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ラクスル&マネーフォワード CEO×CFOパネルディスカッション 〜起業からこれまで〜(全3記事)

ラクスルCFO永見氏が語る、高給よりもスタートアップへのジョインを選んだ理由

2019年10月2日、成長企業向けにフィナンシャル・アドバイザリーや成長企業経営支援サービスを行う新会社「マネーフォワードシンカ株式会社」の設立を記念して、「ラクスル&マネーフォワード CEO×CFOパネルディスカッション 〜起業からこれまで〜」が開催されました。ラクスルとマネーフォワード両社のCEO・CFOのパネルディスカッションを通して、「成長企業のCEOがなぜCFOを採用したのか、またCFOに求めること」「資金調達、IPO、IR、M&Aといったコーポレートアクションにおいて、CEO/CFOがどう役割を分担してきたのか」「上場前と上場後での経営の変化」「企業としてのHARD THINGS」といったテーマについて意見を交わします。本パートでは、CFOの永見氏がラクスルに入社するまでの経緯について語りました。

ラクスルのCEOとCFOを引き合わせた、恋のキューピッド

金坂直哉氏(以下、金坂):今日は非常にお忙しいラクスルの松本さん、それから永見さんという、スタートアップ業界では知らない人がいないであろうお二人にお越しいただきまして、当社の辻(庸介)と私との4人で、パネルディスカッションをさせていただければと思っております。

みんなプライベートでもけっこう仲が良いので、踏み込んでいろいろなお話が聞けるんじゃないかと思っています。最後に質疑応答の時間も設けておりますので、ぜひまた後でいろいろみなさんからもご質問いただければと思います。じゃあ、さっそくですけれども、本題に入らせていただければと思います。

まず「CEO/CFOの役割」について、松本さんにちょっとおうかがいしたいです。CFOの永見さんが入社されたタイミングや、そのとき求めていたことなどを、まずお話いただけますでしょうか?

松本恭攝氏(以下、松本):はい。こんばんは。松本です。

会場:こんばんは。

松本:今日は大変忙しい中、呼んでいただいて……呼ばれてまして、今日は絶対に来ないといけないと思いました(笑)。なぜかというと、僕たちは辻さんに頭が上がらないですよ。辻さんが私と永見のキューピッドなんですね。

辻庸介氏(以下、辻):(笑)。

松本:辻さんがいないと僕は永見さんにオファーしなかったし、永見さんはラクスルに入っていなかったと思う。そのぐらい、恋のキューピッドなんです。

(会場笑)

ちょっと今日はそういう話を……。出会ったのは、2013年か2014年です。ちょっとまた後で、その辺の「馴れ初め」の話ができればと思います。そういう非常に深い縁のある辻さん、そしてマネーフォワードさんと今回こういうかたちでやらせていただいて、すごくうれしく思っています。

チーム作りに大きく関わる、ファイナンスとCFO

松本:本題に入って、CFOが入社したタイミングでいうと、ファイナンスとCFOはやはりチーム作りに非常に大きく関わってきます。ラクスルのスタートは2009年でした。2009年はまだ、ファイナンスでリスクマネーが一切ないタイミングで、3年間ぐらいほぼ手弁当でやって、2012年にシリーズAを2.3億円調達しました。サービスをローンチして、いわゆるPMF(Product Market Fit)みたいなところが一定程度にできて、じゃあこれから踏み込んでいこうという時期でした。

当時でいうと資金調達をし、マーケティングに投資をしていくと数字が伸びていくというのが見えたタイミングで、2013年の10月ぐらいからシリーズBに動き始めました。

我々は、2014年の2月にシリーズBを公表したんですけど、永見さんと会いはじめたのも含め、こういうCクラス(注:CEOやCFOのようにCxOと表記される「企業の各部門・業務領域の執行責任を担う責任者としての役職」を担う人材。xには部門や業務領域の頭文字が入る)の採用を始めたのが、ちょうどシリーズBのファイナンスがほぼ見えてきた時期です。

最後にどの面子になるか、いくらまで集まるかはわからないんですけど、リードインベスターが見え、10億円以上の資金が入ってきて、「会社のフェーズを変えないといけないな」というタイミングで、採用活動を開始しました。

:社員は何人ぐらいですか?

松本:社員数でいうと、実は残念なことに、当時は減り始めていたタイミングでした(笑)。

:成長企業なのに減り始めた?

松本:成長企業で売上が4倍になっている中で……。まさにこの頃がHARD THINGSだったんですけど、売上が1年で4倍になる中で社員数が減少し始めるみたいな、そういう……。

:それはやっぱり松本さんのプレッシャーが強すぎたんですか?

松本:辻さんほどではないですけど、私自身が比較的クレイジーな感じでした(笑)。

(会場笑)

というのがタイミングの話です。

ワンマン社長から脱却するために「自分より優秀な人を採用しよう」

松本:それで、求めることで言うと、当時はまず、CFOもそうだったんですけど、「自分よりも優秀な人を採用しないといけない」と思いました。当時は完全にワンマン企業だったんですね。ワンマン社長・ワンマン企業の状態からチームで経営をできるような体制に変えていかないと、会社の枠が広がっていかないという中、自分より優秀な人を採用しようと思いました。

その中で少なくとも当時は、「ファイナンス」と「マーケティング」と「テクノロジー」と「プロダクト」の4つのCクラスの採用をしたいと思い、動いていました。ファイナンスにおいてはるかに自分よりも経験があって、先が見えている人と一緒に働きたいっていうぐらいでしたね。

今でいうとCFOに求めるものってかなり明確にあるんですけど、当時はけっこう、ふわっとしていました。とにかく一人じゃ会社は回らないというタイミングでしたので、(求めていたのは)自分よりも優秀で、あとはビジョンに共感してくれるところですね。ビジョンへの共感が強いところが基準でした。

:(登壇者を指しながら)今だとこういうメンバーがいますけど、当時ってCFOはあんまり話題になっていなかったですね。あと永見さんのようにプロフェッショナルファームから来る流れがなかったですよね。しかも御社のCFOって、CFOだけではなくてCOOみたいなこともやられていましたね。本当に、松本さんの片腕みたいな感じですよね。

松本:今のCFO像と当時のCFO像ってだいぶ違っていて、当時のCFO像ってミクシィの小泉(文明)さんと、グリーの青柳(直樹)さんだったんですよね。

:(お二人は)今、サッカーのオーナー社長と一緒にそのグループの社長になっちゃいましたね。

松本:確かに気づいたら二人とも一緒にいますね。そして社長になっていますよね。

:社長になっています。おもしろいですよね。

CFOはブレーキとハンドルの役割を持つ人

松本:小泉さんも青柳さんも、事業をバリバリやっていたんですよね。「ファイナンスが中心だけど、事業もけっこうやる」っていうのが実は当時、僕の思っていたCFO像です。それ以外に、本当にスタートアップで活躍するCFOがいなかったんですよね。ですので、今で言うと、これとまったく違っていますね。

CFOは、まずアドミニストレーション。つまりは財務会計とか、法律とか、経理とかをまとめるチームを統括します。そして、IR(インベスターリレーションズ)。ファイナンスをするとか、そういう金融機関との付き合いみたいなことをし、資金調達、メンテナンスを行います。そして、コントローラー。管理会計ですね。会社の中の数字をコントロールして、しっかりと会社としての成長を作っていく。

この、「アドミニストレーション」と「IR」と「コントローラー」の3つの機能のマネジメントをするのがCFO、チームとしてのCFOの役割だって、けっこう明確に言葉としてあります。

それで、CFOは明確に事業を持つべきではないとも思います。コンフリクトが生じるので、あくまでCFOはブレーキの部分とハンドルを持つ人であって、実はアクセルもCFOなんですけど、事業の細かい判断をする人はやっぱり事業をやっている人であるべきと考えます。ブレーキ機能を持った人は、あんまり事業をやりすぎないほうがいいと思います。

そういうCFO像があるんですけど、当時はそんなことはまったく何も考えてなかったんですね。

:(3つの機能というのは)IRと、コントローラーと……?

松本:それと、アドミニストレーション。

:でも、永見さんがやっていたのは……?

松本:永見さんがラクスルに入ったときは……。ちょっと後で永見さんのお話もあると思うんですけど、スタート時点(の担当)は組織ですね。それで今も……。

: CFOとぜんぜん関係ないですね(笑)。

松本:C……HRO(Chief Human Rsources Officer)みたいな。そして実は、今もそれは大きいです。現在、永見さんが人事の管轄をやってきて、永見さんが外向けに語られるときって、「スーパーCFO」で出るんですよ。僕の中の永見さんの半分は、組織(担当)なんですよ。半分以上、組織ですね。

:なるほど。すいません。僕がどんどんモデレーターの役割を奪ってしまっていますね(笑)。

(会場笑)

1回、戻します。

スーパーCFO・永見氏が、給与が下がってもベンチャーにジョインした理由

永見世央氏(以下、永見):今、俺が話したいことをだいたい話されて終わった……。

(会場笑)

金坂:自分で聞きづらいんですけど、じゃあ辻さんはCFO(金坂氏)を採用したタイミングで、思っていることはありましたか?

:採用したタイミングは、2014年ですね。僕は金融業界にいましたので、自分である程度、調達とか買収とかやったりできます。なので、2014年頃は「CFOって、どういう方がいいのかな?」って思ってすごく探していました。監査法人のバックグラウンドがある方、外資系のアナリストの方とか、そういう方々の応募がけっこうありました。

両者とも、事業経験があるわけでもないですし、IPOの準備はできるけれどもIRはできないとか、松本さんがおっしゃったような「3つの機能」を全部できる人や経験がある人は、ほぼいなかったです。しかも後者の人はめちゃくちゃ高いんです。ベンチャーではそんなに給料を出せないですからね。

本当に「(自社に)最適なCFOっていうのは、この世にいないんじゃないか」というのが当時の思いでした。たまたま金坂が社員の紹介で遊びに来てくれて、その時に話して「ああ、素晴らしいな」と思い、すぐにオファーしたんです。土曜日に面接をして、そのまま土曜日にオファーを出しました。

永見さんもそうですけど、ちょうどその当時、金坂がプロフェッショナルファームからけっこう給料下げてでも来てくれたっていうのが、たぶん一番はじめの流れができたところです。給料が下がっても、なんでジョインしようと思ったんですか? 今日来てくださっている方もそういうCFOが欲しいから、知りたいはずです(笑)。

永見:そうですね。やっぱりビジョンに対する共鳴でしょうか。なんか一番はやっぱり人って「夢に生きている」っていう話だと思っています。自分に自信があってコミットしていれば、最終的なお金の話はたぶん辻褄が合うのかなと思っています。

それと当時、嫁が最後に後押しをしてくれたんです。「50歳とか55歳になって最初のチャレンジを始めるのはやめろ」「だったら今やれ」って言われました。嫁に言われて「そうだな」っていうので、「ぜんぜん普通に生活できるからいいじゃん」みたいな感じで、普通に移っていったって感じですかね。

サラリーだけで自分の報酬を得ようとは思っていない

金坂:たぶん、転職のタイミングが永見さんも僕も30歳前後だったと思うんですね。僕はたぶん「自分の実力に対して、これはちょっともらいすぎだな」みたいな感覚がちょっとありました。5年やってだいぶいろいろ実力もついたので、「今またそこに戻れるか?」って言われたら、戻れる気はするんですけどね。永見さんはどんな感覚ですか?

永見:そうですね。別にサラリーだけで自分の報酬を得ようと思ってないですね。今こういうところでお話をさせていただいている、いろんな方と繋がりを持つということ自体がもう資産だと考えています。プロフェッショナルファームにいた時代ではこういった繋がりはほとんどなかったです。

やっぱりこういったスタートアップで働くことになって、すごく知り合いが増えて、自分の人生がまた豊かになったと思っています。そういったマネタリー的なものだけじゃなくて、自分の人生がすごく豊かになったっていうのにおいては、それも含めてよかったと思っています。

金坂:それは本当に大きいですよね。

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