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kintoneでポジティブマネジメント(全1記事)

2017.09.28

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バングラデシュでTシャツを大量生産できるか? 課題山積みのミッションを成功に導いた、クラボウインターナショナルの「KIOMS構想」

提供:サイボウズ株式会社

業務の中でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、kintone活用のコツをそれぞれの視点で解説するイベント「kintone hive」。3度目の開催となる「kintone hive osaka」では、株式会社クラボウインターナショナルの福嶋徹夫氏が登壇しました。「kintoneでポジティブマネジメント」というテーマで、バングラデシュでTシャツを大量生産するというミッションを達成するためのkintone導入事例について語りました。

海外拠点と協力しながら衣料品を生産するクラボウインターナショナル

福嶋徹夫氏(以下、福嶋):ただいまご紹介いただきました、クラボウインターナショナルの福嶋と申します。

今まで事例でいうと3つ、kintone hackで2つ、ご紹介されていましたけれども。みなさん事例がすごいですね。弊社も負けじと発表させていただきたいと思います。

では、簡単に私の自己紹介をさせていただきます。株式会社クラボウインターナショナルという会社でシステム管理者をやっております。

どんなことをやっているかといいますと、ネットワークの導入であったり基幹システムの導入、それから運用ですね。あとはヘルプデスク、パソコンに関するお問い合わせ。要するにシステム関わることはなんでもやっています。

もともと総務をやっていまして、総務出身でしかもバリバリの文系ということもあって、プログラミングが実はほとんどできないシステム管理者です。2015年ぐらいに、とある案件でkintoneと出会いました。

では、お決まりなんですけれども、弊社、クラボウインターナショナルのご紹介をさせていただきます。

弊社は、クラボウという繊維のメーカーの100パーセント出資のグループ会社になります。主に、お客様から「こんな仕様で」というものをいただいて、衣料品を作って、それをお納めしていく会社です。

主に、中国や東南アジアの協力工場でものを生産して販売している会社になります。どういったところで作っているかというと、日本もそうなんですけれども、中国や東南アジア、バングラデシュ、インドといったところで作っています。

弊社は国内に拠点が5箇所ございます。海外には、中国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュに事業拠点があって、そういった拠点と協力しながら生産をしております。

どんな商品を取り扱ってるのかといいますと、いわゆるカジュアルウェアですね。ジーンズ、ジャケット、シャツ。またはワーキングウェア、白衣といったユニフォーム。または、糸や生地といった繊維の素材などを扱っておりまして、衣料品に関わるほとんどのアイテムに関して生産をしております。

この会場にいらっしゃる方々で、今着ておられるシャツであったり、もしくは普段着に穿かれるジーンズであったり、あるいはお子様のTシャツとかですね。それから、工場や店舗などをお持ちの会社さんがもしいらっしゃいましたら、そこのユニフォームもひょっとすると弊社が関わった商品があるかもしれません。

そういったかたちで、弊社の名前は表には出ていないんですけれども、意外なところで実は関わっているという会社になります。

バングラデシュでTシャツを大量生産するために

少し前置きが長くなりましたけれども、これからシステムの導入事例の説明をさせていただきます。

そもそも、まず営業のほうからとある案件でシステム化したいという相談があったことからスタートいたしました。それがここに出ているバングラデシュという国でTシャツを大量生産するという案件でした。

みなさんのなかでバングラデシュと言われてもピンとこないかもしれません。そこで、バングラデシュという国に関して少し説明をさせていただきます。

バングラデシュという国は、インドの東側に位置しているんですけれども、実は繊維産業が国の産業の大半を占める、衣料品の輸出大国です。しかしながら、品質基準の高い日本向けというよりは、どちらかというと欧米向けの輸出のほうが多いので、実は生産管理が非常に難しい国になります。

移動距離の問題もあります。日本から、生産拠点があるチッタゴンという港街があるんですけれども、ここまでだいたい乗り換えを含めて24時間ぐらいかかります。非常に遠いです。

また、安全面の問題もあります。ニュースでご覧になった方もおられるかもしれませんが、先日、爆破テロみたいなものに日本人が巻き込まれるという事件もありました。弊社では出張禁止令が出たこともあります。

そういったいろいろな難しい問題がありながらも、実はこの国で生産をしていくということで……。みなさん、衣料品というのは、ご存知のとおり、非常に安く買えますね。Tシャツやジーンズなど、非常に安く買えるんですけれども、やはりそういった安価に手に入る背景として、そのなかでどうやって利益をあげるかという企業努力のなかで、バングラもそうなんですけれども、中国以外の国に進出していっているのが、我々の業界では非常に多くなっております。

そのなかで我々も、バングラデシュの特徴である、非常に労働力が豊富である点と低賃金である点から、2011年頃からこのバングラデシュでの生産に着手をしました。バングラデシュはそういう国です。

現地とのやりとりの問題点

これから、「ではどういった管理をkintoneでしているのか」ということをご説明していきます。ちょっとTシャツをいいですか?

こちら、実際に弊社で生産していたTシャツのサンプルなんですけどけれども、こういったTシャツがあります。これは子どものTシャツですね。某子ども用品店に行ったら売っています。

こういったTシャツを大量生産するにあたって、kintoneというか「システム化をしたい」という要望がありました。

このTシャツ1枚を構成する要素ってなにがあるかというと、当然、生地があります。そして、プリントがあります。または、意識されるかどうかわからないんですけれども、こういった洗濯ネームであったり、サイズが書いてあるサイズタグ、または商品タグ。

こういったものは仕様がきちんと決まっていて、それが仕様どおりになっているかということを一つひとつきちんと確認しながらやっていきます。さらには、ちゃんとこういったものが工場でできるかということを、サンプルを作って一つひとつ確認してやっていきます。

それを日々、バングラデシュの現地の人間とやりとりをしながらやっていくんですが、そのやりとりの方法が非常に問題になっていました。

今まではメールでやりとりをしていました。例えば「この品番どうなったの?」と投げると、当然それでメールが返ってきて電話したりしていました。さらには「もうメールじゃ埒が明かないから、今の進捗、全部品番ごとにExcelにまとめてメールで添付してくれ」と言うと、送ってはくるんですけど、タイムリーではないとか。送ってきた時点で情報が古いわけですね。

手書きの資料もスキャンしてメールで送る。要するにメールが大量にあって、現場はそれを品番で検索するといったことをやっていました。

さらには、もうメールではどうしても管理ができないという状態になると、もう24時間かけて現地に出張して「おい、今どうなってるんだ?」と確認するような、けっこう悲惨な生産管理をしておりました。

そういったかたちで、大量の商品情報から「今どうなっているか」を探すだけでも膨大な時間がかかります。

しかも、やはり1つのものを見ていても、作った人の解釈によって理解が違っていたりします。そういったところで、お互いが今実際にどうなっているのかがぜんぜんわからない状況に陥っておりました。

結果的にどうなったかというと、やはり「今どうなってるの?」という進捗がまったく把握できない状態になっていました。実際こういったことで、生産がストップして納期が遅れてしまったということも、過去に何度もあります。

だいたいバングラデシュから日本まで船便でだいたい約3週間ぐらいかかるんですけれども、当然、船便では間に合わない。じゃあどうするかというと、飛行機で送ります。

飛行機で送るとどうなるかというと、一発でコストが吹き飛びます。飛行機ってすごく高いんです。ただ、そういった泥沼の状態だと、「とりあえずものを出さないといけないから飛行機で」ということをやっていて、なんのために安いバングラデシュで作っているのかわからないという状況でした。

そんな状態だったので、現場から「もうシステムでなんとかしてくれ」という相談がありました。

kintoneに出会うも、最初は失敗

私は先ほどご紹介したとおり、システムを導入する立場にありましたので、日頃からセミナーや展示会に行ったり、もしくはWebや雑誌などで情報収集をしておりました。そのなかでkintoneに出会いまして、「これならいいんじゃないかな」ということで、サイボウズさんのセミナーに行きました。

セミナーを聞いてわかったのは、実はセキュリティをしっかりしているのでセキュリティを確保できるし、kintoneって簡単なんだということ。簡単に作れて簡単に使えるんだなということを知りました。

さらにはベンダーさん。kintoneを使ったシステム開発の経験があるベンダーさんと取り組めば実はできるんじゃないかということで、kintoneを使って、バングラと日本でグローバルに使えるシステムを作ろうということになりました。

弊社ではこれを「KIOMS」と名付けまして、クラボウインターオーダーマネジメントシステム。要するにバングラデシュと日本でリアルタイムに同じ情報を見ようよ、と。そうしたらどうなっているかわかるんじゃないかということで、まず同じ画面を日本とバングラデシュで共有するシステムを目指しました。

ちなみに、このKIOMSという名前はバングラデシュが命名しました。システムに名前をつけるというのは非常に重要です。やはり名前をつけると、なにかあったときに「どういう目的だったのか」というところに立ち返ることができるんですね。実際、社内では、今、kintoneという名前よりはKIOMSという名前のほうが浸透しています。

実はこのKIOMSは2代目になります。初代は、とりあえずバングラデシュで使ってもらわないといけないので、彼らが要望することを全部詰め込もうと思いました。それは生産前のたくさんある管理項目、もしくは生産したあとの出荷の枚数の管理、そういったものまでを全部詰め込みました。

こんな膨大な情報を1つのアプリに詰め込んだ結果どうなったかというと、kintoneが更新というボタンを押した途端にレコードが固まる。レコードを呼び出してくれないという状態になりました。

やはりその時に学んだのは、kintoneというのは万能ではないんだなと。1つのアプリでできることにはやはり限界があるんだなと痛感しました。結局この初代のKIOMSは、実は使われないシステムとなってしまったんですね。

そんなKIOMSなんですけれども、しばらくして追加のオーダーで大型案件が決まりました。今までどおりやはりメールとExcelではとても管理できない現実は変わらないので、「KIOMSをバージョアップしようよ」という声が現場からあがりました。

初代の失敗を学んで、「1つのアプリでできないんだったら、複数に分けたらいいんじゃないか」という発想で着手をしました。それが「新KIOMS構想」になります。

「新KIOMS構想」の全貌

こちらはアプリを複数に分けました。要は1つ、日本側で品番情報やオーダー情報などのマスター情報を入れます。それをほかの複数のアプリに連携して、バングラデシュ側はそれらを一つひとつ入力していってもらう。

結果、その情報から、こちらに書いてある6番なんですけれども、一目で見渡せる、色で管理できるアプリを作ろうという構想でスタートしました。

今回、その新KIOMSでやりたかったこと、こだわったことは、このアプリを徹底的にシンプルにしようということ。もう一目でわかるアプリにしたかったんですね。つまり、最低限の項目だけをツールとして構成しました。

また、入力は日本とバングラでアプリによって分けました。要するに今説明したとおり、日本でマスター情報を入力して、バングラデシュ側は日付やOKかNGかという情報だけを入れなさいと。

また、初代にはなかったんですが、写真を添付して商品がすぐわかるようにしました。アプリを入力する担当者を、アプリごとに決めました。「あなたはこのアプリを入力してください」。そうすることで迷うことがなくなりました。

また、少し細かい話なんですが、バングラデシュの人は日本語を読めません。なので、アプリの項目は全部英語で表示するようにしています。

こうすることで、実際バングラデシュに行って教えたりしたかというと、まったくそんなことはなくて。もう本当にマニュアルもなく指導もないのに勝手に使い始めた。徹底的にシンプルにすることによって、そういうことが実現できました。

全体の構想なんですけれども、オーダー情報を入れると各工程別の進捗アプリに連携して、それから進捗の一覧ができるというのが全体の流れになります。

実際の画面がこんな感じです。

商品の写真を添付したマスター情報は日本側で入力していく。それらをバングラデシュ側に連携して、最後に全員で進捗を確認しましょうと。日本側はこの進捗のアプリを常に見張っておくと、「今どうなってるの?」というステータスが確認できる状態にしております。

これはアプリの1つの例なんですけども、Shipment、出荷管理というアプリを1つ作りました。

ここで実現したかったのは、これまで「今、実際出荷がどれだけ残ってるの?」とメールなり電話で聞いて回答をもらって、ということを日々やっていたのを、「もう出荷した情報を入れてちょうだい」と。そうしたら、日本側で聞かなくても確認ができますね。

または、出荷に関わる輸出の書類も、今まで全部メールに添付してやりとりしていたのを、ここで添付することによって、わざわざ聞かなくても、品番検索したら情報が手に入る。そういったことを実現しています。

これが目玉になる全体を見渡せるアプリですが、この情報を見ることによって、今は生地を裁断している状態なのか、それともプリントしているのか、検査しているのか、それとももう出荷済みなのか、といったことは色でわかるようになっています。

なので、色がついていないところをウォッチしておけば、今の生産進捗がわかるという画面になっています。

ではどういった導入効果があったのかということなんですけれども、まず最初に申し上げた、ものすごくコストのかかる航空便というものが激減しました。

また、現地の状況を把握するためだけに海外出張していたんですが、そういったネガティブな出張もなくなりました。お客さんと商談中に問い合わせをしていて、「あの品番どうなったの?」と聞かれても、その場で叩けば状況がわかるようになりました。

さらには品番ごとにコメントの機能でやりとりしているので、メールでレスポンスを求めているのではなくて、日頃からkintoneのコメントの情報でやりとりをすると、ログが残ります。さらには資料も添付しておくと、わざわざメールを探したり、紙を送ったりしなくてもよくなったので、業務効率もアップしました。

つまり、今までは悲惨な状況で、まだどうなっているかわからないというネガティブなマネジメントが、ポジティブマネジメントにシフトできるようになりました。

課題が明確であればベンダーと協力するのも手

今まで、バングラのKIOMSの話ばかりしていたんですが、こちらは少し毛色が変わって、私のほうで作ったKIOMS以外の使い方、問い合わせ管理アプリになります。

こちらは、システム部門は日々問い合わせがたくさんあります。誰からどんな問い合わせがあったのかということは、今までExcelで管理していました。Excelで管理すると当然いろいろなExcelが乱立しますよね。それではちょっと困るなと思ったので、アプリを簡単に作ってみました。

作ってなにがよくなったかというと、リマインダー機能がありまして。この機能を使うと、例えばステータスが未対応のものの場合、それが登録してから3日経っても未対応であれば、関係者にメールを飛ばします。

そうすると、対応した人以外にも「あ、この問い合わせ未対応なんだ」というかたちでわかるといったことが実現できて、非常に便利になりました。また、集計も簡単にできるので、これは非常に有効に活用しています。

実際、こういった開発なんですけれども、今まで非常にシステム開発するのに時間がかかっていたところを、今回はベンダーさんと協力してやっていきました。そうすることによって、初代のKIOMSの経験があったということももちろんあるんですけれども、実際は開発期間2週間でリリースできました。

こちらの開発はベンダーさんで、このあとhackにも登壇されるアールスリーインスティテュートさんにお願いをしました。そうすることによって、非常に早く開発することができました。ちなみに、開発のやりとりもすべてオンライン上のスレッドの中でやりました。

まとめになるんですけれども、今回のシステム開発では、やはり現場で明確に「こういうことがやりたい」といった課題がありました。さらにはツールとしてkintoneがありましたし、ベンダーさんの知恵がありました。

実際、ベンダーさんの知恵という意味では、「スプレッドシートをExcelみたいに使いたい」とか、今回の目玉である、1つのボタンで複数のアプリのデータをバーっと連携するといったことは、やはり標準機能では難しい。

やはりベンダーさんは、餅は餅屋ということもありますので、いろいろな我々の課題に対して応えてくれました。

ですので、自分たちで開発するのも1つの方法なんですが、時間がないとか課題が明確であれば、そういった経験があるベンダーさんと組むのも1つじゃないかなと思います。

我々も、今後も簡単なものは自分たちで作りますし、こだわったアプリに関してはベンダーさんと協力して作っていきたいと思います。

では、最後になりますが、弊社の活用事例がみなさまの業務改善のヒントになれば幸いでございます。本日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

失敗してもkintoneをやめなかった理由

伊佐政隆氏(以下、伊佐):成功した話しか聞いていなかったので、途中で実は使われないシステムになっちゃっていたというのは、今日初めてうかがったんですけど(笑)。

福嶋:いいことしか言わなかったので(笑)。

伊佐:そうですね。言いにくいところも共有いただきまして、ありがとうございました。どんな状況だったんですか? フィールドをたくさん作って、というKIOMSの1発目。

福嶋:1発目は本当に……まあ、当然使ってもらわないといけないので、彼らの要望を聞いて要望どおり作っていたんですけど。1画面で当然見渡せるようにはなるんですが、なにせこういったTシャツですら管理項目って非常にたくさん……。

伊佐:何個ぐらいあるんですか?

福嶋:ここでいくと4つか5つなんですけど、実際、この1つのTシャツでも、サイズが3つ4つあって、色が3つ4つ、しかもこういった柄違いのものが80も90もあったりするので、そういったものを1つの画面でやろうとすると、一気に500レコード更新するみたいな話になって、固まったという話です。

伊佐:なるほど。そういうわけだったんですね。でも、普通だったらそこでもう「kintoneやめようかな」となるのかなと思うんですけど、そうはならずに再チャレンジをいただけたということがうれしかったんですが、なにかポイントはあったんですか?

福嶋:今回のアプリはそういったこともあったんですけど、やはりkintoneそのものの魅力は現場もよくわかっていて。我々も、簡単に作れるし使えるし。

「やっぱりkintone使えるんじゃない?」「逆に違った方向から開発すればできるよね」ということで、とくにkintoneはやめようなんて話は1回も出なかったです。

伊佐:すばらしいです。でも、それが結果としていいセカンドバージョンにつながって、今があるんですよね。

福嶋:そうですね。

伊佐:次の取り組みは、なにかご計画されているものはあるんですか?

福嶋:はい。今の生産の管理の仕組みをバングラデシュの国でしか使えていないんですけれども、例えばベトナムであったり、別の国で別のお客さんでも、全社的に使えるようなシステムにしていきたいなと思っています。

伊佐:わかりました。ありがとうございます。今日はたくさん共有いただきまして、ありがとうございました。

福嶋:ありがとうございました。

(会場拍手)

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