。

柴田:ありがとうございました。

司会者:スライドを映していただいてもいいですか。SIGNPOSTカードでまとめました。先ほどはこの4つをお話しされていたかなと思います。「担い手を増やす」「業務のkintone化」「先駆者の話」「プロの伴走」といったかたちですね。

今日はお時間があまりないので(笑)。このうち最後の1つだけ、「プロの伴走」を深掘りしてお話をおうかがいしたいなと思っています。アーセスさまにいろいろお世話になっているということですが、実際アーセスさんとの役割分担は、どういう線引きでやられたんですか?

柴田:実際にエンジニアの方にアプリを開発してもらう部分であったり、悩みに対してどうしたらいいかのアドバイスをもらうような、ハイブリッドな関係です。

司会者:アプリを作ってもらうこともあれば、「こういう課題が社内であるんだけど、kintoneで解決できますか?」と(相談することもあるという)感じですか。

柴田:まさに。

司会者:そうなると、アーセスさんのサービスもあれば、例えば他社さんのサービスとかもセットで提案してもらったり。

柴田:そうです。「この課題にはこういうプラグインがハマるんじゃないか」と。あとは「そもそもこれはkintoneに向かないからやめたほうがいいですよ」というアドバイスも(いただくこともあります)。

司会者:取捨選択は、けっこう時間がかかるんですよね。

柴田:かかりますね。

司会者:プラグインも合わせちゃうと本当に多種多様なことができるので。そこはプロの方にアドバイスをもらうと、その時間がかなり削減できる。なるほど、ありがとうございました。勉強になりました。では以上でこのセッションを終了いたします。ご清聴いただきまして、ありがとうございます。

柴田:ありがとうございました。

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