迫りくる多老多死の時代
「在宅医療」に光明を見出した、小さな訪問看護ステーションの挑戦

「ザイタク」にkintoneを

kintone hive in Cybozu Days 2017 Osaka
に開催
サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2017 Osaka」のなかで、kintoneによる業務改善プロジェクト成功の秘訣や活用のノウハウを共有する「kintone hive」が行われました。「『ザイタク』にkintoneを」というテーマで登壇したのは、在宅緩和ケアセンター「ほすぴす」認定看護師の市橋正子氏。現代で必要とされている在宅医療に、kintoneを用いた業務効率化がどう貢献しているかを語りました。
提供:サイボウズ株式会社

社会で重要性が高まる在宅医療

市橋正子氏(以下、市橋):看護師は病院で働く以外に在宅という領域があります。市川海老蔵さんの妻・小林麻央さんが病院から在宅医療に切り替えました。在宅の1つの訪問看護、在宅の社会的背景からお話していきたいと思います。

日本はこの間まで人生50年と言われる時代が400年続きました。戦後、高度成長時代の中で、医学が急速に進歩して平均寿命が劇的に伸びました。

その結果、高齢者が非常に増えて超高齢化社会に突入しました。出生率は減っているんですけれども、重症の子どもたちが増えています。医療機器が発達したために医療機器を付けて生きる子どもが増えています。

そして団塊の世代がどんどん高齢化して、たくさんの人が死んでいく多老多死の時代を迎えることになります。また1人暮らしのお年寄りや核家族世帯も増えています。

日本人は家の中で生まれて家の中で死んでいく時代が長く続きました。それが1975年ごろ大阪万博のころに逆転して、今は病院で亡くなる人がほとんどです。もう医療費は崩壊していますので、病院の数はこれ以上増えません。

地域包括ケアシステムが問題解決の一助

市橋:(スライドを指して)2000年ごろから人がどこで死ぬかを表した図ですが、緑の棒グラフが医療機関、病院で死ぬ。それが2000年ごろから、ずっと同じ幅です。病院数がこれ以上増えないからです。在宅で亡くなる人も、1人暮らしの人が多いことを考えると、政府の在宅誘導はあるものの、それほど増えません。

では、2030年にたくさんの人が亡くなる場所では、「その他」というのは どこのことでしょうか? 亡くなる場所がないことになります。

そこで考えられているのは、地域包括ケアシステムで生活して死んでいくというものです。今、まわりで一番目についているのは、サービス付き高齢者住宅です。自宅や自宅もどきであるサービス付き高齢者住宅を中心にして訪問系のサービスが入る。

または、看護ステーションに訪問だけなく、通ったり、宿泊したりという新しい事業(注:看護小規模多機能型居宅介護、通称・看多機)も制度化されていっています。このしくみを地域包括ケアシステムと言います。

訪問看護についてご説明します。訪問看護は訪問介護やヘルパーさんとよく間違われるんですが、2つの大きな役割があります。病気が治らないのに退院してくる人を退院支援することと、在宅で看取りをする。24時間365日のサービスであることです。

病院の医療機器も使って、家で症状を緩和して最期まで過ごすということを目指しています。理学療法士も家でリハビリをしますし、1人暮らしの人も最期のところまで訪問看護で家で過ごすことができます。

また、大家族の中で看取る場合もあります。(スライドを指して)この方も奥さんと娘さんは看取りをされて、やり切った顔をされています。医者と看護師は疲れ切った顔をしています。

医者と看護師だけで看取りはなかなかできなくて、ヘルパーさんやケアマネージャーさん、そしてITを支えるこのkintoneを作ってくれるような技術者、そういう専門職が連携して実践することをIPW(注:専門職連携)と言います。

kintoneでカルテを効率的に管理

市橋:うちの法人は脳外科の小さい診療所なんですが、そこに訪問看護やケアマネジャー、デイサービスがあります。来年の夏に看護小規模多機能という事業も予定しています。

事業がいくつか増えてくると、例えば訪問看護の事業の中でカルテはごまんと業務ソフトが売りに出されているのですが、それぞれの事業所同士の連携がなされない。カルテが共有されない問題がありました。私が探してもぜんぜんなくて、カスタマイズするしかないと思って、kintoneに相談に行きました。

カルテで何をしているのかと言うと、Sで患者さんの情報を聞いて、Oで診察して、Aでアセスメント、判断します。それをPlanの計画に落として、実行、チェック、改善。PDCAサイクルを回すというのがカルテです。

つまり、カルテを見るとその看護師がしたこともわかりますし、思考過程もわかります。思考過程を共有することができるのです。

(スライドを指して)これは実際のものなんですが、看護師と利用者の名前が入っています。

このスケジュールを押すとカルテが出てきて、先ほどのSOAPも読むことができます。

カルテに必要な機能は、記録することと連絡すること。この2つの機能が必要です。利用者台帳は、住所を入れると地図も出てきて、電話をかけることもできます。また国から決められた書式があります。入力していくと決まった書式で印刷できます。

利用者の日々の経過を記録して、電話がかかってきても、ここにすぐ記録することでそれぞれの看護師が今の状態を知ることができます。訪問先で検査データが知りたいときにも、データを添付していて外から見ることができるので、的確な判断ができます。

クラウドを用いた地域包括ケアの可能性

市橋:もっと進化できるのではないかと私は思っています。今、在宅は研究のフィールドになっていて、さまざまな調査の依頼があります。統計が多いので、これを1発で統計ができないかなと思います。

また、kintoneで作っているのはうちだけなんですが、ほかにいろいろなカルテを使っています。それをもっと共有できないかな、乗り入れできないかなと思うのです。少なくともレセプトコンピュータに連携してくれたら、どんなに効率が上がることかと思います。

横浜の青葉区ではクラウドシステムを利用した地域包括ケアが進められています。もっと大きなクラウド、病院のカルテ、在宅のカルテを乗り入れできるようなシステムができないかなぁと、ユーザーとしては思います。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

専門用語のわかる大学生がキーマンに

伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございました。(セッションの)最初に市橋さんのことを「システムを作ったことがない人」とご紹介してしまったんですけど、それであっていますか?

市橋:あっています。作ってもらいました。

伊佐:作ってもらうのも初めてですかね?

市橋:はい。

伊佐:そうですよね。なかなか作ることに携わる機会というのはないと思うんですけれども。

市橋:まったくないです。ただの看護師で、周りも全部、看護師の実務者です。

伊佐:今回、作ることに携わって、なにか印象的なお話や感想はありますか?

市橋:タクトさんという会社の人と一緒に作るんですが、職業が違うというか、なかなかこちらの言葉が伝わらないなという感じがしました。それで、まだパソコンができる大学院生のアルバイトの子を真ん中に置きました。

伊佐:なるほどなるほど。専門用語のわかる大学院生がいてくれて、システムを作れる人との仲介になってやっていくということですね。

市橋:それでやっと。

伊佐:なるほど、いい取り組みですね。どちらも少しずつ近づいていくためには時間がかかりますから、最初から両方を兼ね備えたメンバーを入れていったんですね。

国も包括ケアのIT化を後押ししている

伊佐:一般的には医療の業界もそうですけど、まったくシステム化されていない、紙で運用されている環境から急に「kintoneやりましょうよ!」と言っても、現場の方が「いやいや、カルテは紙で書きたいです」という声も上がるのが一般的かなと思うんですけど。そのあたりはいかがでしたか?

市橋:あります。うちの中でももちろんありますし、在宅の現場ではまだまだ。紙だったら無料ですし、システムを変えることですごくお金がかかります。国が地域包括ケアシステムを推進していくのに、ITの後押しをしていまして、さまざまな助成制度が出ています。

伊佐:その助成制度を使うとお金の面でも補助も入るし、取り組みやすいんじゃないかということですか。

市橋:はい。時代がIT化に向かっている意識を持つと思います。

伊佐:最後にもっとカルテが共有できたら、少なくともレセプト、医療点数の計算のシステム。それだけでもkintoneつながればというお話がありましたけれども。

仮にシステム屋さんたちが動くとしたら、誰とその話をするとつながっていくんですかね? 「レセプトシステムをつなげましょうよ」「カルテは地域で共有しましょうよ」というのは、どなたが今旗振りして……。

市橋:……サイボウズさんじゃないんですか(笑)。

伊佐:サイボウズが旗振りしてやるべきですかね(笑)。厚労省さんなどかなと思ったんですけど。

市橋:あぁ。

伊佐:なかなか、そういうわけにもいかないですかね。

市橋:まあ、作るのは開発の人ですよ。

伊佐:なるほど。わかりました。ご期待いただいているということで。サイボウズと周辺のパートナーさんとかと一緒に進められるといいなと思いました。今日は本当にありがとうございました。

市橋:ありがとうございました。

(会場拍手)

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