2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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パトリック・ハーラン 氏(以下、パックン):本日はよろしくお願いします。
森忠彦氏(以下、森):今日はこちらで質問者を務めさせていただきます。毎日新聞の編集委員をしております、森と申します。よろしくお願いします。
パックン:よろしくお願いしまーす。
(会場拍手)
森:これはある意味で、パックンへの共同記者会見のようなつもりで、今日はすすめていきたいと思います。最初に私が代表質問として、小一時間いろいろな話を根掘り葉掘り聞いていきます。そこで物足りないものもあると思いますので、その後の時間はみなさんに。
パックン:僕の回答が?
(会場笑)
森:物足りないというか、ピント外れがときどきあるかと思います。そこが面白いところでもありますが。
パックンとの付き合いは、私がもう7年目ぐらいになります。3年前に、『小学生新聞』という、毎日新聞社が出しているもうひとつ(の)ちっちゃな子供向けの新聞がございまして、ここでなんとか国際的なニュース感覚をもってもらいたいと。
でも、堅く書かれるとクソ面白くないのでね、それを柔らかく書いていただける方が誰かいないかな? ということで思い付いたのがパックンでした。もうすでに当時から『英語でしゃべらナイト』をやっていて、みなさんもご存知だったと思います。
そこでお願いしたところ、快諾していただけました。毎月1回なのですが、全部パックンが自分で書いているのですよね?
パックン:全部自分ですよ。
森:自分です。
パックン:なにを言っているのですか!
(会場笑)
森:いやいや、失礼しました。あのー、全部自分で書いているのですね。
パックン:当然です。
森:漢字もね。はい。
パックン:当然です。まあ、変換キーを使っていますよ、それは。
(会場笑)
森:ということ、それもびっくりなのですが。本当に、毎月毎月、ほとんど遅れることもなくキチッとした行数で。編集者としては非常にありがたい寄稿、執筆者ということで。もう好評でありまして。それが今日の本になりました。今まで80回ぐらい載っておりますが、その中のベストチョイスを選んで、それをもう少し大人向けに書き直していただいたのが、今日のこの本ということでございます。
詳しくは、あとでこうやって買ってくださいね! サイン会があるそうですから。買って読んでいただければけっこうなのですが。これを元に、どんなことを、どんな風に書いているのか? ちょっとガイダンスを行っていただいて。
それから、いくつか突っ込んでいきたいと思っています。
森:タイトルがなかなかユニークですね。長い気もしますが。
パックン:ハッハッハッハッ。確かに。
森:『「世界と渡り合うためのひとり外交術」で、常識と国境を超えよう!』と言うことなのですが、このタイトル。どんな思いで。どこから。
パックン:まぁ、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、出版社は売れる本の傾向をいろいろと研究をするのですよ。基本的に執筆者と出版社が相談しあってタイトルを決めるのが、恒例のやり取りらしいのですが。数年前は、短いタイトルが売れると言っていましたね。
森:うん。
パックン:あの『バカの壁』のような。『なんとか力』など。
森:『なんとか力』ね。あったあった。
パックン:そう。三文字ぐらいが売れる時代もあったのです。ところが今はどうやらちょっと長めが売れるらしく。
(会場笑)
森:ハッハッハッハッ。
パックン:そこで、僕は「ひとり外交」など、それだけでイイのではないかと思っていたのだけど。その思惑も入れて「世界と渡り合うための」を付けましょう。僕は「ひとり外交」、または「個人大使」。こうした言い方もこの本の中ではしているのですが。
パックン:この世界、この国。そして一個人として。今年はギリギリ間に合わないけど、来年の流行語大賞にしようと思っているのですよ。もうぜひキーワードだと思っていただいて。
森:ひとり外交術? 「ひとり外交」ね。
パックン:もしくは「個人大使」。
森:「個人大使」。
パックン:世の中はホントに急ペースで変わっていまして。
森:はい。
パックン:前は、誰が国家間のやり取りをしていたのか? それは大使だったり。もしくは貿易担当の、輸出入を担当している輸出業者というよりも、運搬を担当している、ほんとにシルクロードを歩いているラクダを引っ張っているオッサンたちだったり。
もしくは布教活動をしている宣教師のみなさんが、違う国に行ってやり取りをすることはあったのですが。ものすごく限られた人たちですよね。
森:うん。
パックン:今の時代は、みなさんのポケットに入っている、あの携帯を使えば、30秒以内に海外の人とつながることができるのですよ。ということは、国同士のやり取りではなく、個人同士のやり取りの時代なのではないかと。
森:うん。
パックン:外交も全部。トップに任せて、外務大臣、もしくは首相、大統領などに任せっきりにしないで。一国民一人ずつが、責任を持って、興味を持って、関心を持って、愛を持って、外交をすれば、もっと良い世の中にもなってゆく。もっと国のためにも、個人のためにもなるのではないかと。そんな壮大なビジョンを、こんなちっちゃな本に入れている。
(会場笑)
森:そうですね。大きく3つの章に分かれています。はい、最初は「世界の文化から何を学ぶか?」ということですよね。つまり、世界でいろんな事情が違う国を見て、その中からやっぱり日本人が学ぶべきヒントのようなことを回答していますね。ふたつ目が「日本を伝える国際コミュニケーションのコツ」ですから、これは逆ですね。ベクトルがね。
パックン:うん。そうなのですね。
森:日本の、良さや悪さ。
パックン:それを発信する側になる。
森:発信するということですね。そして最後は「国際問題に世界の人と取り組む」。まあ世界と日本は切り離されているわけではありませんから。恐らく一緒にということだね?
パックン:そう。そういう人たちと取り組むための心境や心がけだったり。1章、2章をふまえて何ができるのか? 3章でアクションを起こそうか、という呼びかけも入っています。
森:ということです。ですから、ずーっと始めから読み進めていくとですね、ストーリーがひとつ展開されているという。バラバラに書いた原稿の組み合わせが、よくこんなストーリーになったねということが、不思議でしかたなかったのですよね。
パックン:ホントですよね。僕、本になると思って書いていたわけではなかったですから。
森:そうですよね。第1章から書き始めているわけじゃないからね。
パックン:毎月毎月、何を思って書いているかというと「また来たのかー締め切りだー」
(会場笑)
でもそのときに気になったことや、ニュースにあったことを取り上げて、自分の考えも少しずつ練りながら進行していくと。まあ振り返ってみると、そのコラムの中にも世界の中にも、少し(全体の)流れが見えてくるのです。ちょっとしたストーリーが潜んでいましたよね。
逆にこの本を出させていただいたことで、自分の思いと、過去を振り返ってみたときの、何ていうのでしょうか、見方? とらえ方? もうまく整理できたと思うのです。お礼を言うべきでしょう。すいません。ありがとうございました。
森:あーありがとう。こちらこそどうも。
森:どうです、では、第1章あたりでね。世界の国から日本人は海外音痴というか、まったく海外のことにうとい。
パックン:まったくではありませんが。
森:どうです? そこら辺りはこの章の中心だったと思うのですが。国際人として見て、日本人が足りないというのか、なにかやっぱりズレている点がいっぱいあるのではないかと思うのですが。
パックン:基本的に、僕は日本人を批判しないことにします。
(会場笑)
パックン:その理由は2つ。まず、素晴らしい文化を持っている。ホントに素敵な国民だから、というのが1つ。もう1つは仕事が消えていくから。
(会場笑)
森:これはおっきい。
パックン:(日本の芸能界から)追放されてしまう恐れもあるからです。でも日本のみなさんは素敵です。本当に素晴らしい文化だと思いますし、いろんないい点もありますが、向上心を持っている国民でもあるから、向上心をくすぐられるようなヒントになるようなところをいくつか紹介したい。
パックン:ひとつには、まずあの今日感じたのはさっき言った「自己紹介しあって話し合ってみてください」というこの一言をかけたことは、偶然ではありません。
海外から日本に来て、まず多くの方が感じるところは「日本人が黙りすぎ」ということです。こんなに人がいるのに、どうして音が立たないんだ!
(会場笑)
パックン:人というのは、口がついているものですよ。
森:ついてる、うん。
パックン:手だって。何ていうのですか、口笛も(♪〜口笛の音)。なんだって音を立てられるものですが、ものすごく静かですよ。満員電車ほど。アメリカの図書館の方が、日本の満員電車よりうるさいですよ。
森:ハッハッハッハッ。
パックン:日本の満員電車ほど静かな場所は、世界にない。何だろ? 自己紹介をし合ってくださいと、声をかけたにも関わらず、みんな黙って前を見て僕らの登場を待っていましたよね。これがやっぱり、世界から見て不思議な特徴かも知れません。グローバル・スタンダードではない。
僕ら「パックンマックン」があっちこっちに講演会に行って、まず(観客に)やらせることは、自己紹介です。僕らの自己紹介はもちろんド頭にやるのですよ。それから5分ぐらい経って、はい、僕らの自己紹介はここまでです。続いてお客様の自己紹介です。ここから順番に一人ずつ。持ち時間は5分ずつ。なわけないよ!という。この人数でならできそうなのですが。
(会場笑)
森:そうねえ、1分ずつならできますね。いける、いける。やってみる?
パックン:この間、1,200人の輪でやったのですよ。1,200人かける5(分)ですから。もう数時間かかる。そんなわけないけど。とにかくお客様同士の自己紹介をさせるのですよ。強制的に。そうすると、あんなに黙って待っていたものが、僕らがきっかけさえ作れば、話は盛り上がって。「はい終了」と言っても黙ってくれないくらいですよ。
(会場笑)
人と話すのは楽しいです。日本人同士でも。でも、なかなか話しかけられない。というのがこの国民性の特徴かもしれない。こういうところが、僕がいつも感じる、日本がこれから21世紀に勝ち抜いていくため、残っていくために必要なスキルのひとつかなと思うのです。海外へ行くと話しかけ方や接し方もかなり参考になりますよ。すぐ食いついて。
パックン:言語が通じていないのに、話し合ったりしてくれる国民が、けっこういるのですよ。タイなどでボクら、なんだろう、幼馴染ぐらい。
(会場笑)
親しく思ってしまう人がいるのですよ。
森:突然、いきなり。いきなり行ったのに?
パックン:突然。はい。たまたま2〜3時間かけて島まで行くバスの中で一緒になったタイ人と、もうずーっと3時間ぐらい楽しく話し合う。ひとっことも通じていませんが。
(会場笑)
森:通じていない。ことばの対話は通じてない。
パックン:むこうはタイ語。こっちは英語で。
(会場笑)
それでも、持ち物やジェスチャーなど、途中でレストエリアに止まって、ドリアンを買い込んで、分け合って、マズいマズい、マズいマズいといいながら、楽しく盛り上がるのですよ。そういった気さくに人と話し合えるような国民性も世の中にあることを、ぜひ頭に入れていただきたい。そうしたようなことをいろいろと書いてる。
森:書いたのですね。第1章ではねえ。第2章は逆に日本の良さだね。いいところ。もうパックン、日本に来て、20何年経ったのだった?
パックン:26年目です。
森:ということは、もう26歳以上ですよね。何歳かわからないけど。
パックン:はい。僕、先月、日本で祝っていただいた25回目の誕生日でしたから。僕は日本人として25歳です。
森:25歳ということは、四半世紀いるのですよね。ですから、ほとんど日本のことはね、良くも悪くも、全部知り尽くしていると思うのですが。そんな中でも、この中でいくつか、日本の良さを海外に逆に伝えたいし、知ってほしい。真似することはないかもしれませんが、参考にしてほしいものを取り上げていますよね。
パックン:いっぱいありますよね。
森:例えば?
パックン:これも取り上げていないのですが、この「黙っていられる力」も大事ですよ。
(会場笑)
森:沈黙力。
パックン:表裏一体のいい面も見せようと思うのですが。アメリカ人は近くにいる人と話していないと、空気がマズいことになるのですよ。エレベーターなどで「はいはい…」ぐらい言ってあげないと、マズい、マズい、空気マズいという感じなのですが。日本人は、何人が近くにいても黙っていられる。
(会場笑)
「禅」なのかなあ?
(会場笑)
森:禅を組んでいるくらい。
パックン:禅を組んでいるくらい、集中できるというのもいいですよ。アメリカ人にはもう少し「黙る力」を付けてほしい。
(会場笑)
森:そうね。
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