いろいろやりすぎた結果「キャラクターアプリプロデューサー」に

伊佐政隆氏(以下、伊佐):よろしくお願いします。松元さん、今日は朝5時に起きたんでしたっけ?

松元拓也氏(以下、松元):(車椅子の向きを変えながら)ちょっと待ってくださいね。

伊佐:はい、ありがとうございます。(車椅子が前を向くのを待って)緊張して寝れなかったんでしたっけ?

松元:もう控え室で、2〜3回吐きそうになりました。

(会場笑)

伊佐:(笑)。そんなこと言わずに、ぜひすばらしいアイデアをみなさんに共有してください。よろしくお願いします。

松元:はい、よろしくお願いします。

はじめまして。株式会社仙拓、取締役副社長の松元と申します。

今回の社内は活用事例とはまたちょっと違った角度からお話をさせていただきたいなと思いまして。「もしかしてkintoneをただの業務改善ツールだと思ってない?」といった観点でお話をさせていただきたいなと思っています。短い時間ではございますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

まずは、簡単に僕の自己紹介をさせてください。……スライドが変わらないという、いきなりトラブルがね(笑)。

はい、まずですね、名前が松元拓也と申します。1989年1月12日に生まれて、今は酒と愚痴の量が比例して、社会に疲れ切った28歳です。血液型は、最近ブラハラとかいうのもあるみたいなのであまり言いたくないんですけど、本当にごく一部のB型の男の人とは仕事がやりづらくて仕方がないなと思っているA型です。

株式会社仙拓という会社でデザイナーをやってます。他には、kintoneを使った社内システムの構築ですとか、そのほか諸々。動画の作成やiOSゲームのプロデュースなんていうのもやってます。

(スライドを指して)このゲームは、ただただかわいい女の子の歯を磨くだけっていうゲームなんですけど、もしよかったらダウンロードいただければと思います。

巷では本当にいろいろやりすぎてるせいか、デザイナーとはもはや呼ばれずに、キャラクターアプリプロデューサーなんて呼ばれることもあります。みなさん、このセッションが終わった後、キャラクターアプリプロデューサーとか絶対呼ばないでくださいね(笑)。得意じゃないですからね。

(会場笑)

重度障がい者の2人はなぜ起業したのか

このキャラクターアプリプロデューサーがいる株式会社仙拓という会社は、いったいどんな会社なのか。

この会社は僕ともう1人、佐藤仙務という男と今から6年前に起業した会社です。……スライドが変わらないので、お願いします。(スライドを見て)この男ですね。この男、佐藤仙務と6年前に立ち上げました。

この男ですね、僕が酒と愚痴の量が比例して増えている、まさに元凶とも言える男でありB型ですけど。この男といつもやってます。今、メディアなどから「寝たきり社長」などということでやたらチヤホヤされて、すごく調子に乗ってます。

(会場笑)

彼もまた、重度障がい者です。なぜこの重度障がい者の2人で一般企業に就職することなく起業したのか? 答えはシンプルですね。僕らの身体の状態に合った職場環境がなかった。だから起業した。本当にそれだけです。

僕らはWeb制作のスキルや、名刺・チラシ、デザインのスキルがあったので、これら2つをメインの柱に業務を進めてまいりました。

起業してから3〜4年した頃でしたかね。うちの佐藤がサイボウズの青野(慶久)社長に自分の書いた本を、頼まれてもないのに送りつけたんですよ(笑)。青野さん、いい迷惑だったと思います。ただ、本当に人がいい方なので、しっかり本を読んでいただけまして、その内容にいたく感動していただいたんですね。

それがきっかけで、仙拓の顧問アドバイザーにまでなってくださいました。その頃からサイボウズさんとも仲良くさせていただくことも多くなりまして。その頃にちょうどkintoneを紹介いただいたわけですね。

株式会社関西の青山社長とともにkintoneを使い始めた

ただ、kintoneを触ってらっしゃるみなさんならわかるとは思うんですけど、kintoneってなにからすればいいのかわからない。ゼロから作れるから「なにをやればいいの?」ってなると思うんです。僕らもそうだったんですけども。

ちょうどその頃にFacebookでつながっていた青山敬三郎さんにkintoneを教えていただくことになりました。

こちらの青山敬三郎さん、株式会社関西の社長であり、作業療法士でもあります。大阪では児童デイサービスなどを運営されておりまして、「ITを使って日本の福祉を世界一にする」という理念を掲げていて、福祉業界のまさに革命家とも言える存在だと思います。

今回も、弟子の僕のためにわざわざ駆けつけてきてくださってます。どうぞこちらへ。

(会場拍手)

ありがとうございます。

青山敬三郎氏(以下、青山):今日は弟子が(壇上に)上がってますので、いつ口説かれるかと思って(笑)。

松元:もうなんかお父さんみたいにね、カメラを構えて撮ってくださってるんですけども。もう本当に、kintone界隈では知らない方はいないんじゃないか、っていうぐらい有名な方なんです。

当時の僕、kintoneはもちろんのこと、青山さんのことを1ミクロンも知らなかったんですね。

そんな状態でですよ。よく聞いてください。最初にSkypeをつないで……あれは日曜日の夕方、『ちびまる子ちゃん』が始まるちょっと前ぐらいですかね。Skypeのビデオがつながったんですよ。そうしたらいきなり、40前後の金髪のおっさんが視界に飛び込んできたんですよ。

僕の気持ちわかります? 「ヤバい人が来たな」って思ったんです。

(会場笑)

本当に、すぐにそう思いました。青山さん、ヤバい人だったんですけど、それ以上にkintoneがヤバかった。こんなに簡単にデータベースが作れるのか、と。その日から、社内の業務改善にkintoneを使い、アプリを作ってきました。

自治体からの無茶ぶりにkintoneで実現する

今回は社内の活用してるアプリを2〜3個、簡単にご紹介していきたいと思います。

うちは全員がテレワーカーなので、勤務連絡を全員で行う必要があったんですね。ただ、それを全部kintoneで行うことになり、すごく便利になりました。

次に賃金台帳と給料明細ですね。こちらはタイムカードをもとに、賃金台帳を記入していけるようになっています。プリントクリエイターも連携しているので、賃金台帳から給料明細を出力できるようになっているんですね。これによって、今までWordやExcelで行っていた業務の管理。すべてkintoneで一元管理できるようになりました。

そして最後に、名刺注文フォームです。これまでメールにあった注文を、Excelにペタペタと顧客情報を貼り付けていたんですが、フォームクリエイターを連携することによって、自動でkintoneに流し込めるようになりました。顧客管理、非常に便利になったんです。

こんな感じで、kintoneを利用して業務システムを構築して数ヶ月した頃ですね、こんな案件が発生しました。「職員がパソコンからデータを入力したら、名刺がパパッと仕上がるようなシステムがあるなら、うちの職員名刺を頼んじゃおっかなあ」。

そんなシステム、うちがほしいです。「うち、システム開発はやってないよ。デザインしかやってない」って言いたくなったんですけど。そうなんです、外注に出そうと思って先方に予算をうかがったら、とても素敵な笑顔で「予算ないからね」って言われた。

「これ、どうしようかな?」と。でも、これ、自治体からの案件だったので、うちの佐藤が「どうしてもここと取引がしたい」と言うんですね。そして、2人で会議をして、いろいろアイデアを出し合っていたんですけど。

まあ、うちの佐藤、アイデアが煮詰まってくるとだんだん適当なことばっかり言うようになってきて、「もう本当こいつ面倒くせえなあ」「こっちは会議をしてるのに」となってくるわけです。

その時、こんな発言がありました。「kintoneでできないの?」「いや、(kintoneは)データベース作成ツールだって知ってるか?」。そうするとここで佐藤は「どうにかして」。投げっぱなしです。「じゃあな」って言って。

(会場笑)

「こいつ……!」とか思いながら、考えてみたんです。そうしたら、「おやおや?」「できないことはないかな」と。そこで浮かんだアイデアがこちらですね。

まずフォームクリエイターで受注します。そして次に、kintoneにデータが送られる。そして、それをプリントクリエイターに連携することによって、名刺のデザインを出力する。

イメージとしてはできたので、これが実際に可能かどうか、青山師匠に相談してみました。そして、いつもの飄々とした感じで「それ、いけるで」と。Skypeをつないでいたので、その場で、たった30分でプロトタイプを作ってくださいました。

オリジナル名刺デザインを販売する……だけで意味ある?

その夜、僕もプロトタイプを作ってみたんですが、問題が浮上しました。通常、名刺の印刷って、印刷会社が指定されたデータで入稿しなきゃいけない。ただ、プリントクリエイターって任意のサイズで名刺の出力ができないんですね。

じゃあ、どうするか。(スライドを見て)考えた案がこちら。デザインを描く人にとってはおなじみのPhotoshop。ここのアクション機能に目を付けたんですね。

このアクション機能、どういうことかといいますと、一連の作業を記憶させておいて、再現をしたい時にまた全部使える。いわゆるマクロ機能みたいなものですね。

これに名刺サイズでカットするという情報を記憶させることによって、パッと名刺サイズにカットできるようになりました。これで、名刺のシステムができあがったわけですね。

そしてkintoneと名刺作成システムができあがって数日後、また佐藤からこんな提案です。

「ねえねえ、あのシステムなら簡単にいろんな種類の名刺できるんだよね?」「できるよ」「仙拓のアンバサダー名刺作ろうよ」「いいんじゃないですか」。「でも、アンバサダーって名前じゃつまんないから、僕、考えたのよ」「なんて?」「仙拓レンジャーズってどうよ」「どうした? 病気か?」。

この数週間後に生死をさまよう入院を佐藤がしたので、今思い返せば、まあ病気だったんだと思いますけど。

(会場笑)

「ここからレンジャーっぽい名刺をデザインして」って言うのがしつこいんですよ(笑)。「こいつ面倒くせえなあ」って思って名刺をデザインしてみたら、わりとかっこいい名刺ができた。「自分の才能がおそろしいな」って思いながら、佐藤がすごく気に入って。

さっそく販売しようかなとなったんですが、冷静に考えてみると「ぶっちゃけこれ、意味あるかな?」となったんです。

うちの名刺デザインは、オリジナルで作ったとしても「仙拓さんの名前を入れてください」という声が多いんです。アンバサダー的な役割で言えば、ぶっちゃけ現状で事足りています。

そこで「なにか挑戦するなら、注文した人も制作する人も名刺をもらった人も、全員がハッピーにならないと意味がないんじゃないの?」と思い始めました。