2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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パトリック・ハーラン氏(以下、パックン):(2017年のニュースが1位から)10位くらいに来ると、また違うものが入ってくる。それに例えばプーチンや習近平や金正恩など、トップ20くらいに安倍首相の活躍も入ってきます。
森忠彦氏(以下、森):その安倍さんとの関係が、ものすごく仲がいいというのか。
パックン:僕ですか。
森:いやいやいや。
(会場笑)
森:トランプさん。
ついこの前来日したばかりですが、トランプ氏はすごい。あの2人の関係はどう見ます。
パックン:そうなんですね。これに関してはニューズウィークオンラインでもコラムを書かせていただきましたが、僕は安倍首相と政治理念がかなり異なっているんですよ。僕はけっこう左です。けっこうリベラルな人です。安倍首相はかなり右な方です。でも安倍首相の政治力は評価する。例えば、潔いとまでは思いませんが、選挙のタイミングは絶妙ですよね。
森:この前の選挙ね。
パックン:強いですよね。この前も去年も。すごいですよ、あの方の選挙のタイミング。そういうわけで、政治家としての能力は評価しています。
それで、トランプの扱いも正しいと思うんです。トランプ扱い、猛獣使いという言い方でいいと思うんですよ。トランプという絶滅危惧種? だといいと思っているんですが。
森:絶滅してもいいんじゃないの。
パックン:だとも思っているんですが、予期もせぬ当選をしてしまった希少種です。安倍さんは、トランプが大統領になった瞬間に飛行機に乗って飛びつけて、絶対に喜ばれるような黄金のゴルフクラブを手にして、餌やりに行ったんですよ。
森:トランプに。
パックン:はい。アメリカ、まず得票率の低い方が大統領になっているんですよ。あの、共和党の重鎮からも反対されて、アメリカ国民の過半数からも反対されて、もちろん野党にも反対されて、世界のリーダー達にも反対された人が当選して、けっこう寂しい状態だったはずですよ。心細い状態だったはずです。
そこに飛びついた安倍さんのありがたさ。目に見えると思うんですね。それを上手く利用して、トランプ大統領が日本のためにいろいろやってくれると期待しても当然です。実際に国連の演説で拉致被害者にも触れました。日本に来たときは会いました。いろいろと言うことを聞いてる、この辺は評価できます。ただ、評価しながらも、裏で失敗したときのための備えはできているのか? と不安です。
コラムにも書きましたが、トランプ大統領は、まず世界から嫌われているから、仲がいい安倍さんもいじめっ子の仲間というように見られると損です。
森:そりゃそうね。可能性があるんですね。
パックン:はい。ただあの、世界のリーダーはだいたいわかると思うんですよ。僕と同じような評価はすると思う。それで、日本国民はトランプと仲良くしている安倍を別に罰しない。支持率が下がらない。文句はあがらない。だったら彼はやって当然だと思う。
逆に世界のリーダー達から見て、羨ましいと思われるかも知れない。それで、彼がパイプ役になって国際社会の中でより活躍できる立場になるかも知れません。いろいろいいこともあるとは思うんです。だから、日本で内政的にまったく損しない限りは続けるべき。
でも、スネ夫に見えたら損。世界各国の国民にとって、安倍首相はトランプの仲間だ、手下だというように見られたら損。
森:もう1つは、トランプが例えば、交渉でなにかを約束しました、そのためにこっちがなにかを譲渡しました。安倍首相はたぶん、責任をとって約束を守ってくれると思うんですよ。日本はトップダウンな国ですし、圧倒的な政治力を持っている一党、一強政治になっています。
そして、彼が自民党の中では党首としてダントツの権力者です。ですから、彼の言うなりにたぶん政府も国も動くと思う。
だから、交渉で彼が譲った分は約束を守る。ただ、譲ってもらった分はトランプが果たして約束を果たせるのかと心配です。そして、トランプはやる気であってもまずやる気でない可能性は大。
森:それが最大。
パックン:はい。あの辞書を引くと嘘つきのところにトランプの写真がドンと出ています。
森:あー、新しい辞書にはそのように。
パックン:はい、間違いない。ニューヨーク・タイムズが100日間の嘘を記事にまとめただけで1面記事になったんですよ。それぐらいを嘘ついているんですよ。
森:そのうち辞典ができあがるね、トランプ嘘つき辞典が。
パックン:トランプ嘘つき辞典というのがある。だからやると言ってもやる気はないかも知れないんです。それが1つ。
パックン:もう1つは、やると言ってもできない。ほとんど就任から1年が経ちますが、大きな法案として通したのはこの間の税制改正だけです。それで、まだ立法していない。あとハンコを押すだけです。でも、1年間でできた法案、立法は1つだけというのは無力さを物語っている。
党内からも反対される、もちろん野党から、国民からもけっこう反対されている、裁判でも止められているものが多いです。だから、彼がやろうとしてもできないことが多い。
いいこともあると思うんですよ。だから評価はするけど、例えば交渉でなにかを譲ってこっちだけが損することはあり得るからいろいろ気をつけろよ、と安倍さんに声を掛けています。ニューズウィーク経由で。
(会場笑)
森:そうですね、ですから安倍さんもパックンを顧問に雇えば上手くやれるのじゃない。
パックン:安倍さんがこんなあちこちボロクソ言っている顧問を雇ってくれないと思うんですが。
(会場笑)
森:いやいや、ちゃんと政治家としての力は評価しているわけだからね。
パックン:間違いないです、それはね。
森:それは確かにそうですよね。
パックン:僕、安倍さんのやりかたは政治家としては正しいと思うんですよ。政治家はだって再選すれば勝ちです。それで、僕ら国民がなにをもって審査するのか、それぞれが考えなきゃ……。ごめん、僕、国民じゃありません。
(会場笑)
パックン:そちらの国民のみなさんが精査しなければいけません。
森:そうですよね、わかりました。
森:では、ほぼ1時間近い時間が過ぎましたので、とりあえずいくつか、会場の中から質問をいただいて、またそれをフォローアップしていきたいと思います。これだけいろんな話をしてくれたので語り尽くしているところがあるようにも思えますが、まだまだお聞きしたいことがあればどうぞ、どなたか、はい。
パックン:僕がさっき、けっこう少人数で、こういうところでこうしたトークショーを行うのは滅多にないことなんですよ。
森:この距離の近さはありませんね。
パックン:そう。そしてこのトークショー、本当は70分の枠だったんですが、短くしてみんなとやり取りしたいと僕が言ったので、メンツを考えて。
(会場笑)
パックン:聞いてくださいよ。違う、これもね、日本の国民性です。
森:さっき言ったところに通じますね。
パックン:あのすいません、全員手を挙げてもらっていいですか。全員、そう。質問があるかどうかはおいておいて、全員手を挙げてください。で、質問のない方だけ降ろしてください。
(会場笑)
あれ、結構あるじゃないですか。
森:はい、では、ちょっとバーッと前のほうからどうぞどうぞ。
パックン:マイクいります?
質問者1:あったほうがいいです。
パックン:そうですか、はい、では、お願いします。
質問者1:あのー、ちょっと聞きたいんですが。アメリカ人はすごく勝手だなと思うところがあって。アメリカの車を日本が買わないとよく言うじゃないですか。
けれども、アメリカの自動車会社が日本で製品を売りたいのであれば、日本で乗りやすいように考えて、日本人が買いたいような車を作ってくれると思うんですが、あんなガソリンをようけ食うデッカイ車を売ってくるという、そういう神経というのはやっぱりアメリカならではなんですか。
パックン:その神経はアメリカです、はい。
(会場笑)
実は日本はアメリカに比べて障害が逆に少ないんですよ。
例えば、たぶん5,000台くらい。数字を調べなければいけませんが、5,000台までは、サンプル品として売っていいとなっているような気がするんですよ。そうすると、車検などを通らなくても、規制などがほとんど関係なく売れることになっているんです。
アメリカに比べて、それはすごく逆に貿易障害の低いところです。ヨーロッパの車がこれだけ売れている中ですよ、大きなベンツもいっぱい売れているんです。そんなに燃費はよくないですよ、ベンツ。
だからそれは、企業努力、もしくは外務省、国務省努力の違いだと思います。外交努力が足りない。
作り直して、CMをちゃんと打てば変わるんじゃないかと思います。日本人も、みんながみんなトヨタ・日産・マツダ・三菱・ダイハツなどに乗りたいわけではない。少し変わっているものに乗りたいと思っている日本人も多いですから。ぜひ、フォード・シボレー・キャディラックなどに乗っていただきたいなと。
ちなみに、僕はスズキに乗っています。
(会場笑)
質問者2:非常にわかりやすく、ありがとうございました。先ほどの、トランプのお話の中で気になったんですが、将来に向けたクライシス・マネジメントというのでしょうか。そういったことにたいして、子どもたちも含めて、どうした心構えでいたほうがいいのかということが1つ。
あともう1つは私には3人の息子がおりまして。今日、その息子たちに伝えたいと思って本を購入しました。
パックン:3冊。
質問者2:はい。
(会場笑)
パックン:今、マイクを通して「はい」といいましたよね!
質問者2:はい。そのときに、交渉力というのでしょうか。外交というお話があったんですが、交渉力で一番大切なこと、これはなんなのかということ。この2点についてお願いします。
パックン:おお、素晴らしい。交渉力に関する本はまた別にありますが、ぜひこれも読んで。3冊に加えて1冊を買っていただく。
そして、トランプのクライシスですか? それとも一般的なクライシス・マネジメントですか。
質問者2:戦争のような形が起きたり、あとは過激なビジネス最優先など、いろんな作用によってあらゆることが起こってきそうな気がして、不安になってくるんですが。
パックン:AI革命、ロボット革命、グローバリゼーション、それに温暖化、その上にトランプという不安材料が山積している世の中ですから、クライシスが来ないわけはないと思うんですよ。
そして、僕も含めてですが、この先に備えてなにができるのか、子どもにも自分にも日頃からその考える必要を言い聞かせていますが、ぜひ教えてあげたい。
パックン:まず大事なのは、ある意味、自覚もすごく必要です。自覚と自信。ここまでは大事なんです。自覚と自信なんですが。
自分の持っているもの、足りないものもちゃんと見つめて。クライシスが起きるとまず必要だと思われるのは、柔軟性、多様性、順応性ですね。こういうものがないとまずい。だから、1つだけのことしか知らないとまずい。とくにそれが、すぐそこに見えているのはAI危機だと思いますが。
お子さんが何歳かわかりませんが、自分の子どもが社会人になると2030年、ちょうど来ているんですね。
森:AI時代が?
パックン:AIが音声認識できる。この会話を書き下ろせるAIがもうすぐそこにあるんですよ。今日では、ほとんどができると思いますが、まだ出版まではいけないんですよ。でも、出版できる程度のきれいな記事が書けるAIはすぐそこまで迫っていると思うんです。この建物の中の方々も、ちょっと危機感を持ったほうがいいかも知れません。
そこで、自分の子どもも、万が一、職業がだめになったらなにができるのか。変な話、万が一東京がダメになったらどこに住めるのか、日本がダメになったらどこに住めるのか、海外でどういうことができるのか、どういったスキルを持って生計を立てられるのか。
こうしたことをふだんからすこし考えて、自分の人生計画や、そして日課の計画の中に、その対策をすこし盛り込まなければいけないと思うんです。
それが学歴であったり、スキルだったり、言語能力だったり、プログラミング能力だったり、または人脈作りだったり。だから、海外の人脈もつくっておいたほうがいいかも知れませんね。いろんなことが考えられますが、まずは自覚からのスタートです。
そして、自信をもって今のうちに対策を打てば、俺は乗り越えられるよと。どんなクライシスが来ても生き残れるよと。柔軟性、多様性、順応性をもっていればいけるぞ、なにが足りないのか、今のうちに対策を組もうと思っていればいいと思います。
次の本、もう決まった、今。
(会場笑)
森:では、うちの出版局からね。よろしいですか。
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