クラウドワークスが起こす「働き方革命」

辻庸介氏(以下、辻):まず初めに、本日登壇予定だった福岡市の高島(宗一郎)市長から、「今日は楽しみにしていたんですけれど、熊本地震の災害復興に全力をつくしたいと思います」と、ご連絡をいただいております(当日は2016年4月21日、熊本地震から7日後)。

今日は「自ら時代を創る『意思』を持つ」ということで、すばらしい3名の方々に来ていただいております。

初めに、みなさまに自己紹介と会社概要を3分程度で簡単にお話ししていただければと思います。あと、僕が言うのもなんですけれど、みなさまお若いので(笑)、生年月日と会社を創られた年月日と上場日なども教えていただければと思います。では、吉田さんからお願いします。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):おはようございます! クラウドワークスの吉田と申します。本日はよろしくお願いします。

……生年月日(笑)。1974年11月16日生まれでございます。37歳のときにクラウドワークスを創業して、39歳で上場してます。創業から3年ほどで上場させていただきました。

今、紹介していただきましたとおり、クラウドソーシングあるいはクラウドワーキングと呼ばれるサービスをやっていまして、今日の話で触れていたのは「クラウドで働き方が変わる」ということでしたので、そっちでお話しします。

クラウドワークスというのはパソコン1つあるいはスマホ1つで働けるんですが、昨年はそれだけで年収2,000万円を突破した方がいらっしゃいます。ですので正社員以外にそういった仕事を得て、しかも働いた上で実績が重ねられる。さっきは「信用のかたち」というのがありましたけど、我々はまさに個人の労働の先にある「個人の信用データベース」というものを唱えてます。

これを「働き方革命」と我々は申し上げているんですが、それで今、働き手が86万人、企業がトヨタ・三菱・JT・ホンダ、そういった企業をはじめとして12万社います。政府からもご支援いただいていて、政府が7省、地域の行政では40以上の都道府県・市町村にご活用いただいてると。

昨年の第1回「日本ベンチャー大賞」では「ワークスタイル革新賞」というのをいただきまして、現在は新経済連盟の理事としても、そういった働き方革命を産・官・学で一体となって進めていこうとしています。本日はよろしくお願いします。

被災地復興のためにシステムを提供

:ありがとうございます。続きまして、ブイキューブの間下社長お願いします。

間下直晃氏(以下、間下):おはようございます。株式会社ブイキューブの間下でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

先ほど高島市長のお話があったんですけど、熊本で我々もいろいろ動いていまして。「現地、被災地ではなにをほしがってるか」というのが、なかなかつかめていないんです。今はバラバラの情報になってしまっているので、ひとつにまとめようと簡単なシステムを作って当社のWebで公開しています。もし現地にお知り合いの方がいらっしゃったら、その方にアドレスを教えてあげていただけると助かります。

本当にどこになにを配ったらいいのか、わからないという現状があって、物資はどんどん集まってるんですけど行き先がわからないということで、そこをなんとかつなげたいと思っております。

:間下さんは前回の震災の際にも動かれていらっしゃいましたよね?

間下:そうですね。(前述の簡単なシステムは)我々の事業は関係ないんですけど、前回は関係あることをやっていて。今回もやってますけど、無償で我々のWeb会議サービスを今回の被災に関係ある方に配っています。やはりオフィスがクローズしていたり、家がクローズしていたり、結局復興までに時間がかかるわけですよね。その間に、オフィスで働くにしても今までの働き方ができないケースが多くある。安否確認から始まって、会社の事業継続というところを、我々のしくみを使ってやっていただくことができるので、そこは無償でお配りしたいと。

前回の3.11のときも500社くらいに使っていただいたりして……いまだに使っている方もいらっしゃるようなんですけど(笑)、そういう方はもしかしたらお支払いいただいてもいいかもしれないんですけれど。今回の熊本にそういったものを配ったりしています。

場所にとらわれない社会を作る

本題に移りたいと思います。自己紹介ということですと、1977年12月生まれでございます。今38歳ですね。会社を創ったのは98年なので、会社としてはぜんぜん新しくないです。私が20歳のときに創ってますから、もう18年経つ会社です。上場したのは2013年ですから、15年かけて上場しています。上場するために始めたわけではないので、15年かけたというわけでもないんですけども、非常に長い時間をかけて上場したベンチャーだと思います。

やっていることは、Web会議とかオンラインセミナーとか、映像を使って離れた場所を結ぶこと。みなさんも今日ここに来ていただいてますけど、これもオンラインの配信ができるわけですね。全国の方々に対して、今日のこういった会話であったり、質疑応答も含めて配信することができる。こういったものを展開しています。

基本的に「働き方を変えていこう」「どこでも働ける働き方をつくっていこう」ということを企業でやりながら、あと社会的なところでいうと「教育を変えていこう」「医療を変えていこう」「金融業界を変えていこう」。例えば契約をするときに、今までは行かなければできなかった契約が遠隔のテレビ会議でできるようになったりとか。

お医者さんでもそうですよね。今までは(診察などに)行かなければできなかったのができるようになったり、教育でも学校・塾に行かなければ(授業が)できなかったのが、行かなくてもできるようになったり。

このように、場所にとらわれずにいろんなことをしていけるプラットフォームを作っていこうということで、展開している会社でもあります。あとは、さっきご紹介いただきましたけれども、今朝シンガポールから飛んできまして。ふだんはシンガポールベースで、東南アジアとか中国での展開を中心に今はやっています。

そういう現状のなかで、なんとか成功例を作りたいということで、「日本のITサービスを世界に」というのは難しいですが、せめてアジアでデファクトにしていきたいということで今、展開させていただいております。

世界8ヶ国に展開 売上の60パーセントが海外

:ありがとうございます。最後に佐藤さんお願いします。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):株式会社メタップス代表の佐藤と申します。簡単に自己紹介しますと、1986年生まれで会社を創ったのは2007年です。上場したのが2015年で、今が29歳になります。私自身は大学生から起業してるので、バックグラウンドのキャリアというのはないんですよね。だから手探りのなかで会社を経営してきました。

事業内容としては、AIを活用したアプリのマネタイズです。アプリのディベロッパーはまだまだ儲かってない方々も多いので、彼らがおもしろいものを作ればちゃんとお金が儲けられるというプラットフォームを今は運営してます。こちらは、2011年からグローバル展開に力を入れてきました。現状は世界8ヶ国に展開しています。売上の60パーセントくらいが日本以外の国からで、特にアジアから出てきています。

2013年くらいから、「金融は変わってくるよね」「テクノロジーでお金のあり方は変わってくるよね」ということを感じたので、SPIKEという決済のプラットフォームを立ち上げています。今年が2016年なので3年くらい運営してきましたけども、グループ全体でだいたい年間1,000億円くらいの決済をさばいています。今後は情報、あとはお金ですね。そこは今後データ化していくので、いかにそれを効率化して経済や金融のしくみを変えられるかということを考えていきたいと思ってます。以上になります。

「金融のあり方そのものを変えていきたい」

:ありがとうございます。ここ(会場)にいらっしゃる方は詳しい方が多いと思うんですけども、そのなかでSPIKEというサービスは、僕はわかっているようでわかってないところがあるんです。決済というのをもうすこし深掘りして、「どんなユーザーがどういうふうに使って、なにが今までよりよくなったか」というのは、どういうかたちなんですか?

佐藤:私が昔、ECのサイトを立ち上げたときに、決済のところがネックだったんです。なぜかというと、審査に1ヶ月かかるとか、そもそも手数料が高い・不透明というのがあったので、ここを解決する仕組みができないかなと考えていました。「すぐに使えて、事業が儲かるまで手数料が発生しない。儲かってきたら手数料をいただきますよ」という仕組みを提供しようと思って、SPIKEを立ち上げました。

決済だけをやりたいというより、将来的に、金融機関とか金融のあり方そのものを変えていきたいと思ったので、まずは決済から始め、今後はお金回り全般を視野に事業をやっていければと考えております。

:ありがとうございます。佐藤さんと話していると「そうだなあ」といつも思うんですけど、年齢をふと思い出すと29歳ということで、自分が29歳のときになにをしていたかと考えるとびっくりするんですけど(笑)。

どうして上場できたんですか?

今日はせっかくすばらしい経営者の方々、しかも41歳・38歳・29歳ということで、お若くして短期間でこれだけ急成長されてきたと。ここ(会場)にお越しいただいている方は、会社のマネージメントをされていたり、社長さんだったり、会計事務所の代表をされていたりと、経営をされている方が多いと思うので、そういった方に少しでもお役に立つようなご質問をしていきたいと思います。

1つ目は、いろんな会社が成長を目指してビジネスをしていてもなかなか実際は難しいわけですが、みなさんは会社を成長させ、上場までされたと。当然、理由があると思うんですけども、その理由を自分なりに分析するとなにかということ。あと、成長する中でいいことばかりではなくて「痛み」や「課題」が組織内にあったと思うんですけども、それをどのように乗り越えて来られたのかということを、簡単にお話しいただければと思います。では、間下さんからいきましょうか。

間下:そうですね。我々の場合はあまり短い期間で成長した会社ではないと思っているんですが、キーワードはやはり「変化」じゃないでしょうか。どんどん変えていく。世の中も変わっていきますし、世の中のニーズも変わっていきますし、技術も変わっていきます。いろんなものが変わってきました。いかに変わり続けられるかだと思ってるんです。どんどん組織も変えていきますし、やることも変えていく。

ただ、もともと持っている信念だったり、やっていくべきことは変えない。理念は変わらないけど、手段はどんどん変えると。そういうことをずっとやってきているかなと思います。なので正直、やっていることのベースはずっと一緒なんですけど、やり方とかはどんどん変えてますし、組織もどんどん変えてます。これによって痛みはけっこうあります。基本、人は変わりたくない人が多いですから。ある程度安定した地位を持つと、変わりたくないんです。

これを変えていくのがトップの仕事なんじゃないかなと思いますし、今後もずっと変え続けていくことによって世の中も変えていきたい。我々も変わっていきたいし、世の中も変えていきたいと思います。

成長する会社・人が持っているもの

吉田:今の近視眼的な話は、本当に最近痛感するところで。やはり成長する会社あるいは人と、そうじゃない会社・人の違いというのは、長期的な視点を持ってるか。今日のテーマでも「10年後」というのがありましたけど、それはすごく思います。

どういうことかというと、「最近Uberが展開してきて、それによって運転手の労働が奪われる。自動運転が普及すると労働が奪われる」と。でも、それは目線を変えれば、全自動洗濯機があったら洋服を自分で洗わないし、ルンバが普及したらみんな受け入れて部屋の掃除しないし、食洗機があったらいちいち皿を洗わない。我々が抱えてるものも、そうなんですね。クラウドソーシングで自由に働ける一方で、競争社会を生んでいるとかいった話もあるわけなんです。

だけど、これのおおもとは1810年頃の産業革命のときのラッダイト運動(機械うちこわし運動)。歴史を勉強すると、あのときは靴の自動作成機とか機織り機みたいなのができてきて、その機械を壊しているんですね。「機械を壊せば我々の労働は守られる」と言って。実は、労働者っていうのは目の前のことを守ろうと200年もやっていて、機械が淘汰してきてるんです。

間下:結局なにかを守るというのも限界があって、守る側になっている以上は絶対どこかにやられるんですよね。

吉田:だから、次に来るトレンドを読んで、それと人間を合わせる。ロボットが当然来るわけですけど、ロボットと人間を合わせた社会に対して自分がどうマネージメントする立場になるかということをデザインしていく。そういう人を、私は働き方革命を通して1人でも世の中に増やしていきたい。そういうことはすごく思ってます。人に対して熱い思いがあるんで、そこらへんはどうですか? 佐藤さんは。

間下:モデレーターになってるじゃないですか(笑)。

:いいですね(笑)。こういう感じでいきましょう。

吉田:自分が今、話がもたなくなっちゃったから(笑)。

実際に世界で事業を展開することで得た視点

佐藤:最初のテーマはなんでしたっけ? お題は。

吉田:「変化」。今、聞いてました? 私の話(笑)。

間下:いや、変化じゃないですよ。変化は僕が言っただけで。

吉田:そうか。もともとのテーマは端的にどう成長を作り出すかという。

:まあ、変化につながります。要は、人間は変化を嫌う。しかし世の中は変化していく。時代を読んでそれに合わせていかないと結局は負けてしまう。それはわかっているけど、目の前の痛みは人間としてはなかなか受け入れられない。そういうのが人間だと思うんですけど、それに対してどうしていくか。

吉田:佐藤さんは、最初からそういう長期的な発想ができてたんですか? それともなにかきっかけがあったんですか?

佐藤:やってることを広げてきたのが大きいです。例えば、日本だけで事業をやってるときは、「世界ってこうなってるだろうな」と勝手な思い込みでやってたんですよ。実際にいろんな国で事業をやっていくと、「世の中ってこうできてるんだな」というのが理解できた。「じゃあ、逆に過去とか未来はどうなってるのかな」と広げていった結果ですかね。まだまだ今も過程ではありますけど。

吉田:では、最初は近視眼的なところも……。

佐藤:かなり近視眼的でしたね。「明日の200万をどう作ろうか」という。

吉田:そういう時代もあるんだ(笑)。

間下:そういうのも大事ですよね。それがないと会社つぶれちゃうから(笑)。

「諦めてもらうのが一番早い」

:近視眼的なところでちゃんとやるのと、将来的にちゃんと方向を定めるのと両方だと思うんですけど、一方で「社会」と「社員」とか、「わかる人」「わからない人」があるじゃないですか。

当然、社長はいろんな情報を持ってきたり未来を見たりして「ここだ!」と言うんですけど、例えばソフトバンクの孫さんが「ここだ!」と言ったときに、ほとんどの人が「この人絶対間違っている」と思っていたと思うんですよ。

そういう世界に行くというか作っていくというか、そういうパワーと社員さんをどう引っ張っていくかみたいなのは、それぞれのマネージメントスタイルだと思うんですけど、佐藤さんはどうされているんですか? あまり熱く語っている感じがまったくしない(笑)。

佐藤:確かにそうですね。一番早いのは、あきらめてもらうことだと思ってまして。「ダメだなこれは、引かないな」と。「なにを言ってもこいつはやるだろうな」というのを理解してもらうのが一番早いかなと思っています。未来のことなんて、良いか悪いか、当たるかどうかなんてわからないじゃないですか。

とはいえ方向性は定めないといけないので、「こういうことをやりたいと私は思ってます。どうしてもやりたいんです」という話をして、「仕方ねえな」と言ってもらえたら勝ちかなと思ってます。そこまでは持っていきたいなと。

:(吉田氏に話を促す)

吉田:……ん?

間下:聞いてなかったでしょ(笑)。

20世紀と21世紀の経済の大きな違いは?

吉田:いやいや、聞いてます、聞いてます(笑)。佐藤さんとたまにサシ飲みとかして、お互いの目線の違いみたいな話をしてて。それで未来の考え方として、私は「人のエゴがどうなっていくか、人がどうしたいか」。例えば、皿は洗いたくないじゃないですか。そういう思考でいくんですけど、佐藤さんはテクノロジーというか「世界がどうなるか」という基準で考えてますか?

佐藤:そうですね。自分の周りがどう変わっていくか。人間というのもいちファクターでしかないと思っています。

吉田:そう。そこがけっこう、20世紀と21世紀の経済の大きな違いだと思っていて。20世紀は、高度経済成長をもとに人間中心社会だったんです。人間がなにかを作って人間が消費するというのがいいと。でも、環境庁の委員会とかに私は参加させていただいていて「低炭素社会」というのがあるんですけど、これは究極的には人間がなにもしないのが低炭素なんですよ。人間が動かずにここにいて、移動もしなくて、ここでずっと過ごしてれば低炭素になるわけなんで。

そういう意味では、低炭素社会とか今、言ってるテクノロジーが出てきたこと、金融テクノロジーが世界を最適化してるみたいなことは、人間のエゴとか幸せをある意味置いてきぼりにしたところで、世界全体を最適化に向かわせているというのをすごく感じます。だからそもそもの思考が、人間中心社会から人間がパーツのひとつでしかないという発想に変わる必要をすごく感じてます。

:それは聞いていると「あ、そうだよな」と思うんですけど、僕たちはどうすればいいんですか? そういう世界、社会の中で。

吉田:私ばっかしゃべってていいんですか?(笑)。

:そろそろ止めたほうがいいですよね。止めたほうがよければ止めますけど(笑)。

間下:本題に戻ったほうがいいかもしれない(笑)。