「はたらいて、笑おう。」を胸に

中村:私、株式会社ハウコムの中村と申します。先ほど伊佐さんから話があったんですけど、去年の第1回の「kintone hive fukuoka」は、今のみなさんのようにオーディエンスとして参加しておりました。

そこで伊佐さんと話をして、私の記憶だと「出てくれない?」という話を言われて、社交辞令で言われていると思ったので「もちろんです」と軽いノリで返事をしたら、本当に依頼がくるというような、びっくりな状態でした。

機会をいただいたので、今弊社が行っている事例を説明します。まず最初に弊社株式会社ハウコムが、どういう会社かを説明させていただきたいと思います。

(スティーブ・ウォズニアック氏が載ったPERSOLのポスター「はたらいて、笑おう。」を指して)このポスターを見たことあるという方、どれぐらいいらっしゃいますか。

(会場挙手)

ありがとうございます。けっこう知っていらっしゃいますね。じゃあ、この男性が誰か知っている方、どれぐらいいらっしゃいますか。

(会場挙手)

けっこうやはり、手が落ちますね。アップルの設立を行なったスティーブ・ジョブズは、みなさんご存知だと思うんです。この男性は、スティーブ・ジョブズと一緒にAppleを作ったと言われている、スティーブ・ウォズニアック氏、もう一人のスティーブさんになります。

このポスター、みなさん目にされていると思うんですけど、「はたらいて、笑おう。」と「PERSOL」と書いているだけで、なんの広告かまったくわからないよと、疑問に思われてたと思います。

「PERSOL」とはどういうことかというと「『人』の成長を通じて社会の課題を『解決』する」。

「PERSON」と「SOLUTION」という言葉を合わせたものになります。ここでイメージしていただけると思うんですけど、人材系の会社だと思っていただければ大丈夫です。「PERSOL」という言葉あはあまり聞いたことがないと思うんですけど、もともとはテンプスタッフで、テンプホールディングスという会社でした。2016年の7月から「PERSOL」という名前に変わりました。

弊社はグループ関係会社を合わせると81社以上ある中で、セグメントごとに分かれておりまして、弊社は派遣・BPOセグメントの中に属しているハウコムという会社になります。

BPOという言葉なんですけど、ビジネスプロセスアウトソーシングと言いまして、これから人がずっと不足していく話がありました。人が不足していく中で、業務効率化だけで解決できればいいんですけど、そうではなくて、どうしても自社だけでは対応できないというケースがあります。

そういったときに業務の切り出しを行うことをBPO、業務委託などという言葉で対応しております。なので弊社はお客さま、ある企業様の業務のプロセスの一部を代わりに対応することを行っております。

ヘルプデスクの仕事とは

業務の請負と言っても、いろいろな領域があります。弊社がメインで行っているものは、ヘルプデスクやITサポートに関するBPOの仕事を主に行っております。

もともと弊社はIBM社の社内ヘルプデスクとしてスタートしておりまして、複数の企業様の社内ヘルプデスクとして対応しております。

もう1つ、主な業務としては、HDIの格付け調査の監査なども行っております。損保会社や証券会社などのCMです。銀行の窓口などを見ると、三つ星や五つ星などと書かれているんですけど、その格付け調査などを弊社の社員の一部が対応しております。

ヘルプデスクの仕事はどういう仕事かを簡単に紹介する前に、こういう言葉を我々はいつも意識して対応しております。

この言葉はマーケティング業界でも使われる言葉で、顧客の新のニーズは何かというような言葉になります。「ドリルが欲しいのではなく、要は穴が欲しい」ということが、このメッセージになります。

我々がヘルプデスクでサポートする場合、お問い合わせとしては、急にお客さんが慌てて「パソコンの電源が入らないので、なんとかしてください」と言ってきます。

通常であれば、パソコンの電源が早く入るようにしなくちゃと動くんですけど、そうではなくて、要はパソコンが使えないことで、どんなことに困っているかを、私たちは確認するようにします。

例えば、大事な取引先にメールで連絡をしなくちゃいけないから、メールを早く送りたい。月末なので、経理の申請をしないと実費清算になってしまう。自腹を切らなくちゃいけないから、早く申請を上げたいなどの、困っていることがあると思います。それを、パソコンを使わなくても、何か解決する方法がないかと提案します。

代わりに申請をしたいというだけであれば「ほかの人のパソコンを借りることできますか」。メールを送りたいのであれば「スマートフォンからメールを送れますか」。メールを送る手段がなければ「とりあえず電話をかけて連絡をすることはできませんか」というような提案を行っています。

今から事例の話をさせていただくのですが、今から話す私の事例は、成功事例で輝かしい話ではなくて、私が本当に失敗した事例を今から話します。少し恥ずかしい話が多いんですけど、私のような失敗をみなさんにもして欲しくないという理由で、今からお時間をいただければと思います。

kintone設定での失敗エピソード

その前に、弊社がどのようにkintoneを使っているか、という説明をさせていただきます。

弊社は問合せの管理ツールとしてkintoneを活用しております。先ほどもお伝えしたみたいに、業務請負として複数の企業様から仕事をいただいている状況です。

仕事は5人のプロジェクトだったり、13人のプロジェクトだったり、30人のプロジェクトだったり、複数のプロジェクトが存在しておりまして、今は宮崎だけで約80件のプロジェクトが存在している状態です。

そのうち12件のプロジェクトがkintoneを利用しております。利用方法としても、問い合わせの管理ツールとして利用しています。なので、ここでkintoneを利用しているのはお問合せを受けるオペレーターの方、もしくはお問合せを管理しているマネージャーの方が利用者になります。

今から話す内容としては、失敗しましたという話から、どう改善したか。効果がどう出たかという話をしていきます。毛色が今から少し違ってきますので、実際にkintoneの話を細かくしていきます。

まず「kintoneの設定の失敗」。カスタマイズがすごい簡単です。いろいろ項目を追加することも簡単にできるので、どんどんいろいろなデータを取りたいということで、項目を追加していきました。

簡単にグラフ化などを集計してくれるので、管理者が使いやすいように、どんどん項目を追加していくと、気付いたら入力項目が最初20個ぐらいしか入力しなくてよかったものが44個と、倍以上に増えてしまっている状態になってしまいました。

この項目を追加するときに、いろいろ考えながら追加していけばよかったんですけど、何も考えずに、どんどん追加していきました。入力する際に上から下に順番に進んでいくようになっていればいいんですけど、上から下に行って、また上に戻らなくちゃいけない。上から下に行って、また別アプリを開きに行かなくちゃいけない。

入力の手間がすごいかかるような感じで、入力時の動線がバラバラで無駄が多い状態になってしまいました。

自分の「そもそも」に問いかける

このとき、私の頭の中では「項目を追加しよう」「みんな簡単だから使ってくれるだろう」「説明しなくても選択するだけだから分かるでしょう」と思っていて、データがなかなか正しく集計されることはなかったです。

だからどうしようと。また改修を検討して、項目を追加する状態で、このサイクルでずっと動いている状態でした。

kintoneは簡単なツールです。項目もわかるような状態にしているので、kintoneの開発や設定にけっこうな時間を費やしました。良いものができていって、どんどん求めている効果や業務効率が上がっていくと思ったんですけど、ぜんぜん効果が出てこないような感じで、「なぜ効果が出ないのか」と、すごい悩んでました。

そのときに、ふと思い出したのがこの言葉(「1/4インチ・ドリルが欲しいわけではない。1/4インチの穴が欲しいのだ」)でした。「僕はそもそもkintoneで何がやりたかったんだっけ」という原点を振り返るようにしました。

「kintoneを使うのは問合せの分析を簡単にしたかったから」「でも、その問合せの分析を、簡単にしたかったのは何でだろう」「問合せを抑制したい」「問合せを抑制したいって何で思ったんだろう」。その結果、「利用者であるオペレーターの不安を軽減したいから」と思いました。

そこでオペレーターの負担を軽減したいという原点に戻って、ここからどうやって改善していこうかと考えたときに、単純に利用者であるオペレーターにヒアリングをしにいこうということで、「どんなふうに思っているの?」と聞きに行きました。

簡単なものだと思っていたので、今まで、まったく聞きに行ってなかったんです。自分ではイケてるツールと思ってたのに対して、(スライドを指して)これは一部なんですけど、すごいボロクソの意見ばっかり出てきました。

kintoneのみんなの印象が「使いづらいです」「分かりにくいです」「入力項目多いです」「使いづらいツールでとっても嫌いです!!」。僕はkintoneをすごい好きだったのに、アンチkintoneユーザーをすごい大量生産していたんだと、すごく思いました。

入力の効率化を図るために

このままじゃいけない。何が問題かというと、入力効率が図れていない。要は効率的に入力ができない状態だというのはわかったんですけど、自分ではそうしようと動いてたけど、結果そうなっていない悪循環が出ていました。

自分の手だけではどうしようもできないと思って、動線をまずは見直ししなくちゃいけない。入力項目、手順をどうやって効率化を図るかが必要だと思いました。

僕が作ったツールは自分ではイケてると思ったけど、いろいろな人からすると使いにくい。入力が早い人にアドバイスをもらうということでした。

でも、その使いにくいツールの中で、効率的に一番使えていた人が、入力が早い人だったので、この人にアドバイスをもらえれば、より効率的な使い方ができるんじゃないかと思って、kintoneをどう改修したらいいか、相談しました。そうしたら、いろいろ案が出てきました。

単純に入力を早くするだけだったら、僕が追加した項目を全部外せば、そこは元に戻るんです。しかし、僕も管理側の仕事として、必要な項目を簡単に採取したい思いはあるので、そこも合わせてどうしたらいいのか聞きました。それに沿って改修をして、そのあと新たに改修した状態で、また入力が早い人の手順を聞きました。

その手順を、マニュアルに起こしてドキュメント化して、それを全体に配布し、標準化しました。

4つの改修をどう行ったか

その前にkintone、この4つの改修を具体的にどう行ったか。レイアウトの変更を行いました。これはすごいシンプルなことです。

メンバーから「横スクロールをするのが面倒くさいです」と言われたので、横スクロールしないようにレイアウトを変更しました。

「コメント機能が標準で出て、右半分ぐらい隠れて、これ1回1回非表示にするの面倒くさいです」と(スタッフから)言われたので出ないようにしました。コメント機能を使っている方だったら、この気持ちがすごくわかると思います。違うアプリを見に行かなくちゃいけない状態だったので、テーブルを追加して参照できるような状態にしました。

次に自動入力。正しいデータを正しく簡単に入力できるようになることを目標に、対応履歴を自動で入力できるアプリを作成しました。何回も繰り返されるお問合せのアプリを作成して、こういうふうにデータ登録をしておきます。

ルックアップ機能のようなかたちで、選択できるようにして、選択すると何もなかったところに、自動で値が入る動きができるようにして、私が欲しい、正しい情報でオペレーターも入力負担を減らしたいことを同時にできるようなことをしました。

そして入力の補助ボタンです。「Now」というボタンなんですけど、ここを押すと時間が自動で入る動きができるものを作りました。

それ以外にも入力ガイドです。要は何を入力したかわからない殺風景な状態だったので、「何をして」「これは絶対間違えないでね」という注意書きを含めるかたちで注意喚起を促すように説明書きを変更しました。

あたたかみあるエラーメッセージに

エラーメッセージも条件を変更しました。どうしても欲しい情報は必須項目にしてしまうと、どんなときでもエラーメッセージが出ちゃうんです。値が入ってないと、エラーメッセージになってしまう。それだと困るような状態だったので、ステータスごとに条件分岐をさせました。

例えば、一次対応中だと対応が完了した時間を入れる必要はないんですけど、必須項目だと入れないといけない状態だったので、そこを変えるために一時対応中だったら、別に対応完了の時間を入れなくてもいい、というふうに条件分岐させるように変更しました。

エラーメッセージも変更しました。エラーで「必須です」というだけなので、利用者であるオペレーターの方から言われたんですけど、急いでるときに入力漏れがあって、「このメッセージが出るとイラッとする」と言われたんです。

なので少し変更して、丁寧に「入力漏れの項目、見直しをお願いします」といったり、あとは少しでも和むように、国部さんはリーダーの方なんですけど、「リーダーがお願いしているから、ちゃんとやってね」と(笑)。

こういう文言に変更したりして、笑える環境。僕らの仕事は殺伐としているときもあったりするので、こういう和める要素とかも入れて、変更していきました。

その結果、どういうことが起こったか。生産性が向上しました。だいたい、1件当たりのログ、お問合せ履歴を入力する時間が2分ほど短縮して、月の残業時間が一人当たり平均7時間短縮することができました。

なので、従業員の満足度は向上しました。ほかに数値で何が良くなったかを確認していくと、対応履歴を自動で入れるようになったので、要は1回の電話で解決できる割合が10パーセント向上したり、履歴がすぐに参照できる状態になったので、保留時間も10秒ほど短縮しました。

結果論になりますが、クレームの件数が年間19件ぐらい発生していたんですけど、5件と大幅に減少させることができて、気付いたら従業員満足度の向上というか、顧客満足度の向上ができていた状況です。

「kintoneと一緒にはたらいて、笑おう。」

まとめです。私は最初、管理者目線の設計で「自分がどういうデータが欲しいよ」「どことやりたいよ」というのをゴリ押しでkintoneを作っていました。

でもこれではダメで、やはり利用者目線の設計をしていかなくちゃいけなくて、我々の業界ではこういう言葉があります。

「ESなくしてCSなし」という言葉があるんですけど、従業員満足度がないと、顧客満足度を得ることができないよという言葉なんですけど、まさにその通りの状況だなというのを体感した経験でした。

「はたらいて、笑おう。」を冒頭でお伝えしたんですけど、この言葉が「PERSOL」グループのスローガンになっておりまして、この言葉が私はすごい好きで「はたらいて、笑おう。」という環境をすごい大事に思っています。

この言葉を聞いたときに、私が連想するのは、やはり一人で笑うんじゃなくて仕事を一緒にやっている仲間と、一緒に笑う。喜んでいるから笑えるのかなと思っていて、今立場としてはマネージメントをする立場なので、どれだけ働いている人たちが笑える環境になるかが、すごく重要だと思っています。

それを私が作っていって、みんなが笑っているのを見れて、初めて自分も笑うことができるのかなと思っています。

でも自分が、やはりマネージメント、マネージャーとしてはまだまだ未熟で、自分一人の力だけでは、やはり業務効率の改善をしていくのは、すごい難しいなと思いました、今回の経験で。

今後も今回の事例みたいにkintoneを利用して業務改善ができたらと思っています。

なので会社のスローガン、グループのスローガンとしてはこれなんですけど、私個人のスローガンとしては、この冒頭に「kintoneと一緒に」と付けて、自分のポリシーとしては「kintoneと一緒に」「はたらいて、笑おう。」という環境をマネージャーとしては作っていきたいなと思っております。

では、私の事例発表は以上になります。ご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)

人のインフラになるのが使命

伊佐政隆氏(以下、伊佐):中村さんありがとうございました。

中村:ありがとうございました。

伊佐:いい言葉ですね、「はたらいて、笑おう。」って。

中村:ありがとうございます。

伊佐:社内というか、グループ全体ではけっこう定着してるんですか。

中村:言葉自体は定着しています。

伊佐:何かあるごとに働いて笑えるような環境づくりは、みんなで考えてるんですか。

中村:業務の効率化は必要ですし、今、キーワードとしては、人が不足していく中で、我々はやはり「人と組織の成長創造インフラ」になるのが使命なので、それをどうサポートしているかは、常に意識しているところです。

伊佐:なるほど。本当にみんなが機嫌よく働けていると、お客さんにも良いサービスができるのも、まさにそうだなと思いました。

ハウコムさんのkintoneは人間味があふれていて良いですね(笑)。エラーメッセージがすごい人間味にあふれていて、ウチのkintoneもこういうふうに育てたいなと思った人が、たくさんいるんじゃないかと思いました。

時間の使い方として、最初はアプリを作るほうにどんどん時間を使っていった話もあったんですけど、今はkintoneを使って、業務改善をするときには、どういう時間のバランスで中村さんは使っていくイメージで考えていますか。

相談に行ったり、みんなと話をしたり、自分がアプリを作るという時間です。

中村:前はほとんど10割ぐらいがアプリを作る時間になっていました。だから、人の話はほとんど聞かない状態でした。なぜかというと、「それぐらい簡単に作っているからわかるでしょ」ぐらいで思ってたんです。

でも今は、作るのにどうしても時間がかかるので、4割・5割ぐらいはあるんですけど、半分以上はヒアリングしに行くというような状態です。やっと最近、聞きに行かなくても言ってくれるようになったかなと……。

伊佐:あ、なるほど先に。

中村:「少しいいですか」みたいな電話がかかってきて「これ使いづらいです」。

伊佐:嬉しいような、少しグサッとくるような感じはしますけど(笑)。でも嬉しいですね。

中村。そうですね。なので、そこでみんなが働きやすい環境になるのが、ちゃんとアウトプットとして出てくるので、こっちとしても、それはすごいやりがいになります。

伊佐:ありがとうございます。すごく勉強になりました私も。

中村:いえいえ、ありがとうございました。

伊佐:ありがとうございました。

(会場拍手)