株式会社らしさラボ 代表取締役 伊庭正康氏の『研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル』では、業績の悩み、効率の悩み、マネジメントの悩み、コミュニケーションの悩み、モチベーションの悩みなど、仕事の悩みを解決できるビジネスメソッドを紹介しているチャンネルです。今回は、「なるほど」「要するに」など、上から目線に思われがちなフレーズと言い換え方をお伝えします。
ついやりがちな「カチンとくる話し方」を解説
伊庭正康氏:どうもこんにちは。研修トレーナーの伊庭正康です。今日のテーマは「カチンとくる話し方」です。みなさんの職場で生理的に嫌われている人っていませんか?
あなたが生理的に嫌いな人もいるでしょう。その時、その人の人柄ではなく、実はちょっとした口癖が原因になっていたりしませんか? ひょっとすればその口癖、僕たちも使っていないでしょうか? そんなチェックをしていただきたいと思っています。
今日はこの話をしていきます。意外と上から目線に思われてしまう口癖。そして、言い訳がましいと思われる口癖。よかれと思っているのに否定的な言葉と思われてしまう口癖。このあたりは気をつけていきましょう。
誰からも愛された良寛さんというお坊さんが昔いらっしゃったそうですね。その方が、言葉の戒めを残しているので、それを最後に紹介します。
さらに、高田純次さんも誰からも愛されるキャラクターじゃないでしょうか? 高田純次さんの戒めの言葉も最後に紹介しますね。
「上から目線」に思われがちなフレーズ
では1つ目は、意外と上から目線と思われがちなフレーズについて紹介します。こんな口癖は気をつけていきましょう。
1つ目が、「どう言えばわかるかな」。こんな上司、いませんか? 「いや、伊庭君。どう言えば、わかるかな?」。これって馬鹿にしているのかと思われますよね。でも、その方はそういうつもりではありません。
あと、「伊庭君、要するにこれってね」。はい、馬鹿にしているのかと思われますよね。「要するに」も注意していきましょう。
まだありますよ。「だから、これってね」「ですから、この場合は」というふうに、「だから」と「ですから」を多用する場合。多用すると、「だからね、伊庭君、こうなので、こうなので、こうなの。だから、こうなって、こうなって、こうなって」となると、「誰に物を言っているんだ? 子どもじゃねぇぞ」と思われてしまう可能性もあるのでご注意ください。
あと意外とやってしまうのは「なるほどね」。私もよく後輩からこういう質問をいただいていました。「伊庭さん、この場合、営業ではどうしたらいいですか?」「ヒアリングではお客さんの困りごとを聞いていったほうがいいよ。情報を聞くよりもお困りごとを聞いたほうがいいから」「なるほどですね」。
おいおいおいと。「なるほどですね」ではなくて「そうなんですね」ですよね。「なるほど」というのは意外と危険球なのでご注意ください。
今一例を挙げましたけども、もし1つでも使っていればご注意していただきたいですし、みなさんが職場にいらっしゃれば、「あっ、こういうことかな?」と。人の振り見て我が振り直せとも言います。ぜひ気をつけていきましょう。
「でも」「だって」は「だとしたら」に変換する
さらに注意したいのは、よかれと思っているのに言い訳がましいと思われてしまうことです。これは嫌ですね。評価をガクンと下げてしまいます。例えば意外と使っているのは「でもorだって」。

「最近どうですか? リモートワークでコミュニケーションが取りにくいとは言われていますが、がんばって取らないといけないですよね」と会社で言われた場合、「でも、ほかの方々のスケジュールがわからないんですよね。だから声をかけにくいんです」となった場合、どうしましょう?
「でも、ほかの方々のスケジュールがわからないから」「うん、わかったんだけれども、それって言い訳なんじゃないの?」と思う人がいるの、わかりますよね。「リモートワークだとしたらどうするか?」ですよね。「でも」「だって」の場合は、「だとしたら」と考えていくと、意外と解決策が見つかることもあります。ぜひチェックしてみてください。
例えばリモートワークだからほかの方のスケジュールがわからない。じゃあ、「リモートワークだとしても」でいきましょう。「リモートワークだとしてもほかの方のスケジュールを把握するためにはミーティングで確認すればいいかもしれませんね」というふうに出てくるかもしれませんよね。まず、「でも」「だって」はもう使わないようにしておきましょう。
「一応」「できる範囲で」のワードがNGな理由
あと、「たらorれば」。「たられば」とよく言いますけどもね。「あの時、話をちゃんと聞いていたら」「もし私がもう少し若かったら」「私にもう少しスキルがあれば」。これも一緒ですよね。これも「だとしたら」なんですね。だから「だとしたら」で切り返せるものは言い訳がましいと思われるんですね。
じゃあ、例えば私は今53歳ですから、やはり若くはありません。体力も落ちてきていると思います。「だから体が疲れているんだわ」となった場合に、「いやぁ、若かったらもっと動けるのにな」と言ったとしましょうか。これを聞いたとて、悲しくなるだけじゃないですか。
「もう少し私が若ければ」、知らんがなっていう話ですよね。言い訳するなって思う人もいるわけです。今は50代だとしてもまだまだやり方がありますので。「だとしても」、と考えるのは便利ですね。
では、最後にいきましょう。「一応orできる範囲で」。これは最初から「できなくてもごめんなさいね」という気持ちが入っていますよね。そうじゃないんです。絶対に仕事の場合は「かしこまりました」「精いっぱい努めさせていただきます」しかないです。「かしこまりました。精いっぱいやります」でけっこうです。
「できる範囲で」と。「おいおい、お前のできる範囲でやるなよと。お前のできる範囲じゃなくて、こちらのレベルに合わせてほしい」と思われますので、「何を言い訳しているの?」と思われてしまうので、よかれと思っているんですね、期待値調整もしないといけないです。
その場合はこうしたらいいんですよね。「精いっぱい努めさせていただきます。ただスケジュールのことを考えますと、今3つご要望いただきましたが、ひょっとすれば1個、2個、しっかりと努めさせていただきます。3つ目については途中で相談に乗っていただくこともあり得るかもしれませんが、その際はよろしいですか? 精いっぱい努めさせていただきます」。これでいいですよね。
今、100パーセントアドリブでやっておりますが、もうこのフレーズを覚えておくだけでも評価はグンと上がるんじゃないでしょうか。
「否定的な言葉」で相手に共感する人
まだいきますよ。これもよかれと思って使っている方が多いんですよね。否定的な言葉が口癖になってしまっている。「そうか、不安だよね」「それは苦しいよね」「それは残念だよね」「バタバタするって嫌だよね」。このような否定的な言葉で相手に共感するとどう思われるかですよね。「おいおい、引きずり込むなよ」です。

私も以前ありました。私の親友なので腹が立つとかはありませんけれども、ちょっともったいないなと思った親友がいます。「伊庭、最近仕事どう?」「いやぁ、もう研修を週5回やっているよ、ありがたいけどね」「大変やね、週5回もやるなんて、しんどいやろ?」
いや、しんどいけれども、それはポジティブな話なので、こう思いました。「こいつ、ほかでもこれ、言ってんちゃうかな?」と、やはり思いましたね。そうすると付き合う人がだんだんと限られてくるじゃないですか。
その親友には、さすがにもう年齢が年齢ですから「それ、やめたほうがいいよ」と言ってあげることはしないんですが、我々は気をつけていきたいですね。
「忙しくて〇〇できない」と言いたくなったら、こう言い換える
次いきますね。「忙しくて最近は何々ができないんです」というふうに、「忙しくて」と「何々できない」がセットになった場合は、もうかなり嫌な気持ちを与えてしまうことがあります。
「忙しくて最近、本を読むこともできないんですよね」「忙しくて最近、コミュニケーションが取れないんですよね」。「そうだよね」って言うけど、「わかりました」と言う人はいません。忙しくても本を読んでいる人はいるし、忙しくてもコミュニケーションを取っている人はいるわけですよね。
なので、忙しくて何々できないというのは、「そうなんですね。キャパシティが小さいんですね」ってやはり思われてしまいます。こちらのほうは否定はしませんが、本人がそう言うのであれば、「あぁ、そこまでのキャパシティなんですね」とやはり判断されちゃうので。
じゃあ、どうするかというと、「忙しくて」と思ったら、何時間あるか考えてみてください。「1日で1時間から2時間は作ることができるので、その時間でやってみます」とか。「じゃあ、3時間は捻出できるかな。精いっぱいやります」という流れでしょうね。時間を計算してみるといいでしょうね。
チームの士気を下げる「難しいですよね」
そして最後。僕は研修講師をやっていていつも感じていることがあります。グループワークをした時に、こういう人が1人でもいると、そのグループってそっちに引きずられてしまうなと思うNGワードがあります。それは「難しそうですよね」と、自分の所感を伝えることによって共感を得るスタイルの方です。
私は研修ではくぎを刺します。難しいという言葉を聞いた瞬間に、全体の場で「確かに難しいですよね。今日は難しいという言葉をあえて禁止にしてみませんか?」と言います。
というのは、難しいと言ってしまうと、「おいおい、君は難しいんでしょう。私はどうすればできるかを考えたいので、もう勘弁してくれ」という人もいるからです。周囲の人も「難しいですよね」と相づちを打ちますが、邪魔と思われることがあるので。
「『難しそう』とか『難しいですよね』というのは、少なくとも研修では言わない。そして職場でも言わないことをお勧めします」と言うと、誰一人、難しいとは言わなくなります。すると研修がめちゃくちゃ前向きになるし、職場も前向きになるんですよね。
なので、難しそうと思ったら、何も言わないか、あえて「成長できそうですよね」とか「変わるチャンスが来ましたよね」、「これ、チャレンジですよね」と言ってみるといいと思います。
グローバルのエグゼクティブから学んだ切り返し
僕も前職のリクルートに勤めていた時にめちゃくちゃ優秀な部下がいました。ある会社さんから2,600万円のオファーが来て、即決で断ったというなかなかできるやつがいたんですよ。
彼はフランス人で、こんな賢くて優秀な人がいるのか、と思うような方だったんですけども。明らかに彼にとっては難しい、難易度の高いプロジェクトというかタスクをお願いしたんですね。反応は、エクスキューズをされると思っていました。するとこう言われました。
「これ、お願いしてもいい?」って言った時に、ちょっと黙って文章を読んで、「チャレンジですね、おもしろそうです」。以上です。「難しいと思わないの?」「いや、それは難しいけれども、チャレンジでおもしろそうに感じたからそう言いました」という会話があったんです。
もっと本音の話を聞いていくと、こうでした。彼はグローバルの企業で第一線でやっていた方なんですね。いわゆるグローバルのエグゼクティブでやっていた方なんです。「難しい」って言った時点で、「じゃあ、この人にお願いするのやめよう」という世界があるらしくて、もう「おもしろそうですね」が口癖になっていると言っていましたね。おもしろいですよね。
こんなことも僕はあらためて彼から学ばせていただきました。だから、「難しそう」という言葉が出た時に、「あぁ、キャパシティが狭いな」と思う人もいるということです。
30歳から注意しておきたいポイント
では、お待たせいたしました。スペシャルメソッドとして、誰からも愛されたと言われている良寛さんという江戸時代のお坊さんの言葉の戒め。最後の締めくくりとして高田純次さんの、愛されるために注意していることを紹介していきます。
まず、良寛さんからいきましょうか。実はいくつもあるんですが、5つ、私がチョイスさせていただきました。
1つ目、言葉が多いことは駄目です。2つ目、言葉が長い人も駄目です。私も思い当たります。3番目、自慢話は絶対駄目です。これはわかりますよね。4番目、人が話している途中で口をはさむのは駄目です。5つ目、悪口を言うのも駄目です。このあたりで止めておきましょうということで5つ挙げました。
どれか1つでも当てはまるようなことってないですか? 僕は仕事柄、言葉がどうしても長くなる傾向があるので、「気をつけよう」と思いました。研修中も「あっ、ここで言葉を止めよう」いつも思いながら、ブレーキをガンガン踏んでいたりしますが、それでもやはり言葉は長くなりますね。このあたりはみなさん、注意してみてください。
次、高田純次さんの戒めにいきましょうか。これは僕が大好きな言葉なんですね。いきましょう。「年寄りにありがちな、1つ目、『説教』、2つ目、『昔話』、そして3つ目、『自慢話』をしないようにしている」。素敵な言葉ですよね。
僕も本当にこの言葉を見ながら、説教はしないようにしています。昔話は自分のエピソードをやはりしゃべらないといけないのでしゃべるけども、昔にしか通用しない言葉はやめようってやはり意識していますね。今に活きる話しかしないようにしています。
あと、自慢話はしないようにしたいですね。自慢話ではなく、こうすればこうなったという、聞いた人にとって「何をどうすればいいのか」というところに着地していないと、ただの武勇伝になっちゃうので、そこは気をつけていきたいと思います。これは、30歳ぐらいから僕も気をつけていました。
このあたりは30歳ぐらいから出てきますのでね。30歳は年寄りじゃないですけれども、年を必ず経ていきますので、注意していきましょう。