いかに成長機会を提供するか
西澤亮一氏(以下、西澤):最後、成長機会の提供ということで、先ほど、冒頭で流れていた映像は、我々1年に1回、お客様の成長に一番貢献できた事例を全社員が1人ずつ全部出します。管理部であれば、対象が社内のメンバーになったりしますが、出します。
それを一次審査、二次審査、三次審査にかけて、一番お客様の成長につながったサービスのベスト5みたいなかたちで表彰して、その5人を、それこそ『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』じゃないですけど、そのようなかたちで映像に落として、社員総会で流すということをやっています。
どの賞よりもこれが一番名誉ある賞という仕立てにしています。どうしても業績だったり、売上が大きいのが云々というふうに見られがちなので、基本的にはお客様に価値貢献できた人たちが一番偉いんだという文化を浸透させています。
「ネオつく!」。これはビジネスプランコンテストを全社員でやっています。
右のほうは、ネオキャリア大学という大学を社員数が1,000人超えたぐらいからやり始めました。これは朝と夜に講座を作って、eラーニングでネットで申し込めるようにしているんですが、すごく申込みが多くて。
普通に、エクセル講座、英語、アカウンティング、マーケティング、広報、IR、なんでもそうなんですが、そういったものをやっていくと、キャリアアップしたい社員たちがどんどん申し込んで自発的に受けるようになっています。
それから「N100」。これは人が増えてくるなかで、優秀なメンバーをしっかりとナンバリングしたい感覚だったんですね。イメージは。
なので、各役員・部長のほうから「優秀だな」「将来の経営幹部だな」と思う人間を推薦してもらって、100人のチームを毎年組成をしています。2,500分の100ですね。
この100人と僕や経営陣でのコミュニケーションを多く取るようにしています。いろいろな目的があるんですけれども、彼らを伸ばすというのもそうだし、経営的な感覚を持たせるのも含めて行っています。毎月その100人に対して僕は勉強会をしたりしています。
ネオキャリー。社内異動制度ということで、1年以上入社した社員は毎年一定の時期に異動の仕組みがあります。求人票がざーっと出まして、自分で申し込めるというかたちになっています。
当然ですが、申し込んだところは自分の直属の上長にはわからないようになっていて、異動が決まらなかった場合はそのまま、決まった場合はそこで発表されるというかたちになっています。
年に一度の「きめきる合宿」
それから「きめきる合宿」というのは、この100人と経営陣で合宿を1年に1回してまして、社内の経営課題をどう解決しようかとかいうことをやって、その場で決めきるというものです。
先ほどお話しした女性向けの社内報であったり、無認可の手当てだったり、成長逃さないデーだったり、全部ここで決議をされています。ほとんどは現場から「こういう仕組みがあったほうがいいよ」という提案が具体的にあって、ここで決めて実行されるというかたちになっています。
こうしたことから、たぶん若いメンバーたちが、自分が経営に参画している感覚をすごく持つようになっていって、会社に所属することがおもしろくなってくるという循環が生まれているんじゃないかなと思います。
具体的な部分というよりは、想いをしっかり共有をして、多様性のある働き方をしっかりと作って、成長機会を提供する。
この3つをしっかりすることによって、比較的伸びる人材が伸びてきて、リーダー・マネージャーが育ってきたというのが、この数年間の規模拡大に合わせて生産性が上がってきたポイントではないかなと考えています。
成長のポイントということで採用強化。採用を強化して、人を定着をさせ、人を育成をしてきたというところで、今日3つお話をさせていただきましたが、(スライドに)それぞれ3つにまとめています。
採用強化。採用担当・プログラムの抜本的な見直しをしています。インターンシップを強化したということと、経営者の採用コミットをしっかりとやっているという部分になります。
定着に関しても、同じくインターンシップもありましたが、しっかり入社前後の研修を強化するということと、入社後のアンケートをしっかり取ってるということ、リファラル強化すると定着につながるという部分です。
育成。想いの共有、多様性のある働き方、成長機会の提供。
ということで、かなり人事側に力を入れてこの数年間やってきた結果、なんとか今にいたるようなかたちになっているのではないかと思います。
1つでも2つでも、みなさんのなかで「このコンテンツおもしろそうだな」「これやってみようかな」というところをぜひやってみていただければと思います。
組織・人材が優位性を担保する時代
今、話した裏側には、失敗したものもたくさんありました。1回2回やって「これダメだな」ということでお蔵入りになったものもたくさんあります。
たぶん会社によってうまくいくものと少し文化と違うものもあると思います。会社によっていろいろあると思いますが、僕らのなかでやったものでうまく効果が出たものの話をさせていただきましたので、持ち帰っていただいて、なにか参考にしていただければと思います。
あと、今日のテーマのなかに「戦略人事」の話を少しだけ入れさせていただいています。
すでに知っている話がほとんどかと思いますが、概要だけみなさんにお話をさせていただいて、ぜひトレンドとして1つ頭に入れておいていただければと思います。
最近は戦略人事とかCHOとかいろいろな言葉が出てきていますが、なぜ最近2〜3年でトレンドが変わってきてるのかというと、今までは製造業などが中心で、設備だったり資金だったり、こういったものが非常に競争優位としては重要でした。
というところから、今はサービス業が中心になってきていて、どちらかというとソフトの部分がポイントになってきているという部分で、人材の競争優位性、1人の人材が大きなサービスを、プロダクトを作るのもそうですし、戦局を変えるような打ち手を考えるのもそうですが、組織・人材が非常に優位性になってきている時代に変わってきているんじゃないかなと思います。
いい人材さえ確保していけば、会社が大きく変わっていくという流れになってきているので、この人材こそが優位性の担保を持つ部分に変わってきているのが、この数年のトレンドではないかと思います。
それに合わせて、市場環境もこれまでとこれからで変わってきています。今までの人事制度は、新卒一括採用して、年功序列があって、ちゃんと定年があって、というところで。右肩上がりで経済が伸びていたので、ちゃんとまとめて採用して、少しずつ給与を上げるといったような、比較的オペレーションをちゃんと回していくみたいなものが人事の役割として求められたところから、劇的に変わってきていると思います。やはりこの5〜6年で非常に経済が成熟してきていて、環境変化に対応するための戦略立案・実行みたいなものが非常に重要になってきている。
加えて、昨今のテクノロジーの進化ですよね。第4次産業革命と言われていますが、ここが加わっていくことによって、また人事も非常に難易度が上がっています。
今まではオペレーションを回せばよかったところから、戦略を立てるという部分が非常に重要になってきているのが人事の仕事じゃないかなと思っています。僕らも人事向けのビジネスをやっているなかで、そのあたりの変化を最近すごく感じています。
戦略人事として、これからの人事に求められること、主にこの4つと言われています。
1つは、会社の事業戦略をちゃんと理解する。会社がどこに向かっていくのか、どういう戦略・方向性を持っているのかという、事業をちゃんと理解しないといけないということが言われています。
僕はすごくサイバーエージェントの曽山(哲人)さん……すばらしい人事マンだなといつも思っているんです。彼は主語に必ず「業績を上げるために、これってこうやったんです」みたいな。なので「業績を上げるために」という主語がつくんですね。
非常にすばらしいなと思っているんですが、人事にもかかわらず業績にコミットしていること、ちゃんと事業戦略を理解した上でいろいろな意思決定をしているということの表れだと思います。
人事データをためていく重要性
人事データにもとづく経営への提言・現場への介入ということで、しっかりデータを抽出して、経営を変えていく。
先ほど私が話した事例で、1年間の離職率じゃなくて1ヶ月にフォーカスをすると課題が見えてくるということもありましたが、ちゃんと分解をしていくと課題が見えてくることが多いので、ここをしっかりと行っていく。
あとは環境変化への対応、オペレーション業務をどう軽減するかみたいな部分が非常に大事なんじゃないかと思います。
最近HR Techと言われているものは、基本的にはこの2つを、ビッグデータだったりAIの進化によって解消するというところになるかと思いますので、このあたりを変えていくためにHR Techが存在しているのではないかと思っていまして、僕らもいろいろな取り組みを今しているかたちになります。
なので、クラウド、AI、ビッグデータの解析、とくにビッグデータ解析などで、テクノロジーを駆使して効率化と質の向上を目指す全般というふうに書いています。
私どもも危機感を持っているんですが、この4〜5年でたくさんのプロダクトが乱立していますが、これが集約されて、ものになっていく。プロダクト側である僕らも、データがたまればさまざまなアウトプットができるようになってくると思っています。
例えば、どこどこの大学で勤務時間が何分ぐらいの人は昇進しやすい・しにくいとか。これぐらいの状況になると離職率が上がるとか。写真がパシャパシャ撮られていって、その状況によって、何日間か続くと休職リスクが高くなるとか。
さまざまなデータがたまればたまるほど取れるようになっていくので、その取り組みをしていかないといけないですし、人事側もそこに追いついていかないといけないという時期かなと思っています。
海外では、このあたりのTech系は、採用領域、人事領域、勤怠領域、教育/研修領域、ものすごくたくさんのサービスが出ています。みなさんもご存知のとおり日本でも、有名なところだとやっぱりワークスアプリケーションズさんをはじめとして、さまざまな会社が出てきています。僕らも「jinjer」というプロダクトを中心に、このあたり強化しようということで今、行っています。
最後にここだけなにか宣伝っぽくさせていただきました。
今後、人事の仕事として、こういったプロダクトをどう活用して、今の人事の仕事、オペレーションを軽減するのかとか、データをアウトプットするのかというところが求められていくと思いますので、ぜひこのあたりもアンテナを張って使っていただきたいなと思います。
我々はこんな感じで、新卒採用からいろいろなところ、人事データを一気通貫でマネジメントしようということでやっています。
ということで、今日は「10年で2,000名の会社に成長できたワケ」というテーマでお話をさせていただきましたが、あまり外部にお話をしていないような話もいろいろとさせていただきました。なにか参考になればと思っています。
インターンの参加人数を絞るのはなぜか?
以上で話は終わりにさせていただきますが、もし「これはちょっと詳しく聞きたいな」とか、全体の中で「この部分気になったので聞きたい」みたいなものがあれば、ぜひお聞きいただけたらと思います。
(会場挙手)
ありがとうございます。座ったままで、企業名もなにもいりませんので。ご質問だけで大丈夫です。
質問者1:最初のほうの採用強化のところで、インターンシップ4,000人応募で200人だけが参加されるということなんですけれども、それを増やさない理由と、その200人を選ぶ基準があれば教えていただければ。
西澤:増やさない理由は、まずはキャパの問題なんです。僕ら、夏のインターンシップとかは、富士五湖みたいなところに行って、みんなでアクティブなワークをするみたいなコンテンツになっているので、キャパの問題が正直あるのと、意識の高い本気の学生のみ集めて、絞り込んで実施することで、よいアウトプットができるという点ですね。
選び方のところは、当然、基準を設けてやっていますが、例えば1つの大学に集中してしまうと意味がないので、ある程度の意図・目的を持って選抜をするというかたちは取っています。ちょっと曖昧で申し訳ないですけど。ありがとうございます。
質問者2:今日はありがとうございます。今日のお話で、考え方とか発想とかやり方が非常におもしろいなと思っていて。それはご自身で全部考えたのか、それとも幹部までなのか、社員全体なのか、それとも外から情報を引っ張ってきているのかというのを教えていただきたいです。
あと、当社は今リファラルに非常に力を入れていて、リファラルで成功した要因みたいなのも語っていただけるとうれしいです。お願いします。
西澤:ありがとうございます。1つ目は、正直、全部ではあるんですけど、ベースとしてはたぶんやはり企業文化の浸透があって、「この会社はこういう会社にしたい」と思っていて「こうなりたい」と思っているというところが、ちゃんと全体に落ちていることだと思うんですね。
これは全体に落ちていくなかで、人事がそれに沿って考えて、あがってくるものもあれば、さきほどお伝えした「N100」という、100人の経営幹部候補からあがってくるものもあれば、役員合宿で役員からあがってくるものもあれば、僕なりほかの役員が外で勉強会、こういった場で話を聞いて「これいいな」と感じて拾ってくるものもあれば、とさまざまなんですけど。
ただベースにあるのは、この会社がどういう会社で、どういうふうにしていきたくて、なにを大事にしているかというところが浸透させられているから持って来れる、ということはあるんじゃないかなと思います。
そこが大事で、おっしゃっていただいたとおり、テクニカルなものだけをやっても、あまりうまくいかなくてですね。根っこの部分がけっこうカチッとしてるから、比較的打ち手が、アタリ・ハズレの判断ができるようになっているんだと思います。
リファラルに関していうと、これもさまざまな取り組みをしているんですけど、秘訣は、「この人、一緒に働きたいな」と思う人とは、ちゃんと常にご飯を食べ続ける、コミュニケーションを取り続ける。自分たちが関わっていく人たちのなかでですね。
その時は、ほとんどの人は来る気がない、転職する気のない方がほとんどなんですけど、1年間働いていると、やはりコンディションが悪くなるときが必ずあるんですよね。パターンとしては。
なので、そのタイミングが合えば来ていただける、基本的には定期的に口説き続けていくというかたちを取っていくと、来ていただけるときが多いです。
僕の場合は「この人いいな」と思った人は、3ヶ月に1回は必ずランチかディナーかブレックファーストはやっていまして。正直、これを5回ぐらい続けている人は全員入社していただいています。3年かかる人もいたり、半年とか、いろいろあるんですけど。なので、口説き続けていると来てくれるというのはあると思います。
ほしい人材は「社長ができそうな人」
質問者3:興味深い話ありがとうございます。すいません、今日の話と完全にリンクするかどうかわからない話でもいいですか?
西澤:大丈夫です。
質問者3:売上高なんですけど、10期目ぐらいまでって、まあ不況もあったと思うんですけど、いったん低迷されたかなと思って。そこからわっと波に乗ったかなという数字を見てですね。6期から10期まで伸び悩んだ要因とか、振り返って「こうだったな」みたいなものがあったら教えていただければと思うんですけど。
西澤:ありがとうございます。たしかに今日とはまったく関係ない話ですね(笑)。
一番はやっぱり僕自身の成長が止まっていたということに尽きるんですけど。僕、非常にマイクロマネジメントタイプでして、自分で全部を見ていないとダメなタイプだったので、すごく細かくメンバーともコミュニケーションを取っていて、150人ぐらいがやっぱり壁だったんですよね。なので、そこでぜんぜん伸び悩んでしまったのは、僕がふたをしていたという状況じゃないかなと正直思います。
売上の推移でいうと、お恥ずかしいんですけど、実は売上が伸びだしたのって、僕が海外事業に展開しだしてからなので。僕が会社にいなくなってからという状況でして(笑)。海外事業を展開しだした時って、半分ぐらい僕は日本にいなかったんですね。
そこから非常に伸びてきたので、権限移譲がうまくいって、事業の権限をどんどん渡していきました。ただ、文化のところだけ、今日言ったように、人事の部分や文化のところだけは自分の想いを崩さずに、事業展開を任せていったみたいなフェーズで。求心力を持ちながら権限移譲が成功したというかたちかなと思います。
これ、たぶんほとんどの中小企業や中堅の社長がぶつかる壁じゃないかと僕は思っていて。簡単じゃないですけど、そこが突破できたからじゃないかなとは思います。ありがとうございます。
質問者4:今日はありがとうございます。冒頭のほうに、従業員が増えたことによって生産性が上がったというようなお話があったと思うんですが、そこの一番の要因はなにになりますでしょうか?
西澤:ありがとうございます。僕らは人材ビジネスなのでやっぱり経験がけっこう大事なんですけど、4〜5年経ってきて経験を積んだ人たちが退職していくみたいな状況でけっこう苦しんでいたんですが、成熟度の高い人がちゃんと定着してくようになっていったと。20代後半でけっこう活躍したエース、「リーダーからマネージャーに上げようかな」みたいな層が安定し、そこの下の人たちがすごく育つようになったんですね。
なので一番のキーは、やはり新卒の5年目、6年目、7年目ぐらいの20代後半が定着したことだと思います。そこに結局どんどんプラスのサイクルが働いていって上がっていったという。
着手するのであれば、いろいろな問題が各社さんによって違うと思いますが、とにかく20代後半のエースになりうる人間たちをどう定着させて、彼らのキャリアプランをどう作っていくかということさえできればけっこう伸びていくんじゃないかなとは、ベンチャーに関しては思っています。ありがとうございます。
質問者5:今日はありがとうございました。私も西澤社長と同じ39歳で、会社を経営しています。5年目なんですけれども。
1つ聞きたかったのが、先ほど口説かれるというお話があったんですけれども、西澤社長の目線で「この人が一番ほしい」とか「この人は会社に絶対必要だ」と思うような人材はどういう人なのかを教えてください。
西澤:ありがとうございます。やはり自分がどうしたいかとか、自分はこういう生き方をしたいというのをちゃんと持っている、いわゆるオーナーシップを持っている人ですかね。
要は社長ができそうな人(笑)。自分で事業を動かせていけそうな人こそ、戦局を変える人なんですよね。ベンチャーにおいては。
本当に中途採用によって会社って変わるなと思っています。ヘルスケアの領域もそうですし、海外の領域もほとんどリファラルで採用した人材が動かしているので。僕らにはないノウハウをみなさん持っているんですよね。
このあたりの人たちは、自分のやりたいことや世界観がけっこうあるので、それをちゃんと聞いて、僕らがやっぱり惚れるかみたいなところがすごく大事なので、サラリーマンではなくて、どちらかというと事業家、起業家、ビジネスパーソン。
自分でやれちゃうんだけど、それぐらいの人間をどう口説くかみたいな。「一緒にやりましょうよ」というふうに口説ききれると、会社がどんどん選択肢が広がっていくということになるかと思います。
ほとんど口説いて来ている方々は、「自分で会社やろうかな」と悩んでいる人がすごく多いので、そういう人たちを一緒に巻き込んでいくのが一番かなと思います。
質問者5:ちょっと個人的なことなんですけど。僕、実は西澤社長と同じ高校で同級生で。
西澤:あ、そうなんですか! あとでじゃあちょっとまた(笑)。
質問者5:はい。ありがとうございました。
西澤:ありがとうございます。最後にレアなお話を聞かせていただいて。
ではみなさん、今日はどうもありがとうございました。いくつか参考にできるところはぜひ参考にしていただいきたいなという部分と、あとは人材のところのニーズ等々もあればぜひお声がけいただけたらと思いますので、よろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。
(会場拍手)