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ZMP・谷口恒氏 Part.2(全1記事)

ゴールは2020年・東京五輪 日本の自動運転技術をリードするZMPのビジョン

アマテラス代表・藤岡清高氏が、社会的課題を解決する志高い起業家へインタビューをする「起業家対談」。今回は、株式会社ZMP(ゼットエムピー)・谷口恒氏のインタビューを紹介します。※このログはアマテラスの起業家対談を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

ZMPに優秀な人材が集まる理由

藤岡清高氏(以下、藤岡):創立16年目ですが、この厳しい世界(人工知能・自動運転分野)で生き残ってこられた秘訣はありますか?

谷口恒氏(以下、谷口):そうですね。一番はやっぱり信用だと思います。何か物を作る時に、とことんやりますから。

取引をする相手に対しても売った先に対しても、作る仕入れ先にしても、誠実と言うとちょっと言いすぎかもしれないけれども、正直に信頼を積み重ねてきたことが秘訣かもしれません。累積した信用というものを積み重ねていくことのが大事なことだと思います。

藤岡:ZMPの社員の方はAIBOに関わっていた方ですとか、とびきり優秀なメンバーが揃っているイメージですが、どうしてそのような優秀な方々がZMPに参画してくるのでしょうか?

谷口:ビジョンだと思います。ビジョンが惹きつけるのかなと思いますね。問題・課題を解決して社会にインパクト与えるために本気になると、よく言われるビッグピクチャーになるわけです。それはまたメディアやパブリックに対しての影響があるので、その結果だと思います。

質問者1:谷口さんにとって優秀な人材とはどのような人材でしょうか?

谷口:40歳ぐらいになるとある程度スキルやキャリアが必要ですが、まだ20代、30代前半の人は、やる気があるということが一番です。あとは学習する意欲がある人です。もう1つ言うと、前向きで明るい人。前向きではない人もいますが、それは優秀とは言えないですよね、ベクトルが違う方に向きますから。

人工知能・自動運転業界で働く魅力

藤岡:今のZMPさん、もしくは人工知能・自動運転業界でしか得られない経験ややりがい、成長とはどのようなものでしょうか?

谷口:人工知能・自動運転技術というのは手段です。技術とかハードウェアもそうですけれども、最終的なサービスはやはり今しかない。例えば、ロボットタクシーは私が3年半前に提唱しましたが、今はUBERなどさまざまな企業がカーシェア・ライドシェアをやっています。

そのサービスが無人化になってきて、そのためには自動運転・人工知能が必要になってくる。でも、技術をいくら研究してきても応用先サービスとして人に使ってもらわないとしょうがない。そういう意味で、サービスはスピードが大事です。Appleもそうですよね。

自動運転をもっと大きく括ると、車を端末とする「ITサービス」と言ってもいいと思います。ITサービスは早く広まったほうが勝ち。だから、自動運転も当社がやっているロボットタクシーのアプリが早く広まるのが勝負のポイントです。

そうすれば、人工知能・自動運転技術が世の中に広まり、そういうプロダクトやサービスになる機会、チャンスが得られます。これを最大に活かせるのが自動車産業です。物流も20何兆円もあります。大きな産業で自社の技術が応用されるのは素晴らしいことだと思います。そういう自社の技術が活かされ、ダイナミックな成果が得られるということ、大きな成長のチャンスが得られること、これらが一番のメリットだと思います。

日本における大きな規制緩和

質問者2:私もこの人工知能・自動運転業界においてスピードはすごく重要だと思います。一方で、このテクノロジーのスピードの勝負はグローバルで行われています。

しかし、マーケットの規制によって制約を受けると思います。グローバルで見ると、日本のマーケットは決してアドバンテージがあるマーケットではないようにも思えるのですが。

谷口:去年の5月頃、日本の自動運転の目標は「オリンピックまでにレベル3」だったのですが、レベル4に舵をきりました。来年はドライバーシートに人がいなくても実験ができます。ありえないくらいの大きな規制緩和をします。

規制緩和が日本の産業が伸びなかった原因です。そんななか、今、世界で最もアグレッシブに行っているわけです。かつての日本ではありえないようなアグレッシブさで。そういう意味では日本は変わったと思います。

質問者B:日本が変わったということはわかります。例えば、シリコンバレーに比べてどうですか。

谷口:シリコンバレーと比較して言うならば、シリコンバレーもそこまで改良されていません。無人運転で、ドライバーシートに人がいないというのはまだ認められてないです。実は、アメリカはそんなに改良されてないということが1つ。

確かに優秀な人はシリコンバレーにいっぱいいます。ただ、日本の良いところは自動車産業。我々はそういった自動車会社と組んで、安価で信頼性の高い品質の良いボディに人工知能を搭載してサービスで広げようと考えています。日本で広げたら、中国等アジアでも広げようと思っています。

UBERはアメリカではすごい。でも、日本や中国ではそうではない。シンガポールやマレーシアに行ったらグラブタクシーです。ローカルな規制や技術の問題によるものです。なので、土地にあったソフトウェアを早く作るのが一番いいです。とくに中国には、アメリカの企業は進出しにくい。我々は日本と平行してアジアもやります。

ZMPで身につくスキル・経験

藤岡:次の質問です。ZMPさんの自動運転の業界で働くと、どのようなキャリアパスになるのでしょうか? もしくはこういった世界に飛び込んだ時のキャリア上のリスクは何かありますか?

谷口:リスクはありません。うちで働いていた人が全員合うというわけではないので、転職した人もけっこういます。私の知っている限りでは、退職した方は超大手企業や世界的有名企業にも行っています。かなりいい企業に行っているので、私としてはありがたいです。

藤岡:ZMPさんで関わる技術や習得できる技術は、ほかの大企業や研究開発部門と比べてもまったく遜色がないということなのでしょうか?

谷口:レベルは高いと思います。うちで提携している車は大手自動車会社のほとんどに入っています。また最先端のところと共同してやってもいるので、最先端の技術が身につきます。

藤岡:AIベンチャーや人工知能ベンチャーがたくさん出てきています。その中で成長する人工知能ベンチャーとの区別はどのようにすればいいでしょうか?

谷口:シミュレーションだけなんていくらでもできます。ディープラーニングの論文やいろんなものを見ながら、いろんなフリーのソフトウェアを組み合わせて、結果「何かできました」ということもあります。「何かできました」というアピールはもちろん重要ですが、それは手段でしかなく、結局それで「何ができるのか」だと思います。

例えば自動運転。いくらシミュレーションをしても、自動運転で道走ってちゃんと左折しないと意味がないですよね。今流行りの技術をアピールして、それはそれで会社のIRで重要だとは思いますが、私自身は社会的なサービスをしたい・プロダクトを作りたいと思ってやっているので、結果を見ればいいと思います。我々は結果でしか判断しません。

イノベーションでなく、レボリューション

藤岡:次の質問です。ZMPさんで働く魅力について、先ほどもうかがいましたが、補足があれば谷口さんからお願いできますか?

谷口:一番は誰もがなかなかやっていないような事をやれることだと思います。ベンチャーに入ると、とくにうちだと「こんなのやりたい」と言ったら若い人でもリーダーになります。新卒でリーダーをやっている人もいます。自分がやりたいと思えば、大きな仕事でメインを張ることもできるし、その一部でリーダーをやることもできます。

GoogleやAppleのように最初にやると先行の利で自分のアイデア次第でどんどん横展開できます。イノベーションでなく、レボリューションが起こせるというのがZMPの一番のおもしろさだと思います。私はレボリューションが好きです。イノベーションは、改良に近いですよね。

質問者2:今年の3月頃Googleのセルフドライビングカーの主任のプレゼンテーションがあり、その時に「今Googleをもってしても自動運転車を作る上での最大の課題が、周りの環境を認識すること」と聞きました。ZMPさんがロボット化する上で、今最も難しい課題、直面している課題はどんなものですか?

谷口:ロボットだけでなく、認識や認知は情報が正確でないと判断できません。判断はいいインプット、データが入れば意外とできます。ただ周りの認知にはまだまだ課題があります。100パーセントできることはない。人間でも100パーセントというのはない。でも、機械になると100パーセントに近いところを求められます。100パーセントを基準にすると、まだ見落としてしまうところがあります。

でも、私が大きく彼らと違うところはゴール設定です。2020年オリンピックで走らせるという目標です。お台場と幕張、この2つのエリアの道をとにかく確実に走れるようにして、さらにそこでお金を得られるようなビジネスモデルを作ります。

気をつけることは範囲を狭めること。すべての道でやろうとするとダメです。技術ではなくアプリとしてみなさんに使っていただいて、お金を払ってもらって、ある一定のお客さんを抱えます。さらにまた技術は進歩していきますから、その勢いでさらに改良していく。

2020年7月に人を運ぶので、19年前半で仕様はフィックスします。そこでできることしかやりません。日本人の苦手な引き算方式です。いろんなところを100パーセントやったら、あと10年かかってしまう。でも、用途や範囲、そしてユーザーも限定する。限定して1つの成功モデルを作って、一気に突き進むということが大切だと思います。

国内外の競合サービスとの関係性

質問者2:サービスではDeNA側がリードしてやっていると私は聞きました。コア技術をどこまで握るのか、プラットフォームはどこが握るのか、どのような住み分けをしているのですか?

谷口:自動車会社は、多くは外部技術を採用しようというスタンスです。例えば、自動車会社はセンサーをブラックボックスで買ってきている。買ってきたものを最終的に仕立て上げるのが自動車会社で、我々の技術が先行していたら最終的にはあちらが買うと思います。

そもそも競合もしていません。自動車会社は運転者がお客さんですが、私たちのロボットタクシーサービスは乗客。つまり、車を運転しない人がお客さんです。

現在ロボットタクシーのサービスをDeNAさんと開発していますが、サービス自体はまだほとんどできていません。配車で言うと、完全に遅れています。配車ではUBER等の企業が先行してサービス提供していますが、うちとしても今後海外と組むことも検討して良いと考えています。

質問者2:リードするのに一番の強みは何ですか?

谷口:リードできる一番の強みは、車両とハードウェアと自動運転技術を持っていること。持っていないところもあるわけですよ。今現時点で言うと、自動運転タクシーは普及していない。でも、タクシー配車は普及しています。タクシー会社、配車会社としては自動運転をしているところと組みたい。それで、そこと組むとどうなるか、ということです。

また、車は配車だけでなく、メンテナンスや診断もしなければいけません。ハードウェアの運用や管理がインターネットに繋がるところ、そこを強みにします。

我々で言うならば、ハードウェアを持っていて自動運転技術を持っていましたが、これらがサービスと繋がることによって必要な技術が生まれてくるのです。

藤岡:これをもって第2部は終わります。谷口さん、本日はありがとうございました。

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