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4月11日 東芝 綱川智社長 記者会見(全4記事)

東芝綱川社長「自信がある数字です」意見不表明でも決算発表に踏み切った理由

2017年4月11日、東芝が監査法人からの意見なしで決算発表を行ったことについて記者会見を開きました。質疑応答では、意見不表明での決算発表に至った経緯などについて回答しました。

なぜ監査法人の承認を得ないまま公表したのか

記者1:すみません。恐れ入ります。テレビ東京のオオハマとです。社長にお伺いしたいのですけれど、監査法人の承認を得ないままの数字を信用してほしいというのはやはり常識的に考えてかなり無理があると思うんですけど、それでも今日公表せざるをえなかったという、事情というのは、何があったのでしょうか? 

綱川智氏(以下、綱川):最初に説明しましたとおり、今回また延期ということで、調査をしても、基本的に会計への影響、プレッシャーがあったかどうかということで「ない」ことの証明なわけで。

佐藤のほうからご説明しましたように、60万件のメールをチェックしたとか、いろいろ調査をしたけれど、何も出てこない。こういった状況でまた延長しても同じ状態が続いて次も結果が出ないと、監査の意見表明が出ないということが考えられるので、これ以上、同じことを続けていても意味がないということになりましてこのたびの決断といたしました。

記者1:そうすると、今日の異例の事態に陥った責任というのは、監査法人側にあるという考え方ですか? 彼らの結論を出すスピード感が遅いということなのでしょうか? 

綱川:それは、意見の相違といいますか、見解のそういということで特にどちらがということではないと考えております。

記者1:誰の責任で今こういった事態に陥っているんでしょう? 

佐藤良二氏(以下、佐藤):私のほうから補足させていただきます。監査委員長の佐藤です。今回の調査は、前回申し上げましたように、財務数値を確定するという調査ではなく、内部告発に端を発した調査でありますので、通常の監査と違って、監査範囲、調査範囲、調査の期間、調査のやり方、手続き等が確立されたものがないわけで、そのケースケースでやっていくので、通常の監査の進め方とちょっと違いますので、その辺が読みにくかったということがあり、延長延長になったという、やむを得なかったと思うんです。

どちらの責任ということではなく範囲をどこまで広げるかとか、どういう手続きを深くやるかというあたりでの若干の調整はあったと思います。そのズレがこういったかたちで出たということだと思います。

記者1:監査法人としてはなんらかの決算数値に影響する可能性があるということをまだ踏んでいるからまだ結論を出していないわけですよね? 

佐藤:それは、今日IRの、東証から出たなかにもありますが、一応、彼らが残っていると、継続中の手続きで言っているのは、工事損失引当金について当該損失を認識すべき時期がいつであったかを判断するための調査が未了であるというところなんです。

我々にしてみると、そのところについては、我々の調査では完了しているではないかと。彼らにしてみると、もっとやらねばならんと。そういったあたりが、この意見不表明の根拠というところに書かれていますからそういう考えのところだと思います。

記者1:もう1点だけ社長にお伺いしたいのですが、まさに異例の事態ですけど、上場廃止を避けられるとお考えでしょうか。

綱川:それにつきましては、東証さんが判断することですので、私としてはコメントは控えさせていただきますけど、今回、この結論不表明ということになった場合、東証さんの「有価証券上場規定」によりますと、直ちに上場廃止をしなければ、市場の秩序を守ることが困難であるということが明らかである場合には、上場廃止ということでありますので、私としてはそういう事態にならないように最大限の努力をしていきたいと思っています。

記者1:確認ですが、それは今の異常な事態でも市場の秩序を維持できると、影響はないということとお考えでよろしいでしょうか? 

綱川:それは東証さんのご判断だと思います。

セグメントによって会計制度が違うのはおかしいのではないか

記者2:サークルクロス若林でございます。まず、監査人のところなんですが、そもそも今の独立監査人を決められたのはいつで、当時の監査委員長はどなただったかということと、それからその時に、おそらく引継ぎが、前の新日本監査法人さんと引継ぎがあったと思うんですね。

それから、今回サードクォーターですけども、ファーストクォーターとかセカンドクォーターの時にもですね、おそらく過去に関してはいろんな話し合いがあって、引継ぎってのはちゃんとしてなかったのかとか、あるいは今の独立監査人を決められた監査委員長の責任というのはどうだったのかということについて、まずコメントをお願いいたします。

佐藤:お答えします。まず、監査人の選任のところですが、監査人の選任は監査委員会の事項でありますので、その時は、候補者を選んで、プレゼンテーションとかを受け、いろんな角度から独立性等を判断したうえで決めております。それについては、正しい手続きであって、正しいところを選んだというふうに思っております。

今回は、若干違った角度から事象が発生したということがありまして、第1クォーター、第2クォーターの話もありましたが、当然に、まず前任監査人の新日本監査法人から、あらた監査法人に引き継ぐ過程では、十分に引継ぎがなされたと理解しています。それについては、監査基準等もあり、引継ぎのルール等がちゃんとあるので、それに則って正しくやったということを、監査委員会としてはフォローしています。

かつ、その後引継ぎをやったんですが、今回、実は内部告発等に端を発する調査ということで、新しい事情が起きたということで、さらに引継ぎをやったけれどもさらに追加の調査が必要だということでやっているんだというふうに理解していただきたいと思います。監査委員会として、そういう監査人をなんで選んだということの責任については、取締役会等で検討していただきたいと思います。

記者2:その場合に、例えば独立監査人を5月までに変えるということはあるんでしょうか? つまり、この事態であれば、おそらく、5月の本決算、これはもっと大事だと思うんですが、そこまで結論が出ない可能性もあると思いますので、この状況に至れば、独立監査人さんがもう辞めると、あるいは、東芝側が……、あ、監査委員側がですね、辞めるということもあると思うんですが、それについてはどういうふうに考えればよいでしょうか?

佐藤:いろんな選択肢とか、いろんな考え方を検討していきたいというように思います。

記者2:それもあり得るってことですね。わかりました。2つ目の質問は、債務超過についてなんですが、今回そもそもウェスチングハウスについては、のれんの減損ですから、要するに時価ですよね。一方で、メモリに関しては、最低2兆円っていうのがありますから、これを時価評価すれば、実質債務超過にはならないわけですよね。そういった意味からいうと、東芝の会計において、かたや時価評価、かたや簿価評価ということをしてるのはおかしいんじゃないかと。

本来であれば、例えば、他社の例ですけども、ソフトバンクさんがARMの3兆円ののれんをもって、これ全部減損したら、彼らも債務超過になるわけですよ。そういった意味からいうと、1つの会社でセグメントによって会計制度が違うっていうのはおかしいんじゃないかと思うんですが、そこはみなさん、あるいは独立監査人の中では議論はなかったんでしょうか?

平田政善氏(以下、平田):お答えします。いろいろお話をいただいたんですけども、独立監査人とは、現在の米国会計基準に則って、バランスシートに、今おっしゃっていただいた代表例ですけれども、のれん、それから半導体、NANDフラッシュメモリについては時価というよりも簿価でブックするということでバランスシートを作るというやり方をさせていただいてございます。

ウェスチングハウスののれんにつきましては、すでにご案内のように、将来のキャッシュフローを見据えて、減損テストを行った結果、減損すべきということで早期計上をさせていただいてございます。ソフトバンクさんの他社さんの例はちょっとわからないところがありますけれども。ありがとうございます。

記者2:そういう意味では、今回の問題になってることよりも、おそらく今の話のほうがはるかに大きい話なんです、おそらく。かたや数千億の資本超過、かたや数千億の債務超過っていうことで、まさにそれが上場の基準にあるのに、そこを監査委員会も独立監査法人も議論せずに、細かい重箱の隅をつついてもしょうがないんじゃないかと思うんですが、そこはなんで議論されないんですか?

佐藤:一言申し上げたいのは、いま、メモリの売却の話が2兆円等々出ていますが、あくまで売却をするという時の時価評価であったら2兆円だろうという話であって、通常、売却とかそういう話がなければ、通常の時価的なものではなくてバランスシートに乗ってると。今回、2兆円がバランスシートに入れろっていう話ではなくて、売るとしたらこれぐらいの値段がつくだろうということで、それは通常のバランスシートとは違った目盛りで測っているので、それが会計基準が違うということとはちょっと違った次元の話だと思いますが。

記者2:これでやめますけども、少なくとも4月1日からはメモリの1社ができてるわけですから、そこでしかも、2兆円ということはみなさんも表明されてるわけですから、そこである意味で言うと、いくらまだ売っていなくても本当は時価を評価すべきでないと、ある意味ダブルスタンダードになるというふうに思うんですが。

平田:すいません。やはり現在の会計基準では、いわゆるNANDの話は、おそらく自己喪失のれんということになると思うんですけども、これは禁止をされてございます。そういう意味では、今回の会計は、米国会計基準に則って、議論の余地のない数字だというふうに私としては思ってございます。

記者2:ありがとうございます。

自分たちの数字には自信がある

記者3:NHKのヤマダと申します。よろしくお願いします。

まず、先ほど株主の方たちに対してということで、今回、意見不表明という選択をなさったということなんですけども、過去2回と今回はなにが違うのかというか、過去2回についても、意見不表明というのを選択しようと思えばできたのか、それともなにか違いがあって今回こういう結論に達したというか、なんで今回はそうしたんでしょう?

佐藤:あの、前2回はですね、監査委員会としての調査報告書もまだ未了でしたので、それを続けていたと。で、監査範囲も広げることを監査人と同意して広げてきたと。

先ほど申し上げましたように範囲を広げる手続きをどうするかというのは難しい判断だったので、その段階でもできたかもしれません。ただ、今と違うのは、監査委員会の調査報告書が完成していないということで、今回はそれが完成しておりますので、さっき経過のなかで説明しましたが、これ以上監査委員会としては追加の手続きをやらなくていいだろうという判断をしております。

ただそれについて独立監査人のほうは「もっとやるべし」と、やり足りないというのが今回の意見になっているので、前2回と今回はそこが大きく違うというふうにご了解いただきたいと思います。

記者3:今回、意見不表明でも決算発表に踏み切ったわけですけれども、ある意味では、監査法人の存在意義をある意味否定しているというようにも受け取れるんですけれども、これは今後PwCではないところを選択したいという東芝としての意思表明なんでしょうか?

佐藤:基本的に監査人も監査委員会も東芝の執行部も、立場、役割があって、各々の役割を各々が果たしているということだと思います。

そういうところで、今回難しい調査だったので、そこのところの調整の差が出たというふうにご理解いただきたいので、すぐにこれをもって監査法人が云々とかっていう、論理が飛躍しちゃうと思うんですよね。

各々役割を自分のやるべき範囲でやるということをまっとうしていたということだと思います。

記者3:そうすると、通期の決算については、5月中にということでしたが、同じ監査人で大丈夫という理解でよろしいでしょうか?

佐藤:それについては協議をしてがんばっていきたいと思います。

記者3:社長におうかがいしたいんですけれども、今回、意見不表明でも決算発表に踏み切るということで、今回の対応というのは東芝としては自分たちの数字に自信があるということでいいんでしょうか?

綱川:自信がある数字です。

記者3:その自信はどこからくるんでしょう?

綱川:今まで調べて、なにも会計に影響するようなものは出てこなかったということによるものであります。

記者3:最後に、先ほど上場廃止については東証が判断することだとおっしゃっていましたが、過去には意見不表明となった企業のなかには実際に上場廃止になった企業もあるわけで、そこのリスクについては社長としてはどう思われますか。

綱川:上場廃止にならないように懸命に努力してまいりたいと思います。

記者3:「懸命に努力」の部分をどのようなかたちで努力するかというのを、すみません、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。

綱川:財務基盤を改善していかなければならないというところが今喫緊の課題ですけれども、通常の新しいポートフォリオによる事業のところと、メモリ事業の売却によりまして、財務基盤を強化すると。ここのところが基本です。

記者3:わかりました。ありがとうございます。

今の資産の状況

記者4:日興証券のシマダと申します。3点ほどお願いします。

1点目は、いつもの電子デバイスの確認をさせてください。

先ほどROS23パーセントという、逆算してもそうなるんですけれども、そういう数字がありましたけれども、まずその営業利益でサードクォーターだけで500億円以上出ているかたちに、NANDはなりますけれども、サードクォーターのNANDの事業動向ですね。それから3D NANDの比率、それから4Qの見通し、もう4-6に入っちゃってますけど、最近のNANDの市況の状況について、決算ベースでいつものように教えていただければと思います。

それからハードディスクドライブも逆算すると相当いいんですけれども、これについてもサードクォーターの状況、それからフォースクォーターの見通し、まあ終わっちゃってますけど。それから最近の状況について、両方とも非常にいい状況なので、ここについてまず確認させてください。これが1点目です。

平田:今おっしゃっていただいたようにNANDとハードディスク、両方とも好調に推移をしてございます。

フォースクォーター、とくにNANDの状況でございますけれども、まあ、サードクォーター先ほど申し上げた営業利益率が出てございますが、まだフォースクォーター、会社としての決算がまとまっていない状況ではございますけれども、私のほうにはやや改善をしているというふうな状況でございまして、引き続き、少なくとも17年度の前半はかなり見えていて、好調に推移するであろうというふうな予想を持ってございます。

それからハードディスクもですね、当社、企業向け、データセンターですね。これが順調に立ち上がってきておりまして、フォースクォーターも引き続き順調に推移し、17年度、少なくとも前半は今までと変わらぬ状況が続いていくというふうに思っていただいてけっこうだと思います。

記者4:確認なんですけれども、3D NANDが順調に立ち上がってないとこれだけの数字にはならないと思うんですけれども、おそらく3D NAND、3Qだけだとビットベースだと10~20パーセント、フォースクォーターでも20パーセント以上のビットの比率になっているんじゃないかと思いますけれども、3D NANDの立ち上がり状況についても今後を見る上で重要ですので、もう少しコメントいただけないでしょうか。

平田:3D NANDは、歩留まりは予定通り順調に改善してございます。まだ、今年度の比率は先ほどおっしゃっていただいたように低い比率でございますけれども、まあ来年度、半々にしていくというところは順調にキープできるというふうに思ってございます。

記者4:わかりました。2点目が資産の状況の確認なんですけれども、プレゼン資料で15ページ目のところに今の資産状況というのをあげていただいているんですが、1つは原子力のところで、12月末で3,642億円固定資産が残っているということで、これをチャプター11にしたということで、これがフォースクォーターに価値がゼロになると。その分がさらなる損失になっていくのかというところと、もう1つはメモリを売却した場合に、メモリの固定資産が2,375億円になってますけれども、以前は確か純資産ベースで5~6,000億円という話だったかと思うんですけれども、これはこの関係というのはどのように考えればよいのかというところですね。

売却益を考える時にここがどのくらい残るかというのが我々重要なので、このへんの原子力とメモリの固定資産、これ純額ベースなのかグロスベースなのかちょっとわかりませんので、このあたりのご解説を2点目お願いします。

平田:まず原子力の今残ってございます固定資産は、チャプター11になりまして、我々のバランスシートから除外されていくということでございまして、とくにPLにかかわるということはなくですね、単純にバランスシートから外れていくというふうにご理解いただいてよろしいかと思います。

それから、メモリにつきましては、純資産ベースで先ほどおっしゃっていただいたような6,000とか7,000とかそういうふうなレベル感でございますが、この設備の固定資産がありますが、またフォースクォーターには設備が完成していくというところでございまして、また膨らんでいく。

それからまた一般の売掛金とか棚卸資産、まあそういったものもございますんで、そういったものをあわせてもって、当然剰余金もございますんで、合計7,000億円程度と思ってございます。

記者4:原子力のほうは、そうしますと、ウェスチングハウスの分は3,642億からなくなっていって、最後東芝側に残っている原子力が残ると。そういう理解でよろしいでしょうか。

平田:そうでございますね。ここに書いてございますようにこれはウェスチングハウス社を含むということなので、ちょっと私、頭の中にございませんけれども、大部分がウェスチングハウス社だと思っていただいてけっこうで、単独の部分は残ります。そのまま。

記者4:わかりました。最後の質問が、前もお尋ねしましたけれども、例のS&Wのワーキングキャピタルの訴訟になってると思うんですけれども、その状況のアップデートと、それからチャプター11を出して以降のですね、原子力の2社がありますけれども、まあ1社はどうも撤退したがっているような雰囲気もあるんですけれども、もしチャプター11出したあとのアメリカの電力会社と、それからアメリカ政府等のなにか反応等があったら、もし追加情報がありましたら教えていただきたいといいうのが最後の質問です。よろしくお願いします。

綱川:CB&Iの訴訟に関しましては、夏ごろに向けて会計監査人が入ってやっております。これはもう東芝とは関係なく、ウェスチングハウスのほうで今後そのへんは影響が出てくるということであります。

それからお客様、電力会社のほうとは今工事を続けているわけですけれども、これに関わる費用に関しましては、電力会社さんからとりあえず出してもらっているということで、両方とも良好な関係で、まあ我々は直接はあれなんですけれども、良好な関係を築いているところです。

記者4:そうしますと、ちょっと心配だったのは、チャプター11による、御社側はこれで遮断できたというお話をされてますけれども、現時点ではさらなる訴訟とか賠償リスクというのは今のところ考えなくていいと。そういう理解でよろしいでしょうか。

綱川:はい。考えておりません。

記者4:ありがとうございました。

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