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もしかしてkintoneをただの業務改善ツールだと思ってない?(全1記事)

2017.06.22

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重度障がい者2人が業務改善ツール活用の先に生み出した「障がい者の新たな雇用」とは?

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「kintone hive nagoya」に、10万人に1人の難病「脊髄性筋萎縮症」を患う2名が立ち上げた仙拓による事例が紹介されました。登壇したのは、仙拓・松元拓也氏。仙拓がkintoneに出会ったきっかけは? 業務改善という視野にとどまらず、同機能を活かしてB型事務所に通う障がい者らの働き口としての機能するまでに至った経緯や背景を語りました。

いろいろやりすぎた結果「キャラクターアプリプロデューサー」に

伊佐政隆氏(以下、伊佐):よろしくお願いします。松元さん、今日は朝5時に起きたんでしたっけ?

松元拓也氏(以下、松元):(車椅子の向きを変えながら)ちょっと待ってくださいね。

伊佐:はい、ありがとうございます。(車椅子が前を向くのを待って)緊張して寝れなかったんでしたっけ?

松元:もう控え室で、2〜3回吐きそうになりました。

(会場笑)

伊佐:(笑)。そんなこと言わずに、ぜひすばらしいアイデアをみなさんに共有してください。よろしくお願いします。

松元:はい、よろしくお願いします。

はじめまして。株式会社仙拓、取締役副社長の松元と申します。

今回の社内は活用事例とはまたちょっと違った角度からお話をさせていただきたいなと思いまして。「もしかしてkintoneをただの業務改善ツールだと思ってない?」といった観点でお話をさせていただきたいなと思っています。短い時間ではございますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

まずは、簡単に僕の自己紹介をさせてください。……スライドが変わらないという、いきなりトラブルがね(笑)。

はい、まずですね、名前が松元拓也と申します。1989年1月12日に生まれて、今は酒と愚痴の量が比例して、社会に疲れ切った28歳です。血液型は、最近ブラハラとかいうのもあるみたいなのであまり言いたくないんですけど、本当にごく一部のB型の男の人とは仕事がやりづらくて仕方がないなと思っているA型です。

株式会社仙拓という会社でデザイナーをやってます。他には、kintoneを使った社内システムの構築ですとか、そのほか諸々。動画の作成やiOSゲームのプロデュースなんていうのもやってます。

(スライドを指して)このゲームは、ただただかわいい女の子の歯を磨くだけっていうゲームなんですけど、もしよかったらダウンロードいただければと思います。

巷では本当にいろいろやりすぎてるせいか、デザイナーとはもはや呼ばれずに、キャラクターアプリプロデューサーなんて呼ばれることもあります。みなさん、このセッションが終わった後、キャラクターアプリプロデューサーとか絶対呼ばないでくださいね(笑)。得意じゃないですからね。

(会場笑)

重度障がい者の2人はなぜ起業したのか

このキャラクターアプリプロデューサーがいる株式会社仙拓という会社は、いったいどんな会社なのか。

この会社は僕ともう1人、佐藤仙務という男と今から6年前に起業した会社です。……スライドが変わらないので、お願いします。(スライドを見て)この男ですね。この男、佐藤仙務と6年前に立ち上げました。

この男ですね、僕が酒と愚痴の量が比例して増えている、まさに元凶とも言える男でありB型ですけど。この男といつもやってます。今、メディアなどから「寝たきり社長」などということでやたらチヤホヤされて、すごく調子に乗ってます。

(会場笑)

彼もまた、重度障がい者です。なぜこの重度障がい者の2人で一般企業に就職することなく起業したのか? 答えはシンプルですね。僕らの身体の状態に合った職場環境がなかった。だから起業した。本当にそれだけです。

僕らはWeb制作のスキルや、名刺・チラシ、デザインのスキルがあったので、これら2つをメインの柱に業務を進めてまいりました。

起業してから3〜4年した頃でしたかね。うちの佐藤がサイボウズの青野(慶久)社長に自分の書いた本を、頼まれてもないのに送りつけたんですよ(笑)。青野さん、いい迷惑だったと思います。ただ、本当に人がいい方なので、しっかり本を読んでいただけまして、その内容にいたく感動していただいたんですね。

それがきっかけで、仙拓の顧問アドバイザーにまでなってくださいました。その頃からサイボウズさんとも仲良くさせていただくことも多くなりまして。その頃にちょうどkintoneを紹介いただいたわけですね。

株式会社関西の青山社長とともにkintoneを使い始めた

ただ、kintoneを触ってらっしゃるみなさんならわかるとは思うんですけど、kintoneってなにからすればいいのかわからない。ゼロから作れるから「なにをやればいいの?」ってなると思うんです。僕らもそうだったんですけども。

ちょうどその頃にFacebookでつながっていた青山敬三郎さんにkintoneを教えていただくことになりました。

こちらの青山敬三郎さん、株式会社関西の社長であり、作業療法士でもあります。大阪では児童デイサービスなどを運営されておりまして、「ITを使って日本の福祉を世界一にする」という理念を掲げていて、福祉業界のまさに革命家とも言える存在だと思います。

今回も、弟子の僕のためにわざわざ駆けつけてきてくださってます。どうぞこちらへ。

(会場拍手)

ありがとうございます。

青山敬三郎氏(以下、青山):今日は弟子が(壇上に)上がってますので、いつ口説かれるかと思って(笑)。

松元:もうなんかお父さんみたいにね、カメラを構えて撮ってくださってるんですけども。もう本当に、kintone界隈では知らない方はいないんじゃないか、っていうぐらい有名な方なんです。

当時の僕、kintoneはもちろんのこと、青山さんのことを1ミクロンも知らなかったんですね。

そんな状態でですよ。よく聞いてください。最初にSkypeをつないで……あれは日曜日の夕方、『ちびまる子ちゃん』が始まるちょっと前ぐらいですかね。Skypeのビデオがつながったんですよ。そうしたらいきなり、40前後の金髪のおっさんが視界に飛び込んできたんですよ。

僕の気持ちわかります? 「ヤバい人が来たな」って思ったんです。

(会場笑)

本当に、すぐにそう思いました。青山さん、ヤバい人だったんですけど、それ以上にkintoneがヤバかった。こんなに簡単にデータベースが作れるのか、と。その日から、社内の業務改善にkintoneを使い、アプリを作ってきました。

自治体からの無茶ぶりにkintoneで実現する

今回は社内の活用してるアプリを2〜3個、簡単にご紹介していきたいと思います。

うちは全員がテレワーカーなので、勤務連絡を全員で行う必要があったんですね。ただ、それを全部kintoneで行うことになり、すごく便利になりました。

次に賃金台帳と給料明細ですね。こちらはタイムカードをもとに、賃金台帳を記入していけるようになっています。プリントクリエイターも連携しているので、賃金台帳から給料明細を出力できるようになっているんですね。これによって、今までWordやExcelで行っていた業務の管理。すべてkintoneで一元管理できるようになりました。

そして最後に、名刺注文フォームです。これまでメールにあった注文を、Excelにペタペタと顧客情報を貼り付けていたんですが、フォームクリエイターを連携することによって、自動でkintoneに流し込めるようになりました。顧客管理、非常に便利になったんです。

こんな感じで、kintoneを利用して業務システムを構築して数ヶ月した頃ですね、こんな案件が発生しました。「職員がパソコンからデータを入力したら、名刺がパパッと仕上がるようなシステムがあるなら、うちの職員名刺を頼んじゃおっかなあ」。

そんなシステム、うちがほしいです。「うち、システム開発はやってないよ。デザインしかやってない」って言いたくなったんですけど。そうなんです、外注に出そうと思って先方に予算をうかがったら、とても素敵な笑顔で「予算ないからね」って言われた。

「これ、どうしようかな?」と。でも、これ、自治体からの案件だったので、うちの佐藤が「どうしてもここと取引がしたい」と言うんですね。そして、2人で会議をして、いろいろアイデアを出し合っていたんですけど。

まあ、うちの佐藤、アイデアが煮詰まってくるとだんだん適当なことばっかり言うようになってきて、「もう本当こいつ面倒くせえなあ」「こっちは会議をしてるのに」となってくるわけです。

その時、こんな発言がありました。「kintoneでできないの?」「いや、(kintoneは)データベース作成ツールだって知ってるか?」。そうするとここで佐藤は「どうにかして」。投げっぱなしです。「じゃあな」って言って。

(会場笑)

「こいつ……!」とか思いながら、考えてみたんです。そうしたら、「おやおや?」「できないことはないかな」と。そこで浮かんだアイデアがこちらですね。

まずフォームクリエイターで受注します。そして次に、kintoneにデータが送られる。そして、それをプリントクリエイターに連携することによって、名刺のデザインを出力する。

イメージとしてはできたので、これが実際に可能かどうか、青山師匠に相談してみました。そして、いつもの飄々とした感じで「それ、いけるで」と。Skypeをつないでいたので、その場で、たった30分でプロトタイプを作ってくださいました。

オリジナル名刺デザインを販売する……だけで意味ある?

その夜、僕もプロトタイプを作ってみたんですが、問題が浮上しました。通常、名刺の印刷って、印刷会社が指定されたデータで入稿しなきゃいけない。ただ、プリントクリエイターって任意のサイズで名刺の出力ができないんですね。

じゃあ、どうするか。(スライドを見て)考えた案がこちら。デザインを描く人にとってはおなじみのPhotoshop。ここのアクション機能に目を付けたんですね。

このアクション機能、どういうことかといいますと、一連の作業を記憶させておいて、再現をしたい時にまた全部使える。いわゆるマクロ機能みたいなものですね。

これに名刺サイズでカットするという情報を記憶させることによって、パッと名刺サイズにカットできるようになりました。これで、名刺のシステムができあがったわけですね。

そしてkintoneと名刺作成システムができあがって数日後、また佐藤からこんな提案です。

「ねえねえ、あのシステムなら簡単にいろんな種類の名刺できるんだよね?」「できるよ」「仙拓のアンバサダー名刺作ろうよ」「いいんじゃないですか」。「でも、アンバサダーって名前じゃつまんないから、僕、考えたのよ」「なんて?」「仙拓レンジャーズってどうよ」「どうした? 病気か?」。

この数週間後に生死をさまよう入院を佐藤がしたので、今思い返せば、まあ病気だったんだと思いますけど。

(会場笑)

「ここからレンジャーっぽい名刺をデザインして」って言うのがしつこいんですよ(笑)。「こいつ面倒くせえなあ」って思って名刺をデザインしてみたら、わりとかっこいい名刺ができた。「自分の才能がおそろしいな」って思いながら、佐藤がすごく気に入って。

さっそく販売しようかなとなったんですが、冷静に考えてみると「ぶっちゃけこれ、意味あるかな?」となったんです。

うちの名刺デザインは、オリジナルで作ったとしても「仙拓さんの名前を入れてください」という声が多いんです。アンバサダー的な役割で言えば、ぶっちゃけ現状で事足りています。

そこで「なにか挑戦するなら、注文した人も制作する人も名刺をもらった人も、全員がハッピーにならないと意味がないんじゃないの?」と思い始めました。

名刺の注文と利益がスタッフの工賃アップにつながる仕組み

そこで、佐藤にこんな提案をしてみたんです。障がい者就労継続支援事務所とのコラボです。この就労継続支援事務所、ご存じの方はいらっしゃいますか? 

ここは、学校を卒業した障がいを持った方が行く場所の1つです。そして、一般企業に雇用されることが困難な障がいの方が活動する場所の1つでもあります。

雇用契約を結んで利用するA型と、雇用契約を結ばないで利用するB型の2つがあります。このA型とB型、受取工賃に大きな開きがあるんです。最低賃金以上で雇用契約を結ぶA型。対して、雇用契約を結ばないB型は最低賃金が保証されていません。

厚生労働省が発表したB型事務所の通所者に支払う工賃は、全国平均で14,838円。これは、数字としてはいいほうです。中には、時給数十円なんていうところもあります。もう、「ここは発展途上国か?」と言いたくなるような低さです。時給数十円でどうしろって言うんですか。

「じゃあ、あのkintoneの名刺システムを使って、B型の人たちに名刺システムをやればいいんじゃない?」ということで、考えた仕組みがこちらですね。

仙拓レンジャーズのサイトから注文をいただいて、B型のスタッフが申込みデータ、受付・発送手配を行う。仙拓サイドが行うのは、kintoneを使ったシステム構築、業務に関する完全サポート、仙拓レンジャーズの宣伝。売上の3割をB型事業所に送ることによって、名刺の注文が増えるごとに利益が増え、スタッフの工賃アップにつながる。「これ、全員ハッピーなんじゃないか」と思ったんです。

そして、そのシステムを導入してくれたのが、常滑市社会福祉協議会「ワークセンターしんめい」さんですね。話を聞いたところによると、「やっぱりパソコンを使った業務が著しく低下している」「もし、このシステムを導入することによって仕事が増えるならば、ぜひ挑戦したい」とおっしゃっていただきました。

kintoneのいいところは、すぐにでも始められるところですね。すでにテンプレート化していたシステムを、しんめいさんの環境に導入しました。すぐにプレオープンをスタートさせることができたんですね。

この時、とにかく意識したのが、利用者さんが絶対迷わないように、限りなくシンプルにするということ。サイト運営コストも最小に抑える。

これらすべてを実現するために、クラウドを使うことになりました。すべてクラウドで行うようになったんです。それによって、なにか問題があった時でも、仙拓側がすぐにサポートにいけるというのも、利用者さんにとって不安を払しょくする大きな要因の1つになったんですね。

不安な表情だったスタッフが自信に満ちた表情に

そして、導入から1ヶ月。テレビの放送も重なって、1ヶ月で100件を超える注文が舞い込みました。1ヶ月100件です。最初は不安な表情でいっぱいだった利用者さんも「100件をさばいた」っていうのは大きな自信につながったようです。

僕、聞いてみたんです、「これからこの仕事をやっていけそうですか?」。そうしたら、自信に満ちた表情で「もう大丈夫」と言われました。これ、本当にうれしかったです。

たった1ヶ月前ですよ。不安な表情でいっぱいだったみなさんが、こんな変わる。ITとクラウドの大きな可能性を肌で感じた瞬間でした。

この仙拓レンジャーズ、LINEスタンプもあるので、もしよかったらぜひぜひご購入いただければうれしいです。

ただですね、仙拓レンジャーズだけでは黒字化できていないというのも現実的な問題です。いくらコストを抑えたといっても、注文数だけではなかなかそれをカバーできなかったんですね。

そんな時にスタートしたサービスがこちら。名刺管理サービス「ネームマネッジ」ですね。1月からサービスを開始しました。これ、名刺をしんめいさんに直接送っていただくことで、kintoneに名刺データを保存・入力でき、名刺情報を共有できるというサービスです。

「これ、某有名名刺管理サービスと同じじゃないの?」という声も聞こえてきそうですが、そうですね、この国で一般的に言う「パクった」というやつなんですけど(笑)。

(会場笑)

はい、パクりました。ただですね、あれなんですよ。名刺データを自分でいちいち取り込むとか、ちょっと面倒くさいですよね。意外と、名刺をまとめて送って誰かがデータ化してくれたほうがけっこう楽なんですよ、中小企業からすると。

ちなみにこのネームマネッジの売上、100パーセントが事業所に貢献されるようになっているので、もし名刺管理でお困りの企業のみなさまいらっしゃったら、ぜひご検討いただければうれしいなと思います。

18歳以下を対象にした「kintone甲子園」

ここまで聞いてきてくださったみなさんであれば、薄々勘づいているかもしれませんが、今回のテーマは「もしかしてkintoneをただの業務改善ツールだと思ってない?」。

そうなんですよ。kintoneって、ただの業務改善ツールに収める必要などない。新しい仕事を創出できる大きな可能性がある。発想次第で、いろんなサービスを作っていくことができるんですね。

それだけではありません。kintoneのようにシステム構築のハードルを大きく下げ、自分なりのサービスを簡単に作り出すということ。これは人材育成に持ってこいなんですよ。

ちょっと想像してみてください。例えば、小学生のうちからkintoneを触り、システム構築のノウハウを持った子どもが、社会人に成長したらどうですか? 企業ではスーパールーキーになって、ガンガン仕事をするようになるかもしれません。

そこで我々、松元や青山さんと企画したイベントが「kintone甲子園」です。kintoneのアプリコンテストですね。これは18歳以下を対象にしたコンテストで、テーマに沿ったアプリ、若い人たちの発想でおもしろいアプリを作っていただく。

賞金もあるので、ここにいらっしゃるみなさんの中で小学生以上のお子さんがいる方、もしよかったらご応募されたらどうかと思います。

松元も審査員の1人です。この松元を落とすには、とりあえず下ネタ8割、生真面目さ2割ぐらいでアプリを組んでもらえれば、松元特別賞っていう、なんの得にもならない賞を差し上げたいと思います。ぜひご応募いただければと思います。

kintoneを大きな視点で見ていくと?

さあ、いかがだったでしょうか? 本当にいろんなことを作り出せるkintone。今回の話で、みなさんのアイデアの種1粒になれば、私としてはうれしいです。短い時間ではございましたが、お付き合いのほどありがとうございました。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

伊佐:ありがとうございました。アイデアがあふれ出しちゃってますね。

松元:もう止まらないですね。

伊佐:止まらないですね(笑)。どうですか、「kintoneで社内を」っていうふうにどうしても見てしまいますけども。もっと大きな視点で見ていくとサービスも生み出せて。

とくにあれがよかったですね。発注する人も、作る人も、もらった人もうれしい。

松元:そうですね。

伊佐:やっぱりデザイナーなんだな、って思いました。

松元:ありがとうございます!

伊佐:そういうところも含めて、すばらしいなと思います。今日は懇親会まで残れそうですか?

松元:はい、残ります。

伊佐:じゃあ、この松元さんのアイデアをですね、ぜひ夕方の懇親会でもみんなで聞いていきたいなと思います。

松元:ありがとうございます。

伊佐:ありがとうございました。

(会場拍手)

伊佐:青山さんもありがとうございました。

青山:ありがとうございます。

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