アート・オブ・ストラテジック・シンキングを学ぶ

司会者:今日は、戦略思考のエッセンス、アート・オブ・ストラテジック・シンキングというテーマで、マッキンゼーでコンサルタントとして仕事をされていらっしゃった田中良直さんをお招きしています。田中さんは個人的には遠藤さんと一緒にお仕事をされていることもあって、今回は遠藤さんからご紹介いただきました。

そもそも「なぜこのミートアップをやるのか?」について、詳しくは今から田中さんから説明がありますが、私も「戦略思考とは何だ?」と思うことがあるんです。

お話を聞いていくと、アントレプレナーの方は必要な意思決定をする時に忙しくて時間もないと。なかなかレビューしながらやるのは難しいし、でもどんどん意思決定をしていかなければいけない。そのなかでツールとなるような、そういったものがここで学べると。

今ここにいるみなさんは、アントレプレナーの方もいますし、エンジニアの方もいらっしゃると思うんですが。これから動いていくために、なにか糧になるようなミートアップになるんじゃないかと思って、企画をしました。

今回2時間設けているので、いろいろとエクササイズを挟みながら、けっこう濃厚な感じになると思うんですけど。これから自分が学びたいとか、メモしておきたいことは、ノートをお持ちであればぜひメモしていただきたいし、後で質問コーナーを設けるので、気軽に質問していただければと思います。じゃあ、みなさん名札も付けられたようなので、始めたいと思います。よろしくお願いします。

田中良直氏(以下、田中):よろしくお願いします。こんばんは。

(会場拍手)

ありがとうございます。今日はカジュアルな感じでということなので、カジュアルな感じでやりたいと思います。最初に、みなさんのなかで今、すでにビジネスをやってらっしゃる方はどのぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。これからやりたい、あるいは将来的にやりたいと考えてらっしゃる方はどのぐらいいらっしゃいますか? 自分のビジネスです。将来なんらかのかたちで。

(会場挙手)

ありがとうございます。じゃあ、今やっていらっしゃる方も、あるいはこれからやる方も、どちらの方も、自分のビジネスにはいろいろ大変なことがあるけれども、迷うことなくできるだけ効率的に意思決定をやって、ビジネスを成長させることができたら、そうしてみたいと感じる方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。私はそのお手伝いをすることを、ずっと仕事としてやってきました。今日はそのことについて、ぜひみなさんにお話をさしあげたいと思います。

いかに戦略的に最短に意思決定をしていくか

私は、「戦略思考のエッセンス」というテーマで、セミナーをやっております。いかに物事を整理して、戦略的に物事を考えて、最短で最善の意思決定をしていくか。そこにいろんなメソッドがありますので、それについてみなさんに、今日は2時間という限られた時間なので一部になりますけれども、お話をさせていただきたいと思います。

最初に……、ピザをどうぞ(笑)。ビールをどうぞ(笑)。ほかの食べ物もあります(笑)。はじめに、今日はお集まりいただいて、ありがとうございます。今日は金曜日の夜で、みなさん遊びに行ったり、いろいろな計画が、ほかにもあったと思います。ピザじゃない飯を食いに行くこともできたかもしれません。彼女や彼氏と遊びに行くこともできたかもしれません。なにか学びを得るにしても、自分でたまっていた本を読むとか、仕事をするとか、いろんな選択肢があったと思いますが、今日はみなさん、ここにお集まりいただいて、ありがとうございます。短い時間ですけど、全力でやらせていただきます。

それから、今日この機会をコーディネートしていただいた槌屋さん(司会者)、本当にありがとうございます。「Impact HUB Tokyo」でお話をさせていただけるということで、非常に光栄に思っております。ありがとうございます。

司会:ありがとうございます。照れる(笑)。

田中:みなさん、拍手ー! イェー!

(会場拍手)

最初に、今日お話したいことをお伝えします。大きく分けて2つあります。

1つは、私は戦略コンサルティングという仕事をこれまで30年近くやってきて、そのなかでいろんなものの考え方とか、いろんなケース・スタディとか、たくさんのプロジェクトをやってきたんですが、そういった経験を通して、私なりに戦略的にものを考える時に、これが一番大事だよなというポイントが5つあるんですね。その5つについて、まずみなさんにお伝えしたいと思います。戦略的にものを考えると言ったら、この5つは「必ず押さえとけよ」みたいなものです。

それから2つ目は、その重要なポイントを実現するために、実際にエグゼキュートしていくために有効な思考方法、フレームワークについてです。戦略とかビジネスのフレームワークは、世の中にものすごくたくさんあるんですね。本を買ってくれば本の数だけあるし、いろんなものがあるんですが、その一つひとつ、細かい違いがあるものを全部覚えて理解する必要はないんです。一番本質的な、コアにある部分をいくつか覚えて、理解していけば、そこから応用がきくようになる。

私の経験から、このフレームワークを押さえておくと、かなりの部分……、事業計画にしろ、市場分析にしろ、顧客分析にしろ、顧客に対するプロモーションの立案にしろ、戦略の立案に関して、この5つを押さえておくと、汎用的に一番便利だぞというフレームワークがありますので、その5つのフレームワークをお伝えしたいと思います。

ただ、5つ全部を今日2時間ではできないと思うので、5つのなかのできれば3つをお伝えしたいと思っています。

概略だけ全部お伝えするか、いくつかのものについてみなさんが使えるようになっていただくためにエクササイズをやりながらやるか、悩ましいところなんですが、できれば明日から使えるように、エクササイズをやって、私が一番重要だと思うものに関しては、体感していただくということをやりたいと思います。

ですので、今日は大きく分けて、戦略的にものを考えるポイントを5つ、フレームワークを5つでいきます。後のフレームワーク5つは、たぶん詳しく紹介できるものが3つぐらいになります。よろしいでしょうか。はい、どうもありがとうございます。

入社3日、気がついたら深夜1時 多くを学んだマッキンゼー時代

最初に簡単にですが、私の自己紹介をさせていただきたいと思います。名前は田中良直といいます。1962年生まれで、今53歳です。23歳の時に大学を卒業して、マッキンゼーというコンサルティング会社に入社しました。そこでいきなり、新卒でコンサルティングの仕事を始めました。

最初はリサーチャー、アナリストというデータ分析をやる仕事から始めました。今は組織が大きくなったからわからないですが、私がマッキンゼーに入社した頃は、日本事務所がまだ30人とか40人とかしかいない、コンサルタントが20人ぐらいしかいないような時代でした。全員で、かかりっきりでやっているような時代でした。

そこでアナリストから始めて、コンサルタント、プロジェクトマネージャーまでやって、マッキンゼーを辞めました。6年間いました。だいたい2年とか、早い人だと3ヶ月で辞めちゃうんですよね。

私は6年、マネージャーになるまでやって、たっぷりコンサルティングの仕事を経験しました。それが自分にとって、コンサルティングスキルのベースになっています。20代でものすごく濃い時間を過ごしたこと、そこで叩き込まれて、鍛えられて、そのスキルの延長で今もコンサルティングをずっとやっております。

1つ、エピソードをお話ししましょう。私が23歳の時、新卒で会社に入って、最初は2週間トレーニングがあるんですね。毎日、朝9時から夕方6時までトレーニングがあるんですが、3日目、そのトレーニングが終わってから「ちょっと来てくれ」と上司の人に言われて、「今このプロジェクトが大変なことになっているので、分析を手伝ってくれ」と言われました。「これやってくれ。こうこうこう……(指示の内容)、こういうことやって」。それで、それから着手して終わったのがだいたい夜中の1時半ぐらいでした。会社に入って3日目から夜中の1時半まで仕事をしてる。でも面白かったので一気にやっている。そんなペースが6年間、ずっと続いてたという感じだったですね(笑)。グローバルな最先端の環境で非常に濃い時間をそこで過ごして、たくさんのノウハウとか稀有な経験を積むことができたことが、私のベースになっています。

マッキンゼーを辞めてから、実は私は3年間ぐらいミュージシャン暮らしをしていました。どうしても1回音楽をやりたかったので。大学の頃にサックスを吹いていて、ジャズのバンドをずっとやっていて、卒業する時も迷ったんですよ。「このまま留年してジャズミュージシャンになろうか、どうしようか?」と思ったんですが、縁あって内定をいただいたので「このチャンスを活かそう」と思って、マッキンゼーに就職したんですが、どうしても一度音楽の仕事に関わりたくて、マッキンゼーを辞めて3年間ぐらいミュージシャンをしていました。

マッキンゼーを辞める時は……、外資系の会社にはそういうところが多いと思うんですけども、リーブ・メッセージを社内の人たちに出すんですね。「私は今度6月に辞めます」と。「こういうことを考えて、こういうビジョンを持って、どこそこに留学します」とか、「こういうビジネスを始めます」とか、「こういう会社に転職することになりました」とか、そういうメッセージを書くんですが、私は「ストリートミュージシャンになります!」というメッセージを書いて辞めました。「(そんなことを書いたのは)お前しかいない」と言われました(笑)。

それで収入は10分の1以下になりましたが、ミュージシャン暮らしをやり、それから、友人と制作会社を始めました。ちょうどインターネットが世の中に広がり始める頃、1996年からインターネット関連の制作の仕事を始めた。

担当企業は15年で時価総額が8,000億円に

そこで急速に企業向けの制作受注の仕事が広がっていったので、コンサルティングが復活してきました。要は「Webサイトを作る」と言っても、どういう顧客に向けて、何を訴求するのか。どのような目的でWebサイトを作るのか。根本の部分ができていないと、ろくなWebサイトを作れないわけじゃないですか。

当時は、それが明確になっていないケースが多かったので、結局有効な機能するWebサイトを作ろうとすると、顧客戦略をちゃんと明確にしないといけない。顧客戦略を明確にするためには、そもそも事業戦略が明確でなきゃいけない。……というかたちで、遡ってWebの仕事と同時に、コンサルティングを企業向けに提供するようになったわけです。

それでまたコンサルティングに戻りまして、それからその会社は10年ぐらいやってまして、そこそこ大きな会社になりました。7年前に(その会社を)辞めてフリーランスになって、今はフリーでいろんな企業のコンサルティングをやっています。

ちなみに、私がこれまでコンサルティングをやったなかで一番の成功事例は、創業当時からずっとお手伝いしている会社で、ここは2000年に創業したインターネットのサービスを提供する会社なんですが、15年間で時価総額が8,000億円になりました。ものすごいスピードで成長して。(その会社は)売上が今、数百億ありますけれども、成長する企業は、それぐらいものすごいスピードで成長する。

みなさんのなかにも、将来時価総額8,000億企業のオーナーや経営者がきっといらっしゃると思います(笑)。そのお手伝いができればいいなと思っています。

去年ぐらいから、ここの場所もそうなんですけれども、仕事をするなか、コンサルティングをやるなかで、若い起業家の方々とか、企業のなかでも中堅になっていく方々、そういう方々と仕事をする機会が増えてきたんですね。

そういう若い起業家や実務家の方々に、自分がこれまで得てきた経験とかノウハウとかをフィードバックして、戦略的にスピードアップするお手伝いができればいいなと。15年で時価総額が8,000億円になれる時代なので、そういうことができたらなと思って、去年からセミナーをやり始めています。だいたいそんなところが私の背景です。よろしいでしょうか。

「戦略思考」とはいったいなにか?

では、さっそくなんですけれども、まず戦略思考とはいったいなにか? これについて、1〜2分考えてみていただけますでしょうか。

戦略的にものを考える、戦略思考とはいったいどういうものなのか? 戦略思考と言った時に、どんなものなのか? どんな要素があるのか? どんな要素が必要か? なんのためにやるのか? なにが目的か? 

お手元のメモ、手帳に、思い付くものはなんでも結構ですので、戦略思考とは何か? 書いてみてください。どんなものか? どんな要素があるのか? どんな要素が必要か? 戦略思考とはこういうことだ。こういうことが必要だ。こういうものだ。思い付くままでけっこうです。時間を2分とりますので、書いてみてください。どうぞ。

では、1度中断します。お隣の方とペアになって、今自分で書いたことをお互いにシェアしてみてください。まず、お隣の方とペアを作ってください。ペアができてない方はいらっしゃいますか? 大丈夫ですね。ペアができましたね。

では、「Aさん」と「Bさん」を決めてください。どちらかが「Aさん」、どちらかが「Bさん」。「Aさん」の方? 「Bさん」の方? じゃあ、「Bさん」からいきます。「Bさん」から、まずシェアをしてください。1人1分ずつ。交代をする時は声をかけます。

では、まず「Bさん」から今、自分が思ったことを「Aさん」にシェアしてみてください。どうぞ。

(会場内の参加者同士で話を始める)

では、交代してください。次は「Aさん」、いきます。どうぞ。

(会場内の参加者同士で話を始める)

はい、終了してください。パートナーの方にお礼を言って、終了してください。

プロセスを設計し、検証すること

今、お二人でシェアしたことのなかから、自分はこういうことじゃないかと思うことを、どなたかシェアしていただけますか? では○○さん(参加者1)、どうぞ。ありがとうございます。

参加者1:物事をやる時に、目的を達成するために、最短最速でやるために必要なものです。

田中:最短最速でやるために必要なものですね。

参加者1:どういう戦略というか……。最短でやるためにどれを選択するか、最短最速でやるためにどうするのか。

田中:なるほど。どれを選ぶか、最短最速で選ぶということですね。同じように感じられた方は、ほかにもいらっしゃいますか? ありがとうございます。○○さん(参加者1)、どうもありがとうございます。

(会場拍手)

最短最速で物事を決定していく。意思決定のスピードですよね。それが、確信を持って間違わない。なんでもかんでもトライアルで、やたらめったらやるのではなくて、正しい方向に最速で意思決定ができるということですよね。これは非常に重要なことです。ありがとうございました。

ほかにもどなたか、こういうことなんじゃないか? こういうことが大事なんじゃないか? 戦略思考とはこういうことなんではないか? はい、どうぞ。

参加者2:(パートナーと)2人で話して共通で出てきたワードとして、プロセスというワードがありました。

田中:プロセス! なるほど!

参加者2:プロセスを設計するみたいなことが、2人で共通してた。

田中:プロセスを設計することが、非常に重要であるということですね。

参加者2:そうですね。その目標を達成したり、実現するためのプロセスを設計していくというかたち。

田中:それが非常に大事。なるほど。目標を達成していくためのプロセス。その間の道筋を設計をしていくということですかね。同じように感じられた方はいらっしゃいますか? プロセスが大事だという話ですが。

参加者3:それと近いので、付け加えて言うと……。

田中:はい、どうぞ。

参加者3:このゴールに向けたプロセスで、どういう方法がよいのかという仮説を立てることと、プラス、半年〜1年後などに、それがよい方法だったのかを検証できるようにということかなと。

田中:なるほど。ゴールを定めて、仮説を設けて、それを定期的に検証してやっていく、そういうプロセスをマネジメントしていくということですよね。非常にすばらしいですね。そこの視点に気がつかれた方は、ほかにもいらっしゃいますか? ありがとうございます。すばらしいです。仮説を持って進んでいくことですね。○○さん(参加者2)、○○さん(参加者3)、どうもありがとうございました。

(会場拍手)