ヤマハ発動機のIT部門の舞台裏
伊佐政隆氏(以下、伊佐):よろしくお願いします。いいですね、このジャケット。カッコイイですね。
原子拓氏(以下、原子):ありがとうございます。会社愛です。
伊佐:会社愛(笑)。よろしくお願いします。
原子:これは決して作業着ではなくて、市販です。12,000円です。
(会場笑)
原子:今日紹介するのは、コールセンターの業務をkintoneでできますよ、という話です。
センターの様子はこんな感じです。
作業員はこんな感じで、女性の方が案件を受けて、という感じになります。
自己紹介はちょっと短く、フラッシュに行きます(笑)。私は、ずっとヤマハ発動機にいるわけではなくて、東京の会社に少しいて、本当はネットワークエンジニアです。
最近、ヤマ発にきまして。あ、地方だとヤマ発って言うんですよ。楽器を作っているヤマハは「楽器」って呼びます。ちょっと変ですけど。私は、20年ほどずっといまして、今はセキュリティとかクラウドなど、なんでもやります。最近はセキュリティが大事なので、オリンピックに向けて日本全国の企業のセキュリティを高める仕事をやっています。
他には地元で消防団をやったり、コミュニティ活動では、JAWSですね。JAWS-UG 磐田というものがありまして、その立ち上げコアメンバーになってます。
先ほど、kintone愛とか言ってましたけど(笑)、kintoneを愛してしまいまして、浜松を立ち上げてしまいました。まだ1回しかやっていなくて、2回、3回と名古屋の先輩のみなさんを狙ってやっていきたいと思っています。
ご存知だと思いますが、うちの会社はモータースポーツ、モーターサイクルが中心です。
あとは、最近話題なのはプールですね。
国内のスクールプールのシェアは70パーセントくらいあります。お子さんがいる方は、保育園のちっちゃいプールもやってます。お金持ちの方は、ご自宅の前に置いてたりします。
あとは、ヘリですね。最近はドローンと呼ぶらしいですが、これは20年くらいやってまして、現在は国内で3,000機程度がオペレーションしています。
あと言わなくてはいけないのが、9割は海外で売り上げているというお話です。
ものを作って輸出する、いわゆる中部地区を代表するビジネスモデルの会社ですね。世界中に売っています。
自分がいる部署は情報システム部と呼ばれていて、いわゆる、エンタープライズ情報システム部で敷居の高そうな部署です。ヤマハには情報システム子会社もありまして、ここはグループで800名体制くらいです。
グローバルオペレーションな内容で、いわゆるガチガチな会社です。そんなところを想像していただければと思います。
リスクに備えてクラウド化
そうは言ってもクラウドの取り組みはやっていまして、中部地区、とくに静岡もそうですが、東南海地震をはじめとしてさまざまなリスクがありますよね。やはり3.11や9.11のテロなど、いろいろありました。
いろいろなリスクがあり、オペレーションが止まってしまうとよくないので、クラウドファーストでやっています。いろんなものを外に出していっていますので、さまざまな事例が出てますが、当然、メールもOffice365を使ったり、いろいろです。
WebサイトではAWSを使ったり、Enterprise CloudがWebコンサルをやっています。
kintoneのシステム階層は特徴的なので、いろいろと歴史的なことを語ろうと思って作ったんですけど、若い人にウケないのでちょっと飛ばします(笑)。
(会場笑)
原子:だって、COBOLとか知らないですよね。なんのことかさっぱりわからないし、SunOSなんて知らないですよね。Informixなんて知らないし。ぜんぜんダメですね。Redhatとかは最近は少し知っているんですが。
この辺りの話をすると、エンタープライズ企業で形から入るので、3階層フレームワークで作るということになります。
これ、すごいことなんです。サーバーをたくさん使うし、開発の工数もかかるので。ということは、これでなんでも作りたがるので、kintoneもこれで作っちゃいます。勝負したことがあるんですが、kintoneの方がやはり早くて安いですよね。
でも、それをやってしまうと子会社さんの仕事がなくなってしまいます(笑)。
最初は、ポスグレ(PostgreSQL)を使ってやっていました。どの会社もだいたい3階層で、Javaで苦しんでいるのが現状だと思います。
20数年、会社の嫌われ者
いかに高速にさせるかというのが私たちの役目ですね。良いものがあったら、どんどん社内に入れて、いかに事業部の仕事を活性化させるかという役目を担っています。
こういった会社って標準化が大好きなんです。ですが、私はどんどん変化させる仕事を20何年やってますから、ずっと嫌われているんですよ。「またあいつがなにか持って来やがった!」みたいな感じで。最近、kintoneと言うと「またあいつか」って言われちゃうんですけど、そんな感じでやっています。
昨今は、Powerbuilderというものをまだ使ってるんですけど、知らないですよね?(笑)。
知ってます!? クライアントサーバーシステムのRADツールだったんですけど、これが唯一でもないですけど、残っている会社で、偶然にもSAPさんに買収されたので、まだ残っています。こういったものとkintoneと、いろいろなものを使ってやっています。
今はクラウドファーストなので、なるべくシステム開発で最初から新しく作る場合は、SaaSからいこうと決まっています。なので、kintoneを飛び越してサービスを使うというかたちが、最近は増えてはいます。
ヤマハを支えるコールセンターの仕組み
じゃあコールセンターはどうなっているのか、ここをお話していきます。コールセンターについていろいろ調べると、0120という番号が30個くらいありました。細かいコールセンターを入れたら、たぶん、30個以上のコールセンターが存在します。
今、代表的なものを私たちが手がけています。
一番左はいわゆるお客様向けのコールセンター。それからこの3つは、全国の販売店向けにサポートするセンター。あとは、電話で受注を受けるセンターがあります。
こういったところを約15年前から受け持ってるんですが、これらを動かすためにはアプライアンス(注:専用機器)を入れたり、先ほどの3階層のすごいアプリを入れてぶん回さないとできないというのが今まででした。
これはだいたい5年ごとに保守入れ替えをするので、いつも5年おきにお祭り騒ぎのように、新しい機械を入れ替えていくというのをずっと続けてきていました。
我々はそれを「保守入れ病」と呼んでるいんですけど(笑)。まあ一応、新しく改善していくというものなので、病気でもないんですけど。
いろいろな要素が必要で、PBXの部分とか、電話の音声にあたるところは違うクラウドを使っていてkintoneではやっていない部分ですね。CRMの部分はkintoneにしています。
どんな感じか、メーカー名も全部オープンに書いてありますね。
今までは、某X社のPBXとかCTIとか使って(笑)。
(会場笑)
原子:ここは何かと言うと、SQLサーバーで、VBですよ(笑)。15年くらい前に作ったVBアプリをクライアントサーバーシステムで使っていたんですが、これを今回、クラウドファーストにしようとしたときに、やはり海外はだいたいSalesForceを使ってるんです。なので、「SalesForceをそのまま使え」って言われたんですけど、ちょっとそれはおもしろくないなと思いまして。
何がおもしろくないと言うと、(価格が)高いんです。あと、SalesForceは巻物型の画面で、スクロールするのがすごく大変なんです。そういうのは、ちょっと嫌いですね。
ということもあり、今回コールセンターの電話部分はBiztelさんを使わせていただいて、kintoneとAWSの連携をしています。
当然、子会社とコラボしてうまくやりたかったんですが、やはり「kintoneの部分をJavaで作りたい」と言われてしまいました。なので、却下しました。
クラウド化で在宅勤務も可能に
JAWSうんぬんの話で記事にもなっていますが、当時、JAWSは金春(利幸)さんが代表だった時代がありまして、そのうち知り合う機会がありました。その時は金春さんもkintoneをやっていて、「これを作れるのか」と聞いたら、「はい」ってすぐに返事が返ってきました。
たぶん、連携を取れるかどうか、実は知らないで受けているはずなので、真っ青になっていたと思うんですけど。実際には、BiztelさんはちゃんとクラウドのWebサービスを持っているので、結果的にやってもらえたんですが、ここで入ってきてます。あとの細かいkintoneの話は、ここではいらないので飛ばします。
Biztelさん。最近、Amazonのコールセンターの話も出ていますが、フルクラウドで、電話を受けるところからすべてやってくれます。
これがすべてAPIがWebから共有できますから、kintoneから簡単に使うことができます。実際には、こういった構成図になります。
営業ベースのところは、データ交換のところなどバックエンドを整理しなきゃいけない部分があるので、そこはAWS上でやって、あとはkintoneをフロントで使うという使い方になります。
ブラウザとパソコン画面さえあれば、インターネット越しでフルサービスが可能なので、在宅でコールセンターをやることができます。販売店向けのところは、意外とノウハウが必要なんです。ですが高齢化問題で、ノウハウを持った方が多く辞めてしまいました。それを、シルバーになっても働いてもらおうと思っていまして(笑)。ご自宅で、バイト的に、本当に困ったときにはやってもらおうというアイデアもあります。
R3インスティチュートとの共同開発
ここから先の話は、R3インスティチュートさんと手法の話になっているので飛ばします。私たちも一緒に参画してますけど、R3さんの場合は対面開発なんですね。ハイスピードSIと呼んでいますが、非常に短い時間の開発が可能でした。
具体的に結果だけ見せておきます。
段取りは普通にちゃんとやるんですよ。本当に「仕様書がないんじゃないか?」とかいろいろあったりするんですが、ちゃんとやります。やるんですけど、どのくらいであのCRMシステムを作ったかと言うと、こんな感じです。
4回対面しました。1回は2時間。それしかやってないです。バックエンドは持ち帰ってやってもらうんですが、その場で画面を決めてしまったりしました。ただ、うちのインフラチームはまさかこんな早くできると思わなかったので、通常のインフラの発注をかけたらネットワークに半年ほどかかりまして。ガチガチの基幹ネットワークにクラウドを通さなきゃいけないから、いろいろ大変なことになっていました。
これは、セキュリティをごまかしながらやっていくんですね。なので、どちらかというと超高速開発してるわりにはインフラ整備で足を引っ張ってしまった事例になるんですが、ここはちょっと勉強になりました。
今年の3月には最後のコールセンターを手掛けたんですが、そこはもうすごいですね。
全部準備してありますから、本当に2ヶ月で作ってリリースした事例になります。
手戻りは多少あるんですが、その辺りはちょっとずつ直して改善していくということで、正味、3ヶ月で全部できています。当然、コスト感もそれなりになっているので、非常にお安くできています。Javaでやるよりも、安いし、早いし、なんとかフォースよりもライセンス料が安いと(笑)。一桁、値段が違います。
AIの活用も
最近の取り組みは、実はスライドにしていません。というのは絵に書いちゃうと決裁が通らないんです。なので口で言っちゃうので、(会場を)出るときに忘れてください。
何をやっているかと言うと、ここで溜まったデータやBiztelさんの音声データを、流行りのAIを通して、ナレッジを溜めるということにチャレンジしています。いずれ、その発表もできるかもしれません。
コールセンターで販売店支援をやると、同じ問い合わせが来るケースがけっこうあります。しかしコンシューマー向けにホームページにQ&Aを作るわけにもいかないので、電話を受けるオペレーターに「この問い合わせがあったらこう答えろ」というものが先に出て来ると、非常に効率が良いわけです。そういったAIの活用も、これからやっていこうとしています。
ちょっと名前が出ちゃいますけど、これはkintoneの画面で、実際の承り履歴です。
これはサイクルセンター大宮さんから電話がかかってきた時のものですが、電話がかかってくるとすぐにこの画面が出てきます。
先ほどの検索の話じゃないですが、非常に早いです。今までやっていた画面の雰囲気に似せているんですが、使っているユーザーも違和感なく使えています。
大幅なコスト削減が実現
まとめです。一番大変で、入れ替えてよかったのが、保守切れ対応が不要になったことです。
5年おきにアプライアンスと言っても、保守切れしてしまうんですよね。これを入れ替えるには、アプライアンスだと初期費用が数千万円かかります。仕様も変わるので、テストもかかります。そのコストは馬鹿にならないので、それがクラウド化できて、自動的にバージョンアップされていくのは非常にいいわけですよね。なので、そこは非常に嬉しかったです。
あとは、構築コストが低減されています。当然ですよね。そして、短納期です。あとはクラウドのいいところで、繁盛期に席数を増やすとき、今まではアプライアンスでマックスのライセンスを買うんです。ですが、Biztelさんもkintoneも細かくコントロールができてますよね。社内の付け回しも非常に効くので、非常に便利に使っています。
これはどちらでもいいんですが、やはり、新しいサービスをエンタープライズの中に突っ込んでいくのは、非常に大変で苦労が多いです。ですが実は、コールセンターのみなさんは、これを入れたことで喜んでくれているんです。それは非常にやりがいを感じています。
みんながkintoneを使える環境に
あと、スライドには書いていませんが、実はコールセンターのメンバーがkintoneを使うセミナーに独自で申し込みをしていたんです。「どうしてですか?」と聞いたら、「これなら自分で作れるから、自分でやりたい」と。「どこをやるの?」と聞くと、やはりワークフローとか。
実は、私たちは3階層のすごいワークフローを持ってるんですが、そんなのは我々に任せられないと。もう自分でやりたいという話で、kintoneの中で全部閉じて仕事ができるほうが早いわけですから、自分たちで作るということで、取り組みを始めているところです。
そこに対しては、私たち管理部門側からとしてはノーと言いたいところもあるんですが、これからは適材適所で管理部門がいろんな協力をしながら、企業のIT化を促進しなければいけないと思いました。なかなかサポートはしきれないんですけど、新しいものを紹介して、みなさんよりプラスになって、みんながkintoneを使えるようになったらいいなと思います。
そういったところから、新しいkintoneの使い方はほかでも起きています。子会社さんの小さいところのシステムはkintoneでやりたいという話も、私どもにも来ています。ですので、今は金春さんとも相談してますが、今日またお知り合いの方を増やして、名古屋地区なので、ぜひまた相談に乗ってもらえると嬉しいです。
先ほどコラボ型の開発があったと思うんですけど、そういうことも、ぜひやらせていただいて、お互い発展できてWin-Winになれたらな、というまとめになります。
ご静聴ありがとうございました。ますますkintoneを使って幸せになりたいと思いますので、一緒に幸せになりましょう、というところでまとめとさせていただきます。どうも、ありがとうございました。
(会場拍手)
これまで丸投げしてきたデータを取り戻す
伊佐:ありがとうございました。
すごいですね。コールセンターシステム、いわゆるCTIでkintone使っちゃおうという素晴らしい発想でした。やはり会社が大きくなって、グループ会社にシステム開発できる人が1,000人近くいらっしゃるわけじゃないですか。その中で、こういうクラウドサービス使うのは難しそうですね。
原子:ですから、今までできていなかった領域とか、アプライアンスとか、丸投げしていたところを、まず切り崩して取り戻していくような感じでした。やはりこれからは、いろんなものがつながっていく時代ですよね。モノもつながるし、情報だってつながるし、そういう時代じゃないですか。
伊佐:やりたいことが絶対増えますもんね。
原子:そうです。そういう意味で、データは自分たちでコントロールできなきゃいけないと思っています。なので、そこは取り戻したいですね。
伊佐:取り戻すというのは、どこから?
原子:丸投げしたところから。
伊佐:丸投げしちゃってるところから取り戻して(笑)。ごめんなさい(笑)。あまり聞いちゃいけないことを。ぜひ、これからまた一段と柔軟な開発をしながらチャレンジしていっていただいて。
原子:そうですね。こういうものを作って、ある程度テンプレートになるものはシェアして、みんなで幸せになったらいいと思いますよね。
伊佐:素晴らしいです。浜松のkintone caféも、引き続きお願いします
原子:はい、ちょっと、2回、がんばります!
伊佐:2回目が重要ですか。
原子:やはり製造業の街なので、やはり起業する人が多いんですよね。そしてkintone使ってうまくいってる方も多くて「第2回、早くやれ」と言われていますので、またご支援のほど、よろしくお願いします。
伊佐:ぜひ、応援に行きます。
原子:名古屋のみなさん、ご支援いただければ嬉しいので、帰りに一緒にさわやか(注:浜松に本社を置くレストラン)に行きましょう(笑)。
伊佐:行きたい。まだ行ったことないんですよ。さわやか。
原子:ローカル過ぎですね。
伊佐:ハンバーグですよね? さわやかって。
原子:そうです。ハンバーグです。
伊佐:ぜひ今度一緒に行きましょう。
原子:どうも、ありがとうございました。
伊佐:原子さん、ありがとうございました。
(会場拍手)