電気にまつわる事業を手がける「元気でんき」

伊佐政隆氏(以下、伊佐):kintone hive名古屋から、中部地区代表で選ばれました、元気でんきの河口さんにお願いしています。それでは河口さん、よろしくお願いします。

(動画が流れる)

動画音声:電気トラブル駆けつけサービスから新規事業を模索した、元気でんき。超多角的な売上分析のため、「グラフを作ってくれ」という指示が矢継ぎ早に飛ぶ。

「その時にはもう本当、100とか作って。内心は『まだ作るのか』と思っていました(笑)」。

中古エアコンの販売という新事業で、業績が急成長。kintoneはもはやグラフツールの枠を超えて、インフラとなった。

(動画が終わる)

河口エレキテル氏(以下、河口):みなさん、こんにちは! 名古屋から参りました元気でんきの代表取締役、河口エレキテルと申します。どうぞよろしくお願いします!

(会場拍手)

では、さっそく事業の紹介をさせていただきます。1つ目の事業が「元気でんき119」ということで、電気の駆けつけサービスです。水道で言うクラシアンさんみたいなビジネスをやっています。

2つ目の事業は、「省エネ先生」という屋号で、省エネコンサルタントを行っています。計測器を取り付けて、電力量を測って。改善プランを出して、設備をリニューアルしていくという省エネの仕事をしています。

3つ目が、「エアコン買取王」という屋号で、中古エアコンの買取販売をやっています。全国から中古エアコンを、だいたい月に500~1,000台買い取ります。工場で1台ずつ分解して、それを洗って新品のようにして、お店やインターネットで販売をしています。

最後に、電気工事士の育成事業として、「でんきの学校」という事業をやっています。こちらでエアコンの取り付け方・電気工事を学べます。また資格を取るための講座をやっています。

掘っ建て小屋から事業をスタート

河口:事業と社内のシステムについてお話しさせていただきます。まず2001年、私が28歳の時に創業した(元気でんきは)、この掘っ建て小屋からのスタートです。その当時は私1人ですので、もちろん社内システムは紙と鉛筆です。

その後、下請け業として建設業をやるようになってから、Excelを使うようになってきました。その後、ネット集客をするようになって、顧客のデータが大量に増えてきたので、Accessに切り替わりました。

その後、現在はkintoneを使って、中古エアコンを1つずつバーコード管理しています。事業の変化に合わせて、社内システムも変化してまいりました。

kintoneの導入のきっかけなんですが、経営者は会社を成長させようと思って、いろいろな勉強会に行きます。そうすると、やはり「事業計画を作らないといけない」という話になるんですね。

そうすると、まずやるべきことは「過去の数字を分析すること」(ということになります)。

電気の駆けつけサービスをやって2年ぐらいで、年間2,000件ぐらいの工事を受注していました。そのうちたった1パーセントにあたる上位20件は100万円以上の工事案件で、これが実際の売上の23パーセントと、ほぼ4分の1を占めました。利益になると、粗利で40パーセントも稼ぎ出していました。

よくある話なんですけど、自分たちが一生懸命仕事をしているとわからないんですね。この1パーセントが自然発生率なので、ここが2パーセント、3パーセントとなると、かなり高収益のビジネスモデルになるだろうなと、この事業を通じて思いました。

じゃあどうしたらいいのか。20件の共通点を探したら、「法人のお客様」で、電気代をたくさん払っている「電気設備がたくさんあるお客様」だったことがわかりました。

その方たちに喜ばれるサービスを作りたかったので、「省エネ先生」事業を立ち上げました。それにより、現在はこの上位100万円以上の売上が(全体の)4パーセントになっています。

グラフマニアの悪戦苦闘

河口:ここで私は、グラフでの数値分析が経営には非常に大事だと掴むんですね。そのことによって、経営判断のために「いろいろなグラフが見たい」という欲求が出てきます。そうすると、今までAccessでデータベース管理していたものを、CSVで吐き出して、Excelでグラフを作るんです。

グラフをどんどん作りました。1個作るのに2週間ぐらいかかるグラフもあるんですよ。それを僕は、システム担当に「こういうものが見たい」「出して」と言うんですね。

残念ながら僕レベルですと、大きな気づきが得られるのは、30個に1個ぐらいしか当たらないんですよ。あと29個は眺めていても、なにもないです。そうすると、システム担当が「社長、もうマジで勘弁してください。僕も忙しいんですから」となるわけですね。

そうすると僕も社長なんで、ちょっと気を使うんですね。「簡単にグラフ作成ができるシステムは世の中にないのか」ということで、いろいろなシステムを探します。

要件の1番目は、「いろいろな条件で簡単にグラフができる」。僕はグラフマニアになっていますから、「グラフが見たい」と。2番目は、「事業の変化に即対応できる」。3番目は、「直感操作で誰でも簡単に触れるインターフェイスがいい」。

この要件を満たすシステムを探しました。セールスが非常に上手な外資系のクラウド屋さんがきまして。「社長の望みは全部叶えられますよ!」と言うわけですね(笑)。

「そうですか」「こうですか」と盛り上がって、散々打ち合わせをした結果、私は決意して大金をお支払いします。そうしたら、そのクラウド屋さんがくるっとひっくり返って、「ひゃっひゃっひゃ」と声を出して去っていってしまったんですね。私は、「やれるやれる詐欺」にあったなと思うぐらい傷つきました(笑)。

Accessにもう1度戻って、「もうシステムなんて嫌だ」と、2年間システムアレルギーになりました。

kintoneと出会ったきっかけ

河口:でもそんな時に、今日もお越しになっているウィルビジョンというベンダーさんが、「河口さん、kintoneがいいよ」と紹介してくれたんですね。

「いやいや、また同じことが起きるでしょう」という話だったんですけど、「kintoneはこういうことが得意。でもこういうことは、苦手なこともある」「河口さんのところだったら、こういうふうに乗せることができる」ということを言って、真摯な態度で接してくれて。僕の心も溶けて「だったらkintoneを導入しよう」となったのが、kintone導入のきっかけです。

kintoneで行っていることは、弊社の基幹システムになっていますので、ほぼkintoneでやっていないことがないぐらいです。

本日は、お話しさせていただきたい点が2つあります。1つ目、「コメントでシステム改善」ですね。kintoneはアプリで構成されています。そのアプリの右側には「コメント」という赤い枠の欄が必ずあります。アプリには必ずコメント欄があります。

うちのコメントの使い方は、ちょっと変わっています。(スライドを指して)ここに「郵便番号と住所を自動で入力してほしい」と。このアプリでやれたらいいことを書くんですね。

ほかの人間は、「登録日をいちいち手打ちせずに、自動で打てるようにしてほしい」「楽したい」「これ必要ない」など、ここに思いついたことをどんどん記入するんですね。改善と言えば聞こえはいいですけど、要は「不満箱」ですよ。このkintoneを使って、嫌なことをどんどん書き込む。

ということで、2年間で溜まった改善・改修した案が、741件。2年間ですから、ほぼ1日1個改善されているわけですね。よくなるはずです。

実際、具体的にどんなことがあるかと言うと、吉田という社員が、「工事完了時に営業担当に自動で通知を送ってほしい」(と言いました)。

工事が終わった後に連絡がないと、私も「なんで連絡ないの?」と言うんですけど、「そんなのはkintoneがやってくれればいいんだよ」と吉田は言うんですね。それを改善案で出す。

そうすると、社内のシステム担当がシステム改善アプリに登録する段階で、改善できるものはすぐしてしまう。できないものに関しては、システム会社にお願いする。

システムに限らず、会社全体に改善する風土ができました。現場でも「うまくいかないことをそのままにしない」「改善することが非常に大事だ」というように、改善していくことで会社はよくなっていくということがわかる。そういった手応えを、kintoneによって得ることができました。

今日は発表の場ですから、いいことを言っていますけど、本当はこのシステム改善アプリを作って、みんなに「アプリに直接記入してくれ」と言ったが、全く改善案が挙がらなかった。そこで、手軽に書けるコメント欄に記入するルールに変えたら、改善案という名の不満が出るわ出るわ。誰もがその場の環境でiPhoneなどのスマホやiPadを使ってコメント欄にすぐ書ける状態が非常に大事だとわかりました。

元気でんきのkintone活用方法

河口:続いて、「元気でんきのコックピット」についてお話しさせていただきます。社内システムをkintoneにしたら、私の大好きなグラフがたくさん見れるようになった。でも、次の欲求が出てきたんですね。「1つの画面で、まとめて多くのグラフを比較しながら見てみたい」。これがkintoneのスペースでどうやらできるらしい、という噂を聞いてきて。

これは元気でんきの駆けつけサービスのスペースです。弊社のスペースでは、いろいろなグラフ、KPI、指標を並べて、見たいグラフを一覧で見ることができます。

元気でんきの会社全体のグラフが、ここに記載されています。この見え方も、kintoneの標準機能を研究したら、上手に綺麗に映すことができるとわかりました。

各事業部、プロジェクトごとにスペースを活用しています。各事業部が自分の見たいKPI、指標を出して、それが見れるようなグラフを作って、毎日ここを見るというかたちですね。

グラフ化することで実態が見えてくる

河口:実際、どんな具体例でこれを活用しているかというお話をさせていただきます。コールセンターのあおいちゃんが、「佐藤さん、電話がたくさん鳴って対応しきれないです。スタッフを増やして欲しいです」(と言いました)。会社であれば、よくある話ですね。

一生懸命なんです。一生懸命やっているからこそ、出られない電話があると悔しい。「人を増やしてでも出てほしい」というニーズがあります。それに対して佐藤さんは、「そうか、大変だよね」と言うものの、彼も管理の立場ですから、「気持ちはわかるんだけど、本当に増員しても大丈夫なのかな」という不安が巡ります。

確かに(人を)増やしてあげれば、ニーズを聞いてくれたということで、彼女は喜んでくれます。でも「それは経営的にどうだろう」という(思いもある)。迷った時にはスペースです。実際、彼はこのグラフにたどり着きました。

どんなグラフかと言いますと、エアコン買い取りの問い合わせ件数が毎日、日に1本ずつ並ぶグラフです。1日1本立ちますから、このグラフで毎日の電話のコール数がわかります。

そうすると、佐藤君はこのグラフをじっと見ていて、あることに気づきます。「あれ?」。電気屋ですから、彼に電気が点きました(笑)。

45本くらい(の電話)がだいたい上限の平均値だなと。2ヶ月でこの赤いグラフをはるかに超えているのは3日間だけ。「あおいちゃん、この45本以下のところって、毎日がんばったら取れているの?」「はい、佐藤さん。ここはちゃんと取れています。ここは大丈夫です」と。

「じゃあ取れなかったところって、この倍ぐらいの70~80本になっている日だね」と。「そうなんです、これが取れないんです」。佐藤君は「そうか」と思います。「だったらあおいちゃん、ここの45本以上は、もう取らなくてもいいよ」という判断をするんですね。

「えっ?」。鳴った電話を取らなくていい(と言うので)、彼女はびっくりです。「なんで? お客さんを大事にしないといけないのに」。佐藤君は「人を入れれば固定費が上がる。固定費が上がれば、宣伝広告費をかけてもっと電話を鳴らさないといけない」と言います。そうすると、平均値が60〜70本になり、必ず100本とか120本になる日が出るんです。なので、「いたちごっこなんだよ」と。

どこまでいってもそうだから、その代わり45本の電話は誠心誠意をもって、お客さんを満足させる。そういう判断ができるんですね。1つの会話なんですけど、実際にこんなことが多発しています。

現場の摩擦はどうして生まれるのか

河口:僕は会社をやり始めて17年なんですけど、社員が辞めていったことがあります。悔しいですね。つらいです。でもそのほとんどが、仕事が嫌で辞めたんじゃないんです。人間関係の摩擦で辞めた、というのがほとんどだと思います。

その摩擦はなぜ生まれるか。自分のやっている仕事を理解してもらえない、評価してもらえない。上司としても「なんでもっと現場が」と、わかり合えないところなんです。

でも、このkintoneのスペースで、数値でしっかり見て理解して、「なるほど」という説明ができれば、そこの問題は解決できるんですね。これが、このkintoneの一番素晴らしいところだと思います。大事なことは、全員が同じグラフ・指標をきちんと見ることです。ここで話をする。

2番目は、通常とは違う数値に気づいたら詳細を確認する。kintoneのグラフは、Excelと違って気になるところを叩くと、詳細の内容まで出てきます。そうすると誰がどのように対応して、どういう顧客の時にどうなっているのかがわかります。そうすると、いい時の問題もわかれば、よくない時の問題もわかります。

現場スタッフに、現地に行って確認させたり、電話で確認させたり。よく経営者の勉強会に行くと、「とにかく現場に行け」と言うんですね。それは確かにそうです。でも今の時代、スピード感(が大事)なんです。

なので、グラフで出た異常値、よくも悪くもおかしなことが出ている時に詳細を確認して、それを現地に確認しに行く。これがいかに大事かを、このkintoneのスペースを使ってわかるようになってきました。

これが、kintoneスペースを元気でんきが「コックピット」と名付けている理由です。ここにすべての指標が出てくる。ここのグラフを見ていれば、元気でんきの会社の状況が、手に取るようにわかる。

スタッフ全員が経営に参画する大切さ

河口:時流に合わせて事業も変化していかないといけません。世の中の流れが速いのは、私よりもみなさんがとくにご存知だと思います。本当に速い流れだと思います。

私も最初、現場で先頭に立っていましたけど、一番大切なのは顧客接点を持っている現場の最先端のスタッフなんです。

その人たちがお客さんのニーズをしっかり汲み取っている。そのニーズを汲み取ったものを、kintoneに入力する。それがスペースというかたちで、グラフに表れる。それを経営陣が判断をして、「この理由でこういう数字が出ているんだから、こういう戦略をとっていこう」と、そこを考えるんですね。

その戦略を決めた理由としては、みんなが作り上げてくれた顧客の情報を弾いたもので、「この戦略をとった」という説明をすると、従業員もみんな納得して、「自分たちがやっていることが経営に活かされる」「自分たちがやっていることは無駄じゃないんだ」「ちゃんと理解してくれる」「現場の先頭に立っている人たちの情報をすごく大事にする」と(思ってくれる)。

そういったかたちで、スタッフ全員が経営に参画する、そういう体制が必要ではないかと。それが実現できるのは、私はkintoneだと思います。

最後に、私は「河口エレキテル」と名乗っています。これについてここから30分ぐらいかけてお話ししたいんですけど、お時間も参りましたので、詳しくはWebでよろしくお願いいたします(笑)。ご清聴どうもありがとうございました。

(会場拍手)

改善文化の作り方がユニーク

伊佐:河口さん、素晴らしい発表をありがとうございました。

河口:ありがとうございました。

伊佐:最後、気になるじゃないですか(笑)。

河口:(笑)。

伊佐:それにしても、本当にやりがいをみんなが感じられるような、こんな会社で働きたいと思う素晴らしい発表でした。

河口:ありがとうございます。

伊佐:実践的で、有料の経営塾に参加した(ような)顔をみなさんされていますけど、めちゃくちゃメモったんじゃないですか? こんなにどんどん共有をしてくださっていいんですか。

河口:(笑)。ありがとうございます。

伊佐:個人的には、改善の文化の作り方ですかね。すごくユニークなんですけど、みなさんが業務システムの中にそのまま不満を書き込むのは、なかなか抵抗がありそうですね。データがゴチャッとするのは気になりそうですけど、そこはどうお考えなんですか?

河口:はい。とにかく不満をそこに書いて、不満を忘れろと。そうしたら次の日に改善される。

伊佐:要は、お客さんの見積書をkintoneで管理していたら、その見積もりが添付されている横に、「この見積管理使いにくいよ」と書くんですよね。

河口:そうです、そうです(笑)。

伊佐:それでいくと、このスピード感で、それによって改善の文化ができれば、みんなが楽しく働ける環境に近づくんだよと。これは、すごいアイデアだなと思いました。

河口:誰がいくつ改善したかというのも、グラフで競っていますので。

伊佐:すごいですね……ありがとうございました。河口さんに、改めて大きな拍手をお送りください。

河口:ありがとうございました!

(会場拍手)