“自由”と広告ビジネスは両立しますか?
砂流恵介氏(以下、砂流):けっこういいお時間になってきたので、ここで質疑応答に。10分押して始まったので、22時10分くらいまでは時間があるかなと思っているんですけども、今、僕の(時計)だと21時55分、こっちは57分なので、15分くらいいきたいなと思います。
ということで、質疑応答。なにかご質問ある方いらっしゃいますか? これね、挙がらないんですよ、はじめは。僕はよく知ってますよ(笑)。大丈夫ですか。はい、ありがとうございます!
青木耕平氏(以下、青木):ありがとうございます。
質問者1:いろいろインタビューの記事を読ませていただいたんですが、そこでビジョンを達成するために自由だとかの話をされていて。広告の事業というのはBtoBのビジネスになっていて、少し制約が出てくると思うんですけど、どういうかたちで折り合いを付けていらっしゃるのか教えていただきたいと思います。
青木:ありがとうございます。今おっしゃっていただいたのは、我々の企業のあり方のコンセプトを「自由・平和・希望」という3つの言葉で表しているということに言及していただいて、そのなかの「自由」ということだと思います。
「自由・平和・希望」が、わからない方もいらっしゃると思うので解説すると、「自由」は、他社に支配されない。「平和」は、ユニークなポジション、他社と競争する必要がない状態を作っていきます。
「希望」は、今日より明日、今年より来年がよくなっていると思えるような希望の裏付けを作るということを意識しています。例えば、今年はすごく儲かるけど来年は急にダメになりそうなビジネスを一時的にやることは絶対にしないという意味です。
そのなかで、「自由」ということを重要視していて、そのために我々は今期10期目なんですけど。約8年間はBtoCに集中して、BtoCで十分な収益を得られるという段階に達するまで、BtoBのビジネスのいろんなオファーをすべて断ってきているという経緯があります。
BtoCのビジネスで十分収益が得られるためにBtoBの仕事については、降りるというカードが常に手元にあるということです。降りられるからこそ、自由でいられるということだと思います。
自由でいるために相手を変える必要はないと思うんですよね。つまり、自分たちの信条とかやりたいことと異なることを要求された場合に、降りるというカードが合法的に切れることが重要だと思っていて、そのカードを作るのに8年かかったという感じなんです。
今はそのカードがあるので、もちろん一度受けた仕事を簡単に放り出すことはないですけど。最初のお問い合わせの段階で、我々にとってお仕事としてお受けするのは難しいなと思ったものに関してはどんどん断らせていただいているという状況があります。
お問い合わせいただく半分くらいは、最初のお問い合わせの段階でお断りしています。最終的には、BtoBだから不自由ということはないという状況をもっと作っていければなと思います。
質問者1:ありがとうございます。
社員の男女比は?
砂流:ほかにご質問ある方いらっしゃいますか? はい、どうぞ。
質問者2:ほとんど女性をターゲットにしているサイトかと思うんですけれど、実際に社員さんも女性の方が多いんですか?
青木:そうですね、7割が女性です。特にオペレーション。例えば仕入れやコミュニケーション、コンテンツ周りは、ほぼ100パーセントに近いくらい女性で、専門職的なところに男性がいる感じです。
質問者2:やはり男性が記事を書かれたりというのは、ほとんどないような……。
青木:男性のコンテンツ担当もおります。男性は採用しないということはぜんぜんないんですが(笑)。自然とテストを経ていくなかで残っていくのが女性、というのは、女性向けメディアだからというところに尽きてくるのかなという感じですね。
質問者2:女性向けのメディアだけど、男性が書く記事だからこそ、なにかいいものができあがるとか、響くとか、そういうこともあるんですか?
青木:それはあると思います。あるんですけど、さっきの話でも申し上げたとおり、目新しさとか、新たな新機軸を出そうみたいな気はぜんぜんなくて。男性ならではの新たな視点を増やしてメディアとしての幅を持たせようということはあまり考えていないんです。
こういう記事をお客さんは望んでいる、というものをしっかりと作っていけるのは誰なのか。性別とか意識しないで選定をしているんですけど、結果論的にやっぱり、女性が好きなものは女性がわかりやすいみたいなところがありますね。男性ももっと増えるといいのになと思っていますけどね。そもそも応募者の母数が9割がた女性なので。
砂流:30人の比率はそうなっちゃいますよね。
青木:ダイバージェンスを確保したいという気はあるんですけど、応募者の属性に偏りがあるというのが正直なところですね。
質問者2:ありがとうございます。
「北欧、暮らしの道具店」が唯一見ているKPI
砂流:ほかにご質問ある方いらっしゃいますか? どうぞ。
質問者3:初めて購入されたお客様がそのあとどういうふうに成長していくか、お客様としてずっとあり続けるかというなかで、御社がお客様に対してこういうサービスがある、Webを見る限りポイントを付けていますとかあると思うんですけど。
例えば、ちまたではお友達紹介キャペーンとかいろいろありますけど、考え方とか、初めて購入されたお客様には必ずこういうメッセージを出してますとか、こういう関係の築き方をしていますとか、そのあたりのことを。
青木:サイトに機能があるので、ものすごくささやかにですけど、ポイントの制度はあります。でも、誰もそこに期待感を持っていないと思います。あまりに少なすぎて。我々の規模感のECサイトというのではめずらしいと思うんですけど、まったくリピーター分析をしていません。
砂流:え!
青木:初めて買った人がどうなっているかとか、何回買っているかとか、頻度がどうかとか見てもいないというか。
砂流:見てないんですか!
青木:唯一見ているKPIは「過去に20回以上サイトに訪問した人が、確実に純増していて、かつ、全体の占有率が変わっていないかどうか」。これをずっと見続けています。
砂流:過去に20回以上。
青木:マンスリーでちょっと違うんですが、だいたい45~50パーセントくらいが過去に20回以上訪問した人で占められているんです。最初、10回くらいで常連層として設定しようとしたら7割くらいになってしまったので、半分までに下げるには何回にしたらいいかということで、だいたい20回になったんですけど。
この20回以上来ているという人たちが、毎月確実に純増している。かつ、この割合がどんどん増えていたら新規が取れてないということになりますから、割合が変わっていない。45~50パーセントの間なんだけど、絶対数は増えているというところだけを見ています。
つまり、習慣的に来る人を増やす、来ていただく。それはその場所が心地いいと思う人が増えているということなので、すごく重要な指標だと思っていて。ただ、そこで買うかどうかは正直、お客さんが欲しいものがあったり、なかったり、いろんなタイミングがあると思うので。
買いたいと思ってもらえるコンテンツ、仕入れができるように一生懸命頑張っていますけれども、それをした上で分析して、買う気持ちがあやふやな人にポイントをあげたり、キャンペーンをして背中を押そうとはあまり思っていないです。そういう気持ちで背中をいつも押されると思ったら、接客がうざいお店みたいになって、行くことが快適じゃなくなるような気がしているんですよね。
「北欧、暮らしの道具店」がセールをしない理由
僕らにとって、とにかく行くという経験が快適であることが、なによりも重要だと思っているので、その分析をして。例えば急に顧客にポイントを出して掘り起こそうとか、そういうことは思っていないですね。それは、左脳としての気持ちよさと、右脳としての気持ちよさって違うと思っていて、例えば、僕こう見えてけっこうアイドルが好きなんですけど。
(会場笑)
砂流:今、爆弾発言。意外な話出ましたよ!(笑)。
青木:アイドルの現場は、例えば新曲が出たら5種類くらいのシングルのパッケージがあって、ファンはとりあえず一通り買うじゃないですか。
砂流:すっごいわかります(笑)。
青木:「なんで5種類も出すんだよ~」とか言いながら、喜んでる奴がいっぱいいる。
(会場笑)
青木:これって、左脳では不快なんですけど右脳で気持ちいいみたいな。ちょっと抽象的な話ですけど。要するに、ポイントで買うという行為は、それにちょっと似ていて、左脳では得しているって意識してるんだけど、それで背中を押されて買うって気持ちよくないかもしれないなって。特に僕らみたいな不要不急なものを売っているお店で、意外にバーゲンって好きだけど嫌いみたいな人っているじゃないですか。
砂流:僕、そうです。
青木:バーゲンで自分が過去に買ったものが安くなっているのを見るとちょっと損した気になるから、ずっとバーゲンしないでくれたらいいのにという思いの人もいますよね。
僕らがセールをやらないのはそういう理由なんですが。とにかく、来ることが嫌になっちゃうんですよ。来ることが嫌にならないということを重要に考えているので、そうすると買う買わないの分析を掘り起こすということよりは、とにかく毎日のように来たいと思う人を増やすことだけにフォーカスして、オペレーションをやっていくということを重視しています。
「ブランド価値」を高めることに注力してきた
砂流:さらっとおっしゃいましたけど、相当難しいことをおっしゃいましたよね。今。
普通は売上を重視しないといけないので、快適に来てもらうよりどれだけ売上を上げれるかという話じゃないですか。それを今、どれだけ快適に来てもらって、買うか買わないかはそのあとの話だとおっしゃっているので。
青木:そうですね。でもよく考えるとそんなに難しい話でも特別な話でもなくて、今回のテーマは「ブランド」ということになっているので、僕らが売上とブランドの関係というものをどういうふうに見ているかということを説明するときに、よくファンドに例えて話をするんです。
ちょっと難しく感じるかもしれないです。例えば、10億円のファンドがあったとして、これを5パーセントの利回りで運用するという状況があったとするじゃないですか。そうすると5千万円くらいの運用益がありますと。これを倍にするという方法って、2つあるんですよ。
1つは、運用効率を上げて、利回りを10パーセントにすれば、利益が1億円になります。もう1つの方法は、運用する10億円のファンドを20億円にすれば同じ5パーセントの利回りで売上倍になりますよね。
ファンドの元本をブランド、売上を運用益と考えると、売上を上げる方法は2つあるということです。1つはマーケティングの高度な技術を駆使して、同じブランド価値や支持率を運用して売上を作るのか、ブランド価値を高め、支持率を最大化して同じマーケティング効率で売上を作るのか。同じ売上の増加ですけど、まったく違うんですね。
投資の世界では当然ですけど、運用効率を高めるということは、同時にリスクが高まるということです。目先の売上が上がっているように見えて、それは元本を取り崩しているキャッシュフローなのかもしれないと考えるべきだと思っているんです。
利回りを、例えば5パーセント、3パーセントにしても、利益の絶対額を上げるためには、ブラント価値を最大化すればもっとリスクを取らなくて済む。去年はバーゲンをやっていたけど、今年はほぼバーゲンやらなくてもいい、あるいは、SNS向けにバズるタイトルをつけなくてもいいというふうになっていってもいいくらいに、母数を最大化したいと思っています。
砂流:凝縮すると、それがこの10期のなかでやってきたこと、ということですね。
青木:そうですね。「ブランドの価値」という運用の元本を増やしていく。運用効率を極限まで高めるということは、高めているようで元本を棄損しているケースのほうがけっこう多いと思うんですよね。だから、利回りを高く約束する投資会社とかってその時点でけっこう怪しいじゃないですか。元本大丈夫か、みたいな(笑)。
それはたぶん、高度なマーケティングスキルを誇るマーケターにも実は言えることかもしれないなと思っているんですね。なので、そこの塩梅ってすごく難しいなって。もちろん、マーケティングスキルとか技術を否定しているわけではぜんぜんないですし、我々も活用しているんですけど。
なによりも僕らとして、サステイナブルにビジネスを成長させていくためには、どっちに注力するべきなのかという考え方でいうと、ブランドエクイティというものを最大としていくということに注力したいと思っているということですね。
砂流:すみません、僕が間挟んじゃいましたが、大丈夫でしたか?
質問者3:ありがとうございます。
ビジネスは生物に近い
砂流:これがラストですね。はい、どうぞ!
質問者4:今のお話に直結というか、関わるかと思うんですけど、北欧の雑貨というものを取り扱っているじゃないですか。暮らしの道具店として。どれくらいの潜在顧客が今後伸びていくだろうなと思われているのかというところと。
そのなかで国内消費と国外消費を考えたときに、海外展開も考えてらっしゃるのかなというところを、おうかがいしたいなと。
砂流:すみません! めっちゃ話聞きたいんですけど、トイレ行ってきます(笑)。
(会場笑)
青木:マーケットのサイズに関しては正直わからないですね。僕らが考えていることは、小さく綺麗なものをやりたいと思ってやっているわけでもないです。だけれども、無限に大きくなりたいと思ってやっているわけでもないです。オーガニックな成長が、可能な限り続けばいいなと思っているということですね。
ビジネスというものは、人間がやっているものなので限りなく生物に近いと思っていて、基本的にはDNAに成長というものが組み込まれているので、うまくいくものが成長しますと。
よくないのは2つで、成長しようとしているものの成長を意図的に縛って小さくあり続けることと、オーガニックな成長の可能性がないのに無理に成長させようとする。その2つが問題だなと。
よく子供に例えるんですけど、僕も子供がいるんですけど、3歳くらいってすっごくかわいいので「ずっとこのままの姿でいてくれたらいいのに」と思う瞬間が当然あるんですね。だけど、10年後、本当にそうだったら、それはかわいそうだったり、なんらかの歪みを感じるということです。
オーガニックに成長しているものは、子供にご飯を食べさせ、お風呂に入れ、勉強を教えたりして育てていくのと同じように、「成長を助ける」ということをしていきます。だけど、2歳の子供に薬を打って1年後に19歳くらいの体にしようみたいなことをすると、それは非常に不健全なことだと思うんです。
だから、「オーガニックな成長を助ける」ということがビジネスに携わる者として僕がやりたいことで、今のところ成長が継続できています。もっと前に成長が止まるかなと思ったんですけど、まだ成長ができているので、広告と物販で合わせて30億くらいの売上までは、数年内には見えるかなと思っています。
そこから先、50億、100億というレンジは、おそらくなんらかの新規事業を考えていかないと見えて来ないだろうなと。それは、するべきなのかどうかは、それに直面してから考えればいいかなという感じで思っています。
海外展開は現状あまりメリットがない
海外展開ということですね。これは、何でマネタイズしていくかということによるところがあって。小売業って、海外展開するメリットは相当でかくないとあまりないんですね。
特に、うちみたいに仕入れでやっている場合。仕入れって海外から物を持ってきていると、日本に入れる時点で一回関税がかかりますよね。これを自分たちの物流倉庫に入れたあとに、どこか別の国に出荷、ないしは、そっちの現地法人の物流センターに入れるとなると、そこでもう一回関税がかかったりするので、仕入れ中心にしている小売って、海外展開するメリットがあまりないんです。
海外、特にアメリカで大流行りしているECで、日本に来てブレイクするEC事業者はあまりないという。アマゾンと、なにかあったっけっていうくらいなんです。
これは、現地法人が現地法人で仕入れやるというくらいのコミットメントでやらないと、税金の関係が非常に難しい。
砂流:アマゾンが、そうですもんね。
青木:屋号がものすごく海外に鳴り響いていて、その屋号で国内版をやれば、そのシナジーが発揮できていいんでしょうけど。屋号を知らない相手に対して海外展開をすることのメリットというのが、小売業は薄いのがひとつ特徴かなと、僕は思っているんです。
マネタイズが今言ったように物販ということであって、かつ、海外、国内含めていろんな物を仕入れてきているという業態なのに、海外に展開していくということは、あまり合理性がないかなと思っているので、合理性のあるマネタイズモデルがあれば、そういうことも考えたいかなというのが、今の考えですかね。
質問者4:ありがとうございます。
“北欧”の商品であったことの価値
砂流:すみません、トイレに行ってしまって。ありがとうございます。お時間的に、もし、あと1問あったら、いってもいいくらいの気持ちなんですけどね。本当にラストです! お願いします。
質問者5:主にブランディングについてなんですけど、「北欧、暮らしの道具店」としてのブランディングとは別に、「北欧」というワードだったり、北欧自体の価値が時代とともに上がってきたというのがあったと思うんですけど。それがなかったら、今のようにできていたのだろうかというのと。
「北欧」というワードの価値がここまで上がっていなかったら、今はどうなっていましたか、というのを聞いていいですか?
青木:すごくいい質問だと思います。結論から言うと、「北欧」というものがなかったら、「北欧」というキーワードが価値を持たなかったら、今はなかったと思っています。これは、僕らが2007年にお店を始めたときに、縁があって北欧の雑貨を扱うという。そこは特にリサーチをして始めたわけじゃなくて、本当に縁で始めちゃったという感じなんですけど。
この事業に、フルコミットでやる価値があるかということを検証するという段階であって、そのときに2つ、僕はこの分野が2007年の時点でビジネスとして伸びるだろうと思えた根拠があったんです。
1つは北欧というキーワードの価値なんですけれども、2006年に『かもめ食堂』という映画がリリースされました。同時期にIKEAが上陸しています。すぐそのあとにH&Mが来ているという状況のなかで。
北欧というキーワードがどちらかというと美術品みたいなものに集約している。雑誌でいうと、『Pen』とか『BRUTUS』みたいな世界観で語られていたものが、より女性のライフスタイル誌である『ku:nel』とか『天然生活』、そういう文脈で語られるようになった時期だったんです。
その時代に先行者はみんな、『Pen』とか『BRUTUS』にフォーカスしたような名前を付けてやっていたので、僕らとしては、女性のライフスタイル誌で北欧の展開をしたらどうなるかみたいな仮説を元に、実は、『ku:nel』とか『天然生活』は全部日本語の名前なので、それで日本語の名前を付けようということでああいう名前になったんですね。
特に、北欧のひとつの象徴って、小国だからそこでブレイクした企業はほぼすべてグローバル企業になります。そのなかの大半は日本に上陸していて、日本で「北欧っていいよ」というマーケティングをどんどんやっているんです。
メディアの主要な広告主でもあったりするので、メディアも北欧の特集を定期的にやることになります。ある北欧の企業は、北欧の特集をするだけで渡航費は出すよみたいなPRもやってます。
そういうことを考えたときに、これは、自分が北欧の宣伝をしなくても、企業さんのマーケティングの一環として北欧というものが想起される機会は、今後、ブームではなくて、構造的に増えていくだろうなと、当時思っていました。
魅力的な商品が持続的に供給可能な土地
もう1つは、今は北欧じゃないものでかなり収益を上げているんですが。当初は北欧のものだけでやっていたので、北欧のものだけでやりますと言ったときに、商品の品揃えができないと商品ラインが魅力的にできないじゃないですか。北欧のものだけで魅力的なものを集められないと、ということですね。
みなさんもなんとなく想像してもらうとわかると思うんですけど、インテリアのスタイルって、北欧のものがここまで一般的になる以前は、3つしかなかったんです。英国スタイル、フレンチのスタイル、和系のものですね。
この理由は、ものづくりの基盤がその国にどのくらいあるかということと、スタイルがあるかという、その2つの掛け合わせが満ちているところしかできなくて。例えばスペインとか、イタリアは非常に魅力的なものを作っているんですけど、工芸が中心なので、いわゆるインダストリーがあるようなものがないので、大量生産品の魅力的なものがそこから出てきていないがために、そこのもので品揃えをするというふうにはいかないんですね。
スウェーデンは、第二次世界大戦のときに中立を保っているので、ものづくりの基盤が工芸からインダストリーまでかなり残った、ヨーロッパの数少ない地域なんです。
なので、900万人くらいの人口なのに、例えば自動車メーカーは2個もあるんですよ。携帯の通信メーカーがあったり、非常にものづくりが工芸から産業まで幅広くあって、北欧のものだけでやりますって言っても、物が揃えられるという数少ない地域のひとつだったんです。
つまり、物の供給がサステイナブルであるということと、サステイナブルに北欧の価値を僕らが宣伝しなくても宣伝され続けるという構造。この2つの掛け合わせがあったので、当分北欧は、10年は食えるだろうという意識の元にやったということです。
北欧は単なる“ブームではない”と気がついて
砂流:それ、どの段階で分析されたんですか?
青木:これは2007年ですね。やったらいきなりすごく売れたんですよ。
砂流:僕、インタビュー読みました。そうですよね。
青木:「え!?」っていうくらい売れて、「これなんだ!? おかしいぞ。なんでだろう?」っていうところから、いろいろ調べたり分析したときに、これは構造的に北欧というのはブームというよりは、リテンションされる構造と物の供給を支える構造が両方揃っているという数少ない掛け合わせのポイントで。
例えばフレンチとかだったら、「F.O.B COOP」さんとか、そういうデベロッパーさんの施設にポコっと入る業態というのはあるんですけど。スカンジナビアのスタイルってポコっと入るのはいまだにないくらい、はまりどころが用意されていなかったので、ここは空いてるし、そういう構造が伴っているのでビジネスとしては非常に有望な領域じゃないかというのが、当時の僕の考えでした。
なので、北欧というところでないところで同じようなことをやってうまくいったかというと、たぶんまったくうまくいかなかっただろうなと思います。
砂流:大丈夫ですか?
質問者5:はい。ありがとうございました。
砂流:ありがとうございます。お時間を若干過ぎてしまったんですけど、すみません、本当は冊子の話とかも聞きたかったんですけど、お時間なかったので、これはまた別の機会でお話をおうかがいできればなと思います。
2時間10分くらいですかね。お話を聞かせてもらいました青木さんにぜひ拍手をお願いします。ありがとうございました!
(会場拍手)
2時間って長いようで、けっこうしゃべってみると、ブランディングで1時間半かかってるんで、またぜんぜん違う『北欧、暮らしの道具店』さんの顔を聞けたらなと思います。
もし、細かい質問がありましたら、また別途直接おうかがいするとか、また違う機会も設けさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。本日は、ありがとうございました!
(会場拍手)