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kintoneを活用した課題解決(全1記事)

2017.08.23

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業務改善で大切なのはツールではなく「なぜやるのか」 中国進出の日系企業が1年で営業効率をUPできた理由 

提供:サイボウズ株式会社

業務の中でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、kintone活用のコツをそれぞれの視点で解説するイベント「kintone hive」。上海で開催された「kintone hive shanghai」では、星崎冷热机械(上海)有限公司(以下、ホシザキ)の加藤健太氏が登壇し、「kintoneを活用した課題解決」というテーマでプレゼンテーションを行いました。発表では、中国での営業活動において課題だった「予実管理と経営資源最適化」「営業方針の実行」の2点について、kintoneを用いて改善を行った事例を紹介。約2,000以上存在する代理店候補に対していかに効率よく営業活動を行なうか、その仕組みづくりの舞台裏を明かしました。

飲食業界を厨房機器で支えるホシザキ

加藤健太氏(以下、加藤):ただいまご紹介いただきましたホシザキの経営企画部の加藤と申します。ホシザキは飲食業界で業務用の冷蔵庫・冷凍庫や製氷機を販売させていただいております。今年グループとして70周年を迎えました。上海には2004年に会社を設立しまして、10年以上ビジネスをさせていただいております。

2016年のはじめにkintoneを導入して約1年半運用しています。本日は「kintoneを活用した課題解決」というテーマで、kintoneを使いながらどのように社内の課題を解決したのか、ご説明させていただきたいと思います。

構成は4つのステップでお話ししたいと考えております。

まずは課題をどのように可視化したのか・分析をしたのかというところから始めます。そして2つ目のステップでは、この課題をどのように解決をするのかというところ。こちらではじめてkintoneの話が出てきます。課題をどのように解決していくのかをお話しした上で、課題を解決するために、最終的にkintoneを含めて業務にどのように落とし込んでいったのかという3つ目のステップをお話しします。

そして最後に、kintoneの導入をどのように計画したのか、どのように運用しているのかをお話ししたいと思っております。

ホシザキの3つの事業

では、具体的なお話をする前に、事業紹介を簡単にさせていただきます。まずは製氷機についてです。こちらは業務用で自動的に氷を作り、本体内にストックする機器です。

飲食店はお水にこの氷を入れたり、上海・広州を中心に流行しているミルクティーに入れたりなど、活用いただいています。ホシザキの製氷機は製氷方法が特殊で、氷が固いです。固く、氷の温度が低いので、飲み物に入れても溶けにくく、お客様に飲み物の本当の味を味わっていただける。そのため、さまざまな業態の飲食店に導入いただいています。

もう1つの大きな事業が業務用の冷蔵庫・冷凍庫です。

こちらは食品を安全に衛生に管理する、業務用の冷蔵庫・冷凍庫。家庭用とはパワーや庫内容量が段違いです。

加えて、生ビールサーバーも販売をさせていただいております。

この3つが大きな事業になっていまして、高品質で耐久性のある製品を提供させていただいています。

また、自社で各都市にサービスマンのネットワークを構築しておりまして、お客様の要望に応じてすぐにかけつけて修理を行う事が可能です。飲食店のみなさまに安心・安全に設備をご利用いただくということを常に心掛けております。

中国におけるお客様は、主に飲食のチェーンやホテルになりますが、こうしたお客様に対して、代理店や厨房設計業者を通して販売をさせていただいています。

一般的に飲食チェーン店さんが店舗を出す際には、この代理店や厨房設計業者が案件として請け負い、設計から設備まで、どのブランドの機器を入れるかなども含めて話をとりまとめていただいています。

私たちホシザキは、そうした代理店・厨房設計業者に営業させていただいています。一部、飲食店やホテルへの直販もありますが、ほぼ代理店と厨房設計業者へ販売しているという状況です。

ホシザキが抱える課題

ホシザキは営業活動に経営資源を投入しています。営業の人員や工数も含めて、経営資源を投入していますが、この資源をいかに効率的・効果的に投入するか。ここが常に経営課題として存在しています。

とくにkintone関連で申しますと、営業の工数です。ここがメインのトピックになっておりまして、ホシザキの課題は2点あると捉えていました。

1つは予実管理です。営業人数や営業工数をかけて代理店や厨房設計業者にどの程度の時間を割いて、売上をあげる。というところを試算して年間の予算を組みますが、その予算に対して営業リソース投入実績をしっかり把握をして最適化する、ここが1点目の課題でした。

2点目は、「営業工数をどのように投入するのか?」という点で、会社の営業方針として、営業担当に対して、例えば「どの代理店・厨房設計業者を中心に回ってください。こういう時間の使い方をしてください」というところをお願いしています。

その方針をしっかり営業担当が理解をしてできているかをモニタリングして効率化していく。この2点を課題として認識しておりました。

経営資源をいかにして最適化するか?

もう少し詳しくお話ししますと、先ほど申し上げた2つの課題は「経営資源の最適化」ということでこちらの図に示したとおりです。

社内の各レイヤーは図の左側の水色の部分になりますが、経営企画部も含めた経営層、営業部の中には部長、その下にブロック長、そして営業担当が紐付いている構造になっています。

全国を5つのブロックに分けていまして、その下に約10事務所、合計で数十人の営業担当が所属しています。

営業は代理店・厨房設計業者に時間等を割いているわけですが、まず図の1の予実管理に関しては、営業資源をどれだけ投入して、どれだけの成果が上がっているのかを代理店あるいは厨房設計業者別に出したい、という希望がありました。

「成果」の情報の中で、売上に関してはERPシステムで管理していますので大丈夫ですが、営業資源の投入に関しては、営業人員の人数は把握していますが、工数としてどの代理店にどれだけ割かれているのか、そこは見えにくいところがありました。

みなさまご存じのように、中国では微信や電話でかなりスピーディに業務を行います。ブロック長と営業担当はかなり結びつきが強く、通常1週間かかるような内容が1時間で終わっている。そういったスピード感で動いています。そのため、そういった業務を経営層がしっかり把握をするのがなかなか難しいところが課題としてありました。

そしてもう1点、「営業方針の実行」では、ブロック長が全体方針を月次で分析・判断をして、計画どおりに行われているのかを見ながら指導する。そういった仕組みを実施する必要性がありました。

優先順位の明確化と活動の見える化

kintoneを入れる前、主に課題になっていたのは図の矢印の部分です。図の1では経営層とブロック長、図の2ではブロック長と営業担当。この会話が定量的に、そして建設的に行えていなかった点を課題として認識していました。

例えば図の1では、経営層はビジネスを拡大する上で「人員を増やしたい」「工数を増やしていきたい」と考えていますが、実際に今の人員が効率よく動けているから人数・工数を増やして売上を増すのか、それとも今の人員・工数の再配置が必要なのか。

そういった議論ができるよう、関連する情報を建設的に定量的に捉えるためにkintone導入をいたしました。

営業担当含めて会社としてどういう方針を出したかといいますと、先ほどお話ししました代理店と厨房設計業者は全国に約1,000、2,000という数でいらっしゃいますが、この2,000の代理店をしっかりと優先順位付けする。そして優先度の高い、今後継続的に売上を作る期待値の高い代理店へ重点的に活動するよう営業にお願いしました。

「商談1件につき1レコードをkintoneで入力してくれ」というお願いを営業担当にしています。いつ、どこに、どの代理店に営業活動を行ったかを入力していただくことで、経営層やブロック長が、営業担当の動きを定量的に把握する仕組みを導入いたしました。

こちらは実際の画面の紹介ですが、「活動報告」と呼んでいまして、商談1件につき1レコードを入れてもらっています。

内容はシンプルで、選択肢を多くすることで入力時間をなるべく少なくすることを意識してユーザーのインターフェースは設計いたしました。1件あたり1〜2分あれば商談が登録できるように設計をしています。

経営層が欲しい情報を最低限このプラットフォームの中に入れて、営業担当が面倒に感じずに入れていただけるような環境を整えることを意識して作りました。

鍵になるのはブロック長

先ほどの図に戻りますが、先ほど申しましたとおり、2つの課題を解決する上でキーになるのは、ブロック長です。

予実管理でどの程度工数が割かれているのかを分析をしなければいけないのもブロック長ですし、方針を実行するというフェーズにおいても、部下が方針どおり動けているかどうかをしっかり認識する必要があるのはブロック長です。

ブロック長は5人います。この5人のブロック長がkintoneに入っているデータを分析して、2つの業務をこなせるようにサポートする体制を構築しました。

もともとは図の1で月次の経営会議のみ実施していました。しかし、ここをブロック長に完全にお任せしたフリーフォーマットで会議をすると、どうしてもブロック長の主観の入った話になり、経営層が定量的に情報を把握できていませんでした。

そこで、経営会議で話をする前に、経営企画部とブロック長で各種データを基に分析をする新しい取り組み「ブロック長会議」を入れました。

該当する部分は、図の赤枠で囲っている分析作業です。

営業担当に毎日入れてもらっている商談の1件1件を集計するかたちで、どの代理店にどれだけ時間を割いているのかをブロック長と経営企画部が一緒になって分析するという、ブロック長をサポートする体制を構築いたしました。

kintone導入の成果は

ブロック長会議の中身を少しだけご紹介していきます。

まず、図のグラフは1本ずつが営業担当の営業活動件数、商談の件数になっています。色が分かれていまして、先ほど申し上げましたとおり優先度別に積み上げグラフになっています。

こういった数値の分析や、優先度の高い顧客については顧客単位での活動実績の把握・分析。そういった話をしています。

この図には代理店の名前が並んでいて、優先度がプロットされていますので、それぞれブロック長が考える頻度で訪問しているかをモニタリングしています。

このブロック長会議とkintoneを使った分析、あるいは指導。この全体の取組みをした結果、全体を100パーセントの活動率として、優先度別に集計をとりますと……。

グレーの部分が低優先度です。「会社としてこの代理店は少し規模が小さい」「今後あまり売上があがらない」とプロットした代理店に対しての活動が、もともと全体の15パーセントの活動を占めていたところが、約1年かけて9パーセントまで下がりました。

そして、低優先度以外の代理店に対して85パーセント活動していたものが91パーセントに増加しました。低優先度のお客様への活動が約30パーセント下がっているということで、取組の開始前と比較してより効率的な活動ができていると見ています。実際、私たちが高優先度として定義した代理店から、より多くの売上があがるようになりました。

これが、kintoneを導入して1年半運用した結果です。

導入の際の課題

最後は少しだけ導入計画と運用フォローについて紹介します。導入は3つのステップで行いました。まず、設計と開発の段階です。先ほども申し上げましたが、各部門レベルで必要な情報・項目は最初にしっかりと定義をしました。

経営層としてはこの情報が欲しい、営業としてはこの情報が欲しい、あるいは入力の手間を少なくしてほしい。そういった打ち合わせをしっかりして、導入を見据えた設計を行いました。

導入に関しましては、まずは地区を限定してモニターを実施しました。上海事務所で4人の営業と1人のブロック長に協力いただきまして、1ヶ月間、入力からブロック長会議におけるブロック長との分析作業、そして経営会議という業務を1回まわしました。その上で問題ないかを確認した上で実際の導入に踏み切りました。

そして、全国の運用に入るわけですが、最初はなかなか入力も進まないなど、さまざまな問題がありました。

ここで私たちが気をつけていたのは、目的の周知の徹底です。中には、入力自体を評価に紐付けたり、入力すること自体にインセンティブを与えたりする方法も1つあります。しかしホシザキに関しまして、今後は会社として大きくなるフェーズにありましたので、目的をしっかり理解させるという意味で、とくにブロック長に対して自分たちでしっかり部下の行動を把握し、投資をする・しないの判断をしていく。目的意識をしっかり根付かせるというところで、ブロック長、あるいは 総経理レベルに目的をかなりしつこく説明をしながらこの取組み全体を進めてまいりました。

今では8割9割方の商談について入力いただけるようになり、かなり効果も出てきているというところです。

本日は4ステップに分けてお話いたしましたが、課題の可視化から、課題解決の方法の検討、そして業務構築というところのお話をさせていただきました。本日はありがとうございました。

優先度の決め方

(会場拍手)

伊佐政隆氏(以下、伊佐):ありがとうございます。やっぱりツールだけではなくて、目的を徹底するのはすごく大事なんですね。

加藤:そうですね。

伊佐:かなり具体的な手法まで共有いただきました。ついでにもう1つ深掘りしたいなと思ったんですが、優先度について、低優先度と高優先度がありますよね。あそこは誰が決めるんですか? 顧客の見込みとかでしょうか?

加藤:その代理店が将来的に売上をあげる代理店かどうかというところです。そこを明確にして、その地域で経済規模に応じてトップ3やトップ5、トップ10の代理店をピックアップしました。

伊佐:なるほど。条件が決まっているので、優先度の高い低いがわかる状態になってるんですね。

加藤:はい。実際の状況については、営業へヒアリングを実施しました。

伊佐:なるほど、いいですね。常に目的を理解して釣り合わせをしながら進めたことによって、成果が上がり始めているよ、ということなんですね。非常に学びになる共有ありがとうございました。

加藤:ありがとうございます。

(会場拍手)

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